複素解析学

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ここでは、複素解析学について解説する。

複素数

2つの実数 x,y と、虚数単位と呼ばれる i2=1 を満たす iを用いて z=x+iy と表される z を複素数と呼ぶ。すると、複素数の全体は体となる。すなわち、0で割る操作を除く加減乗除の計算を自由に行うことができる。複素数を用いると、実数だけを考えていては見えてこない豊かな世界(たとえば複素数平面など)が見えるということを、読者は既に少しは知っていることだろう。初等的な内容については高校の数学Ⅱ「複素数と方程式」、数学C「複素数平面」を参照のこと。

さて、ここでは、複素数から複素数への関数 f(z) を考えたい。ところで、f(z) は複素数値関数であるから、その値も実部と虚部にわけておいたほうが便利である。そこで、しばしば次のようにあらわすことにする。

f(z)=u(z)+iv(z)=u(x,y)+iv(x,y)

このようにあらわすことで、複素数から複素数への関数を、見かけ上は2つの2変数実数値関数の組として捉えることができる。実関数については既によく知っているので、この方が扱いやすいこともしばしばあるだろう。

複素関数の連続性

f(z)D で定義された複素変数 zの関数、 cD に属する一つの複素数とする。このとき

limzcf(z)=f(c)

ならば、関数 f(z)cで連続である、あるいは z=c で連続であるという。

極限の定義までさかのぼっていえば、任意の正の実数 ϵに対応する正の実数 δ(ϵ) が定まって、

|zc|<δ(ϵ) のとき |f(z)f(c)|<ϵ

となるようにできるならば、f(z)は、c で連続であるという。

z=x+iy=(x,y),c=a+ib=(a,b)とおき、f(z) を実部と虚部に分けて

f(z)=u(z)+iv(z),u(z)=Ref(z),v(z)=Imf(z)

と書いてu(z)=u(x+iy)=u(x,y),v(z)=v(x+iy)=v(x,y) を2つの実変数 x,yの関数と考えれば、

|f(z)f(c)|=|u(x,y)u(a,b)|2+|v(x,y)v(a,b)|2

であるから、複素関数f(z)が連続であることは、

lim(x,y)(a,b)u(x,y)=u(a,b),lim(x,y)(a,b)v(x,y)=v(a,b)

と同値である。すなわち複素変数 z の関数 f(z)cで連続であるということは、 その実部 u(x,y) と虚部 v(x,y)が2つの実変数 x,yの関数として点 (a,b) で連続であることに他ならない。

正則関数

D で定義された変数 z で "複素関数の意味で" 微分可能である条件を考えてみよう。 微分 f(z) とは、

f(z)=limh0f(x+h)f(x)h

という極限によって定義されるものである。 一次元的な実数では、実関数は正負2つの方向から近づけてみて極限が一致すれば微分可能であるといえた。 一方、二次元的な広がりを持つ複素数では、各方向から近づけたときに極限が一致する必要がある。その必要条件を見てみよう。

まず、z に対して実軸に平行に近づいたときの極限を計算してみると、

limh0f(z+h)f(z)h=limh0{u(x+h,y)+iv(x+h,y)}{u(x,y)+iv(x,y)}h=ux+ivx

である。同様にして虚軸に平行に z に近づいたときの極限を計算してみると、

limh0f(z+ih)f(z)ih=limh0{u(x,y+h)+iv(x,y+h)}{u(x,y)+iv(x,y)}ih=iuy+vy

となる。したがって、実部と虚部を比較して

{ux=vyvx=uy

を満たすことが必要であることがわかる。この連立方程式を Cauchy-Riemann の方程式と呼ぶ。この本ではしばしば C-R と略記することにする。

ここでは細かく検討しないが、複素関数の意味で微分可能であることの必要かつ十分な条件は、u(x,y),v(x,y) が実変数 x,y の全微分可能な関数であって、かつ、C-R を満たすことである。

