制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/演算子法の完成
§1
いまや我々は演算子法を完成させ得る段階に達した. が微分で, が積分を表すというのであるから, 微分と積分の関係を表す次の二つの公式, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation がまず頭に浮かぶ.初期値 を含んでいる前者を採用するのが妥当であろう.
そこで,すでに述べたように, テンプレート:制御と振動の数学/equation によって式 (1.10) を記号 を用いて表せば, テンプレート:制御と振動の数学/equation ここに テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.いま を普通の数と同じように取り扱ってよいものとすれば, を両辺に掛けて, テンプレート:制御と振動の数学/equation なる関係式を得る.ここではもはや は微分という意味をもたない. もし ならば となってしまうからである. もちろん のときは, は微分と考えてなんら差し支えはないであろう. 式 (1.12) のように変形しておいたのは, 先に を で置き換えたように,今度は を で置き換えようという下心である.
ここで式 (1.12) の興味深い応用を示そう. この式に を代入すると, テンプレート:制御と振動の数学/equation これを について解くと テンプレート:制御と振動の数学/equation となる. この公式は実質的にはすでにこの式およびこの式にて得られている. この式を について 回微分すると, テンプレート:制御と振動の数学/equation よって, テンプレート:制御と振動の数学/equation を得る.特に とおくと, テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.これもすでに得られた式 (1.9) と一致する.
例7
これは例5 で とおいたものである. 前節のやり方では解決できなかったことを思い出してもらいたい[1]. この式を で表すと, テンプレート:制御と振動の数学/equation これを について解くと テンプレート:制御と振動の数学/equation ここで公式 (1.13), (1.14) を用いて の関数に戻すと, テンプレート:制御と振動の数学/equation
例8
これが正しい解であることを確かめよ.
解答例
のとき,
また
例9
式(1.12), 式(1.9)を用いて, の式に書き換えると, テンプレート:制御と振動の数学/equation について解くと, テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.これを時間関数に戻すにあたって,(1.13), 式(1.9) が使いやすいように、部分分数に分解すると, テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.これは テンプレート:制御と振動の数学/equation に他ならない.
例10
これが正しい解であることを確かめよ.
解答例
のとき,
.
ゆえに
.
また
.
以上より は のひとつ.
例11
を解け.
解答例
験算をする.
で与方程式を満たす.
§2
さらに 2 階微分に対する公式を導いてみよう. 式 (1.12) を 2 度用いると, テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.よって テンプレート:制御と振動の数学/equation を得る.ここでも のときは となり, が微分を表すと考えてよいことを示している.
式 (1.15) において とおけば, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation を得る.また, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation これは の Taylor 展開である.
例12
(2) テンプレート:制御と振動の数学/equation を示せ.
解答例
式 (1.15) に を代入して,
テンプレート:制御と振動の数学/equation
テンプレート:制御と振動の数学/equation
テンプレート:制御と振動の数学/equation
すなわち
テンプレート:制御と振動の数学/equation
テンプレート:制御と振動の数学/equation
これらの結果(式(1.16),式 (1.17) を用いると
テンプレート:制御と振動の数学/equation
テンプレート:制御と振動の数学/equation
を得る.ここに は虚数単位である.また,
テンプレート:制御と振動の数学/equation
テンプレート:制御と振動の数学/equation
同様に,
テンプレート:制御と振動の数学/equation
テンプレート:制御と振動の数学/equation
を得る.これらは有名な Euler の公式 である.
例13
公式 (1.15) 等を用いて, の式で表すと, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation ここで公式(1.16), (1.17) を用いて の関数に戻すと, テンプレート:制御と振動の数学/equation
例14 例12 の解の正しいことを確かめよ.
解答例 テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation よって テンプレート:制御と振動の数学/equation は与方程式の解のひとつ.
例15
解答例
テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation 第一項 テンプレート:制御と振動の数学/equation とおいて テンプレート:制御と振動の数学/equation より テンプレート:制御と振動の数学/equation したがって テンプレート:制御と振動の数学/equation 同様に第二項は テンプレート:制御と振動の数学/equation 第三項は テンプレート:制御と振動の数学/equation ゆえに テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation
- ↑ なぜならば, にて を代入すると,分母が になってしまう.