制御と振動の数学/第一類/Laplace 変換/指数関数の Laplace 変換とその応用

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§1

前節で導いた公式 テンプレート:制御と振動の数学/equation において,f(t)=eαt とおくと,f(t)=αeαt,f(0)=1 であるから, テンプレート:制御と振動の数学/equation となる. テンプレート:制御と振動の数学/equation よって公式, テンプレート:制御と振動の数学/equation を得る. ここで上式の右辺を 1s で展開してみると, テンプレート:制御と振動の数学/equation すなわち, テンプレート:制御と振動の数学/equation となるが,この原像は,式(2.8)より, テンプレート:制御と振動の数学/equation である.これは eαtTaylor 展開にほかならない.

§2

次に公式(2.12) の応用として [[w:炭素14|テンプレート:SupC]] による年代測定を説明しよう. 試料に含まれている テンプレート:SupC の濃度を c(t) とすると, テンプレート:制御と振動の数学/equation なる微分方程式を満たす.すなわち炭素の放射性同位元素 テンプレート:SupC の壊変の速さは,その時の濃度に比例する.この式を Laplace 変換すると テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation この原像は、 テンプレート:制御と振動の数学/equation である.これより経過年数は, テンプレート:制御と振動の数学/equation と求まる.c(t)=12c(0) となる時間を半減期といい T1/2 で表す.テンプレート:SupC の場合は, テンプレート:制御と振動の数学/equation である.半減期が分かれば、壊変定数が分かる.[1] したがって,初期濃度 c(0) が分かれば現在の濃度 c(t) を測定することによって経過年数が分かる.これが テンプレート:SupC による年代測定の原理である.

例22

c(0) の決定が大問題である.c(0) としては,1950年代の大気中の テンプレート:SupC の濃度をとる.これは奇怪である.理由を調べてみよ.

解答例

不明.


例23

テンプレート:制御と振動の数学/equation

ここに

テンプレート:制御と振動の数学/equation

を解け.ただし a,b は定数である.

Laplace 変換すると テンプレート:制御と振動の数学/equation これを [x] について解き, テンプレート:制御と振動の数学/equation さらに右辺を部分分数分解すると, テンプレート:制御と振動の数学/equation この原像を求めると, テンプレート:制御と振動の数学/equation を得る.

この例は,時刻 t=0 にスイッチを入れて部屋を暖房したときの温度変化を表す. x は暖房前の室温(外界の温度に等しいと仮定している)からの偏位を表す. 定常状態の温度は, テンプレート:制御と振動の数学/equation であって,これは供給熱量と外界に逃げる熱量とが平衡を保つ状態での温度を示す. これは平衡状態の式,すなわち式(2.13)dxdt=0 とおいた式, テンプレート:制御と振動の数学/equation の解と一致している.

§3

例24

テンプレート:制御と振動の数学/equation を解け.

Laplace 変換すると, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation ところで, テンプレート:制御と振動の数学/equation となることを想い起こすと,原像は, テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.

(2.15)定数変化の公式と呼ばれている重要な公式である. その名前の由来は次のとおりである. 同次式, テンプレート:制御と振動の数学/equation の解は, テンプレート:制御と振動の数学/equation であった.定数 c を変数 u(t) に置き換えて、非同次の式(2.14) の解を探す.すなわち, テンプレート:制御と振動の数学/equation を式(2.14)に代入すると, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.これを 0 から t まで積分し, テンプレート:制御と振動の数学/equation この結果を式(2.16)に代入すると, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation となり求める結果を得る.


この公式は重要であるから,誘導法とともに覚えておくことが望ましい.


例25 次の微分方程式を解け.解を直接微分方程式に代入して成否を確かめよ. テンプレート:制御と振動の数学/equation

解答例

s[x]2+[x]=1s2
[x]=1s2(s+1)+2s+1=1s+1s2+3s+1
x=t1+3et
このとき
x=13et
x+x=t1+3et+13et=t
x(0)=1+30=2
よって解 x は与方程式の解のひとつ.


例26 次の微分方程式を解け.解を直接微分方程式に代入して成否を確かめよ. テンプレート:制御と振動の数学/equation

解答例

s2[x]13s[x]+2[x]=0
[x]=1(s1)(s2)=1s21s1
x=e2tet
このとき
x=2e2tet
x=4e2tet
x3x+2x=4e2tet3(2e2tet)+2(e2tet)=0
x(0)=e20e0=0
x(0)=2e20e0=1
よって解 x は与方程式の解のひとつ.


例27 次の微分方程式を解け.解を直接微分方程式に代入して成否を確かめよ. テンプレート:制御と振動の数学/equation

解答例

s2[x]4[x]=8s[2]
[x]=8s(s+2)(s2)=2s+1s2+1s+2
x=e2t+e2t2
このとき
x=2e2t2e2t
x=4e2t+4e2t
x4x=4e2t+4e2t4(e2t+e2t2)=8
x(0)=e0+e02=0
x(0)=2e0e0=0
よって解 x は与方程式の解のひとつ.


