制御と振動の数学/第一類/Laplace 変換による解の吟味/解法の正しさの証明

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以上の準備の下に,Laplace 変換による解法の正しさを証明することができる. この章の初めに述べたことを,特性方程式を用いて簡単に復習しておこう.


特性方程式を, テンプレート:制御と振動の数学/equation とするとき,同次方程式 テンプレート:制御と振動の数学/equation および非同次方程式 テンプレート:制御と振動の数学/equation を初期条件 テンプレート:制御と振動の数学/equation の下に解くという問題であった.

[定理 3.2] テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation ここに,q(t) は高々 n1 次の任意の多項式である.


これを示すことが目標である.一般に, テンプレート:制御と振動の数学/equation と因数分解できるから[1]補題3.2 を念頭におけば,定理 3.2 は, テンプレート:制御と振動の数学/equation の場合に証明すれば十分である[2]テンプレート:制御と振動の数学/equation例67で示した[3].よって,定理は, テンプレート:制御と振動の数学/equation の場合だけ示せばよい.ところで補題 3.3 に留意すれば, テンプレート:制御と振動の数学/equation の場合だけを論ずればよいことが分かる[4].したがって, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation を確めればよいことが分かる.ところが,これらは前章ですでに示されている. すなわち 式 (2.33) によれば, テンプレート:制御と振動の数学/equation より直ちに, テンプレート:制御と振動の数学/equation が出る.[5] また, テンプレート:制御と振動の数学/equation に注意すれば, テンプレート:制御と振動の数学/equation も明らかである.以上で定理の (i) の部分が示された.


(ii) の部分は次のようにして示される[6].いま証明したことから, テンプレート:制御と振動の数学/equationp(D)x=0 の解である[7].しかも初期値は, テンプレート:制御と振動の数学/equation を満たす[8].この初期条件に留意しつつ g*f合成積の微分の公式を次々に適用すると, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation および, テンプレート:制御と振動の数学/equation となり,上から順に an,an1,an2,a2,a1,1 を掛けて加えると, テンプレート:制御と振動の数学/equation を得る.


この証明からも分かる通り,f(t) の Laplace 変換が存在しなくても g*f は, テンプレート:制御と振動の数学/equation の解となる.たとえば, テンプレート:制御と振動の数学/equation において,et2 の Laplace 変換は存在しないが, テンプレート:制御と振動の数学/equation が解であることは明らかである[9]



  1. これは部分分数定理の注にて証明した.
  2. p(D)=p1(D)p2(D) にて p2(D)x=0 ならば p(D)x=0.よって p2(D)x=0 となる p2(D) があればよい. この節の証明方針を以下に整理すると,定理3.2(i) の q(s)p(s) の分母 p(s) を因数分解したときに因数として (sα)l を持ち,したがって q(s)p(s)部分分数展開第二分解定理まで実施した結果,項 al(sα)l を持つのであれば,この原像の t の次数が微分方程式の解 x を構成する項の中で最高次数となり 式(2.17b)よりその次数は l1 .これに作用素 p2(D)=(Dα)l を働かせた結果が 0 になれば,証明全体の中のこの項 (Dα)l に関与する部分を完了させられる. 部分分数展開の結果,項として q1(s)(sα)2+β2 を持つものについては後述される.
  3. (Dα)ltl1(l1)!eαt=eαtDltl1(l1)!=0( 補題 3.3(ii) およびその系)
  4. p(Dα)=(Dα)2+β2 のとき,p(Dα)eαtx=eαtp(D)x
  5. (D2+β2)lφl=(D2+β2)l1φl1=(D2+β2)l2φl2==(D2+β2)2φ2=(D2+β2)φ1
    =(D2+β2)1βsinβt=βsinβt+βsinβt=0
  6. ここでの証明法は二階線形微分方程式の解法と同じ.
  7. q(s)p(s)x0(t) ならば p(D)x0=0 で,q(s)=1 の場合.
  8. p(s)=sn+a1sn1+a2sn2++an2s2+an1s+an
    で,
    G(s)=1p(s)g(t)G をおくと,
    snG+a1sn1G+a2s(n2)G++an2s2G+an1sG+anG=1…①
    一方,式 (2.1) ,したがって式 (2.11) より、
    sG=[g]+g(0)
    s2G=[g]+g(0)s+g(0)
    s3G=[g]+g(0)s2+g(0)s+g(0)

    sn1G=[g(n1)]+g(0)sn2+g(0)sn3++g(n2)
    snG=[g(n)]+g(0)sn1+g(0)sn2++g(n1)
    これらを①に代入して,
    [g(n)+a1g(n1)+a2g(n2)++an2g+an1g+ang]
    +g(0)s(n1)+{g(0)+g(0)}s(n2)++{g(0)+g(0)+g(0)++g(n2)}s+g(n1)(0)=1
    p(D)g=0 より [ ] 内は 0 となり,①より s の係数を比較して,
    g(0)=g(0)=g(0)==g(n2)(0)=0,g(n1)(0)=1
  9. この章の証明に Laplace 変換 が使われていない,というのは,Laplace 変換によって求めた原像 x0,g*f が微分方程式 p(D)x=f の解であることを証明するのに Lapalce 変換を使っていない,ということである.ただ,非同次微分方程式の定常解 g*ff については,f は与えられた関数であり,「f に対応する Laplace 変換がなくとも g*f は解となる」という部分には Laplace 変換が使われていないことはいえる.初期値の与え方についても最終項を除いて Di(g*f)=(Dig)*f となるように初期値 g(i)(0)=0,最終項は g(n1)(0)=1 と後から与えてよい.