高等学校数学III/微分法

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テンプレート:Pathnav ここでは、微分・積分の考えで学んだ微分の性質についてより詳しく扱う。特に、関数の和、差、積、商、更に合成関数や、逆関数の導関数について詳しく扱う。また、三角関数などの複雑な関数の微分についてもここでまとめる。

数学C「ベクトル」「二次曲線」の先行履修を必須とする。


様々な導関数

関数の導関数

関数f(x)が任意の点xで極限値

f(x):=limh0f(x+h)f(x)h

を持つとき、関数f(x)微分可能と言い、関数 f' を、関数f導関数と呼ぶ。

微分可能な関数は連続関数

関数f(x)が微分可能ならば、連続関数である。

(証明) fが微分可能とすると、

limh0(f(x+h)f(x))=limh0f(x+h)f(x)hh=limh0f(x+h)f(x)hlimh0h=f(x)×0=0

なので、fは連続である。


ここでは、関数の和、差、積、商の微分について扱う。これらの方法は以降の計算で常に用いられる内容であるので、十分に習熟しておく必要がある。


和・差の導関数

f,gを微分可能な関数とする。このとき、fとgの和について次が成り立つ。

{f(x)±g(x)}=f(x)±g(x)

これは、関数の和を微分して得られる導関数は、それぞれの関数の和を足し合わせたものに等しいことを表している。


導出

{f(x)±g(x)} =limh0f(x+h)±g(x+h)(f(x)±g(x))h
=limh0f(x+h)f(x)±g(x+h)g(x)h
=limh0f(x+h)f(x)h±g(x+h)g(x)h
=f(x)±g(x)


実数倍の導関数

次に、関数の実数倍の導関数について考える。関数の実数倍をしたものを微分したものは、実数倍する前の関数に対する導関数を実数倍したものになる。具体的には次の式が成り立つ。(af)=af (aは定数)

導出

(af) =limh0af(x+h)af(x)h
=limh0af(x+h)f(x)h
=alimh0f(x+h)f(x)h
=af


積の導関数

積に関しては、和や実数倍と比べて計算結果がより複雑になる。具体的には次が成り立つ。

(fg)=fg+fg

これは、それぞれの関数の微分とそれ以外の関数との積が得られるということを表している。これは導出を見ないとなぜこうなるかがわからないかも知れないが、よく導出を検討することが重要である。


導出

{f(x)g(x)} =limh0f(x+h)g(x+h)(f(x)g(x))h
=limh0f(x+h)g(x+h)f(x+h)g(x)+f(x+h)g(x)f(x)g(x)h
=limh0f(x+h)(g(x+h)g(x))+g(x)(f(x+h)f(x))h
=limh0f(x+h)(g(x+h)g(x))h+g(x)(f(x+h)f(x))h

ここで、limh0f(x+h)=f(x)に注意すると、

(fg) =fg+fg


冪関数の導関数 I

関数f(x)=xa冪関数という。

数学Ⅱで習ったように、nを自然数とするとき、

ddxxn=nxn1

である。

ここでは、数学Ⅱでは扱わなかった上式の導出を行う。

(導出その1)

ddxxn=limh0(x+h)nxnh(1)

ここで、二項定理により

(x+h)n=k=0nnCkxnkhk

ただし

nCk:=n!(nk)!k!0!:=1

なので、

(x+h)n=xn+nxn1h+k=2nnCkxnkhk

この式を、式(1)の右辺に代入すると

ddxxn=limh0(nxn1+k=2nnCkxnkhk1)=nxn1

である。


(導出その2)

(xn)=nxn1を①とする。

[1] n=1のとき 左辺は

(x1)=1

であり、右辺は

1x0=1

なので、n=1のとき①は成り立つ。

[2] n=kのとき(xk)=kxk1が成り立つと仮定する。 n=k+1のとき、積の導関数の式より

(xk+1)=(xkx)=(xk)x+xk(x)=(kxk1)x+xk1=kxk+xk=(k+1)xk

よって、n=k+1のときも①が成り立つ。

[1] [2]より、すべての自然数nについて①が成り立つ。


商の導関数

商の導関数については次式が成り立つ。

(1f)=f(f)2

この式についても、よく導出を検討することが必要である。

導出

(1f) =limh01f(x+h)1f(x)h
=limh0f(x)f(x+h)f(x+h)f(x)h
=limh01f(x+h)f(x)f(x)f(x+h)h
=limh01f(x+h)f(x)f(x+h)f(x)h
=f(f)2

