特殊相対論

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テンプレート:Pathnav 本項は特殊相対論の解説である。特殊相対論は電磁気学、相対論的量子論、場の量子論、一般相対論など広範な物理学の基礎となる理論である。

原理

光速度不変の原理 
真空中の光の速度はどの慣性系から見ても一定である。
特殊相対性原理 
どの慣性系でも物理法則は同じ形式で表される。

光速度不変の原理のいう慣性系とは、ニュートン力学における慣性系である。光速度不変の原理を支持する実験的証拠は、マイケルソン・モーリーの実験にある。特殊相対性原理は、ガリレイの相対性原理の拡張である。

世界間隔

世界点 t1,x1,y1,z1 で発された光が、世界点 t2,x2,y2,z2 に光が到達したする。このとき、世界間隔を

s122=c2(t2t1)2(x2x1)2(y2y1)2(z2z1)2

と定義すると、c2(t2t1)2(x2x1)2+(y2y1)2+(z2z1)2 はどちらも光の移動距離の二乗であるから、 s122=0 となる。また、この現象を別の慣性系で観測してみよう。t1,x1,y1,z1 に対応する座標を t'1,x'1,y'1,z'1 とし、t2,x2,y2,z2 に対応する座標を t'2,x'2,y'2,z'2 とする。このとき、この慣性系における世界間隔は、

s122=c2(t'2t'1)2(x'2x'1)2(y'2y'1)2(z'2z'1)2

となり、やはり光速度不変の原理より、s122=0 となる。

すなわち、一般に s122=c2(t2t1)2(x2x1)2(y2y1)2(z2z1)2 という量はある慣性系でs122=0ならば、他の慣性系でもs122=0となる。それでは、世界間隔が0でないとき他の慣性系での世界間隔はどうなるだろうか。無限小だけ離れた世界点 t,x,y,zt+dt,x+dx,y+dy,z+dz の間の世界間隔

ds2=c2dt2dx2dy2dz2

は、もちろん ds2=0 なら他の慣性系でも ds'2=0 となる。さらにこれらは同次の微小量だから、これらは比例の関係

ds2=ads'2

にある。a は時間と空間の一様性により、時間と座標に依存することができない。また、空間の等方性より、2つの慣性系の相対速度の方向にも依存しない。よって、aは慣性系の相対速度の大きさのみに依存する。

慣性系 K,K1,K2において、系 K から見た系 K1,K2 の相対速度の大きさを V1,V2 とし、系 K1 から見た系 K2 の相対速度の大きさを V12 とすると、

ds2=a(V1)ds12
ds2=a(V2)ds22
ds12=a(V12)ds22

ここで、第一式と第二式より、

ds12=a(V2)a(V1)ds22

であるから、

a(V2)a(V1)=a(V12)

右辺の V12V1,V2 のなす角に依存するけれど、左辺は V1,V2 のみに依存してその角に依存しない。よってa(V12)V12 にはよらない定数である。それを a とすると、a=1 である。よって、

ds2=ds'2

である。これを積分して

s2=s'2

を得る。すなわち、世界間隔は慣性系によらない量である。

ある点を選んで、これを原点 O とする。原点から時空のいろいろな点の間の世界間隔 s2 を考えることができる。



光円錐の内部にある点はs2>0 である。l を原点からのユークリッド距離とする。このとき、s2=c2t2l2>0であるから、t=0 すなわち原点と同じ時刻にあるような慣性系は存在しない。よって、光円錐の内部は原点と時間的な隔離にあるということが出来る。未来光円錐の内部を絶対的未来、過去光円錐の内部を絶対的過去という。

光円錐の外部は s2<0 である。同じように、s2=c2t2l2<0であるから、l2=0 すなわち原点と同じ座標にある慣性系は存在しない。よって、光円錐の外部は原点と空間的な隔離にあり、因果を持つ事が出来ない。

ローレンツ変換

慣性系 K の座標を ct,x、 慣性系 K の座標を ct,x とする。KK に対して速度 V の一様な並進運動をしているとき、2つの慣性系の間の対応を求めよう。また、t=0 で2つの慣性系の原点は一致していて、x,x 軸は同じ方向とする。

まず、ct,xct,x に関する一次関数でなくてはならない。なぜなら、二次以上の項が含まれていると、世界間隔が任意の慣性系で不変であるという条件 c2dt'2dx'2=c2dt2dx2 が満たされないからである。さらに、t=0 で2つの慣性系の原点は一致するという条件から、定数項は0となる。結局、 ct,xct,x の一次の同次式ということになる。

また、K 系で静止している物体(x=const.)を K 系で観察すると、 x=Vt+const. すなわち、xxVt に比例して、その比例係数を γ とすると、 x=γ(xVt) と表される。ct=γ(act+bx) と置くと、

cdt=γ(acdt+bdx),dx=γ(Vdt+dx).

