「高等学校数学C/複素数平面」の版間の差分

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テンプレート:Pathnav 本項は高等学校数学Cの「複素数平面」の解説です。

数学Ⅱ複素数と方程式及び三角関数を履修後に学習してください。数学Cのベクトル二次曲線の先行履修を推奨します。また、数学Ⅲ積分法より前の履修が望ましいです。数学Cの行列とはどちらの順番で履修しても構いません。

複素数平面

複素数 z=a+bia,b は実数)は、複素数平面では直交座標 テンプレート:Math に対応する。"Re" は実軸(real part)、"Im" は虚軸(imaginary part)を意味する。

虚数単位 ii2=1 を満たす数とする。2つの実数 a,b によって a+bi と表される数を複素数という。

座標平面上の点 (a,b) と複素数 a+bi を同一視することで、複素数を座標平面上の点と考えることができる。この平面を複素数平面(complex plane)という。[1]

複素数平面において、 x 軸を実軸(real part)、 y 軸を虚軸(imaginary part)という。

複素数平面上で複素数 z に対応する点 A のことを A(z) と表現し、「点z」と呼ぶこともある。


複素数の加法・減法・実数倍を複素数平面上で考えると、それぞれベクトルの加法・減法・実数倍に対応する。

すなわち、α=a+bi,β=c+di,kを実数とすると、

α+βは点αを実軸方向にc、虚軸方向にdだけ平行移動した点である。
αβは点αを実軸方向に-c、虚軸方向に-dだけ平行移動した点である。
kαは点αの原点からの距離をk倍に拡大した点である。

なお、α=a+biのとき、「実軸方向にa、虚軸方向にbだけ平行移動」を「αだけ平行移動」と表現する場合がある。

ベクトルと同様に、3点0,α,βが一直線上にある条件は、β=kαとなる実数kが存在することである。


複素数 z=a+bi について複素数 z¯=abiz共役複素数[2]といい、z¯ で表す。

複素数 z と複素数 z は原点に対して対称であり、複素数 z と複素数 z¯ は実軸に対して対称である。 つまり、次のことが成り立つ。

αが実数α¯=α
αが純虚数α¯=α(ただしα0

また、α¯¯=αである。


  • 問題
    • 複素数αの実部と虚部をそれぞれα,α¯を用いて表せ。
    • 以下を証明せよ
      1. α+β=α¯+β¯
      2. αβ=α¯β¯
      3. αβ=α¯β¯
      4. (αβ)=α¯β¯
      5. (αn)=(α¯)n


上で証明した性質を用いると、数学Ⅱで習った「実数係数のn次方程式の解の一つがαならば、α¯も方程式の解の一つである」ことを証明できる。


複素数平面において、複素数 z=a+bi から原点までの距離を絶対値といい |z| で表す。三平方の定理より |z|=a2+b2 である。 b=0のとき、実数の絶対値で考えた時と同じ結果になることがわかる。

2点A(α),B(β)間の距離(すなわち線分ABの長さAB)を考える。平行移動しても線分の長さは変わらないので、点Aを原点Oに移す平行移動を考えると、αだけ平行移動するので、点Bは点C(βα)へと移る。 つまり、AB=OC=|βα|である。

zz¯=(a+bi)(abi)=a2+b2=|z|2 である。zが実数のとき、z¯=zなので実数の絶対値の2乗の計算と一致する。


極形式

r(cosϕ+isinϕ)に対応する点。

上記のように、複素数平面では、複素数の実部と虚部をそれぞれ平面上の点の直交座標に対応させている。ところで、平面上の点の位置の表し方として、直交座標の他に極座標があった。点の位置を極座標で表すことに対応する複素数の表し方を、極形式という。直交座標と極座標は

x=rcosθ, y=rsinθ

で変換することができるのであった。つまり、極形式とは次のような形の複素数の表現である。

z=a+bi=rcosθ+irsinθ=r(cosθ+isinθ)

ここで、θを複素数z偏角といい、θ=argzで表す。また、r=a2+b2=|z|である。θは原点、za を頂点とする三角形の原点の角度を表している。

逆三角関数を知っている読者は「偏角はarctanbaで求められる」と思うであろうが、逆正接関数の値域はπ2arctanxπ2であり、偏角は基本的に0argz2πあるいはπargzπの範囲で表すため、場合分けが必要になってしまい面倒である。なので、偏角を求めるときは素直にcosθ,sinθの値からその値をとるθを求めよう。


