旧課程(-2012年度)高等学校数学C/確率分布

提供: testwiki
ナビゲーションに移動 検索に移動

高等学校数学C > 確率分布


確率分布

確率の計算

条件つき確率

1から15までの番号札があり、その15枚の札から任意に1枚を選ぶ。 このとき、2の倍数を選ぶという事象をA、3の倍数を選ぶという事象をBとすると、
P(A)=715, P(B)=515=13, P(AB)=215 となる。

このとき、選び出された札が2の倍数であるとわかったとして、それが3の倍数である確率pを考える。 pは、2の倍数である札7枚の中から、6の倍数である札2枚を選ぶ確率であるから
p=27=n(AB)n(A)
事象Aが起こったとして、そのときに事象Bの起こる確率を、Aが起こったときのBの条件つき確率といい、PA(B)で表す。

PA(B)=n(AB)n(A)
この式の右辺の分母、分子をそれぞれn(U)で割ると
PA(B)=P(AB)P(A)


  • 問題例
    • 問題

ある観光バスの乗客のうち、60%が女性で、42%が50歳以上の女性である。女性の中から任意に1人を選び出したとき、その人が50歳以上である確率を求めよ。

    • 解答

「女性である」事象をA、「50歳以上である」事象をBとする。
P(A)=60100,P(AB)=42100
よって、求める確率は

PA(B)=P(AB)P(A)=4210060100=710


PA(B)=P(AB)P(A)の分母を払うと、次のようになる。

乗法定理

P(A)0のとき

P(AB)=P(A)PA(B)


  • 問題例
    • 問題

5本のくじの中に3本の当たりくじがある。a、b2人が、引いたくじをもとに戻さないで、a、bの順に1本ずつくじを引くとき、2人とも当たる確率を求めよ。

    • 解答

aが当たるという事象をA、bが当たるという事象をBとすると、求める確率はP(AB)である。
aが当たったとき、残り4本のくじの中に当たりくじが2本あるから

PA(B)=24=12

よって、2人とも当たる確率は

P(AB)=P(A)PA(B)=35×12=310

事象の独立・従属

1個のさいころを投げるとき、偶数の目が出る事象をA、3の倍数の目が出る事象をB、4以上の目が出る事象をCとすると、

A={2,4,6} , B={3,6} , C={4,5,6}

このとき PA(B)=13, P(B)=26=13より、PA(B)=P(B)が成り立つ。つまり、事象Aが起こることは事象Bが起こることに影響を与えていない。
また、PA(C)=23 , P(C)=36=12より、PA(C)P(C)が成り立つ。つまり、事象Aが起こることは事象Cが起こることに影響を与えている。

2つの事象A , Bについて、事象Aの起こることが事象Bの起こることに影響を与えないとき、AとBは独立であるという。また、AとBが独立でないとき、AとBは従属であるという。

事象AとBが独立であるとき、PA(B)=P(B)である。乗法定理を用いると、事象の独立について、次のことが成り立つ。

事象の独立
事象AとBが独立であるP(AB)=P(A)P(B)
  • 問題例
    • 問題

トランプのハートのカードが1組13枚ある。
(1)初めにAが1枚引き、そのカードをもとに戻さないで、次にBが1枚引く場合、A、Bがともに絵札を引く確率を求めよ。
(2)初めにAが1枚引き、そのカードをもとに戻して、次にBが1枚引く場合、A、Bがともに絵札を引く確率を求めよ。

    • 解答

Aが絵札を引くという事象をA、Bが絵札を引くという事象をBとする。
(1) AとBがともに絵札を引くという事象は AB で表される。
  Aが絵札を引く確率は  P(A)=313
  Aが絵札を引いたあと、12枚のカードの中に絵札が2枚残っているから、Bが絵札を引く確率PA(B)は、  PA(B)=212=16
  よって  P(AB)=P(A)PA(B)=313×16=126
(2) Aが引いたカードは、もとに戻すから、2つの事象A、Bは互いに独立である。
  したがって確率は  P(AB)=P(A)P(B)=313×313=9169


確率分布

確率変数と確率分布

1枚の硬貨を2回続けて投げる試行において、表の出る回数をXで表す。Xのとりうる値は、0 , 1 , 2 である。 それぞれが起こる確率は
X=0となる確率は  12×12=14
X=1となる確率は  2C1×12×12=12
X=2となる確率は  12×12=14

