「高等学校数学C/平面上の曲線」の版間の差分

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2024年10月2日 (水) 07:05時点における最新版

テンプレート:Pathnav 放物線(parabola)、楕円(ellipse)、双曲線(hyperbola)をまとめて、2次曲線円錐曲線という。これらが、2次曲線と呼ばれる理由は、放物線、楕円、双曲線は x,y の2次式 F(x,y) によって F(x,y)=0 で表すことができ、また x,y の2次式 F(x,y) によって F(x,y)=0 と表される曲線は放物線、楕円、双曲線、直線、点のいずれかになるからである。

円錐曲線と呼ばれる理由は、円錐面を「全ての母線と交わり、底面に平行な平面で切断」したときの断面が円。「全ての母線と交わり、底面に平行でない平面で切断」したときの断面が楕円。「母線に平行な面で切断」したときの断面が放物線。「母線に平行でない平面で切断」したときの断面が双曲線となるからである。

2次曲線は直線や円についで重要な曲線である。

数学Ⅱ「図形と方程式」及び数学C「ベクトル」の先行履修を必須とする。数学C「複素数平面」及び数学Ⅲ「微分法」より前の履修が望ましい。

二次曲線

放物線

平面上に点 F と、点 F を通らない直線 l をとる。このとき、直線 l からの距離と点 F からの距離が等しい点の軌跡を放物線(正字:抛物線)という。このとき、点 F を放物線の焦点、直線 l を放物線の準線という。


焦点を F(p,0) 準線を l:x=p とする放物線の方程式を求める。P(x,y) がこの放物線の点とすると、点 P と直線 l の距離は x+p であり、PF=(xp)2+y2 である。なので、 (x+p)2=(xp)2+y2 である。これを整理して、

y2=4px

を得る。

これを放物線の方程式の標準形という。


ここで、放物線 y2=4px において、 xy を入れ替えれば y=x24p である。ここから中学から学んできた放物線の定義と一致することがわかる。

演習問題

放物線 y=ax2(a0) の焦点と準線を求めよ。

解答

焦点 (0,14a) 準線 y=14a


楕円

平面上に異なる2点 F,F をとる。F との距離と、 F との距離のが一定である点の軌跡を楕円(正字:橢圓)という。このとき、点 F,F を楕円の焦点という。

2点F、F'を焦点とする楕円において、直線FF'のうち楕円が切り取る線分を長軸、長軸の垂直二等分線のうち楕円が切り取る部分を短軸という。長軸と短軸の交点を楕円の中心、長軸・短軸それぞれの端点を頂点という。


焦点を F(c,0),F(c,0) とする。点 P(x,y) が楕円上の点であるとき、 PF+PF=2a である。PF=2aPF より

(xc)2+y2=2a(x+c)2+y2

両辺を2乗して整理すると

a(x+c)2+y2=a2+cx

再度、両辺を2乗して整理すると

(a2c2)x2+a2y2=a2(a2c2)

ここで a2c2=b2(b>0) と置き換えると

b2x2+a2y2=a2b2

両辺を a2b2 で割ると

x2a2+y2b2=1(a>b>0)

が導かれる。

これを楕円の方程式の標準形という。


x軸との交点は(a,0)(a,0)y軸との交点は(0,b)(0,b)となる。

a>b>0のとき、2aは長軸の長さ(長径)、2bは短軸の長さ(短径)となり、xy平面上にグラフを書くと横長の楕円になる。また焦点は長径であるx軸上にありその座標は(a2b2,0),(a2b2,0)となる。

逆に、b>a>0のとき、2bは長軸の長さ(長径)、2aは短軸の長さ(短径)となり、xy平面上にグラフを書くと縦長の楕円になる。また焦点は長径であるy軸上にありその座標は(0,b2a2),(0,b2a2)となる。


2つの焦点が近いほど楕円は円に近づき、2つの焦点が重なったとき a=b となり、楕円は円になる。

楕円と円の関係

楕円x2a2+y2b2=1は、
①円x2+y2=a2をx軸をもとにy軸方向にba倍したもの。
②円x2+y2=b2をy軸をもとにx軸方向にab倍したもの。
③円x2+b2=1をx軸方向にa倍、y軸方向にb倍したもの。


