制御と振動の数学/Laplace 変換/定積分の計算への応用/主値積分

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次に,定積分の計算において Cauchy の主値の現れる場合を取り扱おう.

f(x) は閉区間 [a,b] 内の 1 点 c を除いて連続,x=c では不連続としよう. このとき [a,cδ](δ>0),[c+ε,b](ε>0) では f(x) は連続であるから,これらの区間での積分, テンプレート:制御と振動の数学/equation は存在する.そこで,これらの積分の値が δ0,ε0 の極限でも確定するとき, テンプレート:制御と振動の数学/equation とおいて,これを a から b までの広義の積分あるいは変格積分ということは良く知られている.

例61

テンプレート:制御と振動の数学/equation これは明らかに値を持たない.

しかしながら 1x は奇関数であるから, テンプレート:制御と振動の数学/equation としたい気持ちを抑えることはできない.そこで広義積分の定義を少し修正して,δ=ε とおくと,希望どおり, テンプレート:制御と振動の数学/equation を得る.

そこで,次の定義を設ける.

[定義:Cauchy の主値積分]

広義積分,式(2.36)において,δ,ε を独立に 0 とすると極限値は存在しないが, δ=ε として極限をとると, テンプレート:制御と振動の数学/equation は存在することがある.このとき,式(2.37) を Cauchy の主値積分あるいは単に積分の主値といい, テンプレート:制御と振動の数学/equation と書く.p.v. は principal value の略記号である.

この定義によれば, テンプレート:制御と振動の数学/equation である.

例62

テンプレート:制御と振動の数学/equation 事実, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.

Cauchy の主値積分に関する公式を示そう. テンプレート:制御と振動の数学/equation


テンプレート:制御と振動の数学/equation とおいて Laplace 変換すると, テンプレート:制御と振動の数学/equation ここで,被積分関数を部分分数に分解すると, テンプレート:制御と振動の数学/equation であるから, テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.例 62[1]を用いると,この右辺は, テンプレート:制御と振動の数学/equation である.よってこの原像を求めると, テンプレート:制御と振動の数学/equation ここで,t=a とおけば求める結果を得る.


  1. p.v.0dxb2x2=0


例63 テンプレート:制御と振動の数学/equation を示せ.

解答例

f(t)=p.v.0xsintxb2x2

とおく.この両辺のラプラス変換を取ると,

[f]=p.v.0x2(b2x2)(x2+s2)dx
=1s2+b2 p.v.0{x2b2x2+x2x2+s2}dx
=1s2+b2 p.v.0{(b2b2x21)+(1s2x2+s2)}dx
=1s2+b2 p.v.0{b2b2x2s2x2+s2}dx
=1s2+b2{b2 p.v.0dxb2x2s20dxs2+x2}

ここで例62より,

p.v.0dxb2x2=0

また例56 より,

0dxx2+s2=π2s

よって,

[f]=s2s2+b2π2s
=π2ss2+b2

この原像は,

f(t)=π2cosbt(b>0,t>0)

よって,

f(a)=p.v.0xsinaxb2x2=π2cosab(a,b>0)


例64 テンプレート:制御と振動の数学/equation を示せ.

解答例

f(t)=p.v.0sintxx(b2x2)dx

とおくと,両辺をラプラス変換して,

[f]=p.v.0xx(b2x2)(x2+s2)dx
=1s2+b2 p.v.0(1b2x2+1x2+s2)dx
=1s2+b2( p.v.01b2x2dx+01x2+s2dx)

ここで例62より,

p.v.0dxb2x2=0

また例56 より,

0dxx2+s2=π2s

よって,

[f]=1s2+b2π2s
=π21s(s2+b2)
=π2b2(1sss2+b2)

よってこの原像は,

f(t)=π2b2(1cosbt)

よって,

f(a)=p.v.0sinaxx(b2x2)dx=π2b2(1cosab)