この結果を表にすると、次のようになる。

X012
確率141214
1


一般に、Xが有限個の値 x1,x2,,xn をとる変数で、X=x1,X=x2,,X=xn となる確率 p1,p2,,pn が与えられて、

p1+p2++pn=1p10,p20,,pn0

を満たすとき、Xを確率変数という。
このときxkpk の対応は下の表のようになる。

Xx1x2 xn
Pp1p2 pn
1

この対応関係をXの確率分布という。X=xk となる確率を P(X=xk) と書く。

確率変数の平均・分散・標準偏差

確率変数Xの確率分布が次の表で与えられているとする。

確率分布の表
X x1x2 xn
Pp1p2 pn
1

このとき、

x1p1+x2p2++xnpn

を確率変数Xの平均または期待値といい、E(X)で表す。

確率変数の平均
E(X)=k=1nxkpk

確率分布が上の表(確率分布の表)で与えられている確率変数Xの平均

x1p1+x2p2++xnpn

をmとする。このとき、(xm)2 は1つの確率変数となり、その確率分布は下の表のようになる。

(Xm)2(x1m)2(x2m)2 (xnm)2
P
p1
p2
pn
1

(xm)2がとるn個の値

(x1m)2,(x2m)2,,(xnm)2

のそれぞれは、Xとmとのへだたりの程度を表す。

確率変数(Xm)2の平均

(x1m)2p1+(x2m)2p2++(xnm)2pn

を、確率変数の分散といい、V(X)で表す。
また、V(X)をXの標準偏差といい、σ(X)で表す。

確率変数の分散と標準偏差
V(X)=k=1n(xkm)2pk
σ(X)=V(X)


分散V(X)を表す式は次のように変形できる。

V(X)=k=1n(xkm)2pk=k=1n(xk)2pk2mk=1nxkpk+m2k=1npk

ここで、k=1nxkpk=m,k=1npk=1 であるから

V(X)=k=1n(xk)2pk2m×m+m2×1=k=1n(xk)2pkm2

さらに、k=1n(xk)2pk=E(X2) であるから、次の等式が成り立つ。

確率変数の分散
V(X)=E(X2){E(X)}2


  • 問題例
    • 問題

1個のさいころを投げるとき、出る目の数をXとする。確率変数Xの平均、分散、標準偏差を求めよ。

    • 解答

Xの確率分布は、下の表で与えられる。

X 1 2 3 4 5 6
P 16 16 16 16 16 16
1

Xの平均は

E(X)=1×16+2×16+3×16+4×16+5×16+6×16=72

また、X2の平均は

E(X2)=12×16+22×16+32×16+42×16+52×16+62×16=916

よってXの分散は

V(X)=E(X2){E(X)}2=916(72)2=3512

Xの標準偏差は

σ(X)=3512=1056

確率変数の変換

確率変数Xの確率分布が次の表で与えられているとする。

X x1x2 xn
Pp1p2 pn
1

a,bが定数のとき、Xの1次式Y=aX+bでYを定めると、Yも確率変数になる。Yのとる値はyk=axk+bであり、Yの確率分布は次の表のようになる。

Y y1y2 yn
P p1p2 pn
1

Xに対して上のようなYを考えることを、確率変数の変換という。


確率変数の変換Y=aX+bによって、その平均、分散、標準偏差がどのように変わるだろうか。
Yの期待値については

E(Y)=k=1nykpk=k=1n(axk+b)pk=k=1n(axkpk+bpk)=ak=1nxkpk+bk=1npk=aE(X)+b

また、Yの分散については

ykE(Y)=axk+b{aE(X)+b}=a{xkE(X)}

であるから

V(Y)=k=1n{ykE(Y)}2pk=a2k=1n{xkE(x)}2pk=a2V(X)

Yの標準偏差は

σ(Y)=V(Y)=|a|V(X)=|a|σ(X)
確率変数の変換

確率変数Xと定数a,bに対して、Y=aX+bとすると、Yも確率変数となり

E(Y)=aE(X)+b
V(Y)=a2V(X)
σ(Y)=|a|σ(X)


  • 問題例
    • 問題

1個のさいころを投げるとき、出る目の数をXとする。確率変数Y=2X+3の平均、分散、標準偏差を求めよ。

    • 解答

上の問題より、

E(X)=72,V(X)=3512,σ(X)=1056

Yの平均は

E(Y)=E(2X+3)=2E(X)+3=2×72+3=10

Yの分散は

V(Y)=V(2X+3)=22V(X)=4×3512=353

Yの標準偏差は

σ(Y)=σ(2X+3)=|2|σ(X)=2×1056=1053

確率変数の和と積

A,B2人がそれぞれ1個のさいころを投げる。Aは、さいころの目が3の倍数ならば0、3の倍数でなければ1と記録する。Bは、さいころの目が1ならば1、偶数の目ならば2、1以外の奇数の目ならば3と記録する。
A,Bの記録する数をそれぞれX,Yとすると、XとYは確率変数で、X=aかつY=bとなる確率は次のようになる。