世界間隔が慣性系で不変であるから、

c2dt'2dx'2=γ2{(acdt+bdx)2(Vdt+dx)2}=γ2{(a2c2V2)dt2+(b21)dx2+2(abc+V)dtdx}=c2dt2dx2

すなわち、

{γ2(a2c2V2)=c2γ2(b21)=1abc+V=0

第三式を第二式に代入して、 γ2(a2V2c2)=a2. これを第一式と比較して a=1. 第三式より b=Vc. 第二式より γ=11V2c2.ここで、γ,a は正に選ばなくてはいけない。γ が負であるとすれば x=γ(xVt) から xx が逆向きとなってしまう。それは慣性系 K,K の設定と異なる。a も同じ理由である。

β=Vc とすると、ローレンツ変換は

(ctx)=γ(1ββ1)(ctx)

と書かれる。

ローレンツ変換の図示

ローレンツ変換をまた別の方法で求めよう。ローレンツ変換を原点からの世界間隔 s2=(ct)2x2 が変化しないミンコフスキー空間の回転として表してみる。s2 を正として t>0 の部分は、 ct=scoshθ,x=ssinhθ と表すことが出来る。この点を回転角 ψ だけ回転させた点 ct,x は、

ct=scosh(θψ)=scoshθcoshψssinhθsinhψ=ctcoshψxsinhψ
x=ssinh(θψ)=ssinhθcoshψscoshθsinhψ=xcoshψctsinhψ

という変換になる。

行列で表すと、(ctx)=(coshψsinhψsinhψcoshψ)(ctx) である。前述の議論より、ローレンツ変換は線型変換だから、この変換が時空間全体に適用されると考えるべきである。実際に、s2 が正で t<0 の部分については、θθ+ψ として上の変換を得る。s2 が負で x>0 の部分には、 θθψx<0 の部分には、 θθ+ψ と変換すれば良い。K系での原点 x=0K 系では、ct=ctcoshψ,x=ctsinhψ である。二式を割って、tanhψ=xct=Vc. ここで、xtK での K の原点の速度に等しいから V である。双曲線関数の公式 1tanh2ψ=1cosh2ψから、coshψ=11V2c2,sinhψ=tanhψcoshψ=Vc1V2c2 となる。 この結果は前述の結果と一致する。また、ψ はラピディティと呼ばれる。

速度の合成則

慣性系 K に対し、系 K は速度 V1 の一様な並進運動を行っている。また、系 KK に対して、速度 V2 の一様な並進運動を行っている。このとき、 KK から見てどのような運動を行っているだろうか?

tanhθ1=V1c,tanhθ2=V2c としてラピディティを導入すると、

(ctx)=(coshθ2sinhθ2sinhθ2coshθ2)(ctx)=(coshθ2sinhθ2sinhθ2coshθ2)(coshθ1sinhθ1sinhθ1coshθ1)(ctx)=(cosh(θ1+θ2)sinh(θ1+θ2)sinh(θ1+θ2)cosh(θ1+θ2))(ctx).

すなわち、KK に対して、ラピディティ θ=θ1+θ2 のローレンツ変換である。ニュートン力学では速度の合成は速度の和であったが、特殊相対論では速度の合成はラピディティの足し算であるということである。K から見た K の速度 Vc=tanhθV1,V2 で表すと、双曲線関数の加法定理 tanh(θ1+θ2)=tanhθ1+tanhθ21+tanhθ1tanhθ2 より、Vc=V1c+V2c1+V1V2c2 である。この式は速度が光速度よりも十分小さいとする極限ではニュートン力学における通常の速度の合成に帰着する。実際、 V=V1+V21+V1V2c2 から、c とすると、V=V1+V2 を得る。ラピディティを経由せずに速度の合成則を求めることも可能である。詳しくは速度の合成則を参照すること。

テンソル

x0=ct,x1=x,x2=y,x3=z とする。

ここでは、アインシュタインの規約を採用する。すなわち、項の中に上下に同じギリシャ文字の添字があるときは0から3までの和を取るものとする。例えば、

AμAμ=A0A0+A1A1+A2A2+A3A3

あるいは、

ημνdxμdxν=η00dx0dx0+η01dx0dx1+η02dx0dx2++η10dx1dx0++η20dx2dx0+

この式には、 4×4=16 通りの項が現れる。

また、ラテン文字の添字のときは、 1から3までの和を取る。

ローレンツ変換

微小世界間隔が

ds2=c2dt2dx2dy2dz2=ημνdxμdxν

となるように、 計量テンソル ημν を定める。

すなわち、ημν=(1000010000100001)=diag(1,1,1,1) である。

また、 ημν の逆行列を ημν=diag(1,1,1,1) とする。

ローレンツ変換は線形変換であるから、行列 Λμν を使って、

x'μ=Λμνxν

と書ける。この変換がローレンツ変換であるためには、世界間隔を不変に保つこと、すなわち、

ds'2=ημνdx'μdx'ν=ds2=ημνdxμdxν

でなくてはならない。

ημνdx'μdx'ν=ημνΛμλdxλΛμσdxσ

であるから、

ημνΛμλΛμσ=ηλσ

がローレンツ変換である条件である。

行列 Λμν の逆行列を Λμν とすると、

Λμν=ημαΛαβηβν

で与えられる。

四元ベクトル

ローレンツ変換によって、座標の変換

x'μ=Λμνxν

と同じ変換をする四成分 Aμ を反変ベクトルという。

すなわち反変ベクトルは

A'μ=ΛμνAν

と変換する。

また、共変ベクトル Aμ

A0=A0,A1=A1,A2=A2,A3=A3

あるいは、Aμ=ημνAν によって定義する。

AμAμ=(A0)2(A1)2(A2)2(A3)2

によってベクトルの大きさの二乗を定義する。

共変ベクトルの変換は

A'μ=ημνA'ν=ημνΛνλAλ=ημνΛνληλσAσ=ΛμσAσ

となる。

テンソル

ローレンツ変換によって、反変ベクトルあるいは共変ベクトルの n 個の積のように変換するものをn 階テンソルという。四元ベクトルは1階テンソルである。スカラーは0階テンソルである。例えば二階テンソル Tμν

