「高等学校数学A/場合の数と確率」の版間の差分

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はじめに

おはじきを一列に並べることについて考えてみる。その並べ方の数にはいくつもの方法があることがわかる。実際に全ての並び方を試すことも、樹形図を用いて紙に書き起こして数えることも時間さえあれば可能である。

このように、「全部で何通りがあるか」という、その「何通り」の「何」にあたる数字を、場合の数(ばあいのかず) と呼ぶ。

このように事柄には、それらのやり方が全部で何通りあるかを計算する技術がある。


ある事柄について(そのことが起こりうる)場合の数を正確に数えることが理解の基礎であり、その事柄について、どのことが起こりやすくどのことが起こりづらいかを見分けるための基礎となる。 つまり、場合の数は事柄が起こりうる確率と密接な関係にある。

例えば、ポーカーなどのカードゲームでは集めることが難しい役は高いランクが与えられているが、 これは起こりにくい役が出来るトランプの組み合わせの現われる確率が小さいことによる。 このことは、52枚のカードから5枚を引いて来たときに全てのカードを引く確率が同じであるとしたとき、ある役に対応するカードの組み合わせを引く場合の数がより少ないことに対応する。

このように、場合の数は事柄が起こりうる確率と密接な関係にある。

カードゲームのように確率が具体的に計算できる場合の他にも、確率の考え方を用いて計算される事柄は多くある。

  • 例:保険

たとえば、保険(ほけん)と呼ばれるものはある事柄に値段をつけるものであるが、 保険を下ろさなくてはならない事柄が起こりにくいと客観的に思われるものほど、そのものの値段が下がるという特徴がある。 例えば、自動車保険に加入するのに必要な代金は若者では高く、年令を重ねるごとに低くなっていく。 これは、若者は自動車の免許を取得して時間が短い場合が多く、保険金の支払を必要とする自動車事故をおこす可能性が高いことによる。 いっぽう、年令を重ねたものについては運転の技量が時とともに上達すると一般に考えられるので保険をかけるための代金は少なくなるのである。 また、同じ若者でも既に何度か事故を重ねたものは同じ年代の他の若者よりも保険料が高くなる傾向がある。 これは、何度か事故を重ねたものは運転の仕方に何らかの問題がある傾向があり、それによってふたたび事故をおこす可能性が通常のものと比べてより高いと考えられることによる。

  • 例:銀行の融資(ゆうし)

銀行の融資(ゆうし)でもやはり確率の考えを用いて高い利益を出すことが実践されている。 融資でもやはり保険業とおなじく、より貸倒れになる可能性が高い相手に対しては高い金利で資金を貸し付け、 より安定した資金を持っている相手に対してはより低い金利で資金を貸し付けることを実行して来た。

  • 例:株式市場の分散投資

利益を安定的に稼ぐ方法として、いくつかの会社が発行する互いに性質の異なった株などを合わせて購入先を分散することで株の値段が下がったときでも値段があまり減ることが無いようにする方法が考案されている。 (ただし、値段が減りづらいのと同様に、値段は上がりづらい。) これは、性質の異なった商品を合わせて扱うことで、値段が急変する確率を下げることが出来ることを表わしている。


しかし、確率では、必ずしも予測した通りに事が進むわけでは無いことに注意する必要がある。

この章では場合の数と確率の計算法を紹介する。まず先に様々な事柄の場合の数の計算法を扱い、その結果を用いてある事柄が起こる確率を計算する方法を紹介する。

なお、数学Iの集合と論理の先行履修を前提としている。

この分野を応用した分野として、数学Bの確率分布が存在する。

集合の要素の個数

2つの集合の和集合の要素の個数

ここでは、有限集合 A の要素の個数を n(A) で表す。

たとえば、10以下の自然数の集合を U として、そのうち 偶数の集合を A とする場合、

A={2, 4, 6 , 8, 10}

なので、Aの要素の個数は5個なので

n(A)=5

である。

なお、 U={1, 2, 3, 4, 5, 6 , 7, 8, 9, 10} で要素の個数は10個なので

n(U)=10

である。


次のような問題を考えてみよう。 100までの自然数のうち、2または3の倍数は何個あるか?