定義(正則関数)
Ωを複素数平面内の領域とする。Ω上の複素関数であって、Ωの各点で複素関数の意味で微分可能である(すなわち各点でC-Rを満たす)ものをΩ上の正則関数と呼ぶ。□

複素解析学とは、正則関数の性質を調べていく学問である。

実変数の場合と同様に、1次結合、積、商の微分法は複素変数の関数でもそのまま成り立ち、正則関数 f(z),g(z) の一次結合、積、商も正則関数である。

ddz(a1f(z)+a2g(z))=a1f(z)+a2g(z),ddz(f(z)g(z))=f(z)g(z)+f(z)g(z),

定義領域でつねに g(z)0 であれば、

ddz(f(z)/g(z))=f(z)g(z)f(z)g(z)g(z)2,

実変数の場合と同様に、合成関数の微分法の公式が成り立つ:

ddzg(f(z))=g(f(z))f(z)

正則微分と反正則微分

z=x+iyとその複素共役z¯=xiyは複素数体上で考えると互いに独立ではない。しかし、これらをあたかも独立変数のように考えると、理論の展開に便利である。 z=x+iyおよびz¯=xiyを実2変数xyの関数とみなす。微分形式の理論(詳しくは微分幾何学参照)においてzz¯の外微分をとると、

dz=dx+idydz¯=dxidy

が得られる。これらの双対は

z=12(xiy)z¯=12(x+iy)

で与えられる。(この式はx=12(z+z¯)y=12i(zz¯)という変数変換に関する接ベクトルzz¯xyの間の変換公式としても導ける)
この事実を元に、関数fの正則微分fzならびに反正則微分fz¯を次のように定義する。

定義(正則微分と反正則微分)
関数f(z)=f(x+iy)を実変数xyの関数とみたときC1級であるとする。このとき、

fz=12(fxify)fz¯=12(fx+ify)

をそれぞれfの正則微分、反正則微分という。□


コーシー・リーマン方程式と組み合わせることにより、次の結果が得られる。

定理(正則関数と反正則微分)
Ω上のC1級関数f(z)が正則であるための必要十分条件は、fz¯=0となることである。□

(証明)
fの反正則微分が0ならば、fはC-Rを満たす。よって、仮定のC1級(すなわち全微分可能)であることと併せて、fは正則になる。
正則ならばfz¯=0となるのは明らかである。//

べき級数

定義(べき級数)

n=0an(zc)n=a0+a1(zc)+a2(zc)2++an(zc)n+

なる形の級数を c を中心 (center) とする べき級数 (power series) という。

収束半径

n=0anzn が収束すれば、limnanzn=0 であるから,すべての自然数 n に対して、 ある正の実数 M が存在して、

|anzn|M

となる。このような M に対して、

|an|1/n|z|M1/n

limnM1/n=1 であるから、

|z|lim supn|an|1/n1.

(Cauchy–Hadamard の公式)

定義 (収束半径)

r=1lim supn|an|1/n

べき級数 n=0anzn の収束半径とよぶ。

命題 (収束半径)

r=1limn|an+1/an|

(d'Alembert の公式)

べき級数の微分

定理(べき級数の微分)
べき級数 n=0anzn の収束半径を r, 0<r+, とすれば,その和 f(z)=n=0anzn は収束円の内部 Ur(0)で正則な z の関数であって,f(z) の導関数は, べき級数 n=0anznz について項別に部分することよって得られる:

f(z)=n=1nanzn1=a1+2a2z+3a3z2++nanzn1+,

複素積分

微分を考えたので、次は積分を考えよう。正則関数は、微分可能な実二変数関数の組として捉えることができた。そこで、実二変数関数における線積分の概念を、そのまま積分の定義として採用することにしよう。積分路は、とりあえず滑らかにパラメーターづけられた曲線γ:[0,1]に限っておくことにする。滑らかな曲線上の積分を定義しておけば、区分的に滑らかな曲線上の積分を考えることは容易である。