一般に、曲線F(x,y)=0をx軸方向にk倍、y軸方向にl倍した曲線の方程式はF(1kx,1ly)=0である。


ちなみに、恒星の周りを公転する惑星の軌道は、恒星を焦点とする楕円になる。


双曲線

平面上に異なる2点 F,F をとる。F との距離と、 F との距離のが一定である点の軌跡を双曲線といい、2点 F,F を双曲線の焦点という。


焦点を F(c,0),F(c,0) とする。点 P(x,y) が双曲線上の点であるとき、 |PFPF|=2a である。PF=±2a+PF より

(xc)2+y2=±2a+(x+c)2+y2

両辺を2乗して整理すると

±a(x+c)2+y2=a2cx

再度両辺を2乗して整理すると

(c2a2)x2a2y2=a2(c2a2)

ここで、 b2=c2a2(b>0) とおき、両辺を a2b2 で割れば

x2a2y2b2=1

である。

これを、双曲線の方程式の標準形という。

なお、双曲線x2y2=1単位双曲線という場合がある。


双曲線がx2a2y2b2=1で表されるとき、焦点の座標は(a2+b2,0),(a2+b2,0)となる。

逆に、双曲線がx2a2y2b2=1で表されるとき、焦点の座標は(0,a2+b2),(0,a2+b2)となる。


双曲線x2a2y2b2=1は2本の漸近線xa±yb=0を持つ。

漸近線が直交する双曲線を直角双曲線という。


二次曲線の諸性質

二次曲線の移動

一般に、曲線F(x,y)=0をx軸方向にp、y軸方向にqだけ平行移動して得られる図形の方程式は、

F(xp,yq)=0

である。

この事実を利用して、2次式ax2+by2+cx+dy+e=0が表す図形を判別しよう。


  • 例題

方程式y26y4x=7が表す図形を答えよ。

  • 解答

yについて平方完成すると(y3)24x=16なので(y3)2=4(x+4)。これは放物線y2=4xをx軸方向に-4、y軸方向に3だけ平行移動した図形である。

  • 問題
    • 以下の方程式が表す図形を答え、その概形を書け。
      1. 4x29x216x36y=56
      2. x2+2x7=4y2+16y+12
      3. y2+16x=8y


複素数平面の知識を用いると、二次曲線の回転移動について考えることができる。

詳細な解説はあちらのページに載っているので割愛するが、曲線F(x,y)=0を原点を中心にθだけ回転した図形の方程式はF(xcosθ+ysinθ,xsinθ+ycosθ)=0である。

分数関数y=1xについて考える。この関数のグラフは「反比例のグラフ」という名前で中学校で学んだ。関数の式を変形すると、xy=1となる。これを原点を中心にπ4だけ回転してみよう。

回転した図形の方程式は(xcosπ4+ysinπ4)(xsinπ4+ycosπ4)=1である。sinπ4=cosπ4=12より、(x+y)(x+y)=2×2なので、x2y2=2である。

つまり、関数xy=1のグラフは双曲線x22y22=1を原点を中心に回転移動した図形である。この図形の漸近線はx軸とy軸であり、これらの座標軸は直交するので、分数関数y=1xのグラフは直角双曲線である。

このことから、一次分数関数y=ax+bcx+dのグラフは全て直角双曲線であることがわかる。

なお、回転移動には行列の知識を用いても良い。


点・関数のグラフの移動の総纏め
移動の種類 (x,y)が移る点 曲線F(x,y)=0が移る曲線の方程式 備考
x軸方向にpy軸方向にqだけ平行移動 (x+p,y+q) F(xp,yq)=0
x軸に関する対称移動 (x,y) F(x,y)=0
y軸に関する対称移動 (x,y) F(x,y)=0
④原点に関する対称移動 (x,y) F(x,y)=0
⑤直線y=xに関する対称移動 (y,x) F(y,x)=0 移った関数は元の関数の逆関数である。
⑥直線y=xに関する対称移動 (y,x) F(y,x)=0 ④と⑤を合成したもの。
⑦直線x=mに関する対称移動 (2mx,y) F(2mx,y)=0
⑧直線y=nに関する対称移動 (x,2ny) F(x,2ny)=0
⑨点(m,n)に関する対称移動 (2mx,2ny) F(2mx,2ny)=0 ⑦と⑧を合成したもの。
⑩原点を中心とした角θの回転移動 (xcosθysinθ,xsinθ+ycosθ) F(xcosθ+ysinθ,xsinθ+ycosθ)=0
⑪原点を中心としたx方向a倍、y方向b倍の拡大・縮小(相似変換 (ax,by) F(xa,yb)=0

