制御と振動の数学/第一類/連立微分方程式の解法/例題による考察/(sI-A)^-1の計算

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(sIA)1の計算は逆行列を求める普通の計算に従えばよいのであるが、次のように計算することができる. 以下,行列 A の行列式を |A| または detA などで表すことにする.

式 (5.8) に見られる通り, (sIA)1 の各要素は共通の分母として, テンプレート:制御と振動の数学/equation を持つので,各要素は bs+cs2+1 の形をしている.そこで, テンプレート:制御と振動の数学/equation とおいて B,C を求めることを考えよう. まず s2+1sIA とを両辺にかけると, テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.この両辺の係数を比較すると, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation これより C=A を得る.よって, テンプレート:制御と振動の数学/equation を得る.この原像は, テンプレート:制御と振動の数学/equation となって,式 (5.8) と一致する.

例112

例 105 に対して (sIA)1 を計算せよ.

解答例

A=(1324),sIA=(s+132s4),det(sIA)=s23s+2 であるから,

(sIA)1=Bs+Cs23s+2

とおいて両辺に左から (s23s+2)(sIA) をかけると,

(s23s+2)I=(sIA)Bs+(sIA)C…①
s2 の項:I=B
s の項:3I=AB+C

B=I より 3I=A+CC=A3I

(sIA)1=Is+(A3I)(s1)(s2)=2IAs1+AIs2

なお,①の s0=1 の項を等置すると,

2I=AC

C=A3I より,2I=A(A3I)

A23A+2I=O…②

②は A に関する Cayley–Hamilton の定理を示している.



例113

例 106 に対して (sIA)1 を計算せよ.

解答例

A=(αββα),sIA=(sαββsα),det(sIA)=(sα)2+β2 であるから,

(sIA)1=Bs+C(sα)2+β2

とおいて両辺に左から {(sα)2+β2}(sIA) をかけると,

(s22αs+α2+β2)I=(sIA)Bs+(sIA)C…①
s2 の項:I=B
s の項:2αI=AB+C

B=I より 2αI=A+CC=A2αI
(sIA)1=Is+(A2αI)(sα)2+β2=(sα)I(sα)2+β2+AαI(sα)2+β2
なお①の 1 の係数を比較して,

(α2+β2)I=AC=A(A2αI)
A22αA+(α2+β2)I=O…②

②は A=(αββα) に関する Cayley–Hamilton の定理を示している.