初等数学公式集/初等幾何

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平面図形

三角形

三平方の定理

  • 直角三角形の直角をはさむ2辺の長さをab、斜辺の長さをcとすると、以下の関係が成り立つ。:
    • a2+b2=c2
  • 三角形の三辺の長さa,b,ca2+b2=c2を満たすとき、この三角形は長さcの辺を斜辺とする直角三角形となる。

(参考) 三平方の定理

正弦定理

ABC において、BC=a,CA=b,AB=c, 外接円の半径を R とすると、

  • asinA=bsinB=csinC=2R

(参考)正弦定理

正弦定理の応用

一辺とその両端の角の大きさがわかっている時の、他の辺及び当該三角形の既知の辺に対する高さ(三角測量の原理)。

右の図において辺AB=c,A=α,B=γが既知である時、
csinβ=csin(π(α+γ))=csin(α+γ)=asinα=bsinγ
a=csinαsin(α+γ),b=csinγsin(α+γ)
h=csinαsinγsin(α+γ)
AO=bcosα=ccosαsinγsin(α+γ), BO=acosγ=csinαcosγsin(α+γ)

余弦定理

ABC において、BC=a,CA=b,AB=c,α=CAB,β=ABC,γ=BCA とすると

第一余弦定理
  • a=bcosγ+ccosβ
  • b=ccosα+acosγ
  • c=acosβ+bcosα
第二余弦定理
  • a2=b2+c22bccosα
  • b2=c2+a22cacosβ
  • c2=a2+b22abcosγ

(参考)余弦定理

中線定理とスチュワートの定理
中線定理
中線定理
三角形の辺 BC,CA,AB の長さを a,b,c とする。辺 BC 上の中点 D を取り、ADm とすると、以下の式が成り立つ。
4m2+a2=2(b2+c2)
別形:AB2+AC2=2(AD2+BD2) (なお、BD=DC
 
(証明)
ABC=βとして、第2余弦定理より、
b2=c2+a22cacosβ、従って、cosβ=c2+a2b22ca - ①
同様に、
m2=c2+(a2)22c(a2)cosβ、従って、cosβ=c2+(a2)2m2ca=4c2+a24m24ca - ②
①、②から、
c2+a2b22ca=4c2+a24m24ca
 
2c2+2a22b2=4c2+a24m2
 
4m2+a2=2(b2+c2)

テンプレート:-

スチュワートの定理
スチュワートの定理
三角形の辺 BC,CA,AB の長さを a,b,c とする。辺 AB 上に点 M を取り、CMd とする。AM,BM の長さを x,y とすると、以下の式が成り立つ。
a2x+b2y=c(d2+xy)
M が辺の中点(x=y)のとき、この式は中線定理の式に一致する。

テンプレート:-

三角形における正接の性質

ABC において、α=CAB,β=ABC,γ=BCA とすると

tanα+tanβ+tanγ=tanαtanβtanγ

メネラウスの定理・チェバの定理

メネラウスの定理。A→F→B→D→C→E→Aの順で循環する。
  • メネラウスの定理
    任意の直線lABCにおいて、直線lBC,CA,ABの交点をそれぞれD,E,Fとする。この時、次の等式が成立する。
AFFBBDDCCEEA=1

テンプレート:-

  • チェバの定理
    ABCにおいて、任意の点Oをとり、直線AOBCBOCACOABの交点をそれぞれD,E,Fとする。この時、次の等式が成立する。なお、点Oは、三角形の内部にあっても外部にあってもよい。
AFFBBDDCCEEA=1
チェバの定理。点Oが三角形の内部にある場合
チェバの定理。点Oが三角形の外部にある場合