z¯の極形式は、z¯=r(cosθisinθ)=r{cos(θ)+isin(θ)}である。 つまり、argz¯=argzが成り立つ。


複素数の積・商

極形式で複素数を表すと、複素数の積が次のように簡単に計算できる。

z1=r1(cosθ1+isinθ1), z2=r2(cosθ2+isinθ2) とすると、

z1z2={r1(cosθ1+isinθ1)}{r2(cosθ2+isinθ2)}=r1r2(cosθ1+isinθ1)(cosθ2+isinθ2)=r1r2{cosθ1cosθ2sinθ1sinθ2+i(sinθ1cosθ2+cosθ1sinθ2)}=r1r2{cos(θ1+θ2)+isin(θ1+θ2)}
ただし、三行目から四行目への式変形は三角形の加法定理を使った。
次に複素数の商を計算してみよう。
z2=r2(cosθ2+isinθ2) とすると、
1z2=z¯2z2z¯2=z¯2|z2|2=1r22r2(cosθ2isinθ2)=1r2(cos(θ2))+isin(θ2))
なので、
z1z2=r1r2(cos(θ1θ2)+isin(θ1θ2))
である。
これから、複素数 z1 に複素数 z2 をかける操作は、複素数 z1 の原点からの距離を r2 倍し、原点周りに θ2 だけ回転した点に移す操作であると、複素数 z1 を複素数 z2 で割る操作は、複素数 z1 の原点からの距離を 1r2 倍し、原点周りに θ2 だけ回転した点に移す操作であると、幾何学的に理解できる。
また、この性質から以下の性質が直ちに導かれる。
  1. |z1z2|=|z1||z2|
  2. |z1z2|=|z1||z2|
  3. argz1z2=argz1+argz2
  4. argz1z2=argz1argz2

ド・モアブルの定理

テンプレート:Wikipedia 整数 n に対し、複素数 cosθ+isinθn 乗は、

(cosθ+isinθ)n=cosnθ+isinnθ

となることが知られている。これを ド・モアブルの定理 という。数学Iで習ったド・モルガンの法則と混同しないように注意。

これを証明しよう。

まず、n0 の場合を数学的帰納法で証明する。

n=0 のとき、

(左辺)=(cosθ+isinθ)0=1
(右辺)=cos0+isin0=1

である。

n1 とし、

n1 のとき

(cosθ+isinθ)n1=cos(n1)θ+isin(n1)θ

が成り立つと仮定すると

(cosθ+isinθ)n=(cosθ+isinθ)n1(cosθ+isinθ)={cos(n1)θ+isin(n1)θ}(cosθ+isinθ)=cosnθ+isinnθ
となり、n の場合も証明できた。

n1 のとき、

(cosθ+isinθ)n={(cosθ+isinθ)1}n={cos(θ)+isin(θ)}n=cos(nθ)+isin(nθ)


したがって、 n が整数のときド・モアブルの定理が成り立つことが証明できた。


ド・モアブルの定理を用いて、zについてのn次方程式

zn=a

の複素数解をすべて求めてみよう。まず、aが正の実数のときを考える。z=r(cosθ+isinθ)と極形式で表すとき、ド・モアブルの定理よりzn=rn(cosnθ+isinnθ)である。正の実数aの絶対値はa、偏角は0であることに注意すると、zn=aを満たすとき、

rn=a, nθ=2kπ

でなければならないことがわかる。ただし k は整数である。rが正の実数であることに注意してこの式を解くと、

r=an, θ=2kπn

であるから、整数kを用いて

z=an(cos2kπn+isin2kπn)

と表される数が複素数解のすべてである。

一般の複素数αに対して、zについてのn次方程式

zn=α

を考えると、まったく同様の計算により解は整数kを用いて

z=|α|n(cosargα+2kπn+isinargα+2kπn)

と表される。

偏角が 2π の整数倍ずれるだけの複素数は同じ複素数であることに注意すると、いずれの場合も異なる解はちょうどn個存在することがわかる。そのn個の解を複素数平面上で考えると、zのn乗根は原点を中心とする正n角形を描くことが確かめられる。

複素数平面の応用

ここでは、複素数平面を利用して幾何学的な問題を解くことを考える。

線分の内分・外分

α=a+bi,β=c+diとすると、複素数平面とベクトルの対応から点A(α),B(β)位置ベクトルはそれぞれa=(a,b),b=(c,d)となる。

このとき、線分ABm:nに内分する点、外分する点の位置ベクトルはそれぞれna+mbm+n,na+mbmnと求まる。

もう一度ベクトルと複素数平面の対応を考えると、それぞれn(a,b)+m(c,d)m+nn(a+bi)+m(c+di)m+n,n(a,b)+m(c,d)mnn(a+bi)+m(c+di)mnと変形できる。

