中学数学3年 円

この章では、2年生で学んだ三角形と四角形の性質をもとにして、円周角と中心角の性質を扱います。

円周角と中心角

ファイル:円周角1.jpg

円周角と中心角

中心がOである円を円Oと呼ぶ。円Oにおいて、円周上の2点A , Bをとったとき、AからBまでの円周の部分を 弧AB （こAB）といい、$\begin{array}{c}⌢\\ \mathrm{A}\mathrm{B}\end{array}$と書く。$\mathrm{\angle }AOB$ を弧ABに対する 中心角（ちゅうしんかく） という。また、弧ABを中心角 $\mathrm{\angle }AOB$ に対する弧（こ）という。

円Oの周上の点で、弧AB上にはない点Pをとったとき、$\mathrm{\angle }APB$ を弧ABに対する 円周角（えんしゅうかく） という。また、弧ABを円周角 $\mathrm{\angle }APB$ に対する弧という。

右の図のように、弧ABに対する円周角は $\mathrm{\angle }APB,\mathrm{\angle }A{P}^{\prime }B,\mathrm{\angle }A{P}^{″}B$ のようにいくつもできる。しかし、弧ABに対する中心角 $\mathrm{\angle }AOB$ は1つに決まる

円周角の定理

中心角と円周角には次の性質がある。

円周角の定理

1つの弧に対する円周角の大きさは一定であり、その弧に対する中心角の半分である。

この定理を証明するためには、円Oの弧ABに対する円周角の1つを $\mathrm{\angle }APB$ として、$\mathrm{\angle }APB=\frac{1}{2}\mathrm{\angle }AOB$ を示せばよい。

中心Oが 直線PAまたは直線PB上にある場合

ファイル:円周角2.jpg

中心Oが $\mathrm{\angle }APB$ の辺上にある場合

Oが直線PB上にある場合について示せば十分である。$\mathrm{\angle }AOB$ は $\mathrm{△}AOP$ の外角であるから、三角形の1つの外角はそれととなり合わない2つの内角の和に等しいので

$\mathrm{\angle }AOB=\mathrm{\angle }APO+\mathrm{\angle }PAO\cdots \cdots (1)$

$\mathrm{△}AOP$ の辺OP , OAは等しいから

$\mathrm{\angle }APO=\mathrm{\angle }PAO\cdots \cdots (2)$

(1)、(2)より

$\mathrm{\angle }AOB=2\mathrm{\angle }APO$

したがって

$\mathrm{\angle }APB=\frac{1}{2}\mathrm{\angle }AOB$

よって、中心Oが 直線PB上にある場合、$\mathrm{\angle }APB=\frac{1}{2}\mathrm{\angle }AOB$ が成り立つ。

中心Oが ∠APB の内部にある場合

ファイル:円周角3.jpg

中心Oが $\mathrm{\angle }APB$ の内部にある場合

直線POと円Oとの交点のうちPでない方をCとすると、$\mathrm{\angle }AOC$ は $\mathrm{△}AOP$ の外角であるから

$\mathrm{\angle }AOC=\mathrm{\angle }APO+\mathrm{\angle }PAO$

$\mathrm{△}AOP$ の辺OP , OAは等しいから

$\mathrm{\angle }APO=\mathrm{\angle }PAO$

したがって

$\mathrm{\angle }AOC=2\mathrm{\angle }APO\cdots \cdots (1)$

$\mathrm{\angle }BOC$ は $\mathrm{△}BOP$ の外角であるから

$\mathrm{\angle }BOC=\mathrm{\angle }BPO+\mathrm{\angle }PBO$

$\mathrm{△}BOP$ の辺OP , OBは等しいから

$\mathrm{\angle }BPO=\mathrm{\angle }PBO$

したがって

$\mathrm{\angle }BOC=2\mathrm{\angle }BPO\cdots \cdots (2)$

(1)と(2)の左辺どうしと右辺どうしをそれぞれ加えると

$\mathrm{\angle }AOC+\mathrm{\angle }BOC=2(\mathrm{\angle }APO+\mathrm{\angle }BPO)$

したがって

$\mathrm{\angle }AOB=2\mathrm{\angle }APB$

すなわち

$\mathrm{\angle }APB=\frac{1}{2}\mathrm{\angle }AOB$

よって、中心Oが $\mathrm{\angle }APB$ の内部にある場合、$\mathrm{\angle }APB=\frac{1}{2}\mathrm{\angle }AOB$ が成り立つ。

