高等学校数学B/数列

提供: testwiki
ナビゲーションに移動 検索に移動

テンプレート:Pathnav ここで扱う数列は離散的な現象を扱う際に威力を発揮する。数列はいろいろなところに応用されている。例えば、単利の計算には等差数列が、複利の計算には等比数列が応用できる。

数列とは

数を一列に並べたもの数列(sequence of numbers)という。数列のそれぞれの数をという。

  • 10,9,8,7,6,5,4,3,2,1,0 (10 から 0 までの整数を大きい順に並べた数列)
  • 1,2,3,4,5,6,7,8,9,(正の整数を順に並べた数列)
  • 1,3,5,7,9,11,13,(正の奇数を順に並べた数列)
  • 1,3,9,27,81,(1から3をかけ続けた数列)

1番目から数えて、第1項、第2項、第3項のように、n 番目の項を第 n 項という。特に第1項は初項(first term)ともいう。以下、特に断りのない限り n は 1 以上の自然数とする。

n 項が an である数列を {an} と表記する。つまり、数列 {an} の第1項から数項並べると

a1,a2,a3,a4,
である。

数列 {an} において、この数列の第 nann の式で表すとき、この式を数列 {an}一般項(general term)という。たとえば、数列 1, 2, 3, 4, 5, ... の一般項は an=n である。自然数の偶数の数列 2, 4, 6, 8, 10, ... の一般項は an=2n である。

項の数が有限である数列を有限数列(finite sequence of numbers)という。有限数列の最後の項を末項(final term)といい、項の総数を項数(arity)という。末項が存在しない数列を無限数列(infinite sequence of numbers)という。数列 1, 2, 3, 4, 5, ... は無限数列である。


テンプレート:演習問題 テンプレート:演習問題


等差数列

数列 {an} において、定数 d が存在して、任意の自然数 n に対し an+1=an+d となるとき、この数列 {an}等差数列(arithmetic progression (sequence))といい、 d公差(common difference)という。

an+1=an+d を変形すると an+1an=d である。等差数列は名前の通り隣り合った項のしい数列である。

例えば、 2,5,8,11,14, は初項 2 、公差 3 の等差数列である。

初項 a1 、公差 d の等差数列 {an} について

a2=a1+d
a3=a2+d=a1+2d
a4=a3+d=a1+3d
a5=a4+d=a1+4d
a6=a5+d=a1+5d
...

なので、一般項は an=a1+(n1)d である。



初項 a1 、公差 d の等差数列 {an} の第1項から第 n 項までの和 Sn

Sn=a1+(a1+d)+(a1+2d)++(and)+an

である。 これを逆順に並び替えて

Sn=an+(and)+(an2d)++(a1+d)+a1

を得る。この2つをそれぞれ足すと 2Sn=n(a1+an) である。これより

Sn=n2(a1+an) を得る。また an=a1+(n1)d を代入して

Sn=n2(2a1+(n1)d)

である。


テンプレート:演習問題


a,b,c がこの順に隣り合った等差数列の項であるとき、 cb=ba より、 2b=a+c である。

また、2b=a+c が成り立つとき、cb=ba より、a,b,c はこの順に隣り合った等差数列の項である。

以上より、 2b=a+ca,b,c はこの順に隣り合った等差数列の項

テンプレート:演習問題

テンプレート:演習問題

等比数列

数列 {an} において、定数 r が存在して、任意の自然数 n に対し an+1=ran が成り立つとき、この数列を等比数列(geometric progression)といい、 r公比(common ratio)という。

an+1=ran を変形すると an+1an=r である。等比数列は名前の通り隣り合った項のしい数列である。

例えば、 3,6,12,24,48, は初項 3 、公比 2 の等比数列である。

初項 a1 、公比 r の等比数列 {an} の各項を並べて書くと、

a2=a1r
a3=a2r=a1r2
a4=a3r=a1r3
a5=a4r=a1r4
a6=a5r=a1r5

のようになることから、等比数列の一般項は an=a1rn1 で与えられる。


初項 a1 、公比 r (1)の等比数列 {an} の第1項から第 n 項までの和 Sn

Sn=a1+a1r+a1r2++a1rn2+a1rn1 (1)

である。両辺に r をかけて

rSn=a1r+a1r2+a1r3++a1rn1+a1rn (2)

を得る。

(2) - (1) より rSnSn=a1rna1 なので、 Sn=a1(rn1)r1 である。

また r=1 のとき第1項から第 n 項までの和 SnSn=na1 である。[1]