また、商の導関数の式と、積の導関数の式より、次の公式が導かれる。

(gf)=gfgf(f)2

この式は、積の式と商の式から直接従う式だが、よく現れる形であるので、覚えておくと便利なことがある。

導出

(gf) =(g1f)
=g1f+g(1f)
=gfgff2
=gff2gff2
=gfgf(f)2


冪関数の導関数 II

xaの指数が自然数nであるとき、(xn)=nxn1であるのは既に証明した。 ここでは、指数が整数の場合を考える。

[1] mが負の整数のときn=mとおく。

このときnは正の整数で、商の導関数の式より

(xm)=(xn)=(1xn)=(xn)(xn)2=nxn1x2n=nxn2n1=nxn1=mxm1

が成り立つ。

[2] m=0のとき、

(xm)=(1)=0,mxm1=0

なので

(xm)=mxm1

が成り立つ。

よって、整数mについて(xm)=mxm1が成り立つ。


合成関数の導関数

合成関数とは、2つの関数f,gを用いて、h(x)=f(g(x))という形で書くことができる関数のことである。合成関数は、与えられた変数に対する関数と見ることができ、導関数を取ることも可能である。具体的には、

(f(g(x)))=f(g(x))g(x)

が成り立つ。

導出

(f(g(x))) =limh0f(g(x+h))f(g(x))h
=limh0f(g(x+h))f(g(x))g(x+h)g(x)g(x+h)g(x)h
g(x+h)g(x)=u,g(x)=jとすると、g(x+h)=u+jx0のときu0なので、
=limu0f(u+j)f(j)ulimh0g(x+h)g(x)h
=f(g(x))g(x)

となる。

f(x)=xg(x)=x2+x+1とする。この合成関数は、f(g(x))=x2+x+1である。

この合成関数の導関数を求めてみよう。

f(x)=12x

g(x)=2x+1

なので、f(g(x))'=f(g(x))g(x)=2x+12x2+x+1

である。


※関数f,gの合成関数を(fg)(x)=f(g(x))と書くことがある。

合成関数の微分はライプニッツの記法を用いて、y=f(u),u=g(x)のとき、dydx=f(g(x))f(u)=dydug(x)=dudxなので、

dydx=dydududx

と書くことができる。


また、以下の公式が成り立つ。

ddxf(ax+b)=af(ax+b)
ddx{g(x)}n=n{g(x)}n1g(x)


逆関数の導関数

(f1(y))=1(f(x))

導出

y=f(x)と置くと、x=f1(y)で、 yy0のときxx0であるから、

(f1(y)) =limyy0f1(y)f1(y0)yy0
=limxx0xx0f(x)f(x0)
=limxx01f(x)f(x0)xx0
=1(f(x))

また、

(f(x)) =limxx0f(x)f(x0)xx0
=limyy0yy0f1(y)f1(y0)
=limyy01f1(y)f1(y0)yy0
=1(f1(y))


冪関数の導関数 III

xaの指数が整数mのとき、(xm)=mxm1が成り立つのは既に証明した。 次は、x>0として指数が有理数のときを考える。


[1] nを自然数とすると、y=x1nのとき、x=ynが成り立つので、逆関数の導関数の式より

dydx=1dxdy=1nyn1=1n1(x1n)n1=1nx1n1

[2] mを整数とすると、有理数pについて

p=mn

より、

xp=xmn=(x1n)m

なので、[1]と合成関数の導関数の式より

ddxxp=ddx(x1n)m=m(x1n)m1(x1n)=mxmn1n1nx1n1=mnxmn1=pxp1

が成り立つ。

よって、有理数pについて(xp)=pxp1が成り立つ。


三角関数の導関数

  • (sinx)=cosx
  • (cosx)=sinx
  • (tanx)=1cos2x

となる。

導出


  • limh0sin(h2)(h2)=1
  • 加法定理sin(a+b)=sinacosb+cosasinbsin(ab)=sinacosbcosasinbよりsin(a+b)sin(ab)=2cosasinb(wherea=x+h/2,b=h/2)