三角形の5心

重心
三角形の頂点から相対する辺の中点に対して下ろした線分のことを中線という。各々の頂点から下ろした線分は一点で交わり、その点を重心(通常、Gで表記される)という。
重心は中線を角側から見て、2:1 に内分する。
(参照:ベクトルによる表記
三角形の重心
外心
三角形の3つの辺の垂直二等分線は1点で交わり、その点を外心(通常、Oで表記される)という。
外心は、三角形の外接円の中心である。= 外心から各角との距離は等しい。
(参照:ベクトルによる表記
各辺の垂直二等分線と外心
外心と外接円
内心
三角形の3角のそれぞれに対して角の二等分線を取ったとき、それぞれの直線は1点で交わり、その点を内心(通常、Iで表記される)という。
内心は、三角形の内接円の中心である。= 内心から各辺との距離は等しい。= 内心から内接円と辺の接点とを結ぶ線分は内接円の半径であり、辺に対して垂直。
(参照:ベクトルによる表記
各角の二等分線と内心
内心と内接円
垂心
三角形の各頂点から対辺またはその延長に降ろした垂線は、1点で交わり、その点を垂心(通常、Hで表記される)という。
(参照:ベクトルによる表記
三角形の垂心
傍心
三角形の2つの外角のそれぞれの二等分線と、残りの1つの内角の二等分線とは、一点で交わり、その点を傍心という。
傍心は各々の頂点に対する辺の反対側に存在するため、3個存在する。
傍心から、それに相対する辺までの距離を半径とする円は、相対する辺以外の各辺を延長した直線と接し、この円を傍接円という(下図参照)。
(参照:ベクトルによる表記
三角形の傍心のひとつ
5心相互の関係
オイラー線
オイラー線
三角形の外心・重心・垂心は同一の直線上にある。この直線をオイラー線という。
  • 右図において、
    • 青の線の交点が垂心 H
    • 橙色の線の交点が重心 G
    • 緑の線の交点が外心 O
であって、HGOは一直線上(赤線)にある。

テンプレート:-

垂心の性質
垂心の性質
ABCに関して、Aと辺BCに対して反対側に、四角形ABPCが平行四辺形となるような点Pをとる。同様にBに対する点QCに対する点Rをとり、ABCの各辺が中線となるPQRABCと相似比1:2の三角形)を得た時、
ABCの垂心Hは、PQRの外心となる。

テンプレート:-

三角形の内接円と傍接円
三角形の内接円と傍接円
傍心は三角形の二等分線上にあるので、三角形の相対する角と内心の同一直線上にある。
三角形の内心は、3つの傍心で作る三角形の垂心に一致する。

テンプレート:-

多角形

  • n角形の内角の和:
    180(n2)
  • n角形の対角線の本数:
    n(n3)2

  • 半径rの円の円周l:
    • l=2rπ
  • 半径r、中心角α(度)の扇形の弧の長さl:
    • l=2rπα360
  • 半径rの円の中心点Oと弦ABとの距離をaとしたときの弦ABの長さ:
    AB=2r2a2

中心角と円周角

テンプレート:Wikipedia

中心角と円周角
  • 円周上の点A,Bの各々から円の中心点Oに線分を引いた時、AOB中心角という。
  • 円周上の点A,Bの各々から、円周上の点Cに線分を引いた時、ACB円周角という。
    • 円周角の定理
      円周上にとる点の位置に関わりなく、円周角の大きさACBは対応する円弧を含む扇形の中心角の大きさαのみに依存し、以下のように表わされる。
      ※:対応する円弧:α<πならば、円周上の点Cは、線分ABから見て中心と同じ側にあり、α>πならば、逆側にある。
      ACB=α2
      • 右図において、
        • 円周角AC3BAC4Bは等しい。この時の中心角の大きさをψとすると、ψ=α2
        • 円周角AC1BAC2Bは等しい。この時の中心角の大きさをφとすると、φ=πα2
        したがって、円に内接する四角形の相対する角の和は、π(=180°)となる。
    • タレスの定理
      円周上の点A,Bを結ぶ線分ABが円の中心Oをとおる時(すなわち、線分ABが直径である時)、点A,Bと円周上の点Cとの間になす角ACBは直角である。
      逆である「点A,Bと円周上の点Cとの間になす角ACBが直角であるならば、線分ABは円の中心Oをとおる」もまた真である。
      接線と弦の作る角
    • 接弦定理
      三角形のある一点において外接円の接線を引いた時、接線と弦の作る角(右図において角α)は、三角形の弦に対する角(右図において角β)に等しい。
      αをなす弦のXではない点をA、角βのある点をBとする。
      XOAは、XBAを円周角とする中心角なので、XOA=2β
      XOAは、OX=OAである二等辺三角形。したがって、OXA=OAX
      OXA=π2β2=π2β
      Xにおいて、OXと接線は直角をなしているから、接線と弦の作る角α=π2OXA=π2(π2β)=β

