制御と振動の数学/第一類/複素数値関数の Laplace 変換/複素数値関数の微分積分学/複素数値関数の積分
(1)原始関数
実変数 の複素数値関数 が与えられているとき, テンプレート:制御と振動の数学/equation となる関数 を の原始関数という.
例87
テンプレート:制御と振動の数学/equation は の原始関数.
を任意の定数とするとき, も の原始関数となる.これを, テンプレート:制御と振動の数学/equation と表す.時には を省略することがある.
さてこのように定義すると を実関数とし, テンプレート:制御と振動の数学/equation なるとき, テンプレート:制御と振動の数学/equation すなわち, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation が成立する.
事実, の原始関数の一つを, テンプレート:制御と振動の数学/equation とすると,微分の定義[1]から, テンプレート:制御と振動の数学/equation であるが,これが, テンプレート:制御と振動の数学/equation に等しいのであるから,相等の定義[2]から, テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.これは が実関数 の原始関数であることを意味するから, テンプレート:制御と振動の数学/equation と書ける.ここに は任意の実定数である.ここで とおくと, テンプレート:制御と振動の数学/equation すなわち, テンプレート:制御と振動の数学/equation を得る.
例88
テンプレート:制御と振動の数学/equation の実部と虚部を等置することにより, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation を得る[3].
(2)定積分
複素数値関数 の定積分を, テンプレート:制御と振動の数学/equation と定義する.このとき微分積分学の基本公式が成立する.
微分積分学の基本公式 テンプレート:制御と振動の数学/equation
証明
実関数に対する基本公式, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation は既知であるから,第 2 式に を掛けて加えればよい.
また定積分に関して次の性質が成立する.
複素数値関数の積分の基本的性質
[Ⅰ] を複素数値関数, とすれば テンプレート:制御と振動の数学/equation
[Ⅱ] を複素数値関数とするとき, テンプレート:制御と振動の数学/equation
[Ⅲ] を複素数値関数, は実数値関数とする.このとき, テンプレート:制御と振動の数学/equation ここに,.
[Ⅳ] テンプレート:制御と振動の数学/equation ここに は複素数値関数
[Ⅴ] を任意の有限区間で積分可能な複素数値関数とする. テンプレート:制御と振動の数学/equation
以下に Ⅳ の証明だけ与えておく.
ほかは,実関数に関する同様な公式を既知とすれば,複素数値関数の積分の定義から簡単に得られる.
公式Ⅳの証明
は複素数であるから,その偏角を とおいて,極形式で表すと, テンプレート:制御と振動の数学/equation よって, テンプレート:制御と振動の数学/equation 公式Ⅰを用いて テンプレート:制御と振動の数学/equation 定積分の定義により, テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.左辺は実数であるから,右辺の第 2 項は である.また, テンプレート:制御と振動の数学/equation であるから,実関数に関する公式Ⅳを用いると, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation を得る[4].