に注意すると、

(sinx) =limh0sin(x+h)sin(x)h
=limh02cos(x+h2)sin(h2)h
=limh0cos(x+h2)sin(h2)h2
=cosx

となり、結果が得られた。

(cosx) ={sin(x+π2)}
=cos(x+π2)*(x+π2)
=cos(x+π2)
=sinx

tanxについては、

(tanx) =(sinxcosx)
=cosxcosxsinx(sinx)cos2x
=sin2x+cos2xcos2x
=1cos2x(=sec2x)


なお、1tanx(=cotx)について、
(1tanx) =(cosxsinx)
=sinx(sinx)cosxcosxsin2x
=sin2x+cos2xsin2x
=1sin2x


対数関数の導関数

(logax) =limh0loga(x+h)logaxh
=limh0logax+hxh
=limh0loga(1+hx)h

ここでk=hxと置くと、

limh0loga(1+hx)h =limk0loga(1+k)xk
=limk01xkloga(1+k)
=limk01xloga(1+k)1k
=1xloga(limk0(1+k)1k)

kを0に近づけていくと、(1+k)1kは、

1.110.1=2.5937424601

1.0110.01=2.7048138294215260932671947108075

1.00110.001=2.7169239322358924573830881219476

1.000110.0001=2.7181459268252248640376646749131

0.910.1=2.8679719907924413133222572312408

0.9910.01=2.7319990264290260038466717212578

0.99910.001=2.719642216442850365397553464404

0.999910.0001=2.7184177550104492651837311208356

(計算:Windows付属電卓)

となり、一定の値に近づいていく(証明は数学IIIの範囲ではできない)。 この一定の値、すなわち

limk0(1+k)1k=2.718281828...

eで表す。すると、 limk0(1+k)1k=e

これを、上の式に代入すると、

(logax)
=1xloga(limk0(1+k)1k)
=1xlogae

特にa=eのとき、

(logex)=1x

eを底とする対数を自然対数という。
eは自然対数の底またはネイピア数と呼ばれることが多い。
数学では、logexのeを省略してlogxと書く。
数学以外の分野では、常用対数と区別するために、lnxが用いられることもある。

また、log|x|の微分は、

x>0のとき

(log|x|) =(logx)
=1x

x<0のとき

(log|x|) ={log(x)}
=1x*(1)
=1x

よって、(log|x|)=1x


また、合成関数の微分法より、{log|f(x)|}=f(x)f(x)が成り立つことがわかる。


ネイピア数eの絡む極限

limk0(1+k)1k=eと先ほど定義したが、この定義式は以下のように書き換えられる。

limx(1+1x)x=e

limx(1+1x)x=e

上の二つの式はk=1xと置き換えると、それぞれeの定義式の片側極限の場合を表していることがわかる。

これらの式を利用することで、今まで解けなかったパターンの極限を求められるようになる。

例題)limx0log(1x)xの極限を求めよ

解答)

limx0log(1x)x=limx0log(1x)1x

x=kとおくとx0のときk0なので、

(上式)=limk0vlog(1+k)1k=limk0log(1+k)1k

ここで、対数関数は連続関数なので、logとlimを入れ替えても良い。

(上式)=log{limk0(1+k)1k}=loge=1

よって、収束して極限値は-1である。

指数関数の導関数

y=ax(a>0)

両辺の自然対数をとると、

logy=xloga

両辺をxで微分すると、

yy=loga

y=yloga

y=axloga

特にa=eの場合

(ex)=ex

exのxが煩雑な場合、ex=exp(x)のように表す場合がある。
また、両辺の自然対数をとってから微分する操作を対数微分法と呼ぶ。


微分係数と極限

微分係数の定義式を用いて極限を求めることもできる。

例題)limx0ex1xを求めよ

解答)

limx0ex1x=limx0exe0x0

ここで、微分係数の定義式f(a)=limxaf(x)f(a)xaより、f(x)=exとおくとf(x)=ex

(上式)=f(0)=e0=1

よって、収束して極限値は1である。


冪関数の導関数 IⅤ

xaの指数が有理数pのとき、(xp)=pxp1が成り立つのは既に証明した。 最後に、x>0として指数が実数のときを考える。

y=xaaは実数であるとする。 両辺の絶対値の自然対数をとって

log|y|=alog|x|

両辺をxで微分して、

yy=a1x

よって

y=a1xxa=axa1

が成り立つ。

最初は指数が自然数の場合のみだったのに比べ、より一般の範囲で上式が成り立つことがわかった。このようにある式をより一般に言えるようにするのが、数学の発展性であり醍醐味である。