方冪の定理

  • 点Pを通る2本の直線が円とそれぞれ2点A,Bと2点C,Dで交わっているとき(図1、図2):
    PAPB=PCPD
  • 円外の点Pを通る2本の直線の一方が点Tで円に接し、他方が2点A,Bで交わっているとき(図3):
    PAPB=PT2
方べきの定理・図1
方べきの定理・図2
方べきの定理・図3

(参考) 方冪の定理

扇形

  • 半径r、中心角θ[rad]の扇形について、
    • 弧の長さ:l=θr
    • 弦の長さ:crdθ=2sinθ2
      crdθ=sin2θ+versin2θ
      =sin2θ+(1cosθ)2
      =22cosθ
      =41cosθ2
      =4sin2θ2
      =2sinθ2

立体図形

  • 縦の長さa、横の長さb、高さh の直方体の対角線 l
    l=a2+b2+h2
  • 底面の半径をr、母線の長さ lの円錐の高さ h
    h=l2r2
  • 凸面体の頂点の数をv、辺の数をe、面の数をfとすると以下の関係が成り立つ(オイラーの多面体定理):
    ve+f=2

面積と体積

平面図形の面積

解説はこちらのページをご覧ください

  • 三角形
    • 底辺のながさ a、高さ h の三角形の面積 S
      S=12ah
    • 二辺のながさが a, b でその間の角が θ である三角形の面積 S
      S=12absinθ
    • ある辺のながさが a でその両端の角が θ, δ である三角形の面積 S
      S=a2sinθsinδ2sin(θ+δ)
      ※上記「正弦定理の応用」で、底辺と両端の角から高さが求められることを利用。
    • 三辺のながさが a, b, c で内接する円の半径が r である三角形の面積 S
      S=12r(a+b+c)
    • 三辺のながさが a, b, c で外接する円の半径が R である三角形の面積 S
      S=abc4R
    • 三辺のながさが a, b, c である三角形の面積 S:(ヘロンの公式)
      S=(a+b+c)(a+bc)(ab+c)(a+b+c)16
      また、s=a+b+c2 とすると、S=s(sa)(sb)(sc)
      • 内接円の半径を r とすると、三角形の面積 S=sr=s(sa)(sb)(sc)
        従って、 r=(sa)(sb)(sc)s
      • 外接円の半径を R とすると、三角形の面積 S=abc4R から R=abc4S
        従って、 R=abc4s(sa)(sb)(sc)
      • 上2式から、rR=abc2(a+b+c)
    • 一辺のながさ a の正三角形の面積 S
      S=34a2
直交対角線四角形
凧形
  • 四角形
    • 縦のながさ a、横のながさ b の長方形の面積 S
      S=ab
    • 一辺のながさ a の正方形の面積 S
      S=a2
    • 底辺のながさ a、高さ h の平行四辺形の面積 S
      S=ah
    • 上底のながさ a、下底のながさ b、高さ h の台形の面積 S
      S=12(a+b)h
    • 対角線のながさ a、もう一つの対角線のながさ b でそれらが直行する四角形(直交対角線四角形 ⊃ 凧形・菱形・正方形)の面積 S
      S=12ab
    • 四辺の長さがa,b,c,dで円に内接する四角形の面積S:(ブラーマグプタの公式)
      S=(a+b+cd)(a+bc+d)(ab+c+d)(a+b+c+d)16
      また、s=a+b+c+d2 とすると、S=(sa)(sb)(sc)(sd)
  • 正多角形
    • 一辺のながさ a の正n角形の面積 S:
      S=na24tanπn
    • 中心(重心、外心、内心)から各角までのながさ r である正n角形の面積 S:
      S=nr22sin2πn
      • なお、このような正n角形の周の長さは、2rnsinπn である。
  • 円と扇形
    • 半径 r の円の面積 S
      S=πr2
    • 半径 r 、中心角a(度)の扇形の面積S:
      S=a360r2π
    • 半径 r 、中心角 θ(rad) の扇形の面積 S:
      S=12θr2
    • 半径 r 、弧の長さlの扇形の面積 S
      S=12rl

