線型代数学/行列と行列式/第三類/外積

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内積があるのなら外積があってもいいのでは,と思っている人もいることだろう. 単に「外積」と呼ばれることもある,3次元実数ベクトルについての外積,すなわち「ベクトル積」を紹介する.

定義3 外積

R3のベクトル a=(abc)b=(xyz) に関して、a×b を次で定める.

a×b=(bzcycxazaybx)

ベクトル積は 3 次元ベクトルの場合のみについて定義される演算である。

定義のとおりだが、実際の計算は図に示したように第 1 成分を下に付け加え, ×の形に積を取り,使っていない成分に押し込むという感じで技化しておくとよい.

ベクトル積に関して次の計算法則が成り立つ. 交換法則が成り立たないことに注意する. a×bab を入れ替えると,符号が逆になる.


定理4 ベクトル積の計算法則

(1) a×b=(b×a)

(2) k(a×b)=(ka)×b=a×(kb)

(3) a×(b+c)=a×b+a×c

(4) (a+b)×c=a×c+b×c

証明

(1)

a=(abc)b=(xyz) にて b×a=(yczbzaxcxbya)=((bzcy)(cxaz)(aybx))=(bzcycxazaybx)=a×b

(2)

k(a×b)=(k(bzcy)k(cxaz)k(aybx))=(kbzkcykcxkazkaykbx)=((kb)z(kc)y(kc)x(ka)z(ka)y(kb)x)=(ka)×b

同様に k(a×b)=(kbzkcykcxkazkaykbx)=(b(kz)c(ky)c(kx)a(kz)a(ky)b(kx))=a×(kb)


(3)

a=(a1a2a3)b=(b1b2b3)c=(c1c2c3) にて


a×(b+c)=(a1a2a3)×(b1+c1b2+c2b3+c3)=(a2(b3+c3)a3(b2+c2)a3(b1+c1)a1(b3+c3)a1(b2+c2)a2(b1+c1))=(a2b3+a2c3a3b2a3c2a3b1+a3c1a1b3a1c3a1b2+a1c2a2b1a2c1)


=(a2b3a3b2+a2c3a3c2a3b1a1b3+a3c1a1c3a1b2a2b1+a1c2a2c1)=(a2b3a3b2a3b1a1b3a1b2a2b1)+(a2c3a3c2a3c1a1c3a1c2a2c1)=a×b+a×c


(4)

(a+b)×c=c×(a+b)=(c×a+c×b)=(a×cb×c)=a×c+b×c


2次元ベクトル,3次元ベクトルの内積は,図形的な解釈が可能であった. ベクトル積が図形的には何を表しているかを紹介する.


定理5 ベクトル積の意味

(1) a×b は,ab の両方と直交する.

(2) ab が張る平行四辺形の面積 S は,S=|a×b|

(3) abc が張る平行六面体の体積 V は,V=|(a×b)c|

証明

a=OA=(abc)b=OB=(xyz) とする.

(1)

aa×b の内積をとる.


a(a×b)=(abc)(bzcycxazaybx)=a(bzcy)+b(cxaz)+c(aybx)=abzacy+bcxabz+acybcx
=abzacy+bcxabz+acybcx=0

同様に

b(a×b)=(xyz)(bzcycxazaybx)=x(bzcy)+y(cxaz)+z(aybx)=bxzcxy+cxyayz+ayzbxz
=bxzcxy+cxyayz+ayzbxz=0

よって,a×bab の両方と直交する.


(2)

ab のなす角を θ とすると,内積の性質より,

|a||b|cosθ=ab=ax+by+cz

OA を底辺としたときの B の高さを h とすると,

S=OA×h=|a||b|sinθ(h=|b|sinθ)


と表されるので,


S2=|a|2|b|2sin2θ=|a|2|b|2(1cos2θ)=|a|2|b|2|a|2|b|2cos2θ

|a|2|b|2cos2θ=(ab)2=(ax+by+cz)2,また |a|2|b|2=(a2+b2+c2)(x2+y2+z2) だから,

S2=(a2+b2+c2)(x2+y2+z2)(ax+by+cz)2


=a2x2+a2y2+a2z2+b2x2+b2y2+b2z2+c2x2+c2y2+c2z2(a2x2+abxy+acxz+abxy+b2y2+bcyz+acxz+bcyz+c2z2)

=a2x2+a2y2+a2z2+b2x2+b2y2+b2z2+c2x2+c2y2+c2z2(a2x2+abxy+acxz+abxy+b2y2+bcyz+acxz+bcyz+c2z2)

=a2y2+a2z2+b2x2+b2z2+c2x2+c2y2(abxy+acxz+abxy+bcyz+acxz+bcyz)

=(b2z22bcyz+c2y2)+(c2x22acxz+a2z2)+(a2y22abxy+b2x2)

=(bzcy)2+(cxaz)2+(aybx)2

=|a×b|2


なぜならば |a×b|2=(a×b)(a×b)=(bzcycxazaybx)(bzcycxazaybx)=(bzcy)2+(cxaz)2+(aybx)2

よって,S=|a×b|


(3) c=OC とする. ab が張る平面を平行四辺形の底面としてみたときの C の高さを la×bc のなす角を φ とすると,

a×bab が張る平行四辺形に垂直なので,

l=|OCcosφ|=|c||cosφ| だから,

V=Sl=|a×b||c||cosφ|=||a×b||c|cosφ|=|(a×b)c|


演習1.

a=(132)b=(223)c=(110) のとき,

(1) a×b,(a×b)c を求めよ.

(2) a,b の両方と直交する単位ベクトルを求めよ.

(3) OA=a,OB=b,OC=c とするとき,三角錐 OABC の体積を求めよ.

解答例

(1) a×b=(132)×(223)=((3)32(2)22131(2)(3)2)=(514)

(a×b)c=(514)(110)=5(1)+1(1)+40=4.

(2) a×bab に垂直なので,d=a×b を単位化する.

±1|d|d=±1(5)2+12+42 (514)=±142(514).(解となるベクトルは二つ)

(3) a,b,c が張る平行六面体の体積 V は,

V=|(a×b)c=|4|=4

a,b が張る平行四辺形の面積を Sa,b が張る平行四辺形を底面として見たときの平行六面体の高さを h とすると V=Sh であり,

(三角錐 OABC の体積)=13(12S)h=16V=46=23