制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/ある思いつき

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§1

まず 1 階の微分方程式

テンプレート:制御と振動の数学/equation

を解くことを考えよう.ここに a は定数とする.いま,

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とおくと,式(1.1)は,

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すなわち

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と書くことことができる.ここで p を普通の数のように考えることができるものと仮定して,p+a で割ると,

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となる.そこでなんらかの方法で割り算が実行できて,簡単に解が求まれば好都合である.しばらく厳密な論理性の追求はあとまわしにし, 正しい解が得られればよいと割り切って,自由奔放に考えていこう.

例1 テンプレート:制御と振動の数学/equation

この場合,p を用いて x を表すと,

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となる.p が微分であることを念頭において,小学校以来おなじみの割り算を筆算で実行しよう.


t2t11+p)t23tt22ttt+1110

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と割り切れ,商 テンプレート:制御と振動の数学/equation

を得る.上の割り算の手順は次の通りである.まず t21 で割ると t2 が立つ. そこで,t21+p をかけて,

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と計算する.p は微分だから、pt2=2t.被除数 t2+3t から上式をを引くと,

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となる.次に t1 で割ると t が立つ.これに (1+p) をかけ,t+1 を得る. t からこれを引いて 1 を得る. という通常の手順に従えばよいのである. このようにして求めた商,式(1.3)が 式(1.2)の解である保証はない.それゆえ吟味が必要である.

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よって間違いなく,式(1.2)の解である.初期値は x(0)=1 となっている.

例2 テンプレート:制御と振動の数学/equation

を上の方法で解き,それが解であることを確かめよ.

解答例

t312t+361+3p+2p2)t3+9t2t3+9t+12t12t12t36+36+360


(t3+9t2)/(1+3p+2p2)=t312t

12t/(1+3p+2p2)=12t36

36/(1+3p+2p2)=360

x=t312t+36

次に検算を実施する。
x=t312t+36 のとき、

x=3t212
x=6t
2x+3x+x=26t+3(3t212)+(t312t+36)
=12t+9t236+t312t+36
=t3+9t2

すなわち x=t312t+36

2d2xdt2+3dxdt+x=t3+9t2
の解のひとつ.


§2

例1では,除数が 1+p であった.定数 1 があるため,割り算が簡単になった. そこで定数項の欠けた次の例を考えてみよう.

例3 テンプレート:制御と振動の数学/equation


p=ddt,p2=d2dt2 とおけば,

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となるから,割り算を実行すると,


t33t22tp+p2)t23tt22ttt 111  0


(t2+3t)/(p+p2)=t33t

t/(p+p2)=t221

1/(p+p2)=t0

x=t33+t22t

となる.手順は次のとおりである.t2p で割るというのは,p を掛けると t2 となる式を求めるということであるから, p が微分演算であることを思い出すと,答えとして t33 を得る.次に,

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を被除数 t2+3t から引き,t を得る.tp で割ると,上と同様に考えて,t22 となる. 以下同様.

験算

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今度もうまくいった.初期値は x(0)=0,x(0)=1 である.

§3

例3の計算の中で,p で割るという演算を抜き出してみると,

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である.これらの事実から次のことが分かる.p で割るということは,積分する(あるいは原始関数を求める)ということにほかならぬ.つまり,

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を意味することが分かる.

このことを念頭において,例3の計算を次のように少し修正してみよう. 積分を先にすませておくのである.

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と変形しておいてから,割り算を実行する.

t33t22t  11+p)t333t22t2t2t22t22  ttt1   1   1   0


(t33+3t22)/(1+p)=t33t22

(t22)/(1+p)=t22t

t/(1+p)=t1

1/(1+p)=10

よって,

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を得る.これは前に述べたものと定数 +1 だけ異なっているが,やはり解であることは験算するまでもなく明らかである. ただし,初期値は x(0)=1,x(0)=1 である.定数の差は不定積分に伴う積分定数のとり方に依存する.同じ解が欲しければ,

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としておけばよい.積分定数の選び方によって解が異なるということは,欠陥ではなく長所である.色々と異なる初期値を持った解が得られることを示唆しているからである. 我々の前途に光明を投じてくれているのである.

例4 テンプレート:制御と振動の数学/equation

を上述の方法で解いたとき,常に割り切れ,その積が解となっていることを示せ.