立体図形の表面積等

解説はこちらのページをご覧ください

  • 縦のながさ a、横のながさ b、高さ h の直方体の表面積 S
    S=2(ab+bh+ah)
    • 底面積 b
      B=2ab
    • 側面積 a
      A=2h(a+b)
  • 一辺のながさ a の立方体の表面積 S
    S=6a2
  • 底面の周の長さ l、高さ h の柱体の側面積 L
    L=lh
円錐
  • 円錐
    • 底面が半径 r、母線 L の円錐:
      側面積 Sl=πrL
      表面積 = 側面積 + 底面積 =πrL+πr2=πr(L+r)
    • 底面が半径 r、高さ h の円錐:
      母線 R=r2+h2
      側面積 L=πrr2+h2
      表面積 = 側面積 + 底面積 =πrr2+h2+πr2=πr(r2+h2+r)

テンプレート:-

3直角四面体
  • 直角三角錐(3直角四面体)
    三角錐OABCにおいて,1つの頂点Oに集まる3つの角 AOBBOCCOA がいずれも直角である三角錐
    • 以下、OA=a,OB=b,OC=cとする。
      頂点Oから、ABCに下した垂線の長さh;
      h=abca2b2+b2c2+c2a2
      ABCの面積S;
      S=a2b2+b2c2+c2a22
      ド・グアの定理(通称:四平方の定理)

テンプレート:-

  • 半径rの球の表面積S:
    S=4πr2
青で示された部分が球冠の一例である。
  • 球冠(平面により切断された球の一部)の曲面部の表面積S:
    関係する諸数値を以下のものとする(右図参照)。
    • 球の半径 r
    • 球冠の底の半径 a
    • 球冠の高さ h
    • 球の中心から球冠の頂点(極)までの線と球冠の底を形作る円板の端との間の極角 θ
    1. rh を用いて、
      S=2πrh
    2. ah を用いて、
      S=π(a2+h2)
    3. rθ を用いて、
      S=2πr2(1cosθ)

テンプレート:-

球台
  • 球台(球を1対の平行な平面で切断した立体/先端が切り取られた球冠)の曲面部(球帯)の表面積S:
    関係する諸数値を以下のものとする(右図参照)。
    • もとの球の半径 R
    • 球台の底の半径 r1,r2
    • 球台の高さ(2つの平行な底面間の距離) h
    1. Rh を用いて、
      S=2πRh
    2. Rr1,r2 を用いて、
      1. 球を切断する平行な2平面の外に球の中心がある場合
        S=2πR(R2r22R2r12)(ただし、r1>r2
      2. 球を切断する平行な2平面の間に球の中心がある場合
        S=2πR(R2r12+R2r22)

テンプレート:-

円環体・トーラス
  • 半径rの円を、円の中心からの距離R(但し、r ≦ Rとする)の直線を軸として回転させた円環体(トーラス、ドーナツ型) の表面積:
    S=4π2rR=(2πr)(2πR)

テンプレート:-

体積

解説はこちらのページをご覧ください

直方体
円錐
錐台
くさび形
  • 縦のながさ a、横のながさ b、高さ h直方体の体積 V
    V=abh
  • 一辺のながさ a立方体の体積 V
    V=a3
  • 底面積 S、高さ h柱体の体積 V
    V=Sh
  • 底面積 S、高さ h錐体の体積 V
    V=13Sh
    • 円錐
      • 底面が半径 r、高さ h の円錐の体積 V
        V=13πr2h
      • 底面が半径 r、母線 L の円錐の体積 V
        高さ h=L2r2
        V=13πr2L2r2
  • 上底の面積 S、下底の面積 S、高さ h錐台の体積 V
    V=h3(s+sS+S)
    • 特に、上底が半径r1の円、下底が半径r2の円、高さ h円錐台の体積 V
      V=hπ3(r12+r1r2+r22)
  • 下底が 縦のながさ a、横のながさ bの長方形、縦と平行である上辺のながさ c、高さ hくさび形の体積 V
    V=bh(a3+c6)
  • 一辺のながさ a正四面体の体積 V
    V=212a3
  • 一辺のながさ a正八面体の体積 V
    V=23a3
  • 一辺のながさ a正十二面体の体積 V
    V=15+754a3
  • 一辺のながさ a正二十面体の体積 V
    V=5(3+5)12a3
  • の体積 V
    V=43πr3
青で示された部分が球冠の一例である。
  • 球冠(平面により切断された球の一部)の体積V:
    関係する諸数値を以下のものとする(右図参照)。
    • 球の半径 r
    • 球冠の底の半径 a
    • 球冠の高さ h
    • 球の中心から球冠の頂点(極)までの線と球冠の底を形作る円板の端との間の極角 θ
    1. rh を用いて、
      V=πh23(3rh)
    2. ah を用いて、
      V=16πh(3a2+h2)
    3. rθ を用いて、
      V=π3r3(2+cosθ)(1cosθ)2

