測度論的確率論/準備/集合/集合

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集合

集合とは,「数学的に明確に定義された対象の集まり」をいう. 「数学的に明確に定義された」ということは,一つの対象を持ってきたときに,その集合に属しているか,それとも属していないかが明確に示されることをいう. 例えば「実数空間上に定義された滑らかな関数全体」は集合でない. なぜなら,どのような関数を「滑らか」というかがはっきりしていないからである. しかし「実数空間上に定義された各点で微分可能な関数全体」は集合である. 集合を構成する対象を要素またはという.

以下 M,N,A,B,Ω 等の記号は集合を表すものとする.

定義1. a が集合 M に属する元であることを aMと記す.

定義2. a が集合 M に属する元でないことを aMと記す.

定義3. 集合 M が集合 N含まれるとは

M に属する任意の元が N に属すること

をいい,MN または NM と記す.

定義4. 集合 M と集合 N一致するとは

MN かつ NM なること

をいい,M=N と記す.

定義5. 集合 M と集合 N和集合 MN とは

M または N に属する元全体の集合

をいう.

定義6. 集合 M と集合 N共通集合 MN とは

MN の両方に属する元全体の集合

をいう.

定義7. 同様に集合列 A1,A2,A3, に対して,どれかの An に属する元全体の集合を n=1An と表す.

定義8. 集合列 A1,A2,A3, に対して,すべての An に属する元全体の集合を n=1An と表す.

定義9. また「元を持たない集合」を空集合 といい で表す. 任意の集合 M について M,M=M,M= である.

定理1. A,B,C を集合とするとき

(1) (AB)C=(AC)(BC)

(2) (AB)C=(AC)(BC)

証明

(1) x(AB)C に属する任意の元とする. xAB かつ xC. すなわち (xA または xB) かつ xC. これは xAC または xBC となり, x(AC)(BC) すなわち (AB)C(AC)(BC).…①

逆に AABBAB より AC(AB)CBC(AB)C. (XZ かつ YZ ならば XYZだから) (AC)(BC)(AB)C.…②

①②より (AB)C=(AC)(BC)

(2)(1)に対して定理3を先取りして適用する. ((AB)C)C=((AC)(BC))C(AB)CCC=(AC)C(BC)C(ACBC)CC=(ACCC)(BCCC).(証明終)


定理2. A,An,nN を集合とするとき

(1)(n=1An)A=n=1(AnA)

(2)(n=1An)A=n=1(AnA)

証明

(1)の証明.x(n=1An)A とすると,xn=1An かつ xA, したがって,ある(少なくとも一つの)n0𝐍 について xAn0 かつ xA. すなわち xAn0An=1(AnA) であり, これにより (n=1An)An=1(AnA).…①

逆に任意の mN について Amn=1An であるから AmA(n=1An)A となり (AZ,BZ,CZ ならば ABCZ と同じ理由で,) n=1(AnA)(n=1An)A[1]…②

①②より(1)は証明された.

(2)の証明.(1) に定理3を先取りではあるが適用する。

(1)より ((n=1An)A)C=(n=1(AnA))C(n=1An)CAC=n=1(AnA)C(n=1AnC)AC=n=1(AnCAC). (証明終)

定義9. ある集合 Ω の部分集合全体をなす集合を (Ω) と記す.したがって A(Ω)AΩ を意味している. 特に (Ω),Ω(Ω) である.

定義10. また 1 点 ωΩ だけからなる Ω の部分集合を {ω},あるいは簡単のため ω とも書く.

定義11. A(Ω) に対して

AC{aΩ|a∉A}

A補集合という.明らかに (AC)C=A である.

定義12. A,B(Ω) に対して

ABABC={aA:a∉B}

を集合 A と集合 B,また

AB(AB)(AB)

を集合 A と集合 B対称差という.

演習1. Ω(0,1]×(0,1](𝐑2),A(0,1]×(0,12],B(0,12]×(0,1] とするとき,AB,AB,AB,AB を図示せよ.

(解答) 略

定理3. A,B(Ω) とするとき,次の命題が成り立つ.

(1) (AB)C=ACBC

(2) (AB)C=ACBC

証明

(1)を証明する.x(AB)C とすると x∉AB すなわち x∉A かつ x∉B である. ゆえに xACBC したがって (AB)CACBC が示された.

逆に xACBC であれば X∉A かつ X∉B したがって x(AB)C となり ACBC(AB)C が示された.

(2)を証明する. (1)に (AC)C=A を適用する. (1) より ((AB)C)C=(ACBC)C すなわち AB=(ACBC)CA=(AC)C,B=(BC)C だから (AC)C(BC)C=(ACBC)CAC をあらためて ABCB と書き直せば ACBC=(AB)C.(証明終)


定理3 はつぎのように一般化される.


定理4. An(Ω),n=1,2,3,, とするとき,次の命題が成り立つ.

(1)(n=1An)C=n=1AnC

(2)(n=1An)C=n=1AnC

証明

(1)(n=1mAn)C=(n=1m1AnAm)C=(n=1m1An)CAmC=(n=1m2An)CAm1CAmC=A1CA2CA3CAmC=n=1mAnC

(2)(n=1mAn)C=(n=1m1AnAm)C=(n=1m1An)CAmC=(n=1m2An)CAm1CAmC=A1CA2CA3CAmC=n=1mAnC

(証明終)



  1. さらにパラフレーズする.
    任意の m についてAmA(n=1An)A
    すなわち,
    A1A(n=1An)A…①
    A2A(n=1An)A…②
    A3A(n=1An)A…③

    各式の左辺の変化している部分に着目する.それは A1,A2,A3, であり,今,左辺の和集合を考えると (A1A)(A2A)(A3A) であるが,
    ①②③…,により A1A はある集合 Z に対して A1AZ だといっている.
    同様に A2AZ,A3AZ, だといっている. したがって (A1A)(A2A)(A3A)Z=(n=1An)A といえることになるであろう.