テンプレート:演習問題


それぞれ 0 ではない数 a,b,c がこの順に隣り合った等比数列の項であるとき、 ba=cb より b2=ac が成り立つ。

また、b2=ac ならば、ba=cb より、a,b,c がこの順に隣り合った等比数列の項である。

よって、 b2=aca,b,c がこの順に隣り合った等比数列の項

総和記号Σ

ここで、総和を効率よく表せる表記法について学ぼう。

数列 {an} に対し、この数列の第 m 項から第 n 項までの和を k=mnak で表す。つまり

k=mnak=am+am+1+am+2++an1+an

である。[2]

例えば、 k=24(k22k)=(2222)+(3223)+(4224) である。

なお、この Σ はギリシア文字のシグマの大文字である。これは、Sum(和)を意味するラテン語 Summa の頭文字 S に対応するギリシャ文字である。


{an}{bn} と実数[3] c に対し、

k=mn(ak+bk)=(am+bm)+(am+1+bm+1)++(an+bn)=(am+am+1++an)+(bm+bm+1++bn)=k=mnak+k=mnbk[4]

また、

k=mncak=cam+cam+1++can=c(am+am+1++an)=ck=mnak

である。


k=1nk,k=1nk2,k=1nk3の算出


ここで、 k=1nk=1+2++n を求めてみよう。

等差数列で習ったことを思い出せば、k=1nk は第1項が1、公差が1の等差数列の第 n 項までの和なので、 k=1nk=12n(n+1) である。

また、等比数列の和を総和記号を使って書き直せば、 k=1nark1=a(rn1)r1 である。


次に、k=1nk2 を求めてみよう。

(k+1)3k3=3k2+3k+1 である。ここで k に 1 から n までを代入したものはそれぞれ


2313=312+31+1

3323=322+32+1

4333=332+33+1

(n+1)3n3=3n2+3n+1


である。この n 式をそれぞれ足し合わせると

左辺はほとんどが打ち消し合い、 (n+1)31 となるので

(n+1)31=3k=1nk2+3k=1nk+n

である。ここで k=1nk=12n(n+1) を代入して k=1nk2 について整理すれば

k=1nk2=16n(n+1)(2n+1)

を得る。


同様に k=1nk3 を求めることが出来る。

(k+1)4k4=4k3+6k2+4k+1 であるので、 k に 1 から n までを代入してそれぞれを足し合わせれば、

(n+1)41=4k=1nk3+6k=1nk2+4k=1nk+n である。これを変形して 4k=1nk3=(n+1)41616n(n+1)(2n+1)412n(n+1)n=(n4+4n3+6n2+4n)(2n3+3n2+n)2(n2+n)n=n4+2n3+n2=n2(n2+2n+1)=n2(n+1)2

なので、 k=1nk3=14n2(n+1)2={12n(n+1)}2 である。[5]

テンプレート:演習問題

階差数列

数列 {an} に対し

bn=an+1an

で与えられる数列 {bn} を数列 {an}階差数列という。


数列 {an} の階差数列 {bn} および初項 a1 を利用して {an} の一般項を求めてみる

階差数列の定義から

b1=a2a1

b2=a3a2

b3=a4a3

bn1=anan1

である。

それぞれの式を足し合わせれば

ana1=k=1n1bk

つまり

an=a1+k=1n1bk(n2)
を得る。


テンプレート:演習問題

漸化式

数列の隣り合った項どうしの関係を表す式を漸化式(recurrence relation)という。

an=an1+1

たとえば、上の漸化式を満たす数列は公差1の等差数列である。これだけでは数列は一意的には定まらないが、さらに初項を a1=1 と与えると、自然数列

an=n

を得ることができる。ここでは漸化式が与えられたとき、それを満たす数列 an にはどのようなものがあるか、具体的に求める方法を考える。漸化式を満たす数列を求めることを、漸化式を解くという。

簡単なもう一つの例として、

a1=3
an+1=2an

のようなものがある。これは、

an+1an=2

と変形することで、公比2の等比数列であることがわかる。a1=3であることをあわせると、一般項は

an=32n1

であることがわかる。

一般に、漸化式 an+1=an+d を満たす数列 {an} は等差数列なので、一般項は an=a1+(n1)d である。

漸化式 an+1=ran を満たす数列 {an} は等比数列なので、一般項は an=a1rn1 である。

隣接二項間漸化式

隣接二項間漸化式の定義は次のとおりである。 テンプレート:Math theorem

このような隣接二項間漸化式は等差数列または等比数列に帰着できることが知られている。まず p = 1 のとき、漸化式は an+1=an+q であるから、これは等差数列である。次に、 p ≠ 1 の場合を考える。