T'μν=ΛμαΛνβTαβ

と変換する。

x'μ=xνx'μxν=Λμνxν

である(ここで、xμ は下付き添字として扱う)から、微分は共変ベクトルと同じように変換する。よって、ベクトル(あるいはテンソル)の微分

Aμxν=Aμ,ν

は二階テンソルになる。そこで、微分はカンマで表して、テンソル添字として扱うことにする。

基底

D を多様体の次元とする。i,j,μ,ν 等は1,2,,D を動くものとする。

ベクトル解析では基底は、ei=𝒓xi|𝒓xi| と定義していた。ここで、|𝒓xi| で割っているのは、規格化のためで、必須ではない。そこで、基底として 𝒓xi を取ることが出来るだろう。さらによく考えてみると、基底として xi を取っても問題ないだろう。これはもはやベクトルではなくて微分作用素だ。これからは微分作用素のことをベクトルとして扱うことになる。これを、i=xi と略記する。

さて、基底μによって張られるA=Aμμ を反変ベクトルという。基底はμ=x'νxμ'ν と変換する。反変ベクトルを別の座標系で表すと、A=A'μ'μとなる。2つの基底の間の成分の関係は、

A=Aμμ=Aμx'νxμ'ν=A'ν'ν

より、A'μ=x'μxνAν と変換することが分かる。これは前に述べた反変ベクトルの変換則である。実際、座標変換がローレンツ変換のときは、A'μ=ΛμνAνとなる。


双対空間の基底として、dxi(j)=δij を定義すると、

dxi(A)=Ai,dx'i(A)=A'i となる。また、
dx'i(A)=A'i=x'ixjAj=x'ixjdxj(A)

であるから、

dx'i=x'ixjdxj

との変換則を得る。

dxi によって張られた、B=Bidxi を共変ベクトルという。共変ベクトルという名前は、 Bi が基底μと同じように変換するから名付けられた。また、反変ベクトルという名前は基底μと反対の変換をするからである。

μdxiをいつくか組み合わせて、 μ1μrdxν1dxνs という量を作って、これによって張られるものをテンソルという。すなわち、テンソルは T=Tμ1μrν1νsμ1μrdxν1dxνs と書かれる。

自由粒子の作用

特殊相対論的な自由粒子の作用 Smat を求めよう。特殊相対性原理より、それは慣性系の選択に依存しない量でなくてはいけない。すなわち、ローレンツ変換に対して不変でなくてはならない。世界間隔 ds2 はローレンツ変換に対して不変な量であるから、これを使って、

Smat=mcabds

のように書けるだろう。ここで、 m は粒子に固有の定数で、後にこれが質量であることを示す。

Smat=mc2tatb1v2c2dt

であるから、対応するラグランジアンは

Lmat=mc21v2c2

である。ところで、ニュートン力学は特殊相対論の vc とした極限の場合と考えられるので、 Lmatvc の条件でニュートン力学の自由粒子のラグランジアンに一致するべきである。実際、

Lmatmc2(112v2c2)=mc2+12mv2

となる。第一項の定数項は無視して、ニュートン力学のラグランジアンに一致することが確かめられた。ここにきて、定数 m が粒子の質量であることも確定する。

運動量 𝒑Lmat𝒗 であり、エネルギー EE=𝒑𝒗Lmat と定義される。この式に従って計算すると、

𝒑=Lmat𝒗=mc2v2𝒗ddv21v2c2=mc2(2𝒗)(121c211v2c2)=m𝒗1v2c2
E=𝒑𝒗Lmat=mv21v2c2+mc21v2c2=mc21v2c2

となる。エネルギー E は粒子の速度が0の場合でも0にならず、E=mc2 が残る。これを静止エネルギーという。

4元運動量

4元運動量 pμ

pμ=mdxμdτ

として定義しよう。dτ=1v2c2dt であることを考えると、 pμ=m1v2c2dxμdt であるから、時間成分と空間成分を分けて書くと

pμ=(mc1v2c2,m𝒗1v2c2)=(Ec,𝒑).

ここで、 dxμdxμ=c2dτ2 の両辺を dτ2 で割って m2 を掛けると pμpμ=m2c2が得られる。この式に4元運動量の成分を代入すると

E2=m2c4+𝒑2c2

を得る。

同じように、4元速度 uμ を定義することが出来る。

uμ=dxμdτ=(c1v2c2,𝒗1v2c2).

また、uμuμ=c2.