証明は非常に容易であるが、グラフの移動について以下のような考え方を用いている。

曲線上の任意の点(X,Y)が移った先の点を(x,y)とおく。このとき、「移動と逆の操作をすると点(x,y)が点(X,Y)に移る」と考えることで、{X=f(x)Y=g(y)という関係式が出てくる。あとはF(f(x),g(y))=0を計算すれば移動した曲線の方程式が出てくる。

この考え方は、この分野を含む軌跡の問題で非常に重要な考え方である。

二次曲線の接線

二次曲線と直線の交点は、それぞれの方程式を連立させた連立方程式の実数解として得られる。特に、1文字を消去して得られる二次方程式が重解を持つ場合、直線はその二次曲線の接線である。

与えられた直線が二次曲線の接線であることを示す場合、方程式を連立させて出てくる二次方程式の解が重解であることを示せば良い。数学Ⅲで習う陰関数微分を知っている場合は、微分で接線を求めて与えられた直線に一致することを示すのが最も楽である。


円の接線(復習)(xa)2+(yb)2=r2上の点(x1,y1)における接線の方程式は、
(x1a)(xa)+(y1b)(yb)=r2
  • 導出

二次方程式の重解を利用した証明は数学Ⅱで既に扱ったため、ここでは正射影ベクトルを用いた証明を紹介する。

円の中心をC(a,b)、接点をA(x1,y1)、接線上の任意の点をP(x,y)とおく。
円の半径と接線は常に垂直であるので、CPの正射影ベクトルは常にCAと一致する。
よってCACP=|CA|2が常に成り立つ。
成分表示すると、(x1a)(xa)+(y1b)(yb)=r2が得られる。
逆に、上式を満たす点P(x,y)は接線上にある。

この証明は高校範囲における円の接線の方程式の導出の中で最も簡潔なものである。

なお、偏微分の知識が必要だが法線ベクトルを用いたより簡潔な証明も存在する。


放物線の接線

放物線y2=4px上の点(x1,y1)における接線の方程式は、
y1y=2p(x+x1)
  • 導出
この放物線の接線はx軸に平行でないから、求める接線の方程式はxx1=m(yy1)・・・①と表せる。
xを消去して整理すると、y24pmy+4p(my1x1)=0
これが重解を持つから、D4=(2pm)24p(my1x1)=0
4p2m24pmy1+4px1=0
4p2m24pmy1+y12=0
(2pmy1)2=0
m=y12p
①に代入して、xx1=y12p(yy1)
2p(xx1)=y1yy12
y1y=2p(xx1)+4px1
y1y=2p(x+x1)

なお、放物線x2=4pyについて、接線の方程式はxとyをそれぞれ入れ替えた式となる。


楕円・双曲線の接線

楕円x2a2+y2b2=1上の点(x1,y1)における接線の方程式は、
x1xa2+y1yb2=1

双曲線x2a2y2b2=±1上の点(x1,y1)における接線の方程式は、
x1xa2y1yb2=±1(複合同順)
  • 導出
放物線・双曲線の式をAx2+By2=1とおく。(A=1a2,B=1b2で楕円、A=±1a2,B=1b2(複合同順)で双曲線)
y10のときを考える。
求める接線の方程式をyy1=m(xx1)・・・②とおく。
yを消去するとAx2+B{mx(mx1y1)2}=1
(A+Bm2)x22Bm(mx1y1)x+B(mx1y1)21=0
(x1,y1)における接線が存在するのでこの方程式はx=x1を重解に持つ。
よって二次方程式の重解の公式より、x1=Bm(mx1y1)A+Bm2
(A+Bm2)x1=Bm(mx1y1)
Ax1=Bmy1
m=Ax1By1
②に代入してyy1=Ax1By1(xx1)
Ax1x+By1y=Ax12+By12
ここで点(x1,y1)が曲線上の点であることからAx12+By12=1が成り立つので、Ax1x+By1y=1である。
y1=0のとき、x1=±1Aから接線の式はx=1Ax1=±1A=x1なので成り立つ。