このような問題の解法を考えるため、準備の問題として、まず10までの自然数で考えてみよう。


先程の例題で2の倍数については考えたので、次の問題として10までの3の倍数の個数について考えよう。

10以下の自然数の集合を U として、そのうち 3の倍数の集合を B とする場合、

B={3, 6 , 9} なので、Bの要素の個数は3個なので

n(B)=3

である。

さて、

A={2, 4, 6 , 8, 10}
B={3, 6 , 9}

には共通して 6 という要素が含まれている。


自然数10までにある2または3の倍数にあたる要素は、

{2, 3, 4, 6, 8, 9, 10}

であり、要素の個数をかぞえると 7個である。

一方、

n(A)+n(B)= 5+3 =8

であり、1個多い。

このように1個多くなってしまった原因は、 集合Aと集合Bに共通して含まれている要素 6 を二重に数えてしまっているからである。


一般に、2つの集合A,Bの要素の個数 n(A) と n(B) を用いて、AまたはBの条件を満たす要素の個数をかぞえたい場合には、AとBに共通して含まれている要素の個数を差し引かなければならない。


このことを式で表すと

n(A∪B) = n(A)+n(B)−n(A∩B)

になる。

ただし、「∪」とは和集合の記号で、 A∪B とは 集合Aと集合Bの和集合のことである。

「∩」とは共通部分の記号で、 「A∩B」とは 集合Aと集合Bの共通部分のことである。


では、この公式を参考にして 100までの自然数のうち、2または3の倍数は何個あるか? の答えを求めよう。


100までの自然数のうちの、2の倍数の集合をAとして、3の倍数の集合をBとすると

n(A)= 100/2 =50 なので、集合Aの要素の個数(2の倍数の個数)は 50個、つまり n(A)= 50 である。
n(B)については[99÷3]=33 なので 集合Bの要素の個数(3の倍数の個数)は33個、つまり n(B)= 33 である。


さらに、2の倍数でもあり3の倍数でもある数の集合 A∩B とは、つまり6の倍数の集合のことであり(なぜなら 2 と 3 の最小公倍数が 6 なので)、 96÷6=16 なので、A∩B の要素の個数は 16 個、つまり n(A∩B)= 16 である。

そして、公式

n(A∪B) = n(A)+n(B)−n(A∩B)

を適用すると、

n(A∪B) = 50 + 33 − 16 = 67

である。


よって、100までの自然数のうちの2または3の倍数の個数は 67個 である。

発展: 3つの集合の和集合の要素の個数

3つの有限集合の和集合の要素の個数については、次の公式が成り立つ

n(A∪B∪C) = n(A) + n(B) + n(C) −n(A∩B) −n(B∩C) −n(C∩A) + n(A∩B∩C)

問題

右の図を参考に、上の公式を証明せよ。


例題

100以下の自然数のうち、2の倍数または3の倍数または5の倍数であるものの個数を求めよ。


(解法)

まず、100以下の自然数のうち、

2の倍数の集合をA、
3の倍数の集合をB、
5の倍数の集合をC、

とする。

100÷2=50なので、100は50番目の2の倍数であり、よって100以下の2の倍数は50個である。同様に考えて要素の個数を求めると、

n(A) = 50
n(B) = 33
n(C) = 20

である。

一方、100以下の自然数のうち

A∩B は 6の倍数の集合、
B∩C は 15の倍数の集合、
C∩A は 10の倍数の集合、

となる。

よって、先ほどと同様に考えると

n(A∩B) = 16
n(B∩C) = 6
n(C∩A) = 10

また、100以下の自然数のうち、

A∩B∩C は 30の倍数の集合 となる。

A∩B∩C の要素の個数は

n(A∩B∩C) = 3

である。


よって、

n(A∪B∪C) = n(A) + n(B) + n(C) −n(A∩B) −n(B∩C) −n(C∩A) + n(A∩B∩C) = 50 + 33 + 20 − 16 − 6 − 10 + 3 = 74