電磁気学

粒子の作用はローレンツ不変な形式でなくてはならない。すなわち、作用は粒子の世界線に沿ったスカラー P の積分と4元ベクトル Qμ の線積分の和

S=abPds+abQμdxμ

の形に限られるだろう。自由粒子については P=mc,Qμ=0 なのであった。

電磁場と相互作用する粒子の作用 Sint は、P=0Qμ=qAμ とした

Sint=qabAμdxμ

である。4元ベクトル Aμ は電磁場(あるいは4元ポテンシャル、電磁ポテンシャル)と呼ばれ、 q は電荷と呼ばれる量である。電磁場 Aμ の成分は、Aμ=(ϕc,𝑨) であり、ϕ はスカラーポテンシャル、𝑨 はベクトルポテンシャルと呼ばれる。

作用の時間成分と空間成分を分けて書くと

Sint=qab(ϕdt+𝑨𝒅r)=qab(ϕ+𝑨𝒗)dt.

自由粒子の作用と合わせると、

Smat+Sint=tatb(mc21v2c2qϕ+q𝑨𝒗)dt

となる。この被積分関数が電磁場中の粒子のラグランジアン L である。

電磁場中の運動方程式を求めるためには、オイラーラグランジュ方程式

ddtL𝒗=L𝒓

を求めれば良い。

L𝒗=m𝒗1v2c2+q𝑨=𝒑+q𝑨
L𝒓=q(𝑨𝒗)qϕ=q(𝒗)𝑨+q𝒗×(×𝑨)qϕ

また、d𝑨dt=𝑨t+i=1,2,3dxidt𝑨xi=𝑨t+(𝒗)𝑨 である。

最終的に、オイラーラグランジュ方程式は

d𝒑dt=qϕq𝑨t+q𝒗×(×𝑨)

となる。これが粒子の運動方程式である。第一項と第二項の電荷当たりにかかる力を電場 𝑬 といい、第三項の速度に直交する部分を磁場 𝑩 という。

𝑬=ϕ𝑨t
𝑩=×𝑨

また、運動方程式は d𝒑dt=q(𝑬+𝒗×𝑩) となり右辺はローレンツ力と呼ばれる。

電場と磁場の定義より

×𝑬=×ϕt×𝑨=𝑩t
𝑩=×𝑨=0

である。これでマクスウェルの方程式のうち二式を得る。


ここで、もう一度粒子の運動方程式を求めることにしよう。今度は4元形式を崩さない形で求める。

粒子の作用は

Smat=mcabds
Sint=qabAμdxμ=qabAμdxμdτdτ

である。作用の変分は、

δSmat=mcδabdxμdxμ=mcabδ(dxμ)dxμ+dxμδ(dxμ)2dxμdxμ=mcab2dxμδ(dxμ)2cdτ=mabdxμdτd(δxμ)=mabuμd(δxμ)dτdτ=muμδxμ|ab+mabduμdτδxμdτ=mabduμdτδxμdτ

であり、

δSint=qδabAμdxμdτdτ=qabAμ,νδxνdxμdτdτqabAμdδxμdτdτ=qabAμ,νδxνdxμdτdτqAμδxμ|ab+qabdAνdτδxνdτ=qab(Aμ,νAν,μ)uμδxνdτ

である。電磁場の強度 FμνFμν=Aν,μAμ,ν と定義すると、

δSint=qabFμνuνδxμdτ

となる。δ(Smat+Sint)=0 より、運動方程式

mduμdτ=qFμνuν

を得る。

Fμνは反対称 Fμν=Fνμ であるから、対角成分 Fμμ は0。つまり電磁場テンソルの上半分の6成分を調べれば残りは分かる。

電磁場の強度 Fμν の成分は

F01=1cAxt1cϕx=Exc
F12=Ayx+Axy=Bz

等により、

Fμν=(0ExcEycEzcExc0BzByEycBz0BxEzcByBx0)
Fμν=(0ExcEycEzcExc0BzByEycBz0BxEzcByBx0)

を得る。ちなみに、Fij=εijkBk である。実際、εijkBk=εijk(εklmlAm)=Aj,iAi,j. ただし、Ai に負号がついていることに注意。

mduμdτ=qFμνuν

τt に変換してローレンツ因子の分を除すると、

dpμdt=qFμνdxνdt

を得る。μ=1,2,3 については、ローレンツ力の式 d𝒑dt=q(𝑬+𝒗×𝑩) となる。

μ=0 について計算すると、 を得る。ここで、 は粒子の相対論的エネルギーである。これは電磁場が粒子に対してする仕事である。磁場は粒子に対して仕事をしないことがわかる。

電磁場の作用

電磁場の作用を求めるにあたって、まずは電磁場と相互作用する粒子の作用 Sint に少しの変更を加えよう。これはある粒子の経路について変分をとるから、一つの粒子に対する作用であったが、電磁場の作用を求めるために、これを存在するすべての粒子に対する和に変更しなくてはいけない。作用は、

Sint=iqiabAμdxμとなる。ここで、i は存在する全ての粒子のラベルである。積分はそれぞれの粒子の世界線に沿った経路ものになる。電荷密度 ρ をディラックのデルタ関数を使って
ρ=iqiδ(𝒓𝒓i)

と定義する。𝒓ii 番目の電荷の位置ベクトルである。さらに、4元電流密度 jμ

jμ=ρdxμdt=(cρ,ρ𝒗)=(cρ,𝒋)

と定義する。ここで、4元電流密度は ρdxμdτ ではない。 ρ がスカラーではないからこの量が4元ベクトルとはならためである。電荷密度 ρ がスカラーではないことはローレンツ収縮が起こるためである。ある微小領域 dV に存在する電荷はローレンツ不変だが、微小領域の体積 dV はローレンツ収縮によって変化しうる。これに伴って電荷密度 ρ も変化するためローレンツ不変ではない。微小領域に存在する電荷は dq=ρdV でこの量はローレンツ不変である。両辺に dxμ を掛けて、

dqdxμ=ρdVdxμ=ρdVdtdxμdt.

