代数的整数論/二次体の整数論

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いきなりイデアルのような抽象的な話を始めても読者に優しくないので、具体的な内容から始める。

虚数

さて、因数分解の有名な公式に次のようなものがある。

x2y2=(x+y)(xy)

平方の差は和と差の積で表すことができるのである。ここで重要なのは、平方のになっていることである。もし、

x2+y2

という形だと、(x+y)2=x2+2xy+y2 となってしまい、因数分解とならない。ここで、平方の差の因数分解の公式を無理やり使おうとすると、「2乗すると負になる数」が必要になる。仮にそれを 1 と書くことにしよう。すると、先ほどの式は

x2+y2=(xy1)(x+y1)

という形に因数分解できるはずである。しかし、整数、有理数、実数の範囲内に置いて、2乗すると負になる数など存在しないのである。そこで、想像上の数、という意味で「Imaginary number」という名前が付いている。日本ではこれを「虚数」という。

i=1 という虚数単位を一般的には用いる。しかしここでは用いない。その理由はすぐ分かるだろう。

虚数はこのような因数分解に登場するだけでなく、二次方程式の解や三次方程式の解の公式にも登場する。

ガウスの整数

このような因数分解から、整数の代わりに、

a+b1(a,b)

の形の数を考えることができる。このような形の数の和、差、積がやはり同じ形で表されること、商は必ずしもこのような形とはならないが

u+v1(u,v)

の形となることは明らかである。

ここで、初等整数論/不定方程式でも論じたピタゴラスの方程式

x2+y2=z2

を改めて考える。もし x, y が公約数をもつならば、それで割ることで x, y は互いに素となる。 4 を法として考えると x, y のうち一方は偶数、他方は奇数となる。 これに、先の因数分解を適用すると

(xy1)(x+y1)=z2

となる。

さて、x, y のうち一方は偶数、他方は奇数であるが、このとき a+b1(a,b) の形の数で xy1,x+y1 を同時に割り切るようなものは ±1,±1 以外に存在しないことが確かめられる。ここで整数のときと同じように

xy1=(mn1)2,x+y1=(m+n1)2(m,n)(1)

とおくことができれば

x+y1=(m+n1)2=m2n2+2mn1

より

x=m2n2,y=2mn

が導かれる。

しかし y が偶数とは仮定していなかった。実際、上記のピタゴラスの方程式の解には y が奇数となるものも存在する。 そこで (1) はそのままでは正しくないとわかる。では、どのようにすれば正しくなるのか、そもそも整数のときと同じような結果がそのまま成り立つのか考えなければならない。結論から言うと (1) を

x+y1=(1)l(m+n1)2(l,m,n)

に置き換えれば(つまり (1) の右辺に ±1,±1 のいずれかを掛ければ)正しいことが分かるのだが、このことは明らかではない。よってそれを証明しなければならないのである。

フェルマーの方程式

といっても、有名なフェルマーの最終定理ではない。フェルマーは平方数より1だけ大きく立方数より1だけ少ない数は 26 以外には存在しないと主張していた。すなわち

x2+2=y3

の整数解は (±5, 3) 以外にはないというのである。 今度は 2 を導入して左辺を因数分解すると

(x+2)(x2)=y3

となる。 x が偶数ならば x 2+2 は 2 の奇数倍となるので立方数ではありえない。よって x は奇数でなければならない。この場合、やはり

a+b2(a,b)

の形の数で x2,x+2 を同時に割り切るようなものは ±1 以外に存在しないことが確かめられる。ここで先程と同じように

x+2=±(m+n2)3(m,n)(2)

とすることができれば

x+2=±(m+n2)3=±(m36mn2+(3m2n2n3)2)

より

±1=3m2n2n3=n(3m22n2)

となり m=±1,n=±1 でなければならず、ここから解は x =±5, y = 3 以外にはないことが導かれる。 しかし、やはり (2) が正しいかどうか明らかではない。結論して (2) は正しいのだが、それを証明しなければならないのである。

二次体 K(1) の整数

これからは、a+b1 (a,b) という形の数を「整数」と呼ぶことにしよう。またこのような数の集合を [1] と書くことにする。