一般力学/ベクトルの加法

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テンプレート:Sakujo

§2 ベクトルの加法

二つのベクトル 𝐀,𝐁 が与えられたとき,

テンプレート:一般力学/equation

なる成分を有するベクトル 𝐂𝐀𝐁といい, 記号的に 𝐂=𝐀+𝐁 と記す. 𝐀=OA,𝐁=OB とすれば, 𝐂OA,OB を相隣れる二辺とする平行四辺形の対角線 OC に等しい.或いは 𝐀=OA の終点から AC=𝐁 なるベクトルを作れば OC=𝐂 なることが容易に証明される.

𝐀,𝐁 が与えられたとき 𝐀+𝐁=𝐂 なるベクトルを作ることを 𝐀,𝐁加えるまたは合成する, 逆に 𝐂 が与えられたとき 𝐂=𝐀+𝐁 なるベクトル 𝐀,𝐁 を求めることを 𝐂分解するといい, 𝐂合ベクトル𝐀,𝐁分ベクトルと呼ぶ.

(2.1)の定義から,ベクトルの加算についても,数の加え算と同様に次の関係が成り立つことがわかる:

テンプレート:一般力学/equation 最後の関係により,多くのベクトル 𝐀,𝐁,𝐂, を加えたものが一義的に定まることが知れる. 𝐑=𝐀+𝐁+𝐂+𝐀,𝐁,𝐂,合ベクトルという.

加え算の記号を用いれば,任意のベクトル 𝐯x,y,z 方向の三つのベクトル 𝐯𝐱,𝐯𝐲,𝐯𝐳 の和として表すことができる:𝐯=𝐯𝐱+𝐯𝐲+𝐯𝐳

或いは x,y,z 方向の正の方向の単位ベクトル𝐢,𝐣,𝐤 とすれば (1.6)により 𝐯𝐱=vx𝐢,𝐯𝐲=vy𝐣,𝐯𝐳=vz𝐤 であるから,

𝐯=vx𝐢+vy𝐣+vz𝐤

𝐢,𝐣,𝐤基本ベクトルと呼ぶ.

𝐢,𝐣 を定めたとき 𝐤 の向き即ち z 軸の正の向きの取り方に二通りあるが, ここではいわゆる右手系,即ち 𝐢,𝐣,𝐤 が右手の親指,人さし指,中指の向きになっているものを採用する (𝐤 の向きがこれと逆のものは左手系という).

𝐀𝐁𝐀=𝐁+𝐂 となるようなベクトル 𝐂 として定義される.従って 𝐂𝐀+(𝐁) に等しい.

我々はベクトルの加法を上記の如く定義した.然るに諸種の物理量の合成は,一般にこれと独立にその量に特有な定義を持つことが多い.この二つの定義が同値でないものに対してはベクトル算法の実用的価値が少ない.故にベクトル量については個々にその合成則がベクトル加法に一致するか否かを調べる必要がある.或る量の合成則は必ず一つに限るわけではないが,少なくともその中の一つがベクトル加法と一致しないものは,ベクトル量の中から除く方がよい.よってベクトル量向きを持った線分で代表され,その合成則がベクトル加法に従うものと定義するのが正確である[1]

例(i) 変位 運動点 P が空間 A から B へ移動したとき, その変位ベクトル AB で表される. P が更に BC なる変位により C へ動いたとすれば, 二つの変位 AB,BC を続けて行った結果は一つの変位 AC と同じ意味になる.よって合成の意味を上のように解釈すれば,変位は一つのベクトル量である. A,B位置ベクトルをそれぞれ 𝐫𝟏,𝐫𝟐 とすれば AB=𝐫𝟐𝐫𝟏 と書かれる.

例(ii) 平行六面体の相隣れる二面を表すベクトルの和 この場合にはベクトルの合成が直接の意味を持たない.寧ろその定義をベクトル加法から与えるのである.

二面 OAFB,OAEC を表すベクトル𝐒𝟏,𝐒𝟐 とし 𝐒𝟏+𝐒𝟐 を求める.A,O を通って OA に垂直な面 AFGE,OBDC を作れば, 𝐒𝟏,𝐒𝟐 はまた OAFB,OAEC の代表ベクトルであって, これを OA の方向からみれば次図のようになる.

𝐒𝟏,𝐒𝟐 はそれぞれ AF,AE に垂直で,その大きさS1=OA×AF,S2=OA×AE である. 𝐒𝟏=AP,𝐒𝟐=AQ を相隣れる二辺とする平行四辺形 APRQ を作れば、これは AFGE を全体 OA[2] して 90°回転したものである.故に AR=𝐒=𝐒𝟏+𝐒𝟐 の大きさは OA×AG 即ち OAGD の面積に等しく[3] ,方向はこれに垂直,向きを考えればこれが OAGD の代表ベクトルであることがわかる.よって 平行六面体の相隣れる二面を表すベクトルの和はその共通の陵を含む対角面の:代表ベクトルに等しい



  1. 位置ベクトル単位ベクトルなどは特殊なベクトルに付けた名で, 位置とか,単位とかいう量を代表するものではないからベクトル量ではない(数字 1スカラー量でないのと同様!).
  2. S1=OA×AF,S2=OA×AE
  3. なぜならば OA×AGOAGD の面積に等しく,DGOA と平行により,OAGD の面積は OAGD と等しいから.