中心Oが ∠APB の外部にある場合

ファイル:円周角4.jpg

中心Oが $\mathrm{\angle }APB$ の外部にある場合

直線POと円Oとの交点のうちPでない方をCとすると、$\mathrm{\angle }AOC$ は $\mathrm{△}AOP$ の外角であるから

$\mathrm{\angle }AOC=\mathrm{\angle }APO+\mathrm{\angle }PAO$

$\mathrm{△}AOP$ の辺OP , OAは等しいから

$\mathrm{\angle }APO=\mathrm{\angle }PAO$

したがって

$\mathrm{\angle }AOC=2\mathrm{\angle }APO\cdots \cdots (1)$

$\mathrm{\angle }BOC$ は $\mathrm{△}BOP$ の外角であるから

$\mathrm{\angle }BOC=\mathrm{\angle }BPO+\mathrm{\angle }PBO$

$\mathrm{△}BOP$ の辺OP , OBは等しいから

$\mathrm{\angle }BPO=\mathrm{\angle }PBO$

したがって

$\mathrm{\angle }BOC=2\mathrm{\angle }BPO\cdots \cdots (2)$

(1)と(2)の左辺どうしと右辺どうしをそれぞれひくと

$\mathrm{\angle }AOC-\mathrm{\angle }BOC=2(\mathrm{\angle }APO-\mathrm{\angle }BPO)$

したがって

$\mathrm{\angle }AOB=2\mathrm{\angle }APB$

すなわち

$\mathrm{\angle }APB=\frac{1}{2}\mathrm{\angle }AOB$

よって、中心Oが $\mathrm{\angle }APB$ の外部にある場合、$\mathrm{\angle }APB=\frac{1}{2}\mathrm{\angle }AOB$ が成り立つ。

以上で考えられるすべてのPの位置について証明されたので、「1つの弧に対する円周角の大きさはすべて等しい」ことが成り立つことがわかった。

半円の弧に対する円周角

半円の弧に対する中心角は $180{}^{\circ }$ であるから、円周角は $90{}^{\circ }$ である。半円の弧に対する弦は直径であるから、次の定理が得られる。

直径と円周角(ターレスの定理)

ファイル:円周角5.jpg 線分ABを直径とする円の周上にA、Bと異なる点Pをとれば $\mathrm{\angle }APB=90{}^{\circ }$ である。

円周角と弧

ファイル:円周角6.jpg

円周角と弧

右の図の円Oで、円周角 $\mathrm{\angle }APB,\mathrm{\angle }CQD$ が等しい場合、円周角の定理により

$\mathrm{\angle }AOB=2\mathrm{\angle }APB\cdots \cdots (1)$

$\mathrm{\angle }COD=2\mathrm{\angle }CQD\cdots \cdots (2)$

となる。

$\mathrm{\angle }APB=\mathrm{\angle }CQD$ であるから、(1)、(2)より

$\mathrm{\angle }AOB=\mathrm{\angle }COD$

となる。

1つの円において等しい中心角に対する弧の長さは等しいので、

$\begin{array}{c}⌢\\ \mathrm{A}\mathrm{B}\end{array}=\begin{array}{c}⌢\\ \mathrm{C}\mathrm{D}\end{array}$

が成り立つ。

また、右の図の円Oで、$\begin{array}{c}⌢\\ \mathrm{A}\mathrm{B}\end{array},\begin{array}{c}⌢\\ \mathrm{C}\mathrm{D}\end{array}$が等しい場合、1つの円において等しい長さの弧に対する中心角は等しいので

$\mathrm{\angle }AOB=\mathrm{\angle }COD$

となる。

よって、円周角の定理により

$\mathrm{\angle }APB=\mathrm{\angle }CQD$

が成り立つ。

円周角と弧

1つの円において 　等しい円周角に対する弧は等しい。 　等しい弧に対する円周角は等しい。

円周角の定理の逆

高等学校数学A/図形の性質#円周角の定理の逆も参照。

円Oの周上の点をA,B,Cとし、$\mathrm{\angle }ACB=\mathrm{\angle }a$ とする。また、直線ABについて点Cと同じ側に点Pをとる。このとき、Pが円Oの周上、内部、外部にある場合について、$\mathrm{\angle }APB$ と $\mathrm{\angle }a$ との大きさを比べる。