なお、楕円の接線の方程式については次のように証明することもできる。

楕円x2a2+y2b2=1をy軸方向にab倍すると、楕円は円x2+y2=a2へ、楕円上の点(x1,y1)は円上の点(x1,aby1)へと写る。
この点における円の接線の方程式はx1x+aby1y=a2である。
逆に円をy軸方向にba倍すると、この接線は直線x1x+a2b2y1y=a2へと写る。
この直線は楕円上の点(x1,y1)における接線であり、方程式を変形すると、x1xa2+y1yb2=1となる。


一般の点のまわりで考える場合については、先ほど紹介した平行移動の公式を用いれば良い。

後述するが、二次曲線の接線には焦点に関わる美しい性質がある。


二次曲線の離心率

放物線と同様に、楕円や双曲線も焦点と準線をもとに定義することができる。

座標平面上に定点F(c,0)と定直線L:x=0をとる。点P(x,y)からLに下ろした垂線の足をHとし、PF:PH=ε:1とおく。(εはイプシロンと読むギリシャ文字)

このとき、

ε=PFPH=(xc)2+y2|x|
ε|x|=(xc)2+y2

両辺を二乗して整理すると、

(1ε2)x22cx+y2+c2=0

ε=1のとき

y2=2cx+c2=2c(xc2)
この曲線とF、Lをそれぞれx軸方向にc2だけ平行移動してc=2pとおくと、
{y2=4pxF(p,0)L:x=p
これは放物線である。

ε1のとき

(1ε2)(x2c1ε2x)+y2=c2
平方完成して、
(1ε2)(xc1ε2)2+y2=c21ε2c2
(1ε2)(xc1ε2)2+y2=(cε)21ε2
この曲線とF、Lをそれぞれx軸方向にc1ε2だけ平行移動して、
{(1ε2)x2+y2=(cε)21ε2F(cε21ε2,0)L:x=c1ε2
(Ⅰ)0<ε<1のとき
a=cε1ε2,b=cε1ε2とおくと、
{x2a2+y2b2=1(a>b>0)F(aε,0)L:x=aε
これは楕円である。
このとき、ε=a2b2a
(Ⅱ)ε>1のとき
a=cεε21,b=cεε21とおくと、
{x2a2y2b2=1(a>0,b>0)F(aε,0)L:x=aε
これは双曲線である。
このとき、ε=a2+b2a

なお、準線は焦点1つにつき1本定まるので、楕円・双曲線の準線は2本存在する。


このように、定点F(焦点)からの距離とFを通らない定直線L(準線)からの距離の比がε:1である点Pの軌跡はεの値によって定まる。このεのことを離心率という。

離心率は全ての正の実数値をとりうる。

離心率の値を少しづつ変化させた場合の軌跡を描いていくと、εが0に近づけば近づくほど真円に、εが∞に近づけば近づくほど直線に近い形状になることがわかる。

このことから、離心率による二次曲線の分類は以下のようになる。

離心率と二次曲線

①ε=0のとき
Fを中心とする真円

②0<ε<1のとき
Fを焦点の一つとする楕円

③ε=1のとき
Fを焦点、Lを準線とする放物線

④ε>1のとき
Fを焦点の一つとする双曲線

⑤ε→∞のとき
Fに限りなく近い点を通る直線

離心率はよく「二次曲線が真円から離れている度合い」と表現される。

なお、地球を楕円と見たときの離心率はε ≒ 0.081819191042815790である。

0<ε<1のとき、ε² = f(2-f)となるfは「円に対して楕円がどのくらい潰れているかの度合い」を表し、扁平率(へんぺいりつ)と呼ばれる。


二次曲線が円錐の切り口であるという話を冒頭でしたが、このとき準線と焦点がどこにあるのか紹介しよう。

  1. 円錐をその頂点を通らない平面で切った切り口は二次曲線である。
  2. 円錐に内接して切り口にも接する球を考えると、球と平面の接点が二次曲線の焦点となる。
  3. 球と円錐が接する点でできる円を含む平面と切り口の平面との交線が二次曲線の準線となる。