なので、100以下の自然数のうちの2の倍数または3の倍数または5の倍数であるものの個数は 74個である。

場合の数

場合の数 

たとえば大中小3個のサイコロをふって、目の和が5になる目の組は、何通りあるだろうか。


このような問題を解く方法のひとつとして、図のように、組み合わせを総当たりで書く方法がある。

大中小の合計3個のサイコロをそれぞれ A,B,C として表し、それらの文字に、どの目が出れば合計5になるかを考えると、結果は図のようになる。

このような図を 樹形図(じゅけいず) という。


問題

3個のサイコロをふるとき、目の和が6になる場合は何通りあるか、樹形図を用いて求めよ。


2つの事柄A, Bは同時に起こらないとする。Aの起こり方がa通りあり、Bの起こり方がb通りあるとき、次の和の法則が成り立つ。

AまたはBが起こる場合はa+b通りである。

和の法則は3つ以上の事柄でも成り立つ。


事柄Aの起こり方がa通りあり、その各々について事柄Bの起こり方がb通りあるとき、次の積の法則が成り立つ。

AとBがともに起こる場合はab通りある。

積の法則は3つ以上の事柄でも成り立つ。


  • 問題
    • 以下の場合の数を求めよ。
      1. 2個のサイコロを投げるとき、出る目の和が10以上になる場合
      2. (a+b)(p+q+r)(x+y+z+w)の展開式の項の個数
      3. 200の正の約数の個数

階乗

最初に、n個の異なったものを並べ換える場合の数を数える。 まず最初に並べるものはn個、次に並べるものは(n-1)個、その次に並べるものは(n-2)個 ... とだんだんと選べるものの数が減って行き、最後には1個しか残らなくなることに注目すると、この事柄に関する場合の数は

n(n1)(n2)321

となり、1からnまでの自然数の積になる。 この数を 階乗 (かいじょう、factorial)と呼び、階乗nの記号は n! で表す。

すなわち、階乗は テンプレート:テキストボックス と定義される。この階乗の記号を使えば、この問題のときの場合の数は n!であると言うことが出来る。


  • 問題例
    • 問題
3!,4!,5!,6!

をそれぞれ計算せよ。

    • 解答
n!=12n

を用いて計算すればよい。 答えは、

3!=6
4!=24
5!=120
6!=720

となる。


    • 問題

それぞれに1から5までの数字が書かれた5枚のカードが置いてある。 このカードを並べ換えたとき、 (I)カードの並べ方の数、 (II)偶数が得られるカードの並べ方の数、 (III)奇数が出るカードの並べ方の数を、それぞれ計算せよ。

    • 解答

(I) カードの数が5枚でそれぞれが区別できることから、カードの並べ方の数は

5!

となり、120となる。

(II) 偶数を得るためには一の位である最も右に出るカードが、偶数となればよい。 このようなカードは2と4であり、それぞれに対して後の4枚は自由に選んでよい。 このため、このようなカードの並べ方は、

2×4!=48

となる。

(III) 奇数を得るためには一の位である最も右に出るカードが、奇数となればよい。 このようなカードは1,3,5であり、それぞれに対して後の4枚は自由に選んでよい。 このため、このようなカードの並べ方は、

3×4!=72

となる。一方、5枚のカードを並べ換えて得られる数は必ず偶数か奇数の どちらかであるので、(I)の結果から(II)の結果を引くことによっても (III)の結果は得られるはずだが、実際にそれを計算すると

12048=72

となり、確かにそのようになっている。


    • 問題

0,1,2,3,5が書かれた5枚のカードがある。これを並び換えたとき、

(I)5桁の数が得られる数、 (II) 5桁の偶数が得られる数、(III) 5桁の奇数が得られる数、(IV) 5桁の5の倍数が得られる数

をそれぞれ求めよ。

    • 解答

(I) 先頭が0になったときには5桁の数にならないことに注意すればよい。求める場合の数は

4×4!=96

となる。

(II) 最初が0でなく最後が0か2である数を数えればよい。まず、最後が0であるときには、残りの4枚は任意であるので

4!=24

通りの組み合わせがある。

次に、最後が2であるときには最初は0であってはいけないので、

3×3!=18

通りある。 2つを合わせた数が5桁の偶数が得られる場合の数である。答えは、

24+18=42

となる。

(III) (I)の結果から(II)の結果を引けばよいが、ここではその結果が正しいかどうか 確かめるためにも5桁の奇数が得られる組み合わせを数え上げてみる。 5桁の奇数を得るためには最後の数は1,3,5のいずれかでなくてはならない。 このうちのどの場合についても5桁の数を得るためには最初の数が0で 合ってはならないのでそれぞれの場合の数は、