テンプレート:-

球台
  • 球台(球を1対の平行な平面で切断した立体/先端が切り取られた球冠)の体積V:
    関係する諸数値を以下のものとする(右図参照)。
    • もとの球の半径 R
    • 球台の底の半径 r1,r2
    • 球台の高さ(2つの平行な底面間の距離) h
     
    V=πh6(3r12+3r22+h2).

テンプレート:-

円環体・トーラス
  • 半径rの円を、円の中心からの距離R(但し、r ≦ Rとする)の直線を軸として回転させた円環体(トーラス、ドーナツ型) の体積:
    V=2π2r2R=(πr2)(2πR)

テンプレート:-

ベクトル

ベクトルAB
平面上または空間で大きさと向きをもつ量をベクトルという[1]
ベクトルが点Aから点Bに向かう有向線分で表されるとき,このベクトルをABと書き,A始点A終点という。
ベクトルであることを示すのに、a,xなどと表記することもある。
ベクトルの大きさは、|a|と表記する。
aと大きさが同じで向きが逆のベクトルを逆ベクトルといい、aと表記する。
始点終点による表記ABaとすると、a=BAとなる。
大きさ0のベクトルを零ベクトル(ゼロベクトル)といい、0と表記する。
大きさ1のベクトルを単位ベクトルといい、しばしば、eと表記される。aの単位ベクトルは、e=a|a|である。

ベクトルの演算

加法
三角形における理解
ABCにおいて、ABの終点Bを始点としてBCを引くと、ACとなる。
これを、
AB+BC=AC
として、ベクトルの加法を定義する。

テンプレート:-

ベクトルの加法
これは、ベクトルuの終点をベクトルvの始点とし、uの始点からvの終点までの有向線分をu+vと理解する方法であるが、各ベクトルの始点を一致させた平行四辺形の対角線をベクトルの和と理解する方法もある。

テンプレート:-

以上の定義により、
aと逆ベクトル:aの和は0、すなわち、a+(a)=0である。
減法
ベクトルの減法
上記ABCにおいて、AB+BC=ACが成立していた。
ここで、通常の計算と同様の方法でBCを移項すると、AB=ACBC-①
逆ベクトルの定義から、BC=CB
(①の右辺)=ACBC=AC+CB=AB となり、①は成立し移項が可能であることが分かった。

テンプレート:-

実数倍(スカラー倍)
実数倍(スカラー倍)の例
実数mについて、ベクトルmaを以下のとおり定義する。
  1. m>0の時、maは、aと方向が同じで、大きさがm|a|であるベクトル。
  2. m<0の時、maは、aと方向が逆で、大きさがm|a|であるベクトル。
  3. m=0の時、maは、0

テンプレート:-

1次独立

以下、それぞれ、零ベクトルではないベクトルa,b,cについて、
 
a,bについて、akbkは実数)であるとき、a,bは一次独立であるといい、
pa+qb=0ならば、p=q=0 が成立する。
したがって、a,bが一次独立であるとき、
ma+nb=pa+qbならば、m=pかつn=q である。
逆に、a,bについて、pq0であるとき、pa+qb=0ならば、a,bは一次独立である。
 
三次元空間においても、a,b,cが同一平面上にないとき、a,b,cは一次独立であり、
pa+qb+rc=0ならば、p=q=r=0 が成立する。
逆に、a,b,cについて、pqr0であるとき、pa+qb+rb=0ならば、a,b,cは一次独立であり、同一平面上にない。

