古典力学/イントロダクション/練習問題

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「平均の速度と瞬間の速度」の例題

古典力学/イントロダクション#平均の速度と瞬間の速度

速度一定の運動

x(t)=Vt+x(0) で表される物体の運動について、物体の位置 x(t) を時刻 t について微分し、物体の各時刻における瞬間の速度 v(t) を求めよ。ただし V および x(0) は定数とする。

【解】

位置 x(t) の時間微分は次のように計算できる。

dx(t)dt=limh0x(t+h)x(t)(t+h)t=limh0(V(t+h)+x(0))(Vt+x(0))h=limh0Vhh=limh0V=V.

位置の時間微分はいま物体の瞬間の速度に等しいのだから、

v(t)=dx(t)dt

より瞬間の速度は

v(t)=V

と求まる。ここで V=0 とすれば物体は x(t)=x(0) で(ある座標系に対して)静止していることになる。このとき直ちに位置の時間微分は 0 となることが示される。つまり、変数 t に対して定数として振る舞う項の t 微分は 0 である。

加速度一定の運動

x(t)=12at2+Vt+x(0) で表される物体の運動について、物体の位置 x(t) を時刻 t について微分し、物体の各時刻における瞬間の速度 v(t) を求めよ。ただし aV および x(0) は定数とする。

【解】

位置 x(t) の時間微分は次のように計算できる。

dx(t)dt=limh0(12a(t+h)2+V(t+h)+x(0))(12at2+Vt+x(0))h=limh0ath+12h2+Vhh=limh0(V+at+12h)=V+at.

従って物体の瞬間の速度は

v(t)=V+at

と求まる。特に t=0 の場合について v(0)=V が成り立つ。時刻 t=0 における物体の速度 v(0) はその物体の初速 (initial velocity) と呼ばれる。この問題では、V は物体の初速 v(0) に等しいので、こちらも初速と呼ばれる。

物体の速度 v(t) の時間変化率を考えると、v(t) の時間微分は v˙(t)=a となることが分かる。速度の時間微分は加速度 (acceleration) と呼ばれる。先ほど示した関係は、この問題における物体の加速度が一定であることを示している。加速度が一定であるような状況はたとえば、物体を地表付近で投射したときの物体の運動について、空気抵抗などを無視できるような場合などが当てはまる。あるいは傾斜が一定の斜面を物体が滑る場合についても同様に、物体の受ける加速度が一定であると見なすことができる。

日常的な意味で「加速」とは速度が増すことを言い、速度が遅くなることは「減速」と言って区別するが、物理学においてはどちらの結果が生じる場合でも、速度の時間変化率は「加速度」と呼ばれる[1]。また、「負の加速度」が必ずしも物体の速度を遅くするわけではなく、同様に「正の加速度」が加わっても物体の速度が増すとは限らないことに注意。たとえば「負の速度」を持つ物体に「負の加速度」を加えれば、物体より速く負の方向へ動いていくことになる。このことは一次元的な運動から離れて平面上の自由な物体の運動を考えてみると分かりやすい。平面上の運動では、正負の二方向に限らずあらゆる方向に速度を持つことができ、同様に加速度も平面上の様々な方向へ加えられる。このとき、速度や加速度が正であったり負であったりということの区別はそれほど意味を持たない。

時間のベキで表される運動

x(t)=L(tτ)n で表される物体の運動について、物体の位置 x(t) を時刻 t について微分し、物体の各時刻における瞬間の速度 v(t) を求めよ。ただし Lτ は定数であり、n は整数とする。

【解】

指数 n によって場合分けをする。n=0 の場合、a0=1 より x(t)=L だから v(t)=0(ただしベキの計算について 00=1 と定義する。あるいは n=0 の場合に x(t)=L となるように x(t) を定義する)。 n=1,2 の場合は例題 (a), (b) の結果を参考にすればよい。n1 の場合について、

αnβn=(αβ)(αn1+βαn2+β2αn3++βn2α+βn1)=(αβ)k=0n1αn1kβk

因数分解できることに注意すれば、位置 x(t) の時間微分は次のように計算できる。

dx(t)dt=limh0L(t+hτ)nL(tτ)nh=Lτnlimh0(t+h)ntnh=Lτnlimh01h{((t+h)t)((t+h)n1+t(t+h)n2++tn1)}=Lτnlimh0{k=0n1(t+h)n1ktk}=nLτntn1(n1).