3×3×3!=54

となりこれが5桁の奇数を得る場合の数である。 (II)の結果と足し合わせると確かに(I)の結果と等しい96を得る。

(IV) 5の倍数を得るためには最後の数が0か5であればよい。 このとき最後が0になる場合の数は他の4つが任意であるため

4!=24

存在する。次に、最後が5になる場合の数は最初の数が0であってはならないため

3×3!=18

だけ存在する。 よって答えは

24+18=42

となる。


順列

n個の異なったものからr個を選んで、順番をつけて並べる並べ方の総数を、nPrと書く。 また、このような計算の仕方を 順列 (じゅんれつ、英:permutation) という。

n個の異なったものからr個を選んで順番をつけて並べる仕方の数のことをn個からr個とる順列という。 のように言う。

最初に並べるものはn通り、次に並べるものは (n−1)通り 、その次に並べるものは (n−2)通り ,... 最後には (n−(r−1))通り というように、だんだん選べるものの数が減って行くことに注目すると、順列の総数として

nPr=n(n1)(n2)(nr+1)=n!(nr)!

が得られる。

※ なお nPr のP とは、順列を意味する英語 permutation の頭文字である。

一般に nPr では n ≧ r である。


  • 問題例
    • 問題

(I)

5P3

(II)

4P2

(III)

7P3

(IV)

10P5

(V)

10P1

(VI)

7P0

をそれぞれ計算せよ。

    • 解答

それぞれ

nPr=n(n1)(n2)(nr+1)=n!(nr)!

を用いて計算すればよい。

結果は、 (I)

5P3=5×4×3=60

(II)

4P2=4×3=12

(III)

7P3=7×6×5=210

(IV)

10P5=10×9×8×7×6=30240

(V)

10P1=10

(VI)

7P0=7!7!=1

となる。

(V)と(VI)については一般的に整数nに対して

nP1=n
nP0=1

が得られる。このとき

nP0=1

は元々の順列の定義からすると"n個のものの中から1つも選ばない場合の数"に対応しており、少々不自然なように思えるが、このように値を置いておくと便利であるため通常このように置くのである。あまり、実際の場合の数の計算でこのような値を扱うことは多くはないといえる。


円順列

テンプレート:-

A, B, C, D, E の5人が円形に手をつないで輪をつくるとき、その並び方は何通りあるか。

このような問題の場合、図のように、回転すると重なる並びは同じ並びであると考える。


解き方の考え方は数種類ある。

1つの考え方として、5人が円形に並ぶとき、図のように回転すると同じになる並びは、5通りずつあるという考え方により、 5!5 とする考え方である。


もう一つの考え方として、Aを固定して、残りの4人の並びを考えれば、別々の並びが作れるという考え方で、 (51)! とする考え方である。


どちらにせよ、結果は

4!=432=24 (通り)

である。

一般に 異なる n個 のものを円形に並べたものを円順列という。

円順列の総数として、次のことが成り立つ。

異なる n個 の円順列の総数は (n1)! である。


円順列のうち、裏返したら一致するものを同じと見做す場合の順列を数珠順列という。

異なるn個の数珠順列の総数は、(n1)!2である。

ここで、円順列のときに左右対称であるものは数珠順列にしたときも1通りとして、左右非対称であるものは数珠順列にしたとき2通りが1通りとして数えられる。

重複順列

異なるn個のものから重複を許してr個を取り出して並べる順列をn個からr個取る重複順列といい、nΠrと表す(ただし、r>nであっても良い)。

この場合、各個のものの選び方は他のものの選び方とは無関係にそれぞれn通りあるため、順列の総数はnΠr=n×n××nr=nrである。


有限集合{x1,x2,x3,xn}が与えられたとき、その部分集合の要素はn個のそれぞれの要素を選ぶ/選ばないの2通りの選択によって決まる。そのため、n個の要素からなる集合の部分集合の個数は、2個からn個取る重複順列の総数(2Πn)に等しい

組合わせ

n個の異なったものからr個を選んで、順番をつけずに並べる仕方の数を、nCrと書き、このような計算を 組合わせ(combination) という。 例えば、いくつもあるボールに番号がふってあるなどの方法で、それぞれのボールが区別できるn個のボールが入った箱の中からr個のボールを取りだす時、取りだしたボールを取りだした順に並べるとすると、この場合の数は順列nPrに対応する。

一方、取りだしたボールの種類が重要であり取りだした順番が特に必要でないときには、この場合の数は組み合わせnCrに対応する。これらの数はお互いに異なった場合の数であり、互いに異なった計算法が必要となる。

nCrは、nPr通りの並べ方を作った後にそれらの並びを無視したものに等しい。ここで、r個を取りだして作った並びについて、並べ方を無視するとr!個の並びが同一視されることがわかる。

なぜなら、r個のお互いに区別できる数を自由に並び換える場合の数はr!であり、それらが全て同一視されるとすれば全体の場合の数は r!の分だけ減ることになるからである。よって、

nCr=nPrr!=n!(nr)!r!