(補足)

(uαvβwγ)=uαvβwγ(αuu+βvv+γww)

が成り立つことは冪関数の微分と積の微分から容易にわかる。この公式は関数 u,v,w の冪の積の微分を計算するときに役に立つ。また、関数が4以上のときにも同様の式が成り立つ。

(補足ここまで)


  • 問題例
    • 問題
      1. ddxxsinx
      2. ddxexcosx2
      3. ddxsin(cosx)
      4. ddxxlogxx
      5. ddx1cos2x
      6. ddxexexex+ex
      7. ddxxx(x>0)
      8. ddθcos57θ
      9. ddtte+π
      10. limx(1+3x)x
      11. limx(xx+1)x
      12. limx1logxx1
      を求めよ
    • 解答
      それぞれ
      1. sinx+xcosx
      2. excosx22xexsinx2
      3. sinxcos(cosx)
      4. logx
      5. 2sinxcos3x
      6. 4ex+ex
      7. xx(logx+1)
      8. 5sinθ7cos2θ7
      9. (e+π)te+π1
      10. e3
      11. 1e
      12. 0
      が得られる。

高次導関数

導関数f'(x)をf(x)の第1次導関数という。

導関数の導関数を第2次導関数という。

導関数の導関数の導関数を第3次導関数という。

一般に、関数f(x)をn回微分して得られる関数を第n次導関数といい、

y(n),f(n),dnydxn,dndxnf(x)

のいずれかで表す。 また、nが1,2,3の時はそれぞれy,y,yf(x),f(x),f(x)と表す。

2次以上の導関数を高次導関数という。

第n次導関数を求める操作をn階微分という場合がある。


(例)f(x)=x5の第3次導関数は

f(x)=5x4

f(x)=20x3

f(x)=60x2

なので60x2である。


第n次導関数を求めるとき、具体的な値で実験して一般式を推測してからの数学的帰納法が有効である。

  • 問題
    • 関数y=xnについて、y(n)を求めよ。
    • n階微分可能な2つの関数f(x),g(x)について、{f(x)g(x)}(n)=k=1nnCkf(nk)(x)g(k)(x)であることを証明せよ。(ライプニッツの定理


陰関数の導関数

y=f(x)の形で表された関数を陽関数と呼ぶ。

それに対しF(x,y)=0の形で表された関数を陰関数と呼ぶ。

例えば、円の方程式は陰関数表示された関数である。

陽関数と陰関数は互いに互いの形へと変形できるが、変形すると式が煩雑になる場合がある。そこで、F(x,y)を合成関数と見做して微分することを考える。


(例)円の方程式x2+y2=4について、ddxyを求める。

この式をyについて解くとy=±4x2であるが、この式を微分しようとすると式が煩雑で厄介である。

上のyについての等式から元の方程式のyは「xの式を別の文字で置換したもの」と考えられるので、合成関数の微分法を利用すると元の形のまま微分ができる。 元の方程式の両辺をxで微分すると、

ddxx2+ddxy2=ddx4

より

2x+2yddxy=0

なので、

2yddxy=2x

すなわち

ddxy=xy

である。

なお、煩雑になるのでyをxの式に直す必要はない。


媒介変数曲線の導関数

ベクトルで習ったように、点(x1,y1)を通りd=(ab)に平行な直線の方程式は媒介変数tを用いて一次関数{x=x1+aty=y1+btで表され、これを「媒介変数表示」と呼んだ。

二次曲線で習ったように、一般に媒介変数表示{x=f(t)y=g(t)は曲線を表す。ここでいう「曲線」は単に曲がった線のことではなく、直線を含む一般的な線のことである。

{x=f(t)y=g(t)をxで微分したい。 関数f,gが三角関数の場合等、高校範囲ではtを消去できないことがあるので、媒介変数表示のまま微分することを考える。 y=g(t)t=g1(y)より、tをyの式と考えるとx=f(t)は合成関数と見做せる。

よって、合成関数の微分法より

dydx=dydtdtdx

である。

ここで、逆関数の微分法から

dtdx=1dxdt

であるので、

dydx=dydtdxdt=g(t)f(t)