ここで、dVdt はスカラーである。なぜなら、ローレンツ変換によって、dV=dV1V2c2 (ローレンツ収縮)、dt=dt1V2c2 との変換を受けるからである。あるいは、ローレンツ変換の行列の行列式が1である事からも分かる。dqdxμ は4元ベクトルだから、ρdxμdt は4元ベクトルである。

4元電流密度を使うと、作用は、

Sint=iqiabAμdxμ=abiqiAμdxμdtdt=abAμjμdVdt

となる。

次に、電磁場自身の作用 Sem をもとめよう。電磁場の作用はゲージ変換について不変であるべきだ。すなわち、作用はゲージ不変な Fμν によって作られなくてはいけない。もし Aμ が顕に含まれているとゲージ不変ではなくなる。さらに、電磁場は経験的に重ね合わせの原理を満たすことが分かっている。すなわち、第一の粒子がある場をつくり、また第二の粒子が場をつくるならば、この2つの粒子によって作られる場は粒子の作る場の単純な足し合わせであるということである。この原理を満たすためには、変分によって導かれる運動方程式は Fμν の一次の式であればよい。変分によって得られる式の次数はラグランジアンの次数から1を引いたものであるから、ラグランジアンは Fμν に対する二次の式である。これらの条件を満たす量は FμνFμν のみである。比例定数を適当に選ぶと、電磁場の作用は、

Sem=14μ0cFμνFμνd4x

となる。ここで、d4x=cdtdxdydz である。

その変分は、

δSem=14μ0c(δFμνFμν+FμνδFμν)d4x=12μ0cFμνδFμνd4x

ここで、δFμν=δAν,μδAμ,ν であり、 FμνδAν,μ=FνμδAν,μ=FμνδAμ,ν であるから、

δSem=1μ0cFμνδAμ,νd4x.

さらに、FμνδAμ,ν=(FμνδAμ),νFμν,νδAμ であるから、右辺第一項について四次元のガウスの定理を用いると、

(FμνδAμ),νd4x=FμνδAμdSν

である。無限遠では場は0となるから Fμν=0 であり、時間の端点では δAμ=0 であるから、この積分は0となる。

結局作用の変分は、

δSem=1μ0cFμν,νδAμd4x.

となる。

δSint=1cjμδAμd4x

と合わせると、電磁場の運動方程式

Fμν,ν=μ0jμ

を得る。

μ=0 について計算すると、

𝑬=c2μ0ρ

を得る。

ここで、一つの静止した電荷 q が距離 r のところにつくる電場の大きさはガウスの法則より、

E(r)=c2μ04πqr2

これは、クーロンの法則であるから、c2=1ε0μ0 の関係を得る。

すなわち、

𝑬=ρε0.

μ=1,2,3 について計算すると、

ε0μ0𝑬t×𝑩=μ0𝒋

が得られる。これでマクスウェルの方程式の四本の式が得られた。

ここで、

jμ,μ=1μ0Fμν,νμ=0

ここで、最後の式は、電磁場テンソルが反対称であることから、アインシュタインの記法なしで

Fβα,αβ=Fαβ,αβ

であり、微分の添字は対称であることから、Fμν,νμ=0 となる。

jμ,μ=0

ρt+𝒋=0

である。これは連続の式である。

ここでは、連続の式をマクスウェルの方程式から求めたが、これは電荷と電流の定義より、自明に成り立つ式である。一つの電子について証明すれば十分だから、そのときは、

ρ=qδ(𝒓𝒓0),𝒋=q𝒗δ(𝒓𝒓0)

となる。

ρ(𝒓𝒓0)t=q𝒓0tδ(𝒓𝒓0)𝒓0=q𝒗δ(𝒓𝒓0)𝒓

さらに、𝒋=q(𝒗δ(𝒓𝒓0))=q𝒗δ(𝒓𝒓0)𝒓.

ゲージ変換

任意の関数 χ について、 A'μ=Aμχxμ と変換しても、 𝑬,𝑩 は変化しない。この変換をゲージ変換という。ゲージ変換はスカラーポテンシャルとベクトルポテンシャルを分けて書くと ϕ=ϕχt,𝑨=𝑨+χ である。このゲージ自由度のお陰で、我々は電磁ポテンシャルにゲージ条件を課して計算しやすいように変形することができる。例えば、ローレンツゲージ A,μμ=0 や、クーロンゲージ 𝑨=0 。あるいは、jμ=0 の場合には、常に ϕ=0 で、かつ 𝑨=0 である放射ゲージを取ることができる。

任意の電磁ポテンシャル Aμ からローレンツゲージを満たす電磁ポテンシャル A'μ へのゲージ変換を求めよう。条件は、 A'μ,μ=0=Aμ,μχ,μ,μ より、χ=Aμ,μ.