が得られる。


テンプレート:演習問題

テンプレート:演習問題


テンプレート:演習問題


nCrについて以下の式が成り立つ。

nCr=nCnr
nCr=n1Cr+n1Cr1


導出

nCr=n!(nr)!r!

を用いると、

nCnr=n!(n(nr))!(nr)!
=n!r!(nr)!
=nCr

が得られ、示された。

同様に

nCr=n!(nr)!r!

を用いると、

n1Cr+n1Cr1
=(n1)!(n1r)!r!+(n1)!(nr)!(r1)!
=(nr)nnCr+rnnCr
=nCr

となり示された。

最初の式は、異なるn個のもののうちr個にXというラベルをつけ、残りのn-r個にYというラベルをつける場合の数から求めることができる。異なるn個のもののうちからr個を選びラベルXをつけ、残りにラベルYをつける場合の数はnCr であり、異なるn個のもののうちからn-r個を選び、ラベルYをつけ、残りにラベルXをつける場合の数はnCnr である。当然、前者と後者の場合の数は等しいので、ここから、nCr=nCnr が求められる。

2つ目の式は、 "n個のものからr個を選ぶ仕方の数は、次の数の和である。 最初の1つを選ばずに他のn-1個からr個を選ぶ仕方の数と、最初の1つを選んで他のn-1個からr-1個を選ぶ仕方の数との 和である。" ということを表わしている。


  • 問題例
nCr=nCnr

を用いて (I)

5C3

(II)

7C4

(III)

10C9

(VI)

8C5

をそれぞれ計算せよ。

    • 解答

上の式を用いて計算することが出来る。もちろん直接に計算しても 答えを得ることが出来るが、通常は簡単化してから計算した方が楽である。 (I)

5C3=5C53=5C2=10

(II)

7C4=7C74=7C3=35

(III)

10C9=10C109=10C1=10

(VI)

8C5=8C85=8C3=56

となる。


    • 問題

図のようなルートを左下の点から右上の点まで歩いて行く人がいる。 ただし、この人は右か上にしか進めないとする。このとき、

(I) 左下から右上まで進む仕方の数
(II) a点を通過して右上まで進む仕方の数

を計算せよ。ただしa点は*と書かれている点のすぐ下の通路のことをさしている。 それぞれのルートは途切れていない縦4つ、横5つの碁盤目上のルートに なっていることに注意せよ。

___________

|_|_|_|_|_|

|_|_|*|_|_|

|_|_|_|_|_|

|_|_|_|_|_|


    • 解答

(I) 左下にいる人は9回進むことで右上の点に辿り着ける。そのため、左下にいる人が選びうるルートの数は9回のうちのどの回で右ではなく上を 選ぶかの場合の数に等しい。このような場合の数は、9回のうちから自由に4つの場所を選ぶ方法に等しく、組み合わせを用いて書くことが出来る。実際に9回のうちから自由に4つの場所を選ぶ方法は、

9C4

で書かれる。この量を計算すると、

9C4=126

が得られる。

(II) a点を通過して進むルートの数はa点の左の点までいってからa点を通過し、a点の右の点を通って右上の点までいく仕方の数に等しい。 それぞれのルートの数は(I)の方法を用いて計算することができる。この数を実際に計算すると、

4C2×4C2=6×6=36

となり、36通りであることが分かる。

テンプレート:演習問題


同じものを含む順列

10個の文字a a a a b b b c c dを一列に並べる順列の総数を求める。 文字を置く場所は全部で10箇所あり、その中からaを置く4箇所を選ぶ方法は10C4通り。残りの6箇所からbを置く3箇所を選ぶ方法は6C3通り。残りの3箇所からcを置く2箇所を選ぶ方法は3C2通り。dは残りの1箇所に置けば良いので1通り。