が成り立つ。

なお、d2dx2ydydxに再び媒介変数曲線の微分法を用いることで、ddt(dydx)dxdtのように計算できる。


  • 問題
    • 次の式で表された曲線について、ddxy及びd2dx2yを求めよ。
      1. x2+y2+6x2=0
      2. x225+y236=1
      3. 16x29y2=4
      4. x35+y35=1
      5. {x=3t2y=t2+5
      6. {x=9cosθy=6sinθ
      7. {x=4cosθy=7tanθ
      8. {x=tsinty=1cost

導関数の応用

接線と法線

関数f(x)上の点(a,f(a))における接線の傾きはf(a)であるので、接線の方程式は

yf(a)=f(a)(xa)

となる。

また、接点を通り接線に垂直な直線を法線(ほうせん)という。 垂直な直線同士は傾きの符号が逆であり、傾きの絶対値が逆数であるので、法線の方程式は

yf(a)=1f(a)(xa)

となる。

ただし、f(a)=0の場合、法線の方程式はx=aである。


  • 問題
    • 以下の曲線について、点(x1,y1)における接線の方程式と法線の方程式を求めよ。
      1. y2=4px
      2. x2a2+y2b2=1
      3. x2a2y2b2=1


2つの曲線に共通する接線(共通接線)の求め方について簡潔に記述する。

①一般の場合

任意の点における2曲線の接線をそれぞれ求め、それが一致する(恒等式である)条件から定数の値を求める

②2曲線が共有点で接する場合

y座標が一致、微分係数が一致の2つの条件を式で表して連立させて定数の値を求める。


  • 問題
      1. 2曲線y=x21,y=1x+2の共通接線の方程式を求めよ。
      2. 2曲線y=ax2,y=logxが接するという。このとき、aの値, 共有点の座標, 共通接線の方程式をそれぞれ求めよ。


発展:因数定理の拡張
cが高次方程式f(x)=0の2重解であるf(c)=f(c)=0

・証明

f(x)=(xc)2h(x)+dx+e(①)とおくとf(x)=2(xc)h(x)+(xc)2h(x)+d(②)。
このとき、f(x)=0が2重解cを持つならばd=e=0である。
逆に、f(c)=f(c)=0とすると①からdc+e=0、②からe=0
よってd=e=0なのでf(x)=(xc)2h(x)であり、このときcは方程式の2重解である。
Q.E.D.


一般に、cが高次方程式f(x)=0のn重解であるための必要十分条件は、f(n1)(c)=f(n2)(c)==f(c)=f(c)=0である。


  • 問題

f(x)を2次以上の多項式とする。曲線y=f(x)が点(c,f(c))において直線y=ax+bと接するための必要十分条件が「方程式f(x)axb=0の解がc」であることを証明せよ。

関数値の増減

極値

f(a)f(x)の点(a,f(a))での傾きを表す。

よって、

  • f(a)>0の時f(a)は増加し続ける(単調増加
  • f(a)<0の時f(a)は減少し続ける(単調減少
  • f(a)=0の時f(a)は一定

である。

また、f(a)=0で、aの前後でf(x)の符号が+からに変わるならば、f(x)は点(a,f(a))で増加から減少に転じる。このときのf(a)極大値(きょくだいち)という。 また、から+に変わるならば、f(x)は点(a,f(a))で減少から増加に転じるので、このときのf(a)極小値(きょくしょうち)という。 極大値と極小値をまとめて極値(きょくち)という。 f(a)=0であっても、前後で符号が変わらなければf(a)は極値ではない。

変曲点

第二次導関数の図形的な意味を考えてみよう。導関数は各点での接線の傾きを表している。第二次導関数は導関数の導関数だから、接線の傾きの変化率、すなわちグラフの曲がり具合を表していることになる。第二次導関数が正のときは傾きが増加しているのだからグラフは下に凸、負のときは上に凸となる。

グラフの曲がり具合が変わる点のことを変曲点(へんきょくてん)という。上の考察から、変曲点は第二次導関数の符号が変わる点であることがわかる。極値の場合と同様に、たとえf(a)=0であっても、符号が変わらなければ変曲点ではない。

関数のグラフを書くときには、変曲点の情報は極値と同様に重要なので、増減表にも第二次導関数の欄をつくり、変曲点を記入するとよい。


速度と加速度

力学も参照。)

