制御と振動の数学/第一類/複素数値関数の Laplace 変換/Laplace 変換/微分方程式の解法

提供: testwiki
ナビゲーションに移動 検索に移動

§1

まず,複素係数の線形定常常微分方程式 テンプレート:制御と振動の数学/equation を考える.ここに ai𝐂 とする.これを初期条件, テンプレート:制御と振動の数学/equation の下に Laplace 変換すると,実係数の場合と同様にして, テンプレート:制御と振動の数学/equation を得る.ここに p(s)式 (4.11) に付随する特性多項式,q(s)ξi で決まる高々 n1 次の多項式である.

一般に,複素係数の多項式は,代数学の基本定理により,複素係数の範囲で 1 次の積に因数分解できるから,それを, テンプレート:制御と振動の数学/equation とすると,これに対応して, テンプレート:制御と振動の数学/equation と部分分数に展開できる.それゆえ,この原像は, テンプレート:制御と振動の数学/equation または テンプレート:制御と振動の数学/equation と求まる.ここに fi(t)t の多項式で次数は高々 li1,係数は複素数である.

複素数値関数の微分に述べたように, テンプレート:制御と振動の数学/equation であるから テンプレート:制御と振動の数学/equation となり,式 (4.12) 式 (4.11) の解であることが分かる.解の一意性の証明も全く同じであるから,繰り返さない.また非同次方程式, テンプレート:制御と振動の数学/equation の解法も,全く同様である.なお,式 (4.11) の解の基本系は, テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.実際,これらが 1 次独立となることは,前章の証明よりも,はるかに容易に示し得る. 事実,補題 4.1 の系によれば, テンプレート:制御と振動の数学/equation は一次独立であるから,あとは, テンプレート:制御と振動の数学/equation の 1 次独立性だけを示せばよい.これは, テンプレート:制御と振動の数学/equation の 1 次独立性と同じであるから,明らかである.


§2

微分方程式式 (4.11) の係数が実数の場合を,この章の立場から述べておく. 特性方程式 p(s) が 1 次の因数に分解できることは同様であるが,その内容は, テンプレート:制御と振動の数学/equation のような形をしている.ここに ci𝐑,αj,αj𝐂αjαj の共役複素数である. このとき解の基本系は,次の 3 種類の型のものから成り立っている. テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation Ⅰ型は実関数である.しかし,Ⅱ,Ⅲ型は複素数値関数である.これらを, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation ここに α=a+ib, α=aib を用いて実関数の基本形に直すと,Ⅱ,Ⅲの変わりに, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.Ⅰ,Ⅱ',Ⅲ'が実形式で表した解の基本形である.前章で求めたものと形は異なるが,この方が導出が簡単である.


例94

{Ⅰ,Ⅱ',Ⅲ'}が解の基本系となること,すなわち 1 次独立であることを示せ.

解答例


非同次方程式の一般解は,同次方程式の一般解に特解を付加すればよいことは,前章と同様である.

ここに述べたように,一般に,理論的な話をするときには,複素数値関数で取り扱う方が見通しがよい. しかし実際に初期値問題を解くときには,前章の手法の方が優れている. ただ,一般解を求めるのは,本章の方法によるのが賢明である.