ベクトルの成分表示

ベクトルaについて、平面空間であれば2個の単位ベクトルx=(1,0),y=(0,1)、三次元空間であれば3個の単位ベクトルx=(1,0,0),y=(0,1,0),z=(0,0,1)を用いて以下のとおり表現できる。これを、ベクトルの成分表示といい、各々の要素を、x成分、y成分、z成分という。
  • 平面ベクトル:a=px+qy=(p,q)
  • 三次元空間ベクトル:a=px+qy+rz=(p,q,z)
成分表示でのベクトル演算
成分表示でのベクトル演算は、各々の成分に対しておこなう
a=(ax,ay),b=(bx,by)とすると、
加減算
a±b=(ax±bx,ay±by)
実数倍(スカラー倍)
ma=(max,may)
ベクトルの大きさ
|a|=ax2+ay2

位置ベクトル

以下に挙げる公式で平面ベクトルで成り立つものは、三次元空間ベクトルでも成り立つ(平面ベクトルは、三次元空間ベクトルの z 成分を0 としたもの)。

  • 位置ベクトル:OA=a,OB=b,OC=c,OP=pとする時、
    • Pが、線分ABm:nに内分するならば、p=na+mbm+n
      • 特に、線分ABの中点をMとし、OM=mとすると、m=a+b2
      • ABCにおいて、その重心Gについて、OG=gとすると、g=a+b+c3
    • Pが、線分ABm:nに外分するならば、p=na+mbmn
    • Pが、2点A,Bを通る直線上の点とした時のベクトル方程式: p=(1t)a+tb
    • Pが、空間上の3点A,B,Cを通る平面上の点とした時のベクトル方程式: p=(1st)a+sb+tc

三角形の5心のベクトル表示

三角形の五心(重心、内心、傍心、外心、垂心)の位置ベクトル p は、頂点の位置ベクトル a,b,c を用いて、
一般式:p=wAa+wBb+wCcwA+wB+wCで表される。ここで wA,wB,wC は重みである。
なお、a=|a|,b=|b|,c=|c|とし、三角形の面積をS(4S=(a+b+c)(a+bc)(ab+c)(a+b+c))とする
重心
g=a+b+c3
wA=1,wB=1,wC=1,wA+wB+wC=3
内心
i=aa+bb+cca+b+c
wA=a,wB=b,wC=c,wA+wB+wC=a+b+c
傍心
e1=aa+bb+cca+b+c
wA=a,wB=b,wC=c,wA+wB+wC=a+b+c
e2=aabb+ccab+c
wA=a,wB=b,wC=c,wA+wB+wC=ab+c
e3=aa+bbcca+bc
wA=a,wB=b,wC=c,wA+wB+wC=a+bc
外心
o=(a2(b2+c2a2))a+(b2(c2+a2b2))b+(c2(a2+b2c2))c16S2
wA=a2(b2+c2a2),wB=b2(c2+a2b2),wC=c2(a2+b2c2),wA+wB+wC=16S2
垂心
h=(a4(b2c2)2)a+(b4(c2a2)2)b+(c4(a2b2)2)c16S2
wA=a4(b2c2)2,wB=b4(c2a2)2,wC=c4(a2b2)2,wA+wB+wC=16S2

内積

  • ab の成す角が θ のとき
    ab=|a||b|cosθ(内積の定義)
    • 成分表示
      平面ベクトルの場合、a=(ax,ay), b=(bx,by)とすると、
      ab=axbx+ayby
      空間ベクトルの場合、a=(ax,ay,az), b=(bx,by,bz)とすると、
      ab=axbx+ayby+azbz
  • a0, b0のとき、
    abab=0
  • OA=a, OB=b, O は原点とするときの三角形 OAB の面積 S
    S=12|a|2|b|2(ab)2
    S=12|a||b|sinθ=12|a||b|1cos2θ、ここで、ab=|a||b|cosθ より cosθ=ab|a||b|
    与式に代入して、S=12|a||b|1(ab)2|a|2|b|2=12|a|2|b|2(ab)2
とくに、a=(ax,ay), b=(bx,by)とすると、
S=12|axbyaybx|
  • 二つのベクトル x, y に対し、
    (xy)2+|x|2|yxy|x|2x|2=|x|2|y|2
よって、
|xy||x||y|
等号成立は、実数 k があって y=kx とできるときのみ。