数直線上を運動する物体が時刻 t のとき位置 x(t) にあるとする。この物体の速度を求める。 時刻が t から t+h に移動するとき、物体は x(t) から x(t+h) の位置に移動する[1]。このときの平均の速度は ΔxΔt=x(t+h)x(t)(t+h)t=x(t+h)x(t)h ここで、Δt=h なので、 h を限りなく 0 に近づければ、この物体の瞬間の速度が求められる。時刻 t のときの物体の瞬間の速度を v(t) とすれば、 v(t)=limh0x(t+h)x(t)h=x(t)=dxdt である。

同様に、加速度についても、時刻 t のときの物体の加速度を a(t) とすれば

a(t)=limΔt0ΔvΔt=limΔh0x(t+h)x(t)h=x(t)=d2xdt2


これは、平面上を運動する物体にも拡張できる。時刻 t のときの物体の位置ベクトルが x(t)=(x(t),y(t)) で与えられるとき、この物体の速度ベクトル vv=limΔt0ΔxΔt=dxdt=(dxdt,dydt) である。同様に加速度ベクトル a についても、 a=(d2xdt2,d2xdt2)


例えば、角速度 ω で原点を中心に半径 r の円運動する物体が t=0x(0)=(r,0) にあるとき、この物体の時刻 t のときの位置ベクトル x(t)x(t)=r(cosωtsinωt) である。速度ベクトルは、v=dxdt=rω(sinωtcosωt)。加速度ベクトルはa=d2xd2t=rω2(cosωtsinωt)=ω2x(t)。ここから、位置ベクトル x(t) と速度ベクトル v(t) は直行し、位置ベクトル x(t) と加速度ベクトル a(t) は逆向きであり、|v(t)|=rω|a(t)|=rω2 が成立することが分かる。

また、円運動の x 成分 または y 成分だけに注目すれば、それは単振動である。


(範囲外)

加速度をさらに時間で微分したものを躍度という。躍度が大きいと生物に不快感を与えたり機械の損傷を引き起こしたりする。そのため、機械工学の中でも特に乗り物を扱う分野では非常に重要な概念となっている。

(範囲外ここまで)


近似式

微分係数f(a)limh0f(a+h)f(a)h=f(a)なので、|h|が十分小さいとき、f(a+b)f(a)hf(a)である。すなわち、f(a+h)f(a)+f(a)hが成り立つ。これを一次近似式と呼ぶ。

また、a=0,h=xとすると、|x|が小さいときf(x)f(0)+f(0)xである。


g(x)=px2+qx+rとおき、f(a+h)g(a+h)と見做すことにより、f(a+h)f(a)+f(a)h+f(a)2h2が得られる。これを二次近似式と呼ぶ。


一次近似式と二次近似式を見比べると、n次近似式はn項目までの有限級数になることが予想できる。ここで、近似式の次数を無限に大きくしていくと、近似値ではなく真に正確な値が得られる。逆に言うと、真に正確な値を求める無限級数をある項で打ち切ることで、近似式として機能する。この無限級数については以下の「テイラー級数」を参照。


参考事項

ロルの定理

関数 f(x)[a,b] で連続、 (a,b) で微分可能とする。

f(a)=f(b) ならば f(c)=0 となる点 a<c<b が存在する。

証明

関数 f(x) には最大値または最小値が a<x<b の範囲に一つ以上存在する。最大値または最小値では関数の導関数は 0 なので、その点を選び cとすると、 f(c)=0 となる。


平均値の定理

関数 f(x)[a,b] で連続、 (a,b) で微分可能とする。このとき、 f(b)f(a)ba=f(c) となる a<c<b が存在する。

証明

g(x)=f(x)Ax とする。定数 Ag(a)=g(b) を満たすように定める。

したがって、 f(a)Aa=f(b)Ab より、 A=f(b)f(a)ba である。

ここで、関数 g(x) に対して、ロルの定理を用いることにより、 g(c)=0 となる a<c<b が存在する。g(x)=f(x)Aであるから、f(c)=A=f(b)f(a)ba となる a<c<b が存在することがいえる。


  • 問題
    • 平均値の定理を用いて以下を証明せよ。
      1. f(a)>0の時f(a)は単調増加
      2. f(a)<0の時f(a)は単調減少
      3. f(a)=0の時f(a)は一定