確率の積の法則より、求める順列の総数は10C6×6C3×3C2×1=1098765654321×654321×3221×1=210×20×3×1=12600

変形前の式で、組合せの積を次のように変形する。 10C6×6C3×3C2×1C1=10!6!(106)!×6!3!(63)!×3!2!(21)!×1!1!(11)! これを変形すると、式は最終的に10!4!3!2!1!となる。(当然、計算すると上で求めた答えと一致する。)


一般に、n個のもののうちp個が同じもの、q個が別の同じもの、r個がまた別の同じもの・・・であるとき、これらn個のもの全てを一列に並べる順列の総数は以下の式で得られる。

n!p!q!r!(ただしp+q+r+=n


重複組合わせ

異なるn個の空箱にr個のものを入れる場合の数を重複組合わせといい、 nHr で表す。

重複組合せについて次のように考察する。

x1,x2,,xn,r を非負整数とし、方程式 x1+x2++xn=r の解の個数について考える。この解の個数は x1,x2,,xnr 個の1を分配する場合の数と考えることができるので、重複組合わせの定義から、nHr である。

また、この方程式の非負整数解の個数は、r個の○にn-1個の区切りを置く場合の数とも考えられる。つまり、○○○...○○(r個)にn-1個の区切り|を並べると○|○○|...○|○のようになる。ここで、左から順に区切りで区切られた○の個数をそれぞれ、x1,x2,,xn とすると、これは方程式の解となる。

この場合の数は、r個の○とn-1個の区切り|を並べえる場合の数なので、n+r1Cr である。方程式の非負整数解の個数について2通りの方法で求まったのでこれらは等しく、 nHr=n+r1Cr が成り立つ。


確率

確率の計算

ある場合の数が、実際に現われる割合のことを確率(かくりつ、英:probability)と呼ぶ。

ある場合の数が実際に現われる割合は、その場合の数を割り算で、その事柄において起こり得る全ての事柄の場合の数で割ったものに等しい。

たとえば、全く等しい割合で全ての面が出るさいころをふったときに1が出る確率は16である。 これは1が出る場合の数1を、1,2,3,4,5,6のいずれかが出る場合の数6で割ったものに等しい。

事象Aの確率

起こりうるすべての場合の数をN、事象Aの起こる場合の数をaとするとき、事象Aの起こる確率P(A)は以下の式で求められる。

P(A)=aN
  • 問題例
    • 問題

赤玉2個と白玉3個が入った袋から、玉を2個同時に取り出す。このとき、2個とも白玉が出る確率を求めよ。

    • 解答

赤白あわせて5個の玉から2個を取り出す方法は

5C2=5×42×1=10(通り)

このうち、2個とも白玉になる場合は

3C2=3×22×1=3(通り)

よって求める確率は 310

確率の性質

確率の定義から、次の性質が得られる。

確率の性質

(1)どんな事象Aについても、 0P(A)1
(2)決して起こらない事象の確率は 0
(3)必ず起こる事象の確率は 1

排反事象の確率

2つの事象A,Bが同時に起こらないとき、事象AとBは互いに排反(はいはん、英:exclusive)である、またはAとBは排反事象であるという。

排反事象の確率

AとBが排反事象のとき、AまたはBが起こる確率は

P(AB)=P(A)+P(B)


  • 問題例
    • 問題

男子7人、女子5人の中から、くじ引きで3人の委員を選ぶとき、3人とも同性である確率を求めよ。

    • 解答

12人の中から3人の委員を選ぶ場合の数は

12C3=12×11×103×2×1=220(通り)

ここで、「3人とも男子である」事象をA、「3人とも女子である」事象をBとすると、「3人とも同性である」事象は、和事象A ∪ Bであり、しかも、AとBは排反事象である。

P(A)=7C3220=35220
P(B)=5C3220=10220

よって求める確率は P(AB)=P(A)+P(B)=35220+10220=45220=944


余事象の確率

事象Aに対して、「Aでない」事象をAで表し、Aの余事象(よじしょう)という。

余事象の確率

Aの余事象をAとすると

P(A)=1P(A)
  • 問題例
    • 問題

赤玉5個、白玉3個の計8個入っている袋から3個の玉を取り出すとき、少なくとも1個は白玉である確率を求めよ。

    • 解答

8個の玉から3個の玉を取り出す場合の数は

8C3=8×7×63×2×1=56(通り)