クーロンゲージについては、𝑨=𝑨+χ より、χ=𝑨.

ϕ=0 となるゲージのためには、𝑬=ϕ𝑨t=t(𝑨+ϕdt) だから、χ=ϕdt とすればいい。さらに、jμ=0 の場合は、時間に依存しない関数の勾配をつけ加えることで、ϕ=0 を保ったまま、𝑨=0 とすることができる。その関数はχ=𝑨であるが、右辺は t𝑨=𝑬=0 となるから時間に依存しない。すなわち、χ は時間に依存しないからこの関数の勾配を加えれば放射ゲージが得られる。

マクスウェルの方程式

マクスウェルの方程式の第一の組

×𝑬=𝑩t(ファラデーの電磁誘導の法則)
𝑩=0(磁気単極子は存在しないこと)

と第二の組

𝑬=ρε0(ガウスの法則)
×𝑩=μ0𝒋+ε0μ0𝑬t(アンペール–マクスウェルの法則)

を合わせてマクスウェルの方程式という。

ガウスの法則をある体積で積分すると、

ガウスの定理より、

𝑬dV=𝑬d𝑺

であるから、

𝑬d𝑺=ρε0dV.

同様に、𝑩d𝑺=0

ストークスの定理より、

𝑩d𝑺=𝑩d𝒍

だから、アンペール–マクスウェルの式をある面で積分すると、

𝑩d𝒍=μ0(𝒋+ε0𝑬)d𝑺

を得る。

ファラデーの電磁誘導の法則についても同様に

𝑬d𝒍=t𝑩d𝑺=dΦdt.

ここで、Φ=𝑩d𝑺 は磁束と呼ばれる。𝑬d𝒍 は閉曲線を一周したときの起電力 V である。

N 回巻きのコイルならば、そのコイルに生じる起電力 V

V=NdΦdt

となる。

第一の組は四元形式では、Fμν,λ+Fνλ,μ+Fλμ,ν=0 と書かれる。このことを示そう。まず、添字に同じ文字がある場合は Fαα,β+Fαβ,α+Fβα,α となり自明に0となるから意味をなさない。すなわち、添字はすべて異なるものでなくてはならない。式 Fαβ,γ+Fβγ,α+Fγα,β{α,β,γ} で略記する。添字は循環的だから、 {α,β,γ}α が一番小さいとしていい。さらに、{α,β,γ}{α,γ,β} は同値な式を与えるから、α<β<γ としていい。結局この式で独立なものは {0,1,2},{0,1,3},{0,2,3},{1,2,3} の4つしかない。それぞれの場合について計算すると時間成分を含む3式は第一式、空間成分のみの式は第二式を与えることが分かる。

第一の組は電磁ポテンシャルの存在から自明に成り立つ式であるから、これは電場と磁場に対する拘束条件と言える。

第二の組は、電荷と電流によってつくられる電磁場を与えている。

ところで、Fμν,ν=μ0jμ を電磁ポテンシャルを使って書くと、Aν,μ,νAμ,ν,ν=μ0jμ となる。ここで、電磁ポテンシャルにはある関数の勾配を足しても良い自由度があるから、この自由度を利用して Aν,ν=0 となるポテンシャルを選ぶことができる。さらに、ダランベルシアン =νν=1c22t2 を導入すると、マクスウェルの方程式は、Aμ=μ0jμ となる。

この方程式の解は

Aμ(𝒙,t)=μ04πjμ(𝒙,tR/c)Rd3x+A0μ

これがマクスウェルの方程式の一般解である。ただし、 R=|𝒙𝒙| , A0μA0μ=0 の解であって境界条件に合うように定める。

時間変化が無いときには、

φ=14πε0ρRdV
𝑨=μ04π𝒋RdV

となる。この式から直ちに、ビオ・サバールの法則

𝑩=μ04π1R×𝒋dV=μ04π𝒋×𝑹R3dV

が求まる。

ところで、×𝑬=𝑩t という式は磁場が時間変化すると電場の回転が発生すると解釈することが出来る。ところが、電磁ポテンシャルを基本的な量として考えるとまた違った解釈が可能だ。すなわち、電場や磁場はすべて電磁ポテンシャルから発生するという立場のもとでは、磁場が時間変化するということは、そこに時間変化するベクトル・ポテンシャルの回転が存在するだろう。そして、時間変化するベクトル・ポテンシャルの回転によって電場の回転が生ずる。すなわち、ベクトル・ポテンシャルによって磁場の時間変化と電場の回転が同時に生じるということである。