焦点の性質

「焦点」という名前の由来は、以下の性質である。

二次曲線の反射定理

放物線の軸に平行に進む光線は、放物線に当たって反射すると全て焦点に集まる。
楕円の焦点から発した光線は、楕円に当たって反射すると全てもう一方の焦点に集まる。
双曲線の焦点に向かって進む光線は、双曲線に当たって反射すると全てもう一方の焦点に集まる。
  • 証明
    • 放物線
放物線y2=4px上の点P(x1,y1)における接線とx軸との交点をQ、放物線の焦点をFとおく。
定義よりFの座標はF(p,0)
接線の方程式はy1y=2p((x+x1)なので、Qの座標はQ(x1,0)である。
したがってFQ=|x1+p|
また、FP=(x1p)2+y12=(x1p)2+4px1=(x1+p)2=|x1+p|
よってFP=FQが成り立つのでΔFPQは二等辺三角形であり、FPQ=FQPが成り立つ。
この性質から、放物線の軸に平行に進む光線は放物線に当たって反射すると全て焦点に集まることがわかる。
    • 楕円
楕円x2a2+y2b2=1(a>b>0)の2つの焦点をF、F'とする。座標軸上にない楕円上の点P(x1,y1)における接線とx軸、y軸との交点をそれぞれQ、Rとおく。また、焦点のx座標の絶対値をc、離心率をεとする。
接線の方程式はx1xa2+y1yb2=1なので、Qの座標はQ(a2x1,0)である。
したがって、FQ=|a2x1c|=|a2x1aε|=|ax1(aεx1)|
また、FQ=|a2x1+c|=|a2x1+aε|=|ax1(aεx1)|
さらに、FP=(xc)2+y2=(xc)2+b2(1x2a2)=c2a2x22cx+a2=|caa|=|aex1|
同様にして、FP=|a+ex1|
よって、PF:PF=FQ:FQより線分PQFPFの外角を二等分するので、FPQ=FPQ
Pが座標軸上にある場合も、明らかに成り立つ。
この性質から、楕円の一方の焦点から走った光線は楕円に当たって反射すると全て他の焦点に集まることがわかる。

双曲線の場合も楕円と全く同様の証明である。


補:二変数二次方程式の表す図形が円錐曲線にならない場合

二変数二次方程式ax2+bxy+cy2+dx+ey+f=0の表す図形が必ず放物線・楕円・双曲線のいずれかになるわけではない。

例えば、(ix+jy+k)(px+qy+r)=0と因数分解できる場合、この方程式が表す図形は交わる2直線{ix+jy+k=0px+qy+r=0である。

また、(mx+ny+l)2と因数分解できる場合、この方程式が表す図形は直線mx+ny+l=0である。

他にも、sx2=ty2(s>0,t>0)と変形できる場合、この方程式が表す図形は点(0,0)である。


図形が平面上に存在しない場合もある。

例えば、ax2+by2=1の表す図形は、xとyが実数の場合xy平面上に描画できない。xとyが複素数である場合を考えると、xy空間(x=a+bi,y=c+diとおいたときにa軸, b軸, c軸, d軸がなす四次元の直交座標空間)のうち実軸同士がつくる平面とは交わらない部分に図形が存在する。この図形は楕円と方程式が似ているので虚楕円と呼ばれる。

数学Ⅱで習った虚円も、方程式の表す図形が実数平面と交わらないだけで、x,yを複素数範囲に広げて四次元空間を考えると図形を描画することができる。

このような特殊な場合を除くと、二次曲線の判別式を考えることができる。詳しくは理数科向けのページで扱う。


媒介変数表示

ベクトルにおいて、点A(x1,y1)を通り方向ベクトルd=(a,b)に平行な直線の方程式は媒介変数(パラメータ)tを用いて{x=x1+aty=y1+btと表せ、このような表示法を媒介変数表示(パラメータ表示)と呼ぶことを学んだ。

