制御と振動の数学/第一類/複素数値関数の Laplace 変換/複素数値関数の微分積分学/実変数の複素数値関数
前章では Laplace 変換, テンプレート:制御と振動の数学/equation において, は実変数 の実数値関数, は実数と考えた. この章では, としては実変数 の複素数値関数をも許すものとする.[1] すなわち, テンプレート:制御と振動の数学/equation を考える.ここに は実数値関数であり, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation と呼ぶ.また, は実数でも,複素数でもよいが,一応複素数としておく.[2]
以下で取り扱う複素数値関数としては,次のものが一番重要である. テンプレート:制御と振動の数学/equation ここに は複素数である.この関数の定義を述べよう.指数関数の Taylor 展開, テンプレート:制御と振動の数学/equation が, が複素数 であっても成り立つとすればどのような結果が得られるか考えてみよう.
テンプレート:制御と振動の数学/equation ここで最右辺の式の括弧内はそれぞれ と の Taylor 展開であるから, テンプレート:制御と振動の数学/equation という関係が得られる.これを Euler の公式と呼んでいる. ここで とおくと, テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.これも Euler の公式ということがある. この公式の発見は,当時の数学界(サロン)におけるセンセーショナルな事件であったという. それは という当時知られていた数学の基本定数が,このような簡単なそして美しい関係で結び付けられていることに対する驚きによるものである.
我々は以後この結果から出発する.すなわち 式 (4.1) を指数関数 の定義とするのである.“良き結果は良き定義として採用できる”からである.このことは,これからの議論によって次第に明らかになるであろう.
まず,指数関数の加法定理, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation が導かれる.なぜなら三角関数の加法定理から, テンプレート:制御と振動の数学/equation が出[3], これより直ちに, テンプレート:制御と振動の数学/equation が得られる[4] からである.これらの式は d'Moivre の公式として知られている.
この加法定理が,もっと一般に成立するものだとすれば,
テンプレート:制御と振動の数学/equation
でなければならない.これが最初に述べた の定義である.すなわち,