複素数平面

複素数の実部を横軸、虚部を縦軸にとった平面を複素数平面(複素平面、ガウス平面)、横軸を実軸、縦軸を虚軸という。

z=a+biを複素数平面上にプロットした点A(a,b)について、点A(z)や点zのように表記する。


  • ベクトルとの対応
    • 複素数平面を単なる実数平面と考えれば、A(z)A(a)と対応するので、z=a+bia=(a,b)
    • z=a+biの絶対値|z|は原点を基準としたときの位置ベクトル(a,b)の長さと考えて|z|=a2+b2
    • 3点O,A(α),B(β)が一直線上にあるβ=kαとなる実数kが存在する。


  • α=a+bi,β=c+diに対して、
    • α+βは点αを実軸方向にc、虚軸方向にdだけ平行移動した点
    • αβは点αを実軸方向に-c、虚軸方向に-dだけ平行移動した点
    • αと点βの距離は|βα|
    一つ目の平行移動は「βだけ平行移動」、二つ目の平行移動は「βだけ平行移動」と表すこともできる。
    a=(a,b),b=(c,d)と見ればこれはベクトルの加減法そのものである。


  • z=a+biの共軛複素数z¯に対して、
    • z¯=abi
    • z¯は点zを実軸に関して対称移動した点
    • zz¯=a2+b2=|z|2


  • 絶対値の性質


  • 複素共軛の性質
    • (z¯)=z
    • zが実数z¯=z
    • zが純虚数z¯=z(z0)
    • α±β=α¯±β¯(複号同順)
    • αβ=α¯β¯
    • (αβ)=α¯β¯
    • (zn)=(z¯)n


  • 複素数の極形式
    • 偏角をθとするとz=r(cosθ+isinθ)
    • argz=θ
    • r=|z|


  • α=r(cosθ+isinθ),β=ρ(cosϕ+isinϕ)とすると、
    • αβ=rρ{cos(θ+ϕ)+isin(θ+ϕ)}
    • αβ=rρ{cos(θϕ)+isin(θϕ)}


  • ド・モアブルの定理
    • (cosθ+isinθ)n=cosnθ+isinnθ(=einθ)
    • zn=rn(cosnθ+isinnθ)


  • n乗根
    • (zk)n=1zk=cos2kπn+isin2kπnk[0,n1]
      zkは単位円周上に点1を頂点の一つとする正n角形を描く。
    • (ζk)n=zζk=|z|n(cosargz+2kπn+isinargz+2kπn)k[0,n1]
      ζkは原点を中心とする正n角形を描く。


以下、点A(α),B(β),C(γ)で考える。

  • 内分・外分
    • Cが線分ABをm:nに内分γ=nα+mβm+n
    • Cが線分ABをm:nに外分γ=nα+mβmn
      位置ベクトル・座標それぞれの公式に一致する。


  • 中点・重心
    • Cが線分ABの中点γ=α+β2
    • ABCの重心を表す点G(η)について、η=α+β+γ3


  • 二直線のなす角
    • BAC=argγαβα(半直線ABを始線、ACを動径とみた正方向の回転角)
    • A,B,Cが同一直線上argγαβα=0,πγαβαが実数
    • ABACargγαβα=π2,32πγαβαが純虚数


  • 方程式の表す図形
    • |zα|=rを満たす点zの集合は、点αを中心とする半径rの円。
      円のベクトル方程式の複素数表示。
    • |zα|=|zβ|を満たす点zの集合は、2点A,Bを通る線分の垂直二等分線。
    • m|zα|=n|zβ|(mn)を満たす点zの集合は、ABをm:nに内分する点、外分する点をそれぞれ直径の両端に持つアポロニウスの円


  • 回転移動
  • β=(cosθ+isinθ)α点Bは点Aを原点中心にθだけ回転した先の点。


  • 複素数と行列
    • z=a+biA=(abba)に対応する。
      上の回転移動の例では、θ回転を表す回転行列がR(θ)=(cosθsinθsinθcosθ)であることから、これがcosθ+isinθに対応することがわかる。

脚注

  1. 広義には、多次元の要素を持つ存在(entity)を指し、本文のものは幾何ベクトル・空間ベクトルというが、初等数学においてはこの理解で足りる。