制御と振動の数学/第一類/複素数値関数の Laplace 変換/解の漸近的挙動(安定論)/安定の定義と定理

提供: testwiki
2022年11月23日 (水) 15:33時点におけるimported>MathXploreによる版 (added Category:ラプラス変換 using HotCat)
(差分) ← 古い版 | 最新版 (差分) | 新しい版 → (差分)
ナビゲーションに移動 検索に移動

線形定常常微分方程式 テンプレート:制御と振動の数学/equation の解の t における振舞を調べるのが目的である.ここでは係数は実数としておく.

式 (4.13) には x=0 という解がある. これを零解という.零解は時間の経過には無関係に一定値を取り続ける.そのような解を式 (4.13) の平衡点と呼ぶことがある.an0 ならば式 (4.13) の平衡点は零解だけである[1]. さて,零解以外の任意の解 x(t) が,零解に近づくかどうか,その条件はなにかというのが我々の問題である.

安定の定義

(i) 式 (4.13) の解 x(t)テンプレート:制御と振動の数学/equation となるとき,x(t) は安定な解であるという.すべての解が安定な解となるとき, 式 (4.13) の零解は安定である, あるいは微分方程式 (4.13) は安定であるという.


(ii) テンプレート:制御と振動の数学/equation となる解を不安定な解という.このような解が少なくとも一つ存在すれば, 式 (4.13) は不安定であるという.


(iii) (i) でも (ii) でもないとき,すなわち t で発散する解は存在しない.しかしすべての解が 0 に漸近するわけではないとき, 式 (4.13) は安定限界であるという.


例95

(i) et,t3e2tcost (安定な解)

(ii) t,e2t,tsint (不安定な解)

(iii) 1,sint (安定限界となる解)

さて式 (4.13) の特性方程式を p(s) とし, α をその根とすると, テンプレート:制御と振動の数学/equation なる根がある. テンプレート:制御と振動の数学/equation であるから, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.上から eαt は安定,不安定,安定限界であることが分かる.一般の解は, テンプレート:制御と振動の数学/equation のような解の 1 次結合から成り立っている.したがって,この解の安定,不安定を調べればよい. テンプレート:制御と振動の数学/equation であるから a>0 なら,この解は t とともに発散する.また a<0 なら, テンプレート:制御と振動の数学/equation なる負の実数 c が存在し,この c に対して, テンプレート:制御と振動の数学/equation であるから, テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.よって c<0 に留意すれば, テンプレート:制御と振動の数学/equation を得る.それゆえ,次の結果が得られた.


定理 4.1(安定定理) 式 (4.13) の特性方程式 p(s) の根 αi の実数部の最大なるものを a* とする.すなわち, テンプレート:制御と振動の数学/equation とするとき,微分方程式 (4.13) は, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation である.また, テンプレート:制御と振動の数学/equation ならば, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation である.

証明

前半の安定・不安定の部分の証明はすでに与えた.後半の単根の場合も終わっている. 重根の場合は,α*=a*+ib* とすると[2]テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation であるから,この解は発散する.よって不安定である.


この定理から,安定・不安定の判別は,p(s) の根の,複素平面 (s 平面)上における配置によって決まることが分かる.

安定 根がすべて左半面にあるとき

不安定 少なくとも 1 根が右半面に存在するか,あるいは右半面には存在しないが,虚軸上に重根があるとき

安定限界 虚軸上の根は単根で、他はすべて左半面にあるとき

とまとめることができる.



  1. p(D)x=0…①で
    p(D)x={q(D)+an}x とおく.
    今,xC が①の解であるとき,
    {q(D)+an}C=0
    q(D)x=0 より anC=0
    an0 より C=0
  2. さらに a*=0