X/Y123P
01181619
13
1
19
1329
23
P
16
1213 

このとき、Z=X+Yも確率変数で、Zの確率分布は次のようになる。

Z1234
P1185184929
1

よって、Zの平均は

E(Z)=1×118+2×518+3×49+4×29=176

一方

E(X)=0×13+1×23=23
E(Y)=1×16+2×12+3×13=136

であるから

E(X)+E(Y)=23+136=176

したがって、E(Z)=E(X)+E(Y)が成り立っている。

確率変数の和の平均

確率変数X,Yについて

E(X+Y)=E(X)+E(Y)


確率変数Xのとる任意の値aと確率変数Yのとる任意の値bについて、X=aかつY=bである確率がP(X=a)P(Y=b)に等しいとき、確率変数XとYは互いに独立であるという。
上の例において確率変数XとYは互いに独立である。この確率変数X,Yについて、U=XYを考えると、Uも確率変数で、Uの確率分布は次のようになる。

U0123
P13191329
1

よって、Uの平均は

E(U)=0×13+1×19+2×13+3×29=139

一方、E(X)=23,E(Y)=136であるから

E(X)E(Y)=23×136=139

したがって、E(U)=E(X)E(Y)が成り立っている。

独立な確率変数の積の平均

確率変数XとYが互いに独立ならば

E(XY)=E(X)E(Y)


2つの確率変数X,Yの和の分散についても、次のことが成り立つ。

独立な確率変数の和の分散

確率変数XとYが互いに独立ならば

V(X+Y)=V(X)+V(Y)


  • 問題例
    • 問題

大小2個のさいころを同時に投げるとき、それぞれのさいころの出る目をX,Yとする。出る目の和X+Yの平均、出る目の積XYの平均、出る目の和X+Yの分散を求めよ。

    • 解答

XとYは互いに独立である。今までの例より

E(X)=72,E(Y)=72,V(X)=3512,V(Y)=3512

したがって

E(X+Y)=E(X)+E(Y)=72+72=7
E(XY)=E(X)E(Y)=72×72=494
V(X+Y)=V(X)+V(Y)=3512+3512=356

二項分布

1個のさいころを3回投げるとき、1の目の出る回数をXとすると

P(X=r)=3Cr(16)r(56)3r

である。確率変数Xの確率分布は次のようになる。

X0123
P3C0(16)0(56)33C1(16)1(56)23C2(16)2(56)13C3(16)3(56)0
1


一般に、1回の試行で事象Aの起こる確率がpであるとき、この試行をn回行う反復試行において、Aの起こる回数をXとすると、確率変数Xの確率分布は次のようになる。ただし、q=1pである。

X01 rn
PnC0 qn nC1 p qn1 nCr prqnr nCn pn
1

この表の確率は、二項定理の展開式

(q+p)n=nC0 qn+nC1 p qn1++nCr prqnr++nCn pn

の右辺の各項を順に並べたものである。この確率分布を二項分布といい、B(n , p)で表す。ただし、0<p<1 , q=1pとする。
上の例は、B(3 , 16)である。

1枚の硬貨を6回投げるとき、表が出る回数をXとすると、Xは二項分布B(6 , 12)に従う。

二項分布の平均・分散・標準偏差

二項分布B(3 , p)に従う確率変数Xの平均・分散・標準偏差を求めよう。ただし、q=1pとする。
Xの平均は

E(X)=0×3C0 q3+1×3C1 p q2+2×3C2 p2 q+3×3C3 p3=3p3+6p2q+3pq2=3p(p2+2pq+q2)=3p(p+q)2=3p×1=3p

また、X2の平均は

E(X2)=02×3C0 q3+12×3C1 p q2+22×3C p2 q+32×3C3 p3=9p3+12p2q+3pq2=3p(3p2+4pq+q2)=3p(p+q)(3p+q)=3p×1×(3p+q)=3p(3p+q)

よって、Xの分散は

V(X)=E(X2){E(X)}2=3p(3p+q)(3p)2=3pq

Xの標準偏差は

σ(X)=V(X)=3pq


一般に、二項分布に従う確率変数について、次のことが成り立つ。

二項分布の平均・分散・標準偏差

確率変数Xが二項分布B(n , p)に従うとき、q=1pとすると

E(X)=np , V(X)=npq , σ(X)=npq


  • 問題例
    • 問題

白玉7個と黒玉3個が入っている袋から、もとに戻しながら、玉を100回取り出す。白玉の出る回数Xの平均、分散、標準偏差を求めよ。

    • 解答

Xは二項分布B(100 , 710)に従う。
Xの平均は

E(X)=np=100×710=70

Xの分散は

V(X)=npq=100×710×310=21

Xの標準偏差は

σ(X)=npq=21