制御と振動の数学/第一類/複素数値関数の Laplace 変換/解の漸近的挙動(安定論)/正弦波入力に対する定常応答

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前節で述べた複素振幅の方法に関連して,安定論の立場から若干の補足をしておこう. テンプレート:制御と振動の数学/equation は安定な微分方程式としておく.つまり f(t)=0 とおいた同次式の解は,十分時間が経過した後では消えるものとする.なお式 (4.15) の係数は実数であるとする.さて, テンプレート:制御と振動の数学/equation のとき,式 (4.15) の任意の解は, テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.ここに,p(s) は特性多項式で,

(i) x0(t) は同次式の解

(ii) p(iω)=|p(iω)|eiθ

である.系が安定であるから, テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.よって,十分時間が経過した後では,どんな初期条件から出発した解も,定常解 xs(t): テンプレート:制御と振動の数学/equation に近づく.この結果をLaplace 変換による解法から導いてみよう. 式 (4.15) の解は テンプレート:制御と振動の数学/equation と書けるのであった.ここに x0(t) は同次式の解で, テンプレート:制御と振動の数学/equation である.t のとき,式 (4.17) x0(t) は消えるから,第 2 項だけが問題になる. テンプレート:制御と振動の数学/equation式 (4.17) の右辺第 2 項に代入すると, テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.ところで,式 (4.18) から, テンプレート:制御と振動の数学/equation となるので[1]式 (4.19) は, テンプレート:制御と振動の数学/equation に漸近する[2].事実,t のとき, テンプレート:制御と振動の数学/equation となるからである.このことは,言い換えれば式 (4.20) の無限積分の存在は,g(t) が安定な同次方程式 p(D)x=0 の解であることから保証される.すなわち,このとき既述のように, テンプレート:制御と振動の数学/equation なる評価ができるから,g(t) の Laplace 変換は Re s=0 において存在する.

最後に,この問題の工学的応用に触れておこう.ここで議論したことは, 式 (4.15) が安定な微分方程式ならば, これに正弦波が入力として加えられたとき,それに対する応答は,しばらく待てば同じ周波数の正弦波になるということである. それでは,任意の波形を持った信号が入力として加えられたとき,しばらく待つと同じ波形の応答が得られるであろうか.この問題を考えてみる. 記録器に対してはこのことが要求される.

さて任意の信号 f(t) は,ある範囲 0tT で,いくつかの正弦波で近似できる[3].すなわち, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation この信号に対する式 (4.15) の定常応答は,重ね合わせの原理と上の議論から, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.これが f(t) とほぼ同じ波形となるためには,

(i) |p(inω|,n=0,1,,N がほぼ一定(B

(ii) θn がほぼ n に比例する.(nω0)

という条件があればよいことが分かる.このとき, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation となり,所期の目的を達成する.

ω を変数と考え,p(iω)系 (4.15) の周波数特性と呼ぶことにすれば,上の条件は“考えている周波数範囲では,周波数特性があまり変わらない”ということである(p(iω) の偏角は ω に比例して変わってもよい)。この条件は周波数の小さい範囲で現実できる.言い換えれば,入力信号の変動が余り激しくなければ,出力応答はそれに追従するということで,あたりまえの結果である.交流を直流の計器で計る場合を想像してみればよい.



  1. Laplace 変換の定義から 0g(τ)esτdτ=1p(s),これに s=iω を代入する.
  2. 式 (4.19) t とし,式 (4.20) をあてはめる.
  3. Fourier 級数展開