この関係が指数 n が非負の整数であるとき成り立つことはすぐに確かめられる。n が負である場合について tn=1/tn だから、

dx(t)dt=limh0L(t+hτ)nL(tτ)nh=Lτnlimh01h(1(t+h)n1tn)=Lτnlimh01htn(t+h)ntn(t+h)n=Lτnlimh0k=0n1(t+h)n1ktktn(t+h)n=Lτnlimh0{k=0n1(t+h)1ktk+n}=nLτntn1(n<0)

となる。指数 n の正負の違いを除けば先に求めたものと全く同じ形になっている。つまり、任意の整数 n について、

ddt(L(tτ)n)=nLτntn1

である。

時間のベキの和で表される運動

x(t)=Lk=0n{f(k)(tτ)k} で表される物体の運動について、物体の位置 x(t) を時刻 t について微分し、物体の各時刻における瞬間の速度 v(t) を求めよ。ただし f(k) は変数 k の関数であり、また n は正の整数である。

【解】

(c) で得られた結果をそのまま各項に対して適用すればよい。t に関して微分をする際、t によらない関数は定数と見ることができるから、

ddt(f(k)(tτ)k)=f(k)ddt(tτ)k

である。また各項の和について、

ddt(f(k)(tτ)k+f(r)(tτ)r)=limh01h{f(k)(t+hτ)k+f(r)(t+hτ)rf(k)(tτ)kf(r)(tτ)r}=limh0{f(k)τk((t+h)ktk)h+f(r)τr((t+h)rtr)h}=kf(k)τktk1+rf(r)τrtr1

が成り立つ。よく見ればこれはそれぞれの項の微分になっているから、すべての項の和についての微分は、各項についての微分の和を計算すればよいことになる。以上のことから位置 x(t) の時間微分より物体の瞬間の速度が求まる。

v(t)=dx(t)dt=ddtk=0n{f(k)(tτ)k}=k=0nddt{f(k)(tτ)k}=k=0n{kf(k)τktk1}.

ある位置へ物体が到達する時刻

x(t)=12at2+Vt+x(0) で表される物体の運動について、物体の位置 x(t)x(t)=X となる時刻 t(X) および物体の位置に関する微分 dt(X)dX を求めよ。ただし aV および x(0) は定数とする。

【解】

t=t(X) のとき x(t)=X である。すなわち、

x(t(X))=X.

このとき、物体の位置を具体的に書き下せば、

12at2(X)+Vt(X)+x(0)=X

と書けるので、これを t(X) について解けば、a が 0 でない場合について、

t(X)=Va±V2+2a(Xx(0))a

と求まる。物体の位置に関する微分 dt(X)dX について、

dt(X)dX=limh0{1h((Va±V2+2a(X+hx(0))a)(Va±V2+2a(Xx(0))a))}=±limh0{1ah(V2+2a(X+hx(0))V2+2a(Xx(0)))}=±2V2+2a(Xx(0))limh0{V2+2a(Xx(0))2ah(1+2ahV2+2a(Xx(0))1)}

と表すことができる。ここで

ε2=1+2ahV2+2a(Xx(0))

と置き換えれば、

dt(X)dX=±2V2+2a(Xx(0))limε1{1ε21(ε1)}=±2V2+2a(Xx(0))limε11ε+1=±1V2+2a(Xx(0))

