線型代数学/行列と行列式/第三類/行列の定義・和・差

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線形代数では、行列と呼ばれるものを扱う.

数字を長方形の形に並べて括弧で括ったものを行列という. 横に並んだ数の並びを行と呼び,上から第 1 行,第 2 行,, 縦に並んだ数の並びを列と呼び,左から第 1 列,第 2 列, と数える. m × n の長方形に並んだものを,mn 列の行列, または (m,n) 型行列という.

n 元列ベクトルは (n,1) 型行列, n 元行ベクトルは (1,n) 型行列とみなすことができる.

例えば (3,4) 型行列があって、その第 2 行、第 3 列に書かれている数が 4 であるとき、 これを (2,3) 成分が 4 であると表現する.

縦と横に並んだ数の個数が等しいとき,つまり正方形の形に並ぶとき,正方行列という. (n,n) 型の正方行列を n 次正方行列 という. 正方行列において,(1,1),(2,2),(3,3), の成分を対角成分という. 対角成分以外の成分が 0 である行列を 対角行列 という. 成分が 0 のところは書かないで済ます場合もある.

ベクトルを一つの文字で置いたように,行列も一つの文字で置いて表す. A,B など大文字で置かれるのが通例である.

同じ型の行列に対して,和,差を計算することができる. たとえば, A=(4321),B=(1235) のとき,

A+B=(4321)+(1235)=(4+13+(2)2+(3)1+5)=(3114)


AB=(4321)(1235)=(413(2)2(3)15)=(5556)

というように,成分ごとに和,差を取る.また行列の実数倍は,

3A=3(4321)=(3(4)33323(1))=(12963)

というように,各成分を定数倍して求める. 行列の和,差,実数倍はベクトルと同じようにして計算するわけである. すべての成分が 0 の行列を零行列 といい O で表す.

この行列の演算(和,差,実数倍)について,行列を文字で表すと次のような計算法則が成り立つ.


定理6 行列の計算法則

A,B,C を同じ型の行列,k,l を実数とすると次が成り立つ.

(1) (A+B)+C=A+(B+C)
(2) A+B=B+A
(3) k(A+B)=kA+kB
(4) (k+l)A=kA+lA
(5) (kl)A=k(lA)

これらが成り立つことは,ベクトルの計算法則から容易に想像がつくだろう. ベクトルであっても行列であっても,和は成分どうしの和,実数倍は成分ごとの実数倍だからである.


計算問題をしてみよう.

演習4.

A=(4321),B=(1235) のとき,2AB(3A2B) を求めよ.


解答例

与式に直接代入してもかまわないが,せっかく計算法則があるのだから,同類項をまとめてから代入する.

2AB(3A2B)=2AB3A+2B=A+B
=(4321)+(1235)
=((4)+13223(1)+5)=(5156)