いま、「少なくとも1個は白玉である」事象をAとすると、Aは「3個とも赤玉である」という事象だから

P(A)=5C356=1056=528

よって求める確率は

P(A)=1P(A)=1528=2328

独立な試行と確率

独立な試行と確率

たがいに他の結果に対して影響をおよぼさない操作を繰りかえすとき、それぞれの試行は独立(どくりつ、英:independent)であると言う。独立な試行については、ある試行の起こる確率が定められていて、それをn回繰りかえしたとき、それらが起こる確率は、それぞれの試行が起こる確率の積となる。

独立な試行と確率

2つの独立な試行S,Tについて、Sでは事象Aが、Tでは事象Bが起こる確率は

P(A)×P(B)


  • 問題例
    • 問題

赤玉3個、白玉2個の計5個入っている袋がある。この中から1個の玉を取り出して色を確かめてから袋に戻し、再び1個を取り出すとき、1回目は赤玉、2回目は白玉を取り出す確率を求めよ。

    • 解答

1回目に取り出した玉を袋に戻すので、「1回目に取り出す」試行と「2回目に取り出す」試行とは互いに独立である。
1回目に取り出した1個が赤玉である確率は 35

2回目に取り出した1個が白玉である確率は 25
したがって求める確率は

35×25=625

反復試行の確率

同じ試行を何回か繰り返して行うとき、各回の試行は独立である。この一連の独立な試行をまとめて考えるとき、それを反復試行(はんぷく しこう)という。

反復試行の確率

ある試行で、事象Eの起こる確率がpであるとする。この試行をn回繰り返すとき、事象Eがそのうちr回だけ起こる確率は

nCrpr(1p)nr
  • 問題例
    • 問題

1個のさいころを5回投げるとき、3の倍数の目が4回出る確率を求めよ。

    • 解答

1個のさいころを1回投げるとき、3の倍数の目が出る確率は

26=13である。

よって、1個のさいころを5回投げるとき、3の倍数の目が4回出る確率は

5C4(13)4(113)54=10243


条件付き確率

各根元事象が同様に確からしい試行において、全事象をUとする。2つの事象A, Bについて、一般に「事象Bが起こる確率」と「事象Aが起こった後に事象Bが起こる確率」は異なる。 そこで、「事象Aが起こった後に事象Bが起こる確率」を「事象Aが起こったときの事象Bが起こる条件付き確率」と呼び、PA(B)と書くことにする。


注意:PA(B),P(AB)ともに「AとBがともに起こる確率」を表すが、PA(B)Aが起こらなかった場合は除外して考えており、P(AB)の方はAが起こらなかった場合も含めて考えているという違いがある。混同しないように区別して覚えよう。


n(A)0であるとき、条件付き確率PA(B)は「Aを全事象と見做した場合の事象A∩Bが起こる確率」と考えられるので、PA(B)=n(AB)n(A)である。右辺の分子と分母をn(U)で割ると、n(A)n(U)=P(A),n(AB)n(U)=P(AB)なので、最終的に等式PA(B)=P(AB)P(A)が得られる。

最後の式を変形すると、次の定理が得られる。

確率の乗法定理

P(AB)=P(A)PA(B)


事象Eが起こる原因として事象A, Bの2つが考えられるとき、事象Eが起こったと知って原因Aから起こったと考えられる確率はPE(A)である。この確率を原因の確率という。

テンプレート:演習問題 なお、数学Bで扱う仮説検定においては、正しい仮説を誤って棄却してしまうことを第一種の過誤、間違った仮説を棄却できないことを第二種の過誤と呼ぶ場合がある。


テンプレート:コラム


期待値

記号「Σ」についてはこちらを参照。

ある試行があったとき、 その試行で得られると期待される値のことを期待値(きたいち、英:expected value)という。期待値は、n個の事象rk (k=1,2,,n)に対して、各々vkという値が得られ、事象rkが起こる確率がpkで与えられているとき、

E=k=1nvkpk

によって与えられる。例えば、さいころをふったとき出る目の期待値は、

16×1+16×2+16×3+16×4+16×5+16×6
=16(1+2+3+4+5+6)
=72

となる。