線型代数学/行列と行列式/第三類/直線・平面

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まず,ベクトルによって平面上の直線を表す方法を確認する.


定義3 直線の方程式(パラメータ表示)

平面上の点 A(a) を通り,u に平行な直線を l とする. この l 上の点を P とし,OP=x とする. すると AP=tu を満たす実数 t があって,

x=a+tu

(OP=OA+AP)

と表される.

これを直線 lベクトル方程式という.


t は媒介変数,または パラメータ と呼ばれる.

これは平面上の直線を表しているが,空間内の直線を表す場合でも同じ要領であらわすことができる. 上で「平面上の」を「空間内の」に読み替えれば済むからである.


演習2.

座標平面上の点 A(4,5) を通り,u=(1,3) に平行な直線 l を、 ax+by+c=0 の形で表せ.


解答例1

l 上の点 P について,ある実数 t があって,

OP=OA+AP=(45)+t(13)=(t33t+5)

P の座標を (x,y) とすれば, x=t4,y=3t+5. これから t を消去する.3x+y を考えると t が消えることが容易に予想されるので,このまま 3x+y を計算すると,

3x+y=3(t4)+(3t+5)
=3t12+3t+5
=7

すなわち

3x+y+7=0


解答例2

パラメータ t を用いない方法を示す. 問題の直線 lu=(13) に平行であったが,これに垂直なベクトル h=(31) (成分を逆さにして片方にマイナスをつけた.すると uh=0[1].) を用いれば次のように表現できる.

lA(a) を通り h に垂直だから,この l 上に P をとり, OP=x とすると,Pl 上にある.

APh

(xa)h=0 …①

P の座標を (x,y) とすれば,x=(xy),a=(45),h=(31) なので,①より

{(xy)(45)}(31)=0

(x+4y5)(31)=0

3(x+4)+y5=0

3x+y+7=0

となり,同じ直線の式が得られた.


①のように、平面上の直線をベクトルで表す方法にはパラメータを用いない方法もある.


定義4 直線の方程式(ax+by+c=0

平面上の点 A(a) を通り,h に垂直な直線を l とする. この l 上に点 P をとり,OP=x とすると, x

(xa)h=0

を満たす.P の座標を (x,y) として成分を計算すると.

ax+by+c=0

の形をしている.


次に,問題を解きながら空間内の平面の表し方を解説してゆく.


演習3.

座標空間の点 A(0,2,1) を通り, (121)(213) に平行な平面を π とする. π 上の点 P について, OP をパラメータ s,t を用いて表せ. また,P の座標を (x,y,z) をするとき, x,y,z が満たす等式を求めよ.


解答


u=(121),v=(213) とおく.APπ に含まれるベクトルだから,ある実数 s,t を用いて AP=su+tv と表すことができる[2]

OP=OA+AP

=OA+su+tv
=(021)+s(121)+t(213)

すなわち P(x,y,z) として

{x=s+2ty=22stz=1+s+3t

これらからパラメータ s,t を消去する.

x+2y=s+2t+2(22st)=3s+4
s=4x2y3
2x+y=s(s+2t)+22st=3t+2
t=2x+y23
これを z=1+s+3t に代入して
z=1+4x2y3+32x+y23
3z=3+4x2y+3(2x+y2)
5x+y3z=1


次に π に垂直なベクトル(法線ベクトルという)を用いて,関係式を求める.

π に垂直なベクトル hu,v のそれぞれに垂直だから,hu×v に平行である[3]. だから,

h=u×v=(121)×(213)=(513) とおくことができる.

OP=x,OA=a とする.すると,

Pπ 上にある
APh
(xa)h=0

P の座標を (x,y,z) とすれば, x=(xyz),a=(021)

(x0y2z1)(513)=5x(y2)+3(z1)=0

5x+y3z=1

これが平面 π の方程式である.平面の方程式の係数 (5,1,3) を並べると平面の法線ベクトルになっている.


一般の形でまとめておく.


定義5 平面の方程式(パラメータ表示)

空間内の点 A(a) を通り,u,v に平行な平面を π とする. この π 上の点を P とし,OP=x とすると, AP=su+tu を満たす実数 s,t があって, x は,

x=a+su+tv(OP=OA+AP)

と表される.


定義6 平面の方程式(ax+by+cz+d=0

空間上の点 A(a) を通り,h に垂直な平面を π とする. この π 上に点 P をとり,OP=x とする. x は,

(xa)h=0(APh)

を満たす.P の座標を (x,y,z) として,成分を計算すると

ax+by+cz+d=0

の形になり,ベクトル (a,b,c)h に平行である.



  1. ベクトル a=(xy) に対してベクトル b を,b=(yx) とすると ab=(xy)(yx)=xy+y(x)=0. あるいは b=(yx) としても ab=(xy)(yx)=x(y)+yx=0で同様となる.
  2. ただし u,v が線形独立である必要がある.ここでは u,v の向きは平行ではなく,これを満たす
  3. 定理5 (1) a×b は, ab の両方と直交する.