ここで、もし an+1=pan+qan+1c=p(anc) と変形することが出来れば、数列 {anc} は等比数列であり、一般項は anc=pn1(a1c) である。よって an=pn1(a1c)+c と数列 {an} の一般項を求めることができる。

さて、問題は an+1c=p(anc) を満たす c をどのように求めるかということだが、an+1c=p(anc) を変形して an+1=panpc+c となる。これが an+1=pan+q と等しくなるので、 q=pc+c つまり、 c=pc+q となる c を求めればよい。[6]

テンプレート:演習問題

隣接三項間漸化式(発展)

隣接三項間漸化式の定義は次のとおりである。 テンプレート:Math theorem

ここでは (1) の隣接三項間漸化式を等比数列に帰着して解く方法を考える。公比 β の等比数列

bn+1=βbn

の一般項を bn=an+1αan で定義すると、

an+2αan+1=β(an+1αan)an+2αan+1=βan+1αβanan+2=(α+β)an+1αβan … (2)

(2) の等比数列を (1) と係数比較すると、次の関係が得られる。

{α+β=pαβ=q

これは二次方程式の解と係数の関係であるから、二次方程式

x2=px+q

の解 α, β を用いて、(1) の隣接三項間漸化式は (2) の等比数列の漸化式に帰着することができる。この二次方程式を隣接三項間漸化式の特性方程式という。特性方程式の2つの解は便宜上区別したもので、解の取り方によらない(以下の定理は α と β を入れ換えても成立する)。

テンプレート:定理 隣接三項間漸化式 an+2=pan+1+qanp, qn に無関係な定数)は、特性方程式 x2=px+q の解 α, β を用いて、公比 β の等比数列 an+2αan+1=β(an+1αan) に変形することができる。 テンプレート:定理終わり

隣接三項間漸化式は等比数列 an+2αan+1=β(an+1αan) に変形することにより、等比数列の一般項の公式 an+1αan=(a2αa1)βn1 を用いてただちに解くことができる。

練習問題(漸化式)
    • 問題

(i)

an+12an=5

(ii)

an+13an=7

(iii)

an+15an=4

anをそれぞれ計算せよ。 ただし、

a1=a

(aは任意の実数。) とする。さらに、一般に

an+1+ban=c

(b,cは任意の実数。)についても計算せよ。

    • 解答

(i) 特性方程式は、

a2a=5
a=5

となる。よって、この式は、

an+1+5=2(an+5)

と書き換えられる。ここで、

bn=an+5

と書き換えると、上の式は

bn+1=2bn

となり、通常の等比数列の表式となる。ここで、

b0=an+5=a+5

を用いると、

bn=(a+5)2n1

となる。ここで、

bn=an+5

を再び用いると、

an+5=(a+5)2n1
an=(a+5)2n15

が得られる。

(ii),(iii)についても同様に計算を行うと、

an=3n1(a+72)72
an=5n1(a+1)1

が得られる。

次に、より一般的な場合について計算する。

an+1+ban=c

について特性方程式を用いると、

(1+b)α=c
α=c1+b

となる。 よって、上の式は、

an+1c1+b=b(anc1+b)

となる。

a0c1+b=ac1+b

を用いると、

anc1+b=(b)n1(ac1+b)
an=(b)n1(ac1+b)+c1+b

が得られる。 実際、

b=2,c=5

の結果を代入すると、

an=2n1(a+5)5

が得られ、上の結果と一致する。

  • 問題例
    • 問題

(i)

an+1+3an=n

(ii)

an+1+3an=2n

について

an

を計算せよ。 ただし、

a1=a(aは、任意の実数。 )
    • 解答

漸化式の右辺が通常の数でないときには、それぞれ異なった手法で計算を進める必要がある。このような場合の一般的な計算は指導要領の範囲を超えるため、限られた場合について例を示すことにする。

(i)の場合については、右辺のnについて、

an+1+3an=n

nn+1とした

an+2+3an+1=n+1

を引くことで右辺が定数に等しくなることに注意する。このとき、実際に引き算した値を計算すると、

bn+1+3bn=1

が得られる。ただし、

bn=an+1an

とおいた。この式は、先ほど一般的に計算した式と等しいため、簡単に

bn

を計算できる。ただし、今回は初期値であるb1の値が求められていないので、まずはb1を計算しなくてはならない。ここで、

b1=a2a1
=(3a1+1)a1=14a

となり、b1が求められた、この値を数列bnの初項として上のbnに関する漸化式を解くと、

bn=14+(4a+34)(3)n1

が得られる。ここで、

bn=an+1an

は数列anの階差数列に等しい。よって、

an=a1+k=1n1bk

が得られる。この和を計算すると、

an=a+k=1n1(144(a316)(3)k1)
=a+n144(a316)1(3)n11(3)
=n14+316+(a316)(3)n1

が得られる。

答え、
an=n14+316+(a316)(3)n1

(ⅱ)

