「制御と振動の数学/第一類/Laplace 変換による解の吟味」の版間の差分

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(相違点なし)

2022年11月23日 (水) 15:26時点における最新版

さて,これまでの議論は前座であり,ここからが本論となる.

前章で述べた Laplace 変換による解法を顧みて,果たして正しい解が得られているのか否かを吟味しよう. 取り扱う対象は定数係数の線形微分方程式, テンプレート:制御と振動の数学/equation および, テンプレート:制御と振動の数学/equation であり,いずれも初期値, テンプレート:制御と振動の数学/equation を満たす解を求めることが問題であるとする.解法の手順は次の通りであった.


(3.1) を初期値,式(3.3)の下に Laplace 変換すれば, テンプレート:制御と振動の数学/equation である.これを [x] について解けば, テンプレート:制御と振動の数学/equation ここに, テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.同様に式(3.2)(3.3)を Laplace 変換し [x] を求めると, テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.そこで, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation とすると,式(3.1)(3.3)の解は, テンプレート:制御と振動の数学/equation(3.2)(3.3)の解は, テンプレート:制御と振動の数学/equation となる,ということであった.ここに *合成積を表す.

これだけの議論で果たして式(3.7)(3.8)(3.1)(3.3)(3.2)(3.3)の解であると結論することができるであろうか. それを吟味することが,この章の目的である.

吟味の詳細に入る前に,これまでで得られた結果をまとめておこう.

定理3.1(3.1)(3.3) あるいは 式(3.3)(3.3) の解の Laplace 変換 [x] に対して次の事実が成り立つ.

(Ⅰ) 分母は初期値に無関係に,微分方程式の形だけで決まる.

(Ⅱ) 分子は初期値によって決まる.しかも [x] の分子多項式 テンプレート:制御と振動の数学/equation は初期値 (ξ1,ξ2,ξ3,ξn) と 1:1 に対応する.

以上より,異なる初期値には異なる [x] が対応する.


さらに吟味を続ける.上の解法の手順を要約すると,

  • 《作業 1》 解 x(t) が存在すると仮定して,X(s)=[x(t)] を計算する.
  • 《作業 2》 求まった X(s) に対して X(s)=[x~(t)] となる x~(t) を見つける.
  • 《作業 3》 x~(t) が解である.

となる.この推論は正しいのであろうか.このようにまとめられると,誰しも不安を感ぜざるを得ないであろう.この不安を取り除く方法は,

  • (1) x~(t) が解であることを直接確かめる

のが一番の良策である.さらに,

  • (2) x~(t) 以外に解がない

ことが確かめられたらさらによい.その上,

  • (3) t00 で初期値が与えられたときの解の見つけ方

を知っておくことも必要である.

この章では,線形定常常微分方程式論からの若干の話題を準備しながら,これらの問題の解決を与えることにしよう.