高等学校政治経済/経済/物価の動き

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物価指数

物価のうち、企業間で取引きされる卸売の段階での物価を企業物価という。 一方、物価のうち、一般の最終消費者が商品を購入するときの物価を消費者物価という。

この企業物価を算出する方法は、企業間の取引きで、よく取引きされる商品についてウェイトをつける計算方法で、企業物価指数を算出する必要がある。

いっぽう、消費者物価を算出するには、最終消費者がよく消費する商品についてウェイトをつける計算方法で、消費者物価指数を算出する必要がある。

消費者物価指数および企業物価指数とも、基準年を100とした指数である。

物価と市場メカニズム

インフレの場合

物価の持続的な上昇はインフレーション(inflation)と呼ばれる。

インフレの原因は一般的に、ある商品を買いたい人の多さに対して(つまり、需要に対して)、商品不足である(つまり供給不足)。

市場メカニズムを考えれば、その原因が思いつくだろう。 つまり、商品が少ないからこそ、あるお店で値上げをすれば、他のお店で買うこともできないだろうし(もしくは他のお店を探すのがメンドクサイ)、どうしても買う必要のある人がいれば(需要があれば)、たとえ値段が上昇しても、ガマンできる金額であれば(その金額の高さというデメリットよりも、「買いたい」という需要が強ければ)、消費者はそのお店でその商品を買うわけである。

このような仕組みを経済用語でまとめると、インフレの原因は一般的に、その物価水準において供給よりも需要が大きい時に、インフレが発生しやすい。

数式っぽく不等号で表せば、インフレが起きやすい場合とは、

需要 > 供給

である。

  • インフレの、原因による分類

需要の増加によって、需要が供給より大きくなって発生するインフレーションをディマンド・プル・インフレ(demandーpull inflation)という。

いっぽう、供給側の生産コストの上昇によって起きるインフレーションをコストプッシュ・インフレ(costーpush inflation)という。

  • インフレと通貨価値

インフレになると、インフレの原因がなんであれ、通貨の価値が下がったことになる。ひとつの物を買うのに、より多くの額面の金銭が必要んなるので、たとえば日本のインフレだとしたら、つまり貨幣1円あたりの価値が下がったことになる。

インフレ現象を、物を基準に見ると、通貨の価値が下がったことになる、 一方、通貨を基準にインフレをみると、インフレによって、物の金銭価値が上がることになる。

  • インフレと貯金・借金

インフレによって、貯金の価値は下がる。

また、借金の負担も、インフレによって、下がる。たとえば10万円の借金をしていても、インフレによって物価が10倍になれば、昔は1万円だった物をインフレ後に1つ売れば、それで借金が返せることになる。10倍インフレ前なら、1万円のものを10個売らなければならなかったわけだから。(じっさいのインフレでは、国の深刻な財政破綻などでないかぎり、このような急激なインフレは起きないのが普通。あくまで、わかりやすくする目的のため、急激なインフレで説明している。)

このように、インフレは、借金の借り手にとっては有利である。 裏をかえすと、借金の貸し手のとってはインフレは不利である。

なお、インフレによって、これから、名目上の利子率、利息率が上がる。

すると、これから借りる借金の利子も上がるので、これから借りる人にとっては、不利になる。しかし、すでに借りている人にとっては、その借金の契約条件での利子率が(例外として物価連動などの条件を利子率につけてないかぎり、)昔の利子率のままなので、これから借りる人よりも、昔に借りた人は利子率が低いことになる。


デフレの場合

いっぽう、持続的な物価の下落はデフレーション(deflation)と呼ばれる。 デフレの原因は、一般的に、供給が余ってることである。

市場メカニズムとの関係を考えてみよう。 お店の都合からすれば、何らかの原因で、今までどおりの価格のままでは商品が売れないからこそ、しかたなく値段を下げる必要があるので、物価が下がるのである。

たとえば、もし消費者が、あまりその商品に需要がないのに、もし、その商品の値段が高ければ、そんな高額商品は買いたくないのが当然だろう。

でも、もし、その商品の値段がすごく下がれば、「こんぐらい安ければ、買ってもいいだろう」と思う消費者も増えるだろう。

つまり、値段が下がることで、需要が増える。もちろん、販売店の売上(うりあげ)は下がるが、まったく売れないよりかはマシである。お店の商品は、保管するだけでも、倉庫代などが掛かるのである。いわゆる「在庫品」(ざいこひん)には、費用が掛かるのである。

お店が商品の値段を下げたら、消費者の需要がこうして上がるが、一方、市場メカニズムにおける供給はどうなるのだろうか。値段を下げたところで、その瞬間には、その商品を保有しているお客さんの人数は変わらないので、値段(つまり物価)を下げても、べつに供給は増えない。

結局、値段を下げると、とりあえず、その瞬間には、需要だけが増加して、供給はそのまま不変である。

ともかく、需要不足だとデフレになりやすい。 読者は「不足」の基準を何にするかという疑問があるだろうが、とりあえず経済学では、インフレの場合の「 需要 > 供給」の条件で供給を基準にしたように、デフレも供給を基準に考えよう。