定義(線積分)
γ:[0,1]を複素平面上の滑らかな曲線、f(z)=u(z)+iv(z)とする。このとき、fのγに沿った積分を

γf(z)dz=01u(γ(t))dγdtdt+i01v(γ(t))dγdtdt

で定める。γ(t)=x(t)+iy(t)とおくとdγdt=dxdt+idydtなので、

γf(z)dz=01u(x,y)(dxdt+idydt)dt+i01v(x,y)(dxdt+idydt)dt

である。整理すると、

γf(z)dz=γ(u(x,y)dxv(x,y)dy)+iγ(v(x,y)dx+u(x,y)dy)

と表すこともできる。□

既に知っている実二変数関数の積分とまったく変わらない。ところが、正則という条件は見かけ以上に強い条件であり、正則関数の積分には驚くべき性質がいくつかある。そのうちのひとつが、次に挙げるCauchyの積分定理である。

コーシーの積分定理

上では一般の曲線について考えたが、ここから先は閉曲線、特に単純閉曲線について考える。念のためきちんと定義しておく。

定義(単純閉曲線)
曲線γ:[0,1]が単純閉曲線であるとは、γ|[0,1)が単射であって、γ(0)=γ(1)を満たすことである。□


単純閉曲線は、平面をその「内側」と「外側」の2つの領域にわける。直感的には明らかだが、証明は難しい。ここでは事実を指摘するにとどめておく。

正則関数の単純閉曲線上の積分について成り立つ重要な定理が、次の定理である。

定理(コーシーの積分定理)
f(z)を正則関数、γを単純閉曲線とするとき、

γf(z)dz=0

が成り立つ。□

(証明) 閉曲線γの「内側」の領域をDとする。グリーンの定理より

γf(z)dz=γ(u(x,y)dxv(x,y)dy)+iγ(v(x,y)dx+u(x,y)dy)=D(uyvx)dxdy+iD(vy+ux)dxdy

である。一方、C-Rより

uyvx=0, vy+ux=0

である。よって、

γf(z)dz=0

である。//

証明を見ればわかるように、「f(z)は正則関数」という仮定は、実は「f(z)は閉曲線γおよびその内部を含むようなある開集合で正則」であればよい。

コーシーの積分公式

積分定理の応用として、次の公式を証明してみよう。

定理(コーシーの積分公式) f(z)を正則関数とし、単純閉曲線γの内側にある複素数cを任意に取るとき、

γf(z)zcdz=2πif(c)

である。□

証明の前に、ある積分を直接計算しておこう。

補題 cを中心とする半径εの円周をCεとするとき、

limε0Cεf(z)zcdz=2πif(c)

(証明) zCεのときz=c+εe2πit (0t1)とパラメタ付けできるので、

Cεf(z)zcdz=01f(c+εe2πit)εe2πit2πiεe2πitdt=012πif(c+εe2πit)dt012πif(c)dt=2πif(c) (ε0)

である。//

(コーシーの積分公式の証明) γCεを適当な線分で結んだ閉曲線Γを考える。γの内部かつCεの外部がΓの内部である。この領域でf(z)zcは正則なので、コーシーの積分定理より

Γf(z)zcdz=0

である。ところで、

Γf(z)zcdz=γf(z)zcdzCεf(z)zcdz

であることに注意すると、

γf(z)zcdz=Cεf(z)zcdz

であり、ε0としてよいので、

γf(z)zcdz=2πif(c)

である。//

なお、コーシーの積分公式は、文字を取り換えた次の形で用いられることもしばしばなので、この形も記載しておく。

定理(コーシーの積分公式) f(z)を正則関数とし、単純閉曲線γの内側にある複素数zを任意に取るとき、

f(z)=12πiγf(ξ)ξzdξ

である。□

コーシーの積分公式の重要な帰結として、次の定理が得られる。

定理 (正則関数のべき級数展開可能性) f(z)を領域Ω上の正則関数とする。任意の複素数cΩに対し、rc=d(c,Ω)とする。このとき、f(z)cを中心とした半径rcの円の内部Brcにおいてテイラー展開可能である。すなわち、zBrcにおいて