一般に、媒介変数tを用いて{x=f(t)y=g(t) と表される点 P(x,y) の集合は曲線を描く。ここでは、曲線の媒介変数表示について扱う。

ファイル:Cycloid function.png
サイクロイド

媒介変数表示では F(x,y)=0 の形では表しにくい曲線も簡潔に表すことができる。例えば、 {x=tsinty=1cost である。これはサイクロイドと呼ばれる。(一番最後の節により詳細を記した。)


一般に、{x=f(t)y=g(t) と媒介変数表示されている曲線を x 方向に py 方向に q だけだけ平行移動した曲線は {x=f(t)+py=g(t)+q と表せる。


二次曲線の媒介変数表示

{x=pt2y=2pt(p0) で表される曲線は t を消去すると y2=4px となるので放物線である。

x2+y2=r2 を媒介変数表示すると {x=rcosθy=rsinθ となる。これは三角関数の定義より明らかである。このことから、三角関数のことを円関数と呼ぶ場合もある。

楕円x2a2+y2b2=1を媒介変数表示すると{x=bcosθy=asinθとなる。これは円の媒介変数表示と先ほど紹介した拡大・縮小の公式から容易に導出できる。

双曲線x2a2y2b2=1の媒介変数表示は{x=acosθy=btanθとなる。これは三角関数の公式1+tan2θ=1cos2θからわかる。


テンプレート:コラム


なお、(複素数Zの方程式)=x+yiの形で表された式をZの極形式を用いて解くと二次曲線の媒介変数表示が現れる場合がある。


極座標と極方程式

極座標

これまでの学習では、x軸とy軸を使った座標平面(直交座標という)(x,y)使うことで、座標平面上の1点を定めた。 ここで学ぶ極座標では、(r,θ) の文字で与えられる式を使って曲線を表すことを考える。

ある一点Oと半直線OXを定めると、平面上の点Pは、点Oからの距離rと、XOPの角θ(0θ<2π)の大きさで一意に定まる。


極座標の定義

原点Oと軸OXを定める。平面上の点Pについて、OP間の距離をr、XOPの大きさをθで表した座標(r,θ)極座標という。 このとき、Oを、OXを始線という。 また、θ偏角という。


また、直交座標と極座標の関係は次のようになる。

直交座標と極座標の関係

{r=x2+y2cosθ=xrsinθ=yr{x=rcosθy=rsinθ

これは、原点中心, 半径rの円周上における正弦関数・余弦関数の定義そのものである。

r=0の場合、正弦・余弦の値が存在しないので偏角θを定められない。 そのため、θを任意の実数とすると極座標(0, θ)は極Oを表す。


極座標(r, θ)で定められる平面をrθ平面もしくは極座標平面という。 θを不定にすると点(r, θ)の軌跡は円となる。そのため、二次元における極座標を円座標という場合がある。


物理学や工学方面に進学すると、三次元における極座標を用いるようになる。特に、解析力学や姿勢制御で使われている。


極方程式

r=f(θ)(陽関数表示)あるいはF(r,θ)=0(陰関数表示)の形で与えられる式を極方程式(きょくほうていしき)という。極方程式はrとθについての関数であるが、これらはxとyへの変換が可能であり、よってxy平面上に曲線をかいてもよいことになる。


極方程式においては、rが負の場合も考える。rを正とするとき、(-r, θ)という点は(r, θ+π)と書き換えられる。これは三角関数のθ+πの公式から明らかである。この点は点(r, θ)と極Oに関して対象である。単に極座標の場合は考えない。あくまでも、極方程式を考える場合のみである。同様に、三角関数や複素数平面の場合も考えない。