つまり、線分ABm:nに内分する点、外分する点を表す複素数はnα+mβm+n,nα+mβmnである。


中点・重心に関しても位置ベクトルと同様の公式が成り立つ。


方程式の表す図形

α を複素数、r を正の実数とする。 方程式 |zα|=r を満たす複素数 z の軌跡は、 α を中心とし、 r を半径とする円である。これは円のベクトル方程式の複素数表示である。

α,β を複素数とする、方程式 |zα|=|zβ| を満たす複素数 z の軌跡は、α,β を通る線分の垂直二等分線である。

異なる2点からの距離の比がm:nである点全体の集合はm=nのときは2点を結ぶ線分の垂直二等分線であるが、m≠nのときは2点を直径の両端に持つ円となる。この円をアポロニウスの円という。

例えば、方程式|z+3|=2|z|を満たす点zの集合は、

|z+3|2=4|z|2
(z+3)(z¯+3)=4zz¯
zz¯zz¯=3
(z1)(z¯1)=22
|z1|2=22
|z1|=2
点1を中心とする半径2の円

と求まる。 この円は点-3, 点0からの距離の比が2:1なアポロニウスの円である。


複素数平面上の点 A(α),A(α),B(β),B(β) に対し、 argααββ はベクトル AA とベクトル BB のなす角である。特に、 ααββ が実数のときベクトル AA とベクトル BB は平行。ααββ が純虚数のときはベクトル AA とベクトル BB は垂直である。


w=1/zが描く図形の問題は入試でよく見られる。 与えられた条件からzの方程式を導き、wの関係式に変形して解いていく。

例えば、zが点12を通り実軸に垂直な直線上を動くとき、点zは原点と点1を結ぶ線分の垂直二等分線上を動くので、|z|=|z1|である。w0よりw=1zz=1wなので、|1w|=|1w1|1=|1w||w1|=1である。よって、点wは原点を除いた、点1を中心とする半径1の円を描く。


回転移動

複素数 z に複素数 cosθ+isinθ をかけた複素数 (cosθ+isinθ)z は、複素数 z を原点を中心に θ だけ回転した点を表す。これはド・モアブルの定理を用いて証明できる。

「負の数に負の数を掛けたら正の数になる」という中学1年生で習った事実の数学的な説明はこの定理を用いて初めてできる。


一般に、複素数 z を複素数 α を中心に θ だけ回転した点 z は、z=(zα)(cosθ+isinθ)+α である。 zα=(zα)(cosθ+isinθ) の形にすると覚えやすいだろう。


複素数zcosθ+isinθを掛ける操作はzの位置ベクトルに回転行列(cosθsinθsinθcosθ)を掛ける一次変換に対応する。 一般に複素数a+biは二次行列(abba)に対応することが知られている。 回転移動の計算は、行列を用いる場合に比べて複素数を用いた方が楽な場合が多い。 特に、回転の中心が原点ではない場合、行列の場合は余計な次元を追加して計算する必要がある(詳しくはアフィン変換を参照)。それに比べ、複素数の場合は比較的単純な計算で一般の点を中心とした回転を求めることができる。


発展:図形の回転

図形は点の集合なので、図形の回転移動は点の回転移動に帰結する。つまり、点の座標が定数から変数に変わるだけである。図形を表す方程式がわかっていれば、回転移動した図形を表す方程式を求められる。

回転前の点をX(x,y)、回転後の点をY(x', y')とする。

このとき、「Xをθだけ回転したらYに移った」と考えると最終的に出てくる式はそれぞれ左辺にx',y'、右辺に(xの式),(yの式)が来る形となる。

xとyの関係式(回転前の図形を表す方程式)に代入するためにはそれぞれ左辺にx,y、右辺に(x'の式),(y'の式)が来る形にする方が望ましい。

そのため、発想を逆転させて「Yを-θだけ回転したらXに移った」と考える。

こうすると、最終的に出てくる式はそれぞれ左辺にx,y、右辺に(x'の式),(y'の式)が来る形となる。

具体的に計算すると、

x+yi={cos(θ)+isin(θ)}(x+yi)=(cosθisinθ)(x+yi)=(xcosθ+ysinθ)+(xsinθ+ycosθ)i
{x=xcosθ+ysinθy=xsinθ+ycosθ

この式を図形の方程式に代入すると、回転後の図形の方程式となる。

陽関数y=f(x)は陰関数表示f(x,y)=0へと変形できる。


図形の回転

図形を表す方程式がf(x,y)=0であるとき、原点を中心にθだけ回転させた図形の方程式はf(xcosθ+ysinθ,xsinθ+ycosθ)=0である。


記述式の問題の場合、上の公式に代入するのではなく、先ほど述べた手順で式変形して求めるのが望ましい。

脚注

  1. 複素平面やガウス平面と呼ばれることもある。
  2. 本来は「共軛」と書く。