制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/指数関数の場合

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§1

前節の思いつきが成功したのは,割り算が常に割り切れたからである. 割り切れたのは f(t)t の多項式であったからで, f(t) を何回か微分すれば必ず 0 となることが保証されているからにほかならない. そこで,何回微分しても決して 0 にならない指数関数を f(t) に選んでみよう.

例5 テンプレート:制御と振動の数学/equation

例によって p=ddt とおくと

テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation

となる.この割り算を実行しよう.


eataeata2eata3eat1+p)eateataeataeataeata2eat+a2eat+a2eata3eata3eata3eata4eata4eat



eat/(1+p)=eataeat

aeat/(1+p)=aeata2eat

a2eat/(1+p)=a2eata3eat

a3eat/(1+p)=a3eata4eat


これはいつまでたっても割り切れない.しかしここで諦めては長蛇を逸する. そこで n 回,上の演算を実行すると,

テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation

を得る.したがって,

テンプレート:制御と振動の数学/equation

ならば,無限回の施行の後,

テンプレート:制御と振動の数学/equation

となって割り切れる.このとき商は,

テンプレート:制御と振動の数学/equation

となる.

験算

テンプレート:制御と振動の数学/equation

よって,この x(t) は,初期条件 x(0)=11+a をみたす解であることが分かった.


§2

上で行った験算は,|a|<1 でなくても,x(t) が正しい解を与えることを示している.そこで,

テンプレート:制御と振動の数学/equation

の場合にも,正しいを解が得られるように工夫してみよう.p で割るということは,積分するということであった. eat を積分すれば eata となる.1a のベキ級数は |a|>1 で収束する. そこで割り算を少し変形して、次のように p から先に割っていこう.

1aeat1a2eat1a3eatp+1)eateat1aeat1aeat1aeat1a2eat+1a2eat+1a2eat1a3eat1a3eat

eat÷(p+1)=1aeat1aeat

1aeat÷(p+1)=1a2eat1a2eat

1a2eat÷(p+1)=1a3eat.....

この演算を無限回続けると,|a|>1 であるから,商は収束して,

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となる.


§3

|a|=1 の場合の考察は後まわしにして,これら 2 種の計算法の検討をしておこう.


1 |a|<1 の場合

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2 |a|>1 の場合

テンプレート:制御と振動の数学/equation

このように p の関数を p あるいは 1p で展開し,p は微分,1p は積分と考えて形式的に計算すると,正しい答に導かれる.例えば例1

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となって同じ答を得る.

例6 1p で展開するとどうなるか.

解答例

テンプレート:制御と振動の数学/equation

と項が無限に生成されてしまい,うまくいかない.


§4

上に示した幾つかの例において,微分方程式の解は得られるには得られたが,まだ多くの問題点を残している. 手法のいかがわしさは暫くおくとしても,一つの方程式に対して一つの解しか得られず、任意の初期値を満たす解が得られないのは大きな欠陥である. このことは,次のような方程式

テンプレート:制御と振動の数学/equation

を取り扱うとき,深刻な問題となる.というのは,単に p=ddt と置いたのでは,

テンプレート:制御と振動の数学/equation

テンプレート:制御と振動の数学/equation

となって,得られた解 x(t)0 は正しい解には違いないが,視察でも求まるつまらない解だからである.

さて 1p を積分と考えることによって、色々な初期値が得られる可能性のあることを前に示唆しておいた.

そこで,ひとまず (1.5)0 から t で積分してみよう.

テンプレート:制御と振動の数学/equation

を得る.そこで,積分は微分 p の逆演算であるという考えを一方深めて,改めて, テンプレート:制御と振動の数学/equation あるいは,もっと正確に, テンプレート:制御と振動の数学/equation と定義しなおすことにしよう.そうすれば式 (1.6) は, テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.初期値 x(0) が入ってきたところが,単に ddt=p とおいた場合と根本的に異なっている. この式を x について解き, テンプレート:制御と振動の数学/equation これを 1p で展開すると, テンプレート:制御と振動の数学/equation を得る. さてここで定義 (1.7) に戻り, テンプレート:制御と振動の数学/equation テンプレート:制御と振動の数学/equation 以下同様にして, テンプレート:制御と振動の数学/equation が得られることに注意すると,式 (1.8)テンプレート:制御と振動の数学/equation となる.上の式の( )内は eatTaylor 展開である.よって, テンプレート:制御と振動の数学/equation を得る.これが式 (1.5) の正しい解であることは明らかである.

どうやら我々は満足するべき解法にかなり近づいたようである.次節でもう少し掘り下げて考えてみよう.