数式っぽく不等号で表せば、デフレが起きやすい場合とは、

需要 < 供給

である。(デフレの条件式の不等号の向きは、インフレの場合と逆向きである。)

物価と景気との関係

インフレと景気との関係

先ほどの節の説明のとおり、市場での商品不足は、インフレを引き起こしやすい。 一方、商品不足なら、もし商品を販売すれば、ほぼ確実に売れるだろうから、好景気を引き起こしやすい。

よって、このように商品不足の場合、インフレと好景気が連動する場合もある。

しかし例外もあるだろう。たとえば、インフレの原因が、たとえば国家財政における財政不安・財政危機などによって通貨の信用が暴落した場合や、あるいは戦争・大災害などにより工業地帯などが破壊されて商品不足などが起きた場合などには、消費者は将来不安のために生活必需品以外の消費を控える可能性もあるので、かならずしもインフレだからといって好景気になるとは限らない。

なお、不況とインフレ(物価高)が同時に進行する現象をスタグフレーション(stagflation)という。(停滞(スタグネーション)とインフレーションをあわせた用語)

1973年の石油危機は、「狂乱物価」(きょうらん ぶっか)と呼ばれる物価上昇(インフレ)をもたらし、スタグフレーションをもたらした。 (※ 第一学習社の検定教科書『高等学校 政治・経済』が、石油危機をスタグフレーションと認定している。)

なお、この1973年の石油危機のとき、トイレットペーパーが品薄になるというウワサが流れ、スーパーなどの日用品売場にトイレットペーパーを買い求める消費者が殺到した。

さて、インフレになると、場合によっては、金銭をもっていても価値が下がっていくので、貯金をするよりも、物を買って、物資として資産をたくわえようという意識が働く結果、消費が活発になり景気が良くなる場合もある。


デフレと景気との関係

一方、商品が欲しくない、つまり需要不足( 需要 < 供給)なら、デフレが起きやすいのであった。

消費者がある商品が欲しくないってことは、その商品を扱ってる販売店や生産者からすれば、販売や生産を扱ってる商品が売れないので、その商品の販売会社・生産メーカーなどは倒産しかねないってことである。もし、多くの会社が潰れれば、不況になってしまう。

こういうデフレの場合、デフレと不景気が連動する場合もある。もちろん、例外もあるだろう。

ある会社がつぶれても、その会社の競争相手の別会社にとっては好都合かもしれない。あるいは技術改善によって価格の減少が起きる場合もある。

さて、インフレと不況が同時進行することを「スタグフレーション」と呼ぶのであった。

一方、不況とデフレが同時進行している場合を考えてみよう。

まず、なんらかの不況または景気不安によって、生産者・販売者らが生き残りのためのコスト・ダウンをして、デフレになったとしよう。

すると、そのコスト・ダウンによって、競合他社も値下げさぜるを得ず、さらに価格競争が起きる。すると、さらに、最初に値下げした業者も、競合他社に対抗するため、またまた値下げする。すると、どんどん販売価格が下がる。

そして、販売価格が少ないので、せっかく商品を売っても、利潤が少ない。この結果、デフレによって所得が、名目だけでなく実質的にも低下したことになる。


そして、労働者の所得が低下すれば、当然、消費に使える金銭が減るので、消費が不活発になり、さらに不況になるだろう。

らせん

このように、なんらかの原因で、不況とデフレが同時進行することをデフレ・スパイラルという。(「スパイラル」とは、「らせん」という意味。「スパイラル」という単語自体には、その循環が、良い循環か、わるい循環かの、決まりはない。つまり、「デフレ・スパイラル」とは、けっして文字通りの単なる「デフレの循環」意味ではなく、「デフレが不況を深刻化させる」という価値判断を「デフレ・スパイラル」という単語は含んでいる。)

このデフレ・スパイラルが悪循環となって、景気を低迷させ続けかねない、というのが、近年の定説である。(検定教科書でも、そういう立場である。)

2002年に政府から「総合デフレ対策」が出るのは、おそらく上記のようなデフレ・スパイラルの不安があったのだろう。


経済史としては、実際にデフレ・スパイラルという現象が起きているかはともかく、1999年ごろから日本政府はそう認識したようであり、2002年以前から既にデフレを止めようとする政策は行われていた。

歴史的に実際、1999年以降の一時期、ゼロ金利政策(1999年)、量的緩和政策(2001年)などといったインフレ誘導的な政策が行われた[1]

テンプレート:コラム

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デフレと貯金

さて、デフレになると、商品が安く買えるので、貯金のある人にとっては有利である。(なお、インフレは、貯金の価値を減らすのであった。このように、インフレとデフレは、貯金の価値に対して、逆に作用する。)

さて、貯金のない人にとっては、これからオカネを稼がないといけないが、デフレになると、せっかくオカネを稼ぐために働いても、すでに貯金のある人と同じ金額を貯めるまでに、より長い期間が必要である。

