解析学基礎/ラプラス変換

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ラプラス変換とは

ラプラス変換の定義

無限積分 0f(x)esx dx を関数f(x)ラプラス変換といいます。 ラプラス変換はL(s) という記号で表される事も多いですが、変換元の関数を明示したい場合には L[f(x)]L[f(x)](s) などという記号で表す場合もあります。ラプラス変換の変数はsである事に注意してください。xに関する定積分で定義されるのですから、xは(変換後の関数の)変数ではありません。

指数α位の関数

ラプラス変換は無限区間の広義積分ですので、極限が収束するときにしか使うことができません。どのような関数に対して収束するのかという十分条件として、指数α位の関数という関数のクラスを定義しておきます。

定義 関数f(x)が不等式 |f(x)|MeαxMは正の定数)を満たすとき、f(x)指数αであるという。

関数f(x)が指数α位ならば、0|f(x)esx|Me(sα)xが成り立ちます。s>αを満たすsに対して優関数Me(sα)xの積分0Me(sα)xdxは収束しますので、解析学基礎/広義積分#優関数の原理により、ラプラス変換L[f(x)]も収束します。

またこの不等式から、f(x)が指数α位でs>αならば、はさみうちの原理よりlimxf(x)esx=0であることもわかります。

ラプラス変換の公式

  • 1. 定数1のラプラス変換

s>0のとき、

L[1]=0esxdx=[1sesx]0=1s
  • 2. 指数関数のラプラス変換

s>αのとき、

L[eαx]=0eαxesxdx=0e(sα)xdx=[1sαe(sα)x]0=1sα
  • 3. 正弦と余弦のラプラス変換

s>0のとき、

L[sinβx]=0esxsinβxdx=[esx(1βcosβx)]00(s)esx(1βcosβx)dx=1βsβ0esxcosβxdx

この第2項を更に部分積分すると、

L[sinβx]=1βsβ([esx(1βsinβx)]00(s)esx(1βsinβx)dx)=1βs2β2L[sinβx]

が得られます。これを L[sinβx] に関して解けば L[sinβx]=βs2+β2 が得られます。 同様の計算を行う事によりL[cosβx]=ss2+β2も得られます。

  • 4. 指数が掛かった関数のラプラス変換
L[eαxf(x)](s)=0esxeαxf(x)dx=0e(sα)xf(x)dx=L[f(x)](sα)

が成り立ちます。これを上述の正弦と余弦のラプラス変換に用いれば、s>αのとき、

L[eαxsinβx]=β(sα)2+β2,L[eαxcosβx]=sα(sα)2+β2

が成立する事が分かります。

  • 5. 導関数のラプラス変換

以下関数f(x)が何回でも微分可能(すなわちC級である)と仮定しておきます。

部分積分の公式を使うことで、導関数のラプラス変換の公式は導出されます。

関数f(x)の微分のラプラス変換は

L[f(x)]=0f(x)esxdx=[f(x)esx]00(s)esxf(x)dx=(limxf(x)esx)f(0)+s0esxf(x)dx=0f(0)+sL[f(x)]=sL[f(x)]f(0)

という風に導出できます。

結果だけを改めて書くと、

L[f(x)]=sL[f(x)]f(0)

です。

もちろん(これに限らず数学の学習全般に言えることですが)、公式を理解し使いこなすためには、このような一般的な証明をすることと、具体的な(2次関数や3次関数あるいは三角関数や指数関数などの)初等関数を例として実際にラプラス変換の計算をしてみることで実際に上記の公式L[f(x)]=sL[f(x)]f(0)が成り立つことを確認することと、両方をやってみることが大切です。以降、この本ではわざわざこのような注意はしませんが、言われなくても必ずこのような学習をしましょう。

高階導関数のラプラス変換も、この公式を繰り返し適用することで得られます。たとえば、

L[f(x)]=sL[f(x)]f(0)=s(sL[f(x)]f(0))f(0)=s2L[f(x)]sf(0)f(0)