f(z)=n=0an(zc)n

が成立する。ここで、ancを内側に含むようなΩ内の任意の単純閉曲線γに対し

an=12πiγf(ξ)(ξc)n+1dξ

と表せる。□

(証明) コーシーの積分公式により、zBrcに対して、

f(z)=12πiCrcf(ξ)ξzdξ

が成立する。このとき、|ξc|>|zc|であれば、

1ξz=1ξc(zc)=1(ξc)(1zcξc)=n=0(zc)n(ξc)n+1

が成立し、しかも最後の無限和は広義一様収束する。zBrc,ξCrcであればこの条件は満たされ、したがって

f(z)=12πiCrcf(ξ)ξzdξ=12πiCrcn=0f(ξ)(zc)n(ξc)n+1dξ=n=012πiCrcf(ξ)(ξc)n+1dξ(zc)n

となる。ここで、f(ξ)(ξc)n+1γの内側かつCrcの外側の領域において正則であり、したがってCrcf(ξ)(ξc)n+1dξ=γf(ξ)(ξc)n+1dξ が成り立つ。以上により

f(z)=n=0an(zc)n,an=12πiγf(ξ)(ξc)n+1dξ

が得られる //

初期の複素関数論においては、局所的にべき級数展開可能な関数のことを解析関数と呼び、正則関数とは区別していた。べき級数はその収束円内において無限回微分可能であるため、当然正則関数になる。上の定理はその逆が成立することを示している。すなわち正則関数と解析関数が同値な概念であることが上の定理によって示されたことになる。

上で示したべき級数展開の系として、コーシーの積分公式を微分した式が正当化される。

f(n)(z)=n!2πiγf(ξ)(ξz)n+1dξ

(証明) べき級数展開

f(z)=k=0ak(zc)k

の両辺をn回微分すると、

f(n)(z)=k=0k+nPnak+n(zc)k

である。両辺にz=cを代入するとk=0の項だけが残って、

f(n)(c)=n!an

となる。anに定理で示された式を当てはめ、文字を取り換えることで系を得る。//

リウヴィルの定理

複素関数としての正則関数と解析関数は同値な概念であることがわかったが、この概念は実関数の解析性とは大きく異なる概念である。そのことを示す一例として、実解析関数では成り立たない、実関数しか知らない人にとっては不思議にすら感じる定理をひとつ紹介する。

定理(リウヴィルの定理) 複素数全体で有界な正則関数f(z)は定数である。

実関数としてみれば、たとえば分数関数1x2+1も三角関数sinxも実数全体で有界な実解析関数であり、このような定理は成り立ちそうにないように思える。しかし、複素関数としてみれば確かに1z2+1z=±iで正則ではないし、sinzzを虚軸上にとりz=itとするとsinz=isinhtであり双曲線関数sinhtは有界ではないのである。

(定理の証明) 有界の仮定より、任意のξに対して|f(ξ)|Mとしてよい。前節最後の系でn=1とすると

f(z)=12πiγf(ξ)(ξz)2dξ

が成り立つ。ここで、γを中心がzで半径Rの円周とすると、

|f(z)|=12π|γf(ξ)(ξz)2dξ|12π2πRMR2=MR

である。ところで、f(z)は複素数全体で正則なので、Rはいくらでも大きくとることができる。よって、任意の複素数zに対してf(z)=0であるから、f(z)は定数である。//

この定理を用いると、代数学の基本定理を簡単に証明することができる。

定理(代数学の基本定理) 複素数係数の多項式P(z)は、定数でなければ必ず複素数の根を持つ。

(証明) P(z)が根を持たないと仮定すると1P(z)は複素数全体で有界な正則関数であるから、リウヴィルの定理より定数である。これはP(z)が定数であることを表す。//

