制御と振動の数学/第一類/Laplace 変換による解の吟味/解の構造と一般解/非同次の場合

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まず次の例から始める. テンプレート:制御と振動の数学/equation Laplace 変換すると, テンプレート:制御と振動の数学/equation ここに,q(s) は高々 3 次式の多項式である. テンプレート:制御と振動の数学/equation であるから, テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.ここに A,B,C は未知の定数である.A,B,C を適当に選ぶことによって,任意の初期条件を満たす解が得られる. よってこれが一般解である.この解をみると, テンプレート:制御と振動の数学/equation という形をとっている.この特解は,その解法からわかるように,初期値がすべて 0 の解[1]である. 一般に特解というのは,初期値を指定した特定の解という意味で,初期値が 0 の解という意味ではない.一般には次の定理が成立する.


定理 3.6

非同次線形微分方程式の任意の解は,非同次式の特定の解と同次式の解の和で表される.

証明

非同次式を テンプレート:制御と振動の数学/equation と書く.いま, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation とすると, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation が成立する.これにより, テンプレート:制御と振動の数学/equation となり, テンプレート:制御と振動の数学/equation すなわち, テンプレート:制御と振動の数学/equation を得る.


例82

以下は大学入試問題に出た. f(t)=1+2cost+3sint のとき, テンプレート:制御と振動の数学/equation となるように A,B,C を定めよ.

容易に分かるように, テンプレート:制御と振動の数学/equation は微分方程式, テンプレート:制御と振動の数学/equation の解の基本系である.したがってそれらの 1 次結合 f(t)f(tC) も解である. それは重ね合わせの原理と定常性の原理からの帰結である. よってまた テンプレート:制御と振動の数学/equation も解であり,これが基底の一つ 1 に等しくなるようにせよという問題である. これは三角関数の加法定理を用いて テンプレート:制御と振動の数学/equation と求まるが,実はこれには物理的背景がある. 式 (3.30) は単振動の方程式, テンプレート:制御と振動の数学/equation と同じである.f(t)const.=1 のときの解である. また 12f(t)12f(tC)const.=2 のときの解である. 振動の周期は 2π であるから,C=π(半周期)ととると sin,cos の項は相殺する. Cπ の奇数倍でもよい.


この種の現象は実際目で見ることができる.(図:「有限時間整定応答」)

ファイル:有限時間整定応答.png
有限時間整定応答

最初 A の位置に静止している振子の支点を t=0 で瞬間的に B に移す. すると B を中心として左右に振動し始める. C の直下に錘がきた瞬間(t=π の奇数倍)に支点を B から C に移すと,C で静止する. 厳密には,この振子系は線形の微分方程式では表せないが,それでも実際にやってみると,うまく C で静止するから面白い. このような現象は,線形定常常微分方程式で表される系ではいつでも実現できる. 一般的に考えると,微分方程式で表される系では,初期値が与えられると解の一意性から,特定のパターンを持った運動が持続する. そのとき,外からの操作によって,異なった初期値をもつ別のパターンの運動を実現させることができる. ある位置で静止させようと思えば,その位置にきたとき,初期条件が 0 となるようにうまく操作すればよい. 線形定常な系では,そのような操作は常に可能であり,自動制御の分野では,一部実用に供されている.



  1. ただしある初期値は 1 である.