点Pが円Oの周上にある場合

ファイル:円周角7.jpg

点Pが円Oの周上にある場合

円周角の定理により

$\mathrm{\angle }APB=\mathrm{\angle }a$

点Pが円Oの内部にある場合

ファイル:円周角8.jpg

点Pが円Oの内部にある場合

APの延長と円周の交点をQとする。$\mathrm{\angle }APB$ は $\mathrm{△}PBQ$ における $\mathrm{\angle }P$ の外角であるから

$\mathrm{\angle }APB=\mathrm{\angle }PQB+\mathrm{\angle }PBQ$

となる。 円周角の定理により、$\mathrm{\angle }AQB=\mathrm{\angle }ACB=\mathrm{\angle }a$ であるから、

$\mathrm{\angle }APB=\mathrm{\angle }a+\mathrm{\angle }PBQ$

よって

$\mathrm{\angle }APB>\mathrm{\angle }a$

点Pが円Oの外部にある場合

ファイル:円周角9.jpg

点Pが円Oの外部にある場合

APと円周の交点をQとする。$\mathrm{\angle }AQB$ は $\mathrm{△}QBP$ における $\mathrm{\angle }Q$ の外角であるから

$\mathrm{\angle }AQB=\mathrm{\angle }QPB+\mathrm{\angle }PBQ$

となる。 円周角の定理により、$\mathrm{\angle }AQB=\mathrm{\angle }ACB=\mathrm{\angle }a$ であるから、

$\mathrm{\angle }a=\mathrm{\angle }APB+\mathrm{\angle }PBQ$

式を変形すると

$\mathrm{\angle }APB=\mathrm{\angle }a-\mathrm{\angle }PBQ$

よって

$\mathrm{\angle }APB<\mathrm{\angle }a$

円周角の定理の逆

上で調べたことから、点Pを直線ABについて点Cと同じ側にとったとき

$\mathrm{\angle }APB=\mathrm{\angle }a$

ならば、点Pは円Oの周上にあることがわかった。したがって、円周角の定理の逆として次のようにまとめられる。

円周角の定理の逆

ファイル:円周角10.jpg 円周角の定理の逆 4点A,B,P,Qについて、P,Qが直線ABについて同じ側にあるとき， $\mathrm{\angle }APB=\mathrm{\angle }AQB$ ならば，この4点は1つの円周上にある。

円周角の定理の応用

円の接線

まずは1年生で学んだ円の接線について復習する。

直線が円とただ1点で出あうとき、この直線は円に接する（せっする）といい、この直線を円の 接線（せっせん） といい、出あう1点を 接点（せってん） という。

円の接線

ファイル:円周角11.jpg 円の接線 円の接線は、接点を通る半径に垂直である。

円外の点からの接線

ファイル:円周角12.jpg

円外の点からの接線

円O外の点Aから円Oにひけたとし、その接点をP,P'とする。 AP,AP'は円Oの接線であるから、

$\mathrm{\angle }APO=90{}^{\circ }$

$\mathrm{\angle }A{P}^{\prime }O=90{}^{\circ }$

であるから、点P,P'はAOを直径上とする円周上にあることがわかる。

このことをふまえて、円O外の点Aから円Oに接線をひくには、次のようにすればよい。

ファイル:円周角13.jpg

円外の点からの接線のひき方

1. 　点AとOを結ぶ。
2. 　線分AOの垂直二等分線をひき、AOとの交点をO'とする。
3. 　点O'を中心として半径OO'の円を書き、円Oとの交点をP,P'とする。
4. 　直線AP,AP'をひく。

接線の長さ

ファイル:円周角14.jpg

接線の長さの証明

$\mathrm{△}APO$ と $\mathrm{△}A{P}^{\prime }O$ において

AP,AP'は接線だから

$\mathrm{\angle }APO=\mathrm{\angle }A{P}^{\prime }O=90{}^{\circ }\cdots \cdots (1)$

共通な辺だから

$AO=AO=\cdots \cdots (2)$

円Oの半径だから

$OP=O{P}^{\prime }\cdots \cdots (3)$

(1)、(2)、(3)より斜辺と他の1辺がそれぞれ等しいから

$\mathrm{△}APO\equiv \mathrm{△}A{P}^{\prime }O$

したがって、$AP=A{P}^{\prime }$

線分APまたはAP'の長さを、Aから円Oにひいた接線の長さという。

上で調べたことから、次のようにまとめられる。

接線の長さ

円外の1点からその円にひいた2つの接線の長さは等しい。