制御と振動の数学/第一類/Laplace 変換による解の吟味/微分不等式と比較定理

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不等式式 (3.18) を解く技法は重要なので,ここで復習しておこう.

微分不等式

u(t) が次の微分方程式 テンプレート:制御と振動の数学/equation を満たすならば, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation が成立する.


証明

1 階線形微分方程式の解法と同じである. テンプレート:制御と振動の数学/equation の両辺に eKt を掛ける[1]と, テンプレート:制御と振動の数学/equation となる[2].これは [  ] 内の関数が広義の単調減少であることを示している.よって テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation これは求める結果にほかならない[3]


  1. eKt>0
  2. ddt[eKtu(t)]=dudteKtKeKtu
  3. eKtu(t)eKt0u(t0) の両辺に eKt>0 をかけると
    u(t)eKteKt0u(t0)=eK(tt0)u(t0)



この結果は実際に解くまでもなく予想できる. テンプレート:制御と振動の数学/equation は微分方程式 φ=Kφ,φ(t0)=u(t0) の解である[1]. そこで,同じ初期値 α を持った二つの式, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation の解を比較してみよう. テンプレート:制御と振動の数学/equation であるから, テンプレート:制御と振動の数学/equation である.t=t0u(t0)=φ(t0). よって次の瞬間, テンプレート:制御と振動の数学/equation となり, 式 (3.19) により,この状態が持続する. 比喩的にいえば,兎 φ と亀 u との競争である. 兎の方が俊足であるから u<φt=t0 で 2 匹が肩を並べていたら,それ以降は兎が先行し, テンプレート:制御と振動の数学/equation それ以前は兎が亀を追っ掛けていたことになる.すなわち, テンプレート:制御と振動の数学/equation ただし兎は居眠りをしないものとする.


  1. φ=CeKt にて φ(t0)=u(t0) より
    φ(t0)=CeKt0=u(t0)
    C=u(t0)eKt0,φ(t)=u(t0)eK(tt0)


例75

テンプレート:制御と振動の数学/equation ならば テンプレート:制御と振動の数学/equation となることを示せ.

解答例



兎と亀の比喩が理解できれば,次の比較定理が成立することは直感的には明らかであろう.


比較定理

二つの微分方程式, テンプレート:制御と振動の数学/equation があって, テンプレート:制御と振動の数学/equation が常に成立するならば,同じ初期条件, テンプレート:制御と振動の数学/equation を持つ二つの解 x(t),y(t) に対して テンプレート:制御と振動の数学/equation が成立する.ただし f(t,x),g(t,x) は領域 atb,<x< で定義されており,連続であるとする. また f(t,x),g(t,x) のいずれか一方は Lipschitz の条件テンプレート:制御と振動の数学/equation ここに K は定数,を満たすものとする.


説明

定理の真意はただし書き以前の部分にある.ただし書きによって解の存在や一意性が保証されているのであるが,それよりも,Lipschitz の条件により,非線形の方程式がほとんど線形の方程式となり,取り扱いが簡単となるのである.


証明

f(t,x) が Lipschitz の条件を満たす場合だけを証明しておこう. 仮定から, テンプレート:制御と振動の数学/equation であるから, テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.いま u:=yx とおけば,上式は, テンプレート:制御と振動の数学/equation である.問題より u(t)0 すなわち テンプレート:制御と振動の数学/equation を得る.


例76

g(t,x) が Lipschitz の条件を満たす場合の証明を実行せよ.

解答例