左辺は既に見た漸化式と同じ形であるが右辺にan(aは実数)が加わった点が異なる場合である。この場合にはまず最初に両辺をanで割るとよい。 このとき、上の式は

an+12n+32an2n1=1

となる。更にbn=an2n1の置き換えをすると、漸化式

bn+1+32bn=1

が得られるがこれは既に扱った漸化式である。この式は

bn+125=32(bn25)

となり

bn25=(b125)(32)n1

が得られる。bn=an2n1を用いると b1=a1=a が得られるので、これを用いて

bn25=(a25)(32)n1
bn=(a25)(32)n1+25

が得られるが、この式からan=2n1bnは、

an=(3)n1(a25)+152n

となる。

数学的帰納法

自然数 1, 2, 3, 4, 5, ... は無限に存在するので、任意の自然数に関しての命題を証明するとき、1つ1つの自然数を列挙していくことは不可能である。そこで、ここでは任意の自然数に関して成り立つ命題を有限の手順で証明する方法を考える。

自然数 n に関する命題 P(n) [7]が任意の自然数に関して成り立つことを証明するには、次の2つの事柄を示せばよい。

  1. 任意の自然数 k について P(k)P(k+1) である。
  2. P(1) が成り立つ。

2. の条件より n = 1 について P は真であるから、1. の条件より n + 1 = 1 + 1 = 2 についても P は真である。これより n = 2 について P は真であるから、n + 1 = 2 + 1 = 3 についても P が真であることがいえ、以下同様にすべての自然数に対して P は真であると結論できる。

このような証明法を数学的帰納法(mathematical induction)という。

数学的帰納法を用いて

k=1nk=n(n+1)2

を導出する。まずn=1のとき、

(lhs)=1

(lhsは左辺の意味。) ,そして

(rhs)=1(1+1)2=1

(rhsは右辺の意味。) となり、確かに正しいことが分かる。次にn = lのときこのことが正しいと仮定する。このとき、

k=1l+1k=k=1lk+(l+1)=l(l+1)2+(l+1)=(l+1)(l2+1)=12(l+1)(l+2)=12(l+1){(l+1)+1}

となり、n = l+1 のときにも、この式が正しいことが示された。よって数学的帰納法より、この式は1以上の全てのnについて成立する。

コラム:フィボナッチ数列

フィボナッチ数列1,1,2,3,5,8,13,21, のように、前とその前の項の和が次の項になる数列である。

フィボナッチ数列の漸化式

a1=1
a2=1
an+2=an+1+an

は隣接三項間漸化式であるが、an+2an+1an=0 よりこの特性方程式は

x2x1=0

である。これを解くと、

α=1+52黄金比 φ として知られる)
β=152

公比 β の等比数列の一般項に初項 a1=1,a2=1 を代入すると、

an+1αan=(a2αa1)βn1an+1αan=(1α)βn1an+1αan=βn

ただし α + β = 1 より 1 - α = β という関係を使った。これは α と β を入れ換えても成り立つため、次の連立方程式が得られる。

{an+1βan=αnan+1αan=βn

辺々を引いて an について解くと、

αanβan=αnβn(αβ)an=αnβnan=1αβ(αnβn)

ここで αβ=5 であるから、求める一般項は次のようになる。

an=15{(1+52)n(152)n}

これはフィボナッチ数列の一般項を求める公式(ビネの公式、Binet's formula)として知られている。

脚注

  1. Sn=a1+a11++a11n1=na1
  2. 変数 k の代わりに他の文字 il を使用して i=mnail=mnal としても意味は変わらない。なぜなら、これらはすべて、 am++an を表しているからである。慣習的にこの添字には i,j,k,n などが用いられることが多い。
  3. 複素数について既に学んでいる読者は複素数としてもよい
  4. この式変形は足し算の順序を変えただけである。
  5. これは 1 から n までの自然数の和を2乗したものになっている。
  6. この式は an+1=pan+qan+1,anc とした式になっている。
  7. つまり、 P(n) は命題 P(1),P(2),P(3), をまとめたものだとも言える。k が自然数のとき P(k) は命題なので、P(k) は真(正しい)か偽(間違い)のいずれかである。例えば、 P(n)n>2 のとき、 P(1),P(2) は偽である ( 1>22>2 はどちらも正しくない) が、3以上の自然数 m に対して P(m) は真である。

テンプレート:Wikiversity