線形代数学/余因子行列

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余因子行列

余因子

正方行列Aに対して、 行列のi行目とj列目を取り除いて得られる行列をAijと表す。このとき、

a~ij=(1)i+j|Aij|A(i,j)余因子という。

(508193752)(2,2)余因子は、(1)2+2|5872|=46である。

余因子展開

次のように、余因子を利用することで、行列式を求めることができる。

|A|=aj1a~j1+aj2a~j2++ajna~jn(1jn)

|A|=a1ia~1i+a2ia~2i++ania~ni(1in)

ただし、An次正方行列である。

これを、余因子展開という。

証明

A=(a11a1nan1ann)

とする、このとき、

|A|=|a11a1ja1nan1anjann|

である、ここで、行列Aj列目(a1ja2janj)は、 a1j(100)+a2j(010)++anj(001)と表すことができ、 (1)式は、 |(a11a21an1),,a1j(100)+a2j(010)++anj(001),,(an1an2ann)|と、表すことができる。これに、行列式の性質を使えば、 a1j|a111a1na210a2nan10ann|+a2j|a110a1na211a2nan10ann|++anj|a110a1na210a2nan11ann|(2) である。

ここで、|a110a1na210a2nai11ainan10ann|について考える。

この行列のi行目と、i1行目を入れ替る。i1行目と、i2行目を入れ替える。・・・2行目と、1行目を入れ替える。という操作をすると、次のような行列になる。 (1)i1|ai11aina110a1na210a2nai1,10ai1,nai+1,10ai+1,nan10ann|

行列の行または列を入れ替えると、行列式の値は1倍されるのだった。この操作では、i1回の入れ替えを行うので、この式は、(1)i1倍されている。

次に、同じように、j列目と、j1列目を入れ替える。j1列目と、j2列目を入れ替える。・・・2列目と、1列目を入れ替える。という操作をする。すると、次のような行列になる。

(1)i+j|1ai1ai,j1ai,j+1ain0a11a1,j1a1,j+1a1n0a12a2,j1a2,j+1a2n0ai1,1ai1,j1ai1,j+1ai1,n0ai+1,1ai+1,j1ai+1,j+1ai+1,n0an1an,j1an,j+1ann|

(1)i+j2=(1)i+jであることについての説明は不要であろう。 これを、行列式の定義に従って展開する。

一行目で、(1,1)要素を選ばない項は、いずれ、一列目の0を選ぶので、0となる。 なので、一行目で、(1,1)要素を選ぶ項だけを考えれば良いが、これは、|Ai,j|と一致する。 よって、この行列式は、(1)i+j|Aij|=a~ijである。


これを、(2)式に代入すれば、|A|=aj1a~j1+aj2a~j2++ajna~jnとなり、証明された。

これと同様の議論を行にも行えば、もう一方の式も導くことができる。

余因子行列

A~=(a~j,i)をAの余因子行列という。

余因子行列には、以下の性質がある。

AA~=A~A=|A|E

証明

A~A=(a~11a~m1a~1na~mn)(a11a1nan1amn)なので、 行列A~A(i,j)成分は、

a1ia~1j+a2ia~2j++ania~nj(1)である。


(i)i=jのとき

(1)式は、行列Ai列目に関して余因子展開をした式と一致するので、(1)式はi=jのとき、|A|である。

(ii)ijのとき

行列Ai列目が行列Aj列目になっている行列の行列式について考える。この行列式は以下のようになる。
|a11a1,i1a1ja1,i+1a1ja1na21a2,i1a2ja2,i+1a2ja2nan1an,i1anjan,i+1anjann|
この行列のi列目について、余因子展開を行うと、(1)式と一致する。
同じ列がある行列の行列式は0になるのだった。なので、(1)式は、ijのとき、0である。

まとめると、a1ia~1j+a2ia~2j++ania~nj={|A|(i=j)0(ij)である。 よってA~A=|A|Eである。同様の議論を行えば、AA~=|A|Eも導くことができる。

逆行列の計算

|A|0のときA1が存在するので、A~A=|A|EA1を右からかけ|A|で割れば、 A1=A~|A|である事がわかる。 テンプレート:ナビゲーション