コーシーの平均値の定理

関数 f(x),g(x)[a,b] で連続、 (a,b) で微分可能とする。このとき、{g(b)g(a)}f(c)={f(b)f(a)}g(c) となる c(a,b) が存在する。さらに、 g(c)0,g(a)g(b) とすれば、 f(b)f(a)g(b)g(a)=f(c)g(c) となる c(a,b) が存在する。

証明

h(t)={f(b)f(a)}g(t){g(b)g(a)}f(t) とする。ここで、 h(t)[a,b] で連続、 (a,b) で微分可能、 h(a)=h(b) なので、ロルの定理より、h(c)=0 となる c(a,b) が存在する。h(c)=0 を変形して {g(b)g(a)}f(c)={f(b)f(a)}g(c) を得る。さらに、 g(c)0,g(a)g(b) ならば、 f(b)f(a)g(b)g(a)=f(c)g(c)である。

ロピタルの定理(一部発展)

w:ロピタルの定理は、関数 f(x),g(x) がある条件を満たせば、limxaf(x)g(x)=limxaf(x)g(x)が成り立つことを主張する定理である。ロピタルの定理を高校数学の範囲で証明することはできないが、ロピタルの定理に類似した定理ならば高校数学の範囲で証明することができるから、これを紹介する。便宜上、それらをロピタルの定理I、ロピタルの定理IIと名付けたが、これらはロピタルの定理ではないことに注意。

ロピタルの定理I

a を実数とする。f(x),g(x)x=a で微分可能かつ、g(a)0 ならば、f(a)=g(a)=0 のとき、

limxaf(x)g(x)=limxaf(x)f(a)xag(x)g(a)xa=limxaf(x)f(a)xalimxag(x)g(a)xa=f(a)g(a).

ロピタルの定理II

a を実数とする。f(x),g(x)x=a を含む開区間 I で微分可能かつ、I{a}g(x)0 とする。f(a)=g(a)=0 のとき、limxaf(x)g(x) が存在するなら、

limxaf(x)g(x)=limxaf(x)g(x)

証明

コーシーの平均値の定理より、実数 ha+hI を満たせば、 0<θ<1 が存在して、

f(a+h)f(a)g(a+h)g(a)=f(a+θh)g(a+θh)

となる。f(a)=g(a)=0 だから、

f(a+h)g(a+h)=f(a+θh)g(a+θh)

両辺の極限をとって、

limh0f(a+h)g(a+h)=limh0f(a+θh)g(a+θh)

となる。ここで、

limh0f(a+h)g(a+h)=limxaf(x)g(x) , limh0f(a+θh)g(a+θh)=limxaf(x)g(x)

だから、

limxaf(x)g(x)=limxaf(x)g(x)

を得る。

解説

ロピタルの定理Iでは、g(a)0 でなくてはならないが、ロピタルの定理IIでは、g(a)=0 であっても、I{a}g(x)0 であればよい。つまり、g(a)=0 で、 limxaf(x)g(x) が不定形となっても、もう一度ロピタルの定理IIを使うことができる。 limxaf(x)g(x) が存在するなら、

limxaf(x)g(x)=limxaf(x)g(x)=limxaf(x)g(x)

となる。このように、ロピタルの定理IIの仮定を満たす限り、何回でも適応することができる。

本来のロピタルの定理は極限が∞/∞となる場合も含むが、高校数学で証明できるロピタルの定理IIは0/0の不定形かつ xa が実数の場合のみ扱うことができる。

例題

limx0ex+ex2x2 を求めよ。

ロピタルの定理IIを使って、

limx0ex+ex2x2=limx0exex2x=limx0ex+ex2=1.

テイラーの定理(発展)

f(x) を区間 In 回微分可能な関数とする。任意の a,xI に対して、ξa,x の中間に存在して、

f(x)=f(a)+f(a)1!(xa)+f(a)2!(xa)2++f(n1)(a)(n1)!(xa)n1+f(n)(ξ)n!(xa)n.