電流を0とした式 ×𝑩=ε0μ0𝑬t もこれと同様に考えることが出来る。ε0𝑬t は変位電流と呼ばれる。それは ×𝑩=μ0(𝒋+ε0𝑬t) として、変位電流は電流 𝒋 と一緒に磁場の回転を作るように見えるからである。これも電磁ポテンシャルを基本的な量として考えると分かりやすい。×𝑩ε0μ0𝑬t=μ0𝒋 と変形してから左辺に電磁ポテンシャルを代入して、ゲージ条件としてローレンツ条件を採用すると、𝑨=μ0𝒋 となる。この式は、電流密度 𝒋 がベクトル・ポテンシャルを生成する式として見ることが出来る。すなわち、電流と変位電流が磁場の回転を起こすというよりも、電流が 𝑨 すなわち ×𝑩ε0μ0𝑬t に影響を与えるのだと考えるほうが良いだろう。その観点では、アンペール–マクスウェルの式は ×𝑩ε0μ0𝑬t=μ0𝒋 とする方が物理的な意味に合っているのかもしれない。

場の平均化

電荷や電流はデルタ関数の足し合わせで定義していたが、このままでは電子の数が多い場合では計算しきれない。そこで、このような場合は位置によって平均化したものを使う。こうすることで、ρ,𝒋 は有限の値を取ることになる。

エネルギー運動量テンソル

電磁場のエネルギー運動量テンソル

Tμν=1μ0(FμρFνρ+14ημνFαβFαβ)

の各成分を調べよう。

Fμν=(0ExcEycEzcExc0BzByEycBz0BxEzcByBx0)

であったから、

Fμν=(0ExcEycEzcExc0BzByEycBz0BxEzcByBx0)

である。

T00=1μ0(F0ρF0ρ+14FαβFαβ)=1μ0(E2c2+12(E2c2+B2))=ε02E2+12μ0B2
Ti0=1μ0(FiρF0ρ)=1μ0(FijF0j)=1μ0(εijkBkEjc)
Tii=1μ0(Ei2c2+Ba12+Ba2212(E2c2+B2))=1μ0(Ei2c2Bi2+12(E2c2+B2))

ここで、a1,a2 は1,2,3のうち、i ではないもののそれぞれである。

ij のときは、

Tij=1μ0(EiEjc2BiBj)

ここで、電磁場のエネルギー密度を

W=ε02E2+12μ0B2

で定義する。さらに、ポインティング・ベクトルを

𝑺=1μ0𝑬×𝑩

で、マクスウェルの応力テンソルを

σij=ε0EiEj1μ0BiBj+12δij(εE2+1μ0B2)

で定義すると、エネルギー運動量テンソルは

Tμν=(WSxcSycSzcSxcσxxσxyσxzSycσyxσyyσyzSzcσzxσzyσzz)

と書かれる。

ディラック方程式

特殊相対論的な量子力学の方程式を導こう。

E2=m2c4+𝒑2c2

に対して、量子力学でやったように

Eit,𝒑i

という置き換えをすると、

22ψt2=c4m2ψ2c2ψ

整理して、

(+m2c22)ψ=0

が得られる。この方程式はクライン・ゴルドン方程式と呼ばれる。しかし、これには確率解釈が出来ないという問題がある。そこで、時間に対する一階微分方程式

iγμμψ=mcψ

を仮定して、これがクライン・ゴルドン方程式に帰着するように係数 γμ を求めてみよう。

m2c22ψ=(iγνν)(iγμμ)ψ=γμγνμνψ

これが、ψ に等しくてはならないから、

(γ0)2=1,(γ1)2=1,(γ2)2=1,(γ3)2=1

かつ、αβ のとき、γαγβ=0 とならなければいけないが、このような実数 γμ は存在しない。 そこで、改めて γμ を行列として探してみる。

γμγν=12(γμγν+γνγμ)+12(γμγνγνγμ)

と変形できる。 μν(γμγνγνγμ)=0 であるから

γμγνμνψ=12(γμγν+γνγμ)μνψ

と変形できる。これが、

ψ=ημνμνψ

に等しいという条件から、

γμγν+γνγμ=2ημν

でなくてはならない。このような γμ として、

γ0=(0110) , γi=(0σiσi0)

を取ることが出来る。ここで、

σ1=(0110)σ2=(0ii0)σ3=(1001)

はパウリ行列である。

よって、ディラック方程式

(iγμμmc)ψ=0

を得る。

さらに、 c==1 となる自然単位系を使うと、

(iγμμm)ψ=0

となる。

ディラック共役を

ψ¯=ψγ0

で定義する。

ゲージ理論入門

U(1)ゲージ理論

ここでは、c==μ0=1 となる自然単位系を採用する。

ディラック方程式

(iγμμm)ψ=0

を導くラグランジアンは

=ψ¯(iγμμm)ψ

である。このラグランジアンは波動関数を偏角 α だけ変える大域的な変換 ψ=eiαψ によって不変である。しかし、全空間で一斉に等しい位相の変換を受けるというのは一般的ではない気がする。そこで、もっと一般に各時空点でそれぞれ異なった位相の変換を受けるという、局所的な位相変換でもラグランジアンが不変になるようにしたい。つまり、局所的な位相変換

ψ=eieχψ

でもラグランジアンを不変にしたい。そのために、微分 μ の代わりに共変微分 Dμ

Dμ=μieAμ

のように導入して、ラグランジアン =ψ¯(iγμDμm)ψ を不変にするための Aμ の変換則を求める。

そのためには、

D'μψ=(Dμψ)eieχ

であればいい。

D'μψ=(μieA'μ)eieχψ=[(μieA'μieμχ)ψ]eieχ

であるから、Dμψ=(μieAμ)ψ と比較して、変換則

A'μ=Aμμχ

を得る。

結局ラグランジアンは、

=ψ¯[iγμ(μieAμ)m]ψ=ψ¯(iγμμm)ψeψ¯γμψAμ

ここで、四元電流密度を

jμ=eψ¯γμψ

と定義して、ラグランジアンに電磁場のラグランジアンを追加すると、

=ψ¯(iγμμm)ψjμAμ14FμνFμν.