さまざまな極方程式

(1)中心O,半径aの円 r=a

(2)中心(r0,θ0),半径aの円 r22rr0cosθ0+r02=a2

(3)極Oを通り、始線とαの角をなす直線 θ=α

(4)点(a,α)を通り、OAに垂直な直線 rcos(θα)=a

(例)円(x1)2+y2=1を極方程式で表す. x=rcosθ,y=rsinθを代入して整理すると r(r2cosθ)=0

r=0は極を表すから r=2cosθ


一般に、二次曲線は離心率を用いた極方程式r=l1+εcosθで表される。

離心率の値による2次曲線の分類は直交座標でも極座標でも変化しない。

さまざまな曲線

これまでに、2次曲線、媒介変数表示、極方程式などの曲線とその性質について述べてきた。以下では、これらを利用してさまざまな曲線の式を示す。一般に概形をつかむのは困難なため、コンピュータを使用する。媒介変数表示されている場合は、媒介変数微分を用いることで概形を描ける場合がある。


  • サイクロイド(擺線)
サイクロイドの回転円による描画
サイクロイドの回転円による描画

関数表示:{x=r(θsinθ)y=r(1cosθ)

任意の2点間を結ぶ曲線のうち、重力のみが作用する環境下で曲線上を滑らかに動く物体が初速度0で位置エネルギー最大の地点から最小の地点まで動く際に最も速度が大きくなるようなものを最速降下曲線という。

最速降下曲線はサイクロイドの一種であることが証明されている。


  • カージオイド(心臓形)
a=1の場合のカージオイド
a=1の場合のカージオイド

関数表示:r=a(1+cosθ)

カップに入ったミルクティーに光が当たるとカージオイドのような図形が見えることがある。

これは、カージオイドの半円部分で反射した光が一点には集まらないものの、密集するためである。


  • アステロイド(星芒形)
アステロイドの内接円による描画
アステロイドの内接円による描画

関数表示:{x=acos3θy=asin3θ

アステロイドは4つの尖点を持つので、四尖点形ともいう。

中心Oで半径aの定円C1上を半径a4の円C2が内接しながら滑ることなく回転するとき、円C2上の定点Pの初期座標を(a,0)とするとPの軌跡はアステロイドとなる。


  • リマソン(パスカルの蝸牛形)
リマソン
リマソン

関数表示:r=acosθ+l

x軸に関して線対称である。

a=lのときカージオイドに一致する。


  • バラ曲線(正葉曲線)
薔薇曲線r=sin(n/d×θ)
薔薇曲線r=sin(n/d×θ)

関数表示:r=asinnθ

nの値を有理数範囲で変えていくと、非常に多彩な図形が現れる。特に、nの値が整数のときは植物の葉のように見える。 このことから、正葉曲線という別名が存在する。


  • レムニスケート(連珠形)
レム二スケートの直角双曲線による描画
レムニスケートの直角双曲線による描画

関数表示:r2=2a2cos2θ

「∞」に似た図形となる。

ループ一つで囲まれた領域の面積はa2である。

直角双曲線の接線に、原点から垂線を下ろした点の軌跡はレムニスケートになる。


  • リサージュ曲線
リサージュ曲線x=Asin(at)∧y=Bsin(bt+δ)
リサージュ曲線x=Asin(at)∧y=Bsin(bt+δ)


関数表示:{x=asinpθy=bsinqθ(ただし、p, qは有理数)

リサジュー曲線とも呼ばれる。

互いに直交する二つの単振動を合成して得られる平面図形はリサージュとなる。

オシロスコープを用いて定数の値を少しづつ変えていくと、図形の多彩で細やかな変化を観察できる。


  • 代数螺旋(アルキメデスの渦巻線)
アルキメデスの螺旋
アルキメデスの螺旋

関数表示:r=aθ(ただしa>0, θ≧0)

各線同士の間隔は等しい。

θを負の値にするとy軸に関して線対称となる。

他に代数螺旋と呼ばれている曲線としては、抛物螺旋r=aθ)、双曲螺旋r=aθ)、リチュースr=aθ)がある。

これらの曲線を表す極方程式をθについて解くと、

アルキメデスの螺旋:θ=ra
抛物螺旋:θ=r2a2
双曲螺旋:θ=ar
リチュース:θ=a2r2

となる。