です。先ほどと同様に結果だけを改めて書くと

L[f(x)]=s2L[f(x)]sf(0)f(0)

です。以下同様の事を繰り返せばn階導関数のラプラス変換の公式

L[f(n)(x)]=snL[f(x)]r=1nsnrf(r1)(0)

が導出できます。(証明は数学的帰納法によります。)

  • 6. 多項式のラプラス変換

多項式 f(x)=a0+a1x++anxn のラプラス変換を考えます。 ラプラス変換は明らかに線型性を持ちますので、L[f(x)]=a0L[1]+a1L[x]++anL[xn]です。 したがって、m=1,2,,nに対してL[xm]が求まれば、f(x)のラプラス変換も求まることになります。

L[xm]を定義通りに計算するならば部分積分をm回繰り返すことになりますが、次のように簡単に計算することもできます。 g(x)=xmとすると、

g(r)(x)={m(m1)(mr+1)xmr(1rm1)m!(r=m)0(rm+1)

が得られます。よって、L[g(m+1)(x)]=0です。

ところで、上述の導関数のラプラス変換の公式を適用すると

L[g(m+1)(x)]=sm+1L[g(x)]r=1m+1s(m+1)rgr1(0)=sm+1L[g(x)]m!

となります。ゆえに

sm+1L[xm]m!=0
L[xm]=m!sm+1

が成り立ちます。

  • 7. 独立変数xが掛かった関数のラプラス変換

ここでは関数 f(x) のラプラス変換が変数sで微分可能であると仮定します。この関数f(x)のラプラス変換を

F(s)=L[f(x)]=0f(x)esxdx

と書くとき、この式の両辺を変数sで微分すると、解析学基礎/関数列の極限#微分と広義積分の順序交換の定理3.5より

ddsF(s)=dds0f(x)esxdx=0s[f(x)esx]dx=0f(x)s(esx)dx=0f(x)(x)esxdx=0xf(x)esxdx

が成り立ちます。従ってddsF(s)=L[xf(x)]より L[xf(x)]=ddsL[f(x)] が得られます。

  • 8. 独立変数xの冪が掛かった関数のラプラス変換

上の7.で得られた公式を関数xf(x)に適用すると

L[x2f(x)]=L[x(xf(x))]=ddsL[xf(x)]=dds[ddsL[f(x)]]=(1)2d2ds2L[f(x)]

が成り立つことがわかります。以下同様の議論を繰り返す事により

L[xnf(x)]=(1)ndndsnL[f(x)]

が導かれます。

逆ラプラス変換

ラプラス変換は単射です。すなわち、異なる関数のラプラス変換が一致することはありません。したがって、次を満たすような写像L1が存在することがわかります。

f(x)=L1[L[f(x)]]

このL1逆ラプラス変換と呼びます。逆ラプラス変換も積分を用いた式で書くことができますが、ここでは割愛します。上記の定義式のみで十分な応用例を、次節で見てみます。

ラプラス変換の応用

線型微分方程式への応用

ラプラス変換を用いて、微分方程式を解いてみましょう。例として下の問題を考えます。

y+2y8y=0 , y(0)=0,y(0)=1

この微分方程式の左辺のラプラス変換は線型性により

L[y]+2L[y]8L[y]=s2L[y]sy(0)y(0)+2(sL[y]y(0))8L[y]=(s2+2s8)L[y]1=(s2)(s+4)L[y]1

なので、両辺にラプラス変換を施すと

(s2)(s+4)L[y]1=0
L[y]=1(s+4)(s2)

が成り立ちます。ここで右辺を高校で学んだように部分分数分解をすると、

L[y]=16(1s21s+4)

となります。この両辺に逆ラプラス変換を施せば第2節で述べたラプラス変換の公式より

L1[L[y]]=16(e2xe4x)

が得られます。(ここで逆ラプラス変換にも線型性が成り立つ事を用いました。)斯くして初期値問題の解

y=16(e2xe4x)

が導かれた事になります。