特殊相対論 テンソル

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テンソル

ここからはテンソルという量を用いる。 数学的には、通常物理で扱う 3次元のベクトルは、 SO(3)群という群の表現の1つとなっている。 ここでいうローレンツ不変性は、 ローレンツ群SO(3,1)に対応しており、 これも群の表現が良く知られている。

まず、 ローレンツ変換で変化しない量を スカラーと呼ぶ。 次に、ローレンツ変換に対して、 ${A^{\prime }}^{\mu }={\mathrm{\Lambda }}_{\nu }^{\mu }{A}^{\nu }$ となる量をベクトルと呼ぶ。

${\mathrm{\Lambda }}_{\nu }^{\mu }$ は、6つの4*4の行列で与えられ、ベクトルに対しては ${\mathrm{\Lambda }}_{\nu }^{\mu }$ は、 $B_1=\gamma \left(\begin{array}{cccc}1& \beta & 0& 0\\ \beta & 1& 0& 0\\ 0& 0& 1& 0\\ 0& 0& 0& 1\end{array}\right)$ , $B_2=\gamma \left(\begin{array}{cccc}1& 0& 0& 0\\ 0& 1& \beta & 0\\ 0& \beta & 1& 0\\ 0& 0& 0& 1\end{array}\right)$ , $B_3=\gamma \left(\begin{array}{cccc}1& 0& 0& 0\\ 0& 1& 0& 0\\ 0& 0& 1& \beta \\ 0& 0& \beta & 1\end{array}\right)$ , $R_1=\left(\begin{array}{cccc}1& 0& 0& 0\\ 0& 1& 0& 0\\ 0& 0& \cos a& -\sin a\\ 0& 0& \sin a& \cos a\end{array}\right)$ , $R_2=\left(\begin{array}{cccc}1& 0& 0& 0\\ 0& \cos a& 0& \sin a\\ 0& 0& 1& 0\\ 0& -\sin a& 0& \cos a\end{array}\right)$ , $R_3=\left(\begin{array}{cccc}1& 0& 0& 0\\ 0& \cos a& -\sin a& 0\\ 0& \sin a& \cos a& 0\\ 0& 0& 0& 1\end{array}\right)$ で与えられる。 ただし、ここで $\beta =\frac{v}{c}$ $\gamma =\frac{1}{\sqrt{1-v^2/c^2}}$ を用いた。 (ローレンツ群の表現の正確な定義は、おそらく物理数学、もしくは 数学の"リー群"で与えられる。) 特にx軸方向に速度vですすむ観測者の観察する物理量を 得るには $p{\text{'}}^{\mu }=\gamma \left(\begin{array}{cccc}1& \beta & 0& 0\\ \beta & 1& 0& 0\\ 0& 0& 1& 0\\ 0& 0& 0& 1\end{array}\right)p^{\mu }$ となる。特にx方向だけに注目するときには 変化が起こらないy、z方向を無視して 変換行列を $\gamma \left(\begin{array}{cc}1& \beta \\ \beta & 1\end{array}\right)$ と短く書くことがある。

ここから、例えば、 ${A^{\prime }}^{\mu }{A^{\prime }}^{\nu }$ というような量を作ると、 この量は ${A^{\prime }}^{\mu }{A^{\prime }}^{\nu }={\mathrm{\Lambda }}_{\rho }^{\mu }{A}^{\rho }{\mathrm{\Lambda }}_{\sigma }^{\nu }{A}^{\sigma }$ というように変換することが分る。 ここで、 $T^{\mu \nu }={\mathrm{\Lambda }}_{\rho }^{\mu }{\mathrm{\Lambda }}_{\sigma }^{\nu }{T}^{\rho \sigma }$ というように振舞う量を 2階のテンソルと呼ぶ。 これは添字が2つあることによる。 また、ベクトルは1階のテンソル、 スカラーは0階のテンソルということもできる。 (特に添字が上にあるものを反変テンソル と呼ぶことがある。)

ここで、計量テンソルという特別な2階のテンソルを 定義する。 ${\eta }^{\mu \nu }={\eta }_{\mu \nu }=\left(\begin{array}{cccc}1& 0& 0& 0\\ 0& -1& 0& 0\\ 0& 0& -1& 0\\ 0& 0& 0& -1\end{array}\right)$ ここで、この量を用いてベクトルの2乗 $\begin{array}{c}(A^{\mu }{)}^2={\eta }_{\mu \nu }{A}^{\mu }{A}^{\nu }\\ =(A^0{)}^2-(A^1{)}^2-(A^2{)}^2-(A^3{)}^2\end{array}$ を取る。

それぞれの添字は 同じ添字が上下にきたときに、0-3までの和を取って、 打ち消すことが出来る。 例えば、 $A^{\mu }{A}_{\mu }=\sum _{m=0}^3(A^m{)}^2$

下付き添字の量を共変ベクトルと呼び、対応する 反変ベクトルと計量テンソルを用いて定義することが出来る。

これらの添字は、 計量テンソル ${\eta }^{\mu \nu }={\eta }_{\mu \nu }=\left(\begin{array}{cccc}1& 0& 0& 0\\ 0& -1& 0& 0\\ 0& 0& -1& 0\\ 0& 0& 0& -1\end{array}\right)$ によって、上下に移動させることが出来る。 例えば、 $x_{\mu }={\eta }_{\mu \nu }{x}^{\nu }$ となり、これによって下付き添字の量を定義することが出来る。 特に、下付き添字だけを持つテンソルを共変テンソルと呼ぶことがある。 また、 上付きと下付きの添字を両方持つテンソルを混合テンソルと 呼ぶことがある。