Aμ というのは電磁場である。

クリストッフェル記号

特殊相対論はローレンツ変換に対して不変な理論であって、それはテンソル式で表されている。これを拡張して、任意の座標変換に対して不変になるようにしよう。

テンソルの微分

μAν

において、 μ はローレンツ変換では、テンソル添字になるが、一般座標変換ではテンソル添字にならない。そこで、代わりに、共変微分を

DμAν=μAν+ΓμανAα

として導入して、これがテンソルとなるようにしたい。そのためには、

D'μA'ν=xαx'μx'νxβDαAβ

とならなければいけない。

D'μA'ν='μ(x'νxβAβ)+Γ'νμγx'γxβAβ

ここで、

'μ(x'νxβAβ)=x'αx'μα(x'νxβAβ)=x'αx'μ2x'νxαxβAβ+x'αx'μx'νxβAβxα

である。

さらに、

xαx'μx'νxβDαAβ=xαx'μx'νxβAβxα+xαx'μx'νxβΓαγβAγ

であるから、ここから、

Γ'νμγx'γxβ+x'αx'μ2x'νxαxβ=xαx'μx'νxγΓαβγ

さらに、x'γxβ の逆行列は xβx'γ であるから、これを両辺にかけると、

Γ'νμγ=xβx'γxαx'μx'νxδΓαβδxβx'γx'αx'μ2x'νxαxβ

ここで、

xβx'γx'αx'μ2x'νxαxβ=xβ(xβx'γx'αx'μx'νxα)+x'νxα2xβxβx'γxαx'μ+x'νxα2xαxβx'μxβx'γ=x'νxα2xαx'γx'μ

となるから、結局

Γ'λμν=x'λxαxβx'μxγx'νΓβγα+x'λxα2xαx'μx'ν

を得る。この式の第一項はテンソルの変換のようだが、第二項が存在するために、クリストッフェル記号はテンソルではない。そもそも、クリストッフェル記号がテンソルではないことはその定義からもすぐにわかることだ。クリストッフェル記号がテンソルであったとすると、ベクトルの微分がテンソルでないのだから、その和である共変微分をテンソルにすることが出来なくなってしまう。

付録

ポアソン方程式

φ(𝒙)=f(𝒙)

の特殊解を求める。ポアソン方程式は線型だから、全空間を無限小の体積 dV を持つ空間に分割し、点 𝒙 の位置にある f(𝒙) が存在して、その他では f=0 となる場合に作る φ の足し合わせが特殊解となる。

φ=f(𝒙)

𝒙 を中心する球座標を採用し、原点を中心とする半径 r の球で積分して、ガウスの定理を使うと、

Vφ(𝒙)=Sφ(𝒙)d𝑺=Vf(𝒙)dV=f(𝒙)dV

となる。ここで、φ は対称性より、r のみの関数で、動径方向のベクトルであるから、

Sφ(𝒙)d𝑺=4πr2φ(r)𝒆r

となる。

φ(r)=f(𝒙)dV4πr2𝒆r

と、

φ=dφ(r)dr𝒆r

より、

φ(r)=f(𝒙)dV4πr

を得る。

これを足し合わせた関数

φ(𝒙)=14πf(𝒙)rdV

がポアソン方程式の特殊解となる。

次に、偏微分方程式 φ(𝒙,t)=f(𝒙,t) の特殊解を求める。これは線型だから、ポアソン方程式に対してやったように、無限小の空間に分割して、その足し合わせとして解を求める。点 𝒙 を中心に球座標を取れば、φ は球対称だから、φr のみの関数である。r>0 の点では、

1c22φt21r2r(r2φr)=0

が成り立つ。ここで、

φ=χr

と置くと、

1c22χt22χr2=0

となる。これは波動方程式だから、解は g1,g2 を適当な関数として、

χ=g1(trc)+g2(t+rc)

となる。g1(trc) は時間経過によって波面が広がっていく解である。しかし、g2(t+rc) は、それとは逆の時間経過によって波面が 𝒙 に収束していく解となる。このような解は物理的に意味を持たないから、g1(trc) のみを採用する:

φ=g1(trc)r

次に、g1 の具体的な形を求めたい。r が十分小さい領域では、

|φt||φ|

となるから、φφ と近似される。これはポアソン方程式と同じ式となるから、

φ=f(𝒙,trc)dV4πr

となる。これを 𝒙 について足し合わせれば、特殊解

φ(𝒙,t)=14πf(𝒙,trc)rdV

を得る。ただし、r=|𝒙𝒙| である。

参考文献

  • エリ・デ・ランダウ、イェ・エム・リフシッツ著、恒藤敏彦他訳『場の古典論(原著第6版)』東京図書(1978)

旧版

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