たとえば、かりに、日本のサラリーマン平均年収1000万円のインフレ時代があったとして、その後、デフレによって、平均年収100万円になったとしよう。(じっさいには、このような急激なデフレは起きないのが普通。あくまで、わかりやすくする目的のため、急激な例で説明している。)

この条件の場合、むかしは、1000万円を1年で稼げたことになる。しかし、デフレ後だと10年間、働き続けないといけない。

デフレが起きても、けっして、それまでの貯金が消失するわけではない。なので、年収1000万円時代の人の貯金が消えるわけではない。

このように、貯金の無い人にとって、デフレは不利である。(なお、インフレなら、貯金のない人には有利なのである。)

(※ 範囲外:)ケインズ経済学の元ネタでもある経済学者ケインズは、緩やかなインフレを、金利生活者にとっての「安楽死」と表現した[2]。結局、インフレでもデフレでも、誰かが不利益をこうむる(少なくとも一時的には)。2010年以降、インフレを求める意見は市井(しせい)に多いが、しかしケインズ経済学を根拠にインフレ誘導政策を要求するなら、それは「安楽死」である自覚ぐらいはもってもらいたいものである。さて、ケインズ自身は高齢者社会保障にはあまり関心は無かっただろうが、じつは年金受給者は「金利生活者」のようなものでもある[3]。あるいは、仮に年金自身は物価に対して中立的だと仮定しても(つまり、年金を「金利」とみなすべきではないとしても)、それでも一般的に高齢者は若者に比べて貯蓄が多いの実際であり、なのでよく経済評論ではインフレは高齢者に不利だとも言われる。いちおう、日本の年金は「マクロ経済スライド」といって、インフレの場合は年金給付額もそのぶん多くなるのだが、その負担は若者に行っているわけである。ともかく、誰も負担しない物価政策など、ありえない。ケインズ風に言うなら、どの政策でも誰かを「安楽死」させるわけだ。

一般に、金利生活者や年金生活者、あるいは貨幣として多額の貯蓄を持った生活者は、インフレは望まない傾向があるとされる[4]。一方、企業者や経営者はデフレやそれに伴う不況を嫌う傾向があるとされ


日本の近年の景気

1973年の第一次石油危機にインフレになり、また1979年の第二次石油危機のときもインフレになり、1980年代後半から80年代末ごろまでインフレになっただ。しかし、1990年頃のバブル崩壊後からは、ずっとデフレ傾向が続いている。

2016年の現在、日本では、デフレが不況を深刻化・長期化させる原因だろうと考えられており、そのため政府は、財政政策などによって、物価上昇率2%ていどの、ゆるやかな物価上昇率のインフレを目指してると思われている。(※ 清水書院の検定教科書『高等学校 新政治・経済』など、いくつかの教科書出版社の検定教科書に、そういう見解がある。)

このように、政策によって、望ましいインフレ率を実現しようということをインフレ・ターゲットという。

日本では、デフレからの脱却という意味でインフレ・ターゲットという意味が使われるが、一方、発展途上国では、急激なインフレによる経済不安のため、インフレ率を抑えようという意味でも、「インフレ・ターゲット」という単語が用いられる。

ハイパー・インフレとクリーピング・インフレ

第二次大戦前のドイツで起きたような急激なインフレのように、短期間で物価が大幅に上昇する急激なインフレをハイパー・インフレ(hyper inflation)という。

いっぽう、年率数パーセントていどの持続的なインフレをクリーピング・インフレ(creeping inflation)という。クリーピングとは、「しのびよる」という意味。

※ 範囲外: 貨幣錯覚

物価政策による景気刺激策は、国民の経済への「勘違い」を利用しています。

ケインズ経済学に「貨幣錯覚」という概念があります。これは、多くの消費者は、実質値ではなく名目値で判断するという、経済学の経験則です。

20世紀の第二次世界大戦後の時代、欧米の多くの国で、工業化などによる物価の上昇にもかかわらず、土木公共事業などによってり仕事を強制的につくる事で、景気を刺激して向上させる事により(いわゆる「ケインズ政策」 )、結果的に、物価上昇と景気上昇とを20世紀後半は連動させてきた。

そのため21世紀の現代にも、物価と景気を混同する勘違いをしている者が、どこの国にも一定の割合でいる。

しかし、このように物価上昇と景気を連動させるような経済政策の欠陥として、

・ 物価が再現なく上がりつづける危険性。
・ 土木公共事業のための歳出(さいしゅつ)や、業者などへの補助金などにより、国の財政の借金が増えてしまう。

という問題点がある。

なお、「工業化」などによる発展という理念が、土木公共事業などの公共投資を正当化するための口実であった。そして、工業化による経済発展による税収増加が、公共投資したぶんの金額を回収するための手段でもあった。

なので、もし、その国が、工業化のための公共投資を行ったのに、政府が期待したほどには税収が増えなかった場合に、もはや公共事業などの景気刺激策を政府が続けるのが困難になり、不景気に陥りかねない。

それでも景気刺激などのための公共事業や補助金政策などを減らさずに景気刺激策を続けようとする場合、政府は、その景気刺激策のための資金をあつめる必要があり、税金を増やすか、国債を追加発行する必要がある。