留数定理

f(z)z=cにおいて「無限大に発散」してしまっていて、この点において正則でない場合を考えよう。このとき、cを囲む単純閉曲線C上の積分Cf(z)dzを考えたい。このような関数にも様々な関数が考えられるが、特殊な状況としてたとえばf(z)=1zcのように、f(z)は正則ではないがg(z)=(zc)f(z)は正則という状況はあるかもしれない(この状況を、cf(z)の1位の極であるという)。このとき、g(z)にはコーシーの積分公式を用いることができるので、

Cf(z)dz=Cg(z)zcdz=2πig(c)

である。この結果は、留数定理と呼ばれる定理(の特別な場合)である。この場合のg(c)f(z)cにおける留数と呼ばれ、Resz=cf(z)のように書かれる。

単純閉曲線の内部に1位の極が複数ある場合は、それぞれ1つだけを含むような小さな単純閉曲線と適当に接続して閉曲線を作ることで、定積分の値は留数の和になることが分かる。すなわち、次のことが分かった。

定理(留数定理(の特別な場合)) 単純閉曲線Cの内部でf(z)が正則でない点がn個であり、それぞれの点ckの近くにおいてgk(z)=(zck)f(z)が正則になるとき、Resz=ckf(z)=gk(ck)を留数と呼ぶ。このとき、

Cf(z)dz=2πik=1nResz=ckf(z)

である。

この定理は実関数の具体的な定積分の計算にもしばしば役立つ。以下でそのような例を見る。

例1

I1=π2π2dx1+3sin2x

を考える。

I1=π2π22dx53cos2x

である。z=e2ixとするとdz2iz=dxであり、cos2x=12(z+1z)であることに注意すると、

I1=|z|=12idz3z210z+3=|z|=12idz(3z1)(z3)

である。単位円|z|=1の内側にあるf(z)=2i(3z1)(z3)の1位の極はz=13のみで、その留数は2i19=i4である。よって、

I1=2πi(i4)=π2

である。

以下の2つの例では、実軸上の閉区間I=[R,R]と半円C={Reiθ|0θπ}をつなげた閉曲線Γ=ICを考える。Rとして十分大きい数を取れば、積分したい関数f(z)の1位の極のうち、上半平面H={z|Imz>0}に含まれるものはすべてΓの内側に入るようにできる。そのようにΓを十分大きくとったとき、もしlimRCf(z)dz=0であれば、f(z)dz=Γf(z)dzである。以上のことを用いて、留数計算によってf(z)dzを計算してみよう。

例2

I2=x2+3x+4x4+5x2+4dx

を考える。

f(z)=z2+3z+4z4+5z2+4=z2+3z+4(z+i)(zi)(z+2i)(z2i)

の上半平面内の1位の極はz=i,2iで、その留数はそれぞれi2+3i+42i3i(i)=1i24i2+6i+43ii4i=12である。さらに、Rを十分大きくしたときzCならば

|f(z)|k|R2R4|=kR2

であることに注意すると、

|Cf(z)dz|0πkR2Rdθ=kπR0 (R)

である。よって、

I2=2πi(1i212)=π

である。

例3

f(z)=eizz2+1

を考える。上半平面においては|eiz|=eImz<1であることに注意すると、

|Cf(z)dz|0π1R21Rdθ=RπR210 (R)

である。また、

If(z)dz=cosxx2+1dx+isinxx2+1dx

であるが、sinxx2+1は奇関数なので、

If(z)dz=cosxx2+1dx

である。f(z)の上半平面内の1位の極はz=iで、その留数はe12i=i2eである。以上から、

I3=cosxx2+1dx=2πii2e=πe

であることがわかった。

(参考) 複素解析を使わず計算するならば、例1のI1

I1=π2π2dxcos2x+4sin2x=π2π2dxcos2x(1+4tan2x)

として、t=tanxとおくとdt=dxcos2xであることから

I1=dt1+4t2=[12arctan(2t)]=π2

と計算できる。また例2のI2

I2=(x+1x2+1xx2+4)dx=[arctanx+12logx2+1x2+4]=π

と計算できる。しかし例3で計算した積分I3の値をこのような計算技巧で得ることは難しいように思われる。