が得られる。ところで X=x(t) と再び置き換えれば、2a(x(t)x(0))=a2t2+2aVt だから、

dt(X)dX|X=x(t)=±1|V+at|=±1|v(t)|

となる。ここで例題 (b) の結果を使った。右辺は物体の瞬間速度の絶対値 |v(t)| について逆数をとったものになっている。物体の瞬間速度 v(t) が正のとき、位置の変化量 dX は正であり、他方、物体の瞬間速度 v(t) が負のとき、位置の変化量 dX は負である。時間の向きを正に取るなら、瞬間速度 v(t) の向きが正負のいずれの場合でも時間の変化量 dt は正である。従って、速度の絶対値を取らず

dt(X)dX|X=x(t)=1v(t)

と表せる。瞬間速度が位置の時間微分であったことを思い出せば、上記の関係は以下のように整理することができる。

dt(X)dX|X=x(t)dx(t)dt=1.

ここまで a0 の場合についてを解いたが、a=0 の場合はより単純で、

X=Vt(X)+x(0)

より

t(X)=Xx(0)V

となる。また、物体の位置 X に関する微分は

dt(X)dX=1V

となる。a0 の場合と同様に、時刻を位置に関して微分したものは物体の瞬間速度の逆数として与えられる。


  1. ただし分かりやすさを求める上で、速度を減じるような加速度を特別に減速度 (deceleration) と呼ぶことはときどきある。

「座標系の変換」の例題

古典力学/イントロダクション#座標系の変換

距離とデカルト座標系の性質

平面上の物体の位置 𝒙 を以下のように表す。

𝒙=x1𝐞(1)+x2𝐞(2).

任意の場合について、物体の原点からの距離を

|𝒙|2=𝒙𝒙=(x1)2+(x2)2

と位置の成分を用いて表すためには、基底ベクトルの間にどのような関係が成り立てばよいか示せ。

【解】

物体の原点までの距離を基底ベクトルの内積を用いて表せば、

|𝒙|2=x1x1𝐞(1)𝐞(1)+2x1x2𝐞(1)𝐞(2)+x2x2𝐞(2)𝐞(2)

となる。これが任意の場合について

(x1)2+(x2)2=(x1)2𝐞(1)𝐞(1)+2x1x2𝐞(1)𝐞(2)+(x2)2𝐞(2)𝐞(2)

という関係が成り立つためには、基底の内積が以下の関係を満たす必要がある。

𝐞(1)𝐞(1)=1,𝐞(1)𝐞(2)=0,𝐞(2)𝐞(2)=1.

これらの関係はクロネッカーのデルタ (Kronecker delta)

δij={1,i=j0,otherwise

を用いて次のように表現できる。

𝐞(i)𝐞(j)=δij

このように内積がクロネッカーのデルタとなるような基底の組を正規直交基底 (orthonormal basis) という。直交基底 (orthogonal basis) であることは、他の基底ベクトルとの内積が 0 となること、言い換えればすべての基底ベクトルが互いに直交していること、正規 (normal) であることは基底ベクトルの自分自身との内積が 1 に正規化(規格化)されていることを指す。

基底ベクトルの回転

平面上の物体の位置 𝒙 を以下のように表す。

𝒙=x1𝐞(1)+x2𝐞(2).

また、行列 Rθ回転行列とする。 座標系の回転 Rθ によって位置の成分 ξT=(x1,x2)

ξ=Rθξ

と変換される場合について、

𝐞=P𝐞

と表されるような、座標系の基底 {𝐞(i)}i={1,2} に対する変換行列 P を求めよ。 ただし、𝐞=(𝐞(1),𝐞(2))T は基底ベクトルの組を表し、𝐞,𝐞 はそれぞれ回転変換前と変換後の基底ベクトルの組であるとする。

【解】

座標系の回転に対して位置ベクトルは不変だから、

𝒙=ξT𝐞=ξT𝐞=({P1}Tξ)TP𝐞

が成り立つ。ここで、成分ベクトルに対する変換が回転行列で表されることから

Rθξ={P1}Tξ

より次の関係が成り立つ。

P1=RθT.

回転行列が直交行列であることを利用すれば、

RθTRθ=IRθT=Rθ1

より、基底の組に対する変換行列は

P=Rθ

となることが示される。