証明

F(x)=f(x)[f(a)+f(a)1!(xa)+f(a)2!(xa)2++f(n1)(a)(n1)!(xa)n1] とする。F(x) と関数 (xa)n に対して、コーシーの平均値の定理を適用すると、F(a)=0 より、F(x)(xa)n=F(x)F(a)(xa)n(aa)n=F(x1)n(x1a)n1 となる x1a,x の中間に存在する。F(a)=F(a)==F(n1)(a)=0 であるから、右辺にも同様にコーシーの平均値の定理を適用することで、 F(x)(xa)n=F(x1)n(x1a)n1=F(x2)n(n1)(x2a)n2==F(n)(ξ)n! となる x1,x2,,ξa,x の中間に存在する。F(n)(x)=f(n)(x) だから、 F(x)=f(n)(ξ)n!(xa)n を得る。


ランダウの記号

関数 g(x) に対して、 limxaf(x)g(x)=0 となるような関数 f(x) を一般に og と表す。

ランダウ記号について次が成り立つ。

  1. oh+oh=oh
  2. koh=oh (k は定数)
  3. f=og,g=oh ならば、 f=oh

ランダウの記号は一般には違う関数を同じ記号で表しているので注意が必要である。例えば 1. は任意のf=oh,g=oh である関数について、limxaf+gh=0 という意味である。

2. は f=oh とすると、kfh0. 3. は fg0,gh0 ならば、fh=fggh0 となるから、f=oh.

ランダウの記号について、x がどこに近づいたときか(xa)ということは重要だが、文脈から明らかな場合は省略される。


漸近展開

テイラーの定理における右辺最後の項を剰余項といい、これを Rn と書く。f(n)(x)x=a で連続ならば、limxaRn(xa)n=limξaf(n)(ξ)n!=f(n)(a)n!.

これは、 limxaRnf(n)(a)n!(xa)n(xa)n=0 と書けるから、 Rn=f(n)(a)n!(xa)n+o(xa)n.

すなわち、

f(x)=f(a)+f(a)1!(xa)+f(a)2!(xa)2++f(n)(a)n!(xa)n+o(xa)n

漸近展開を用いると極限の問題を簡単に解くことが出来る。例えば、 limx0exexx=limx0(1+x+ox)(1x+ox)x=limx02+oxx=2.

α を実数とする。f(x)=(1+x)α について、 f(n)(0)=α(α1)(αn+1) なので、

(1+x)α=k=0n(αk)xk+oxn

ただし、(αk)=α(α1)(αk+1)k!,(α0)=1 は一般二項係数。

例えば、

1+x=1+12x+ox

11+x=112x+ox

など。これらは近似公式としてもよく使われる。


テイラー級数

テイラーの定理において、関数 f(x) が区間 I で無限回微分可能(任意の次数の導関数が存在すること)で剰余項が limnRn=0 ならば、

f(x)=n=0f(n)(a)n!(xa)n.

これをテイラー級数といい、特に a=0 のものをマクローリン級数という。

いくつかの関数のテイラー展開を求めよう。

f(x)=exとすると、f(n)(x)=ex,f(n)(0)=1 で、|Rn|=|eξn!xn|<e|x|n!|x|n より、任意の x に対して、 limnRn=0 となる。すなわち、

ex=n=01n!xn.

sinx,cosx についても同じように計算して、

sinx=n=0(1)n(2n+1)!x2n+1,cosx=n=0(1)n(2n)!x2n

を得る。

また、対数関数 f(x)=ln(x+1) のテイラー展開は、

f(0)=0,f(n)(x)=(1)n1(n1)!(x+1)n(n=1,2,)

となるから、

ln(x+1)=n=1(1)n1nxn

を得る。

オイラーの公式

指数関数のテイラー展開の式

ex=n=01n!xn

x が複素数であるときにも収束するから、これによって複素数に対する指数関数を定義することができる。

三角関数も同様に

sinx=n=0(1)n(2n+1)!x2n+1,cosx=n=0(1)n(2n)!x2n

によって、複素数に拡張できる。

このとき、

eiθ=n=0inn!θn=n=0i2n(2n)!θ2n+n=0i2n+1(2n+1)!θ2n+1=n=0(1)n(2n)!θ2n+in=0(1)n(2n+1)!θ2n+1=cosθ+isinθ

を得る。これはオイラーの公式と呼ばれる。ここで、一行目の級数を n が偶数の項と奇数の項に分割したが、これが可能なのは級数が絶対収束するからである。

特に、θ=π のときは、オイラーの等式

eiπ=1

を得る。

脚注

  1. ここで、 x は関数であることに注意せよ。