例28 次の微分方程式を解け.解を直接微分方程式に代入して成否を確かめよ. テンプレート:制御と振動の数学/equation

解答例

[x]=x0s+(v0+5x0)(s+2)(s+3)+[f](s+2)(s+3)


過渡解を u(t) とすると,u については
[u]=x0s(s+2)(s+3)+(v0+5x0)(s+2)(s+3)
=x0(2s+2+3s+3)+(v0+5x0)(1s+21s+3)
この原像は
u(t)=x0(2e2t+3e3t)+(v0+5x0)(e2te3t)
=x0(2e2t+3e3t+5e2t5e3t)+v0(e2te3t)
=x0(3e2t2e3t)+v0(e2te3t)

定常解を v(t) とすると,v については
[v]=[f](s+2)(s+3)
=(1s+21s+3)[f]
この原像は
v(t)=(e2te3t)*f(t)
=0t{e2(tτ)e3(tτ)}f(τ)dτ

よって解は
x(t)=u(t)+v(t)=x0(3e2t2e3t)+v0(e2te3t)+0t{e2(tτ)e3(tτ)}f(τ)dτ


続いて検算を実施する.積分範囲の上端が変数である定積分の微分について復習すると,
ddt0tf(τ)dτ=f(t),ただし,0tf(τ)dτ の被積分形 f(τ) の中にすでに変数 t が入っていてはいけない.[3]


定常解 v(t) については
v(t)=0t{e2(tτ)e3(tτ)}f(τ)dτ
=0t{e2te2τe3te3τ}f(τ)dτ
=e2t0te2τf(τ)dτe3t0te3τf(τ)dτ
v(t)=2e2t0te2τf(τ)dτ+e2te2tf(t)+3e3t0te3τf(τ)dτe3te3tf(t)
=2e2t0te2τf(τ)dτ+3e3t0te3τf(τ)dτ
v(t)=4e2t0te2τf(τ)dτ2e2te2tf(t)9e3t0te3τf(τ)dτ+3e3te3tf(t)
=4e2t0te2τf(τ)dτ9e3t0te3τf(τ)dτ+f(t)
よって
v+5v+6v={4+5(2)+61}0te2τf(τ)dτ+{(9)+53+6(1)}0te3τf(τ)dτ+f(t)
=f(t)


過渡解 u(t) については
u(t)=x0(3e2t2e3t)+v0(e2te3t)
u(t)=x0(6e2t+6e3t)+v0(2e2t+3e3t)
u(t)=x0(12e2t18e3t)+v0(4e2t9e3t)
よって
u+5u+6u=x0[{12+5(6)+63}e2t+{(18)+56+6(2)}]+v0[{4+5(2)+61}e2t+{9+53+6(1)}e3t]
=0
x(0)=u(0)=x0(3e02e0)+v0(e0e0)=x0
x(0)=u(0)=x0(6e0+6e0)+v0(2e0+3e0)=v0
よって x は与方程式の解のひとつ.

§4

補題 テンプレート:制御と振動の数学/equation


証明

合成積の定義より テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation を得る.

この補題(2.17a)を適用すれば, テンプレート:制御と振動の数学/equation を得る.ところで, テンプレート:制御と振動の数学/equation よって次の公式を得る. テンプレート:制御と振動の数学/equation この公式を前の結果 テンプレート:制御と振動の数学/equation と比較すると,t 領域で eαt を掛けることと,s 領域で α だけ移動することとが対応している. このことは,もっと一般的に成立する事実である.

第一移動定理

テンプレート:制御と振動の数学/equation

証明

テンプレート:制御と振動の数学/equation

この定理から,直ちに, テンプレート:制御と振動の数学/equation が導かれるのである.

例29 テンプレート:制御と振動の数学/equation を解け.

解答例

与式を Laplace 変換すると, テンプレート:制御と振動の数学/equation これを [x] について解くと, テンプレート:制御と振動の数学/equation となるから,この原像は, テンプレート:制御と振動の数学/equation である.


例30 テンプレート:制御と振動の数学/equation を解け.

テンプレート:制御と振動の数学/equation とおくと, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation それゆえ, テンプレート:制御と振動の数学/equation を得る.


例31

次の微分方程式を解け. テンプレート:制御と振動の数学/equation

解等例

s[x]1+[x]=1s+1

[x]=1s+1+1(s+1)2

x=(1+t)et


例32

次の微分方程式を解け. テンプレート:制御と振動の数学/equation

解答例

s2[x]+2s[x]+[x]=1(s+1)2

[x]=1(s+1)4

x=t33!et


例33

次の微分方程式を解け. テンプレート:制御と振動の数学/equation

解答例

s2[x]2s1+4(s[x]2)+4[x]=3(s+2)2

[x]=2s+9(s+2)2+3(s+2)4=2s+2+5(s+2)2+3(s+2)4

x=(2+5t+t32)e2t


例34

次の微分方程式を解け. テンプレート:制御と振動の数学/equation

解答例

s2[x]+2s[x]3[x]=16s1

[x]=16(s1)2(s+3)=1s+31s1+4(s+1)2

x=e3t+(4t1)et

  1. λT1/2=loge20.693
  2. 11s である.s2[x]4[x]=8 と、うかつにもそうしがちだが、そうではない.
  3. この定理および但し書きの意味を実際に確かめておく. f(t)=0te(tτ)dτ のとき,f(t) を求める.
    1.実際に f(t) の形を求めてから t で微分する.
    f(t)=[e(tτ)]0t=[e(tτ)]t0=et1f(t)=et…①

    2.被積分部分の t 依存部分を外に出してから f(t) の形を求める.
    f(t)=0teteτdτ=et0teτdτ…②
    ②を実際に計算する.
    et0teτdτ=et[eτ]0t=et[eτ]t0=et(1et)=et1
    これは①と一致する.

    3. ②から「積分範囲の上端が変数である定積分の微分」を適用して f(t) を求める.
    f(t)=ddt{et0teτdτ}
    =(ddtet)0teτdτ+etddt(0teτdτ)
    =et[eτ]0t+etet
    =et(1et)+1=et1+1=et…③
    ここで③と①は一致し、本定理の意味を確認できた.但し書きについては,
    f(t)=ddt0tetτdτ を求めるのに
    etτ|τ=t=ett=1 とすると①③に一致しない.