解析学基礎/δの選び方

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δの選び方

形式的な極限の定義

任意(∀)の正の数εに対し、ある(∃)数δが存在し

0<|xc|<δ

ならば

|f(x)L|<ϵ

となるとき、Lは、xcに近付けた時の f(x)の極限といいます。

言い換えれば、正の数εが与えらると、適当なδを選ぶ事によって

0<|xc|<δ

ならば

|f(x)L|<ϵ

となることが証明できます。

さらに言えば、このような証明が全ての(∀)ε > 0に対して可能です。


この形式的な定義は、極限を求めるには少し不便です。極限L見つけるための方法論は与えず、ある数値が極限であるかどうかを判定するのにだけ使えます。直感的な極限の定義や、似たような問題からの類推、或いは、ロピタルの定理などの定理を用いて極限を予想し、形式的な定義を用いて、その値が極限であるか否かを示すことができます。

∀:全称記号。任意、全て

∃:存在記号。存在、ある

例1

xc=9に近付けた時の、f(x) = x + 5 の極限を探す事を考えます。極限L は 9+5=14 であることが分かっていて、これは次のように証明できます。


δ = ε と選べば (この選び方がこのページの主題です。)

|x9|<δ

ならば

|(x+5)14|=|x9| <δ =ϵ

ということが証明できるわけです。

実は、証明の式を逆に辿る事によって、δを選びました。

|f(x)L|<ϵ

この場合、

|x9|<ϵ

から

|x9|<δ

となります。

したがってδ = εと選べば、証明自体もこのように簡単にできます。この例はとても簡単な例なので、一般にはそう上手くはは行きません。


例2

xを 2に近付けたとき、f(x) = x² - 9 の極限がL = −5であることを証明します。

|x2|<δ

ならば

|f(x)L|=|x24|<ϵ

を示すことが必要です。

ここでも、逆に辿ってδを探します。まず最初に、xを使わずに δと εの関係を表すことを考えます。


|x24|<ϵ
|x2||x+2|<ϵ

また三角不等式を用いて

|x+2|=|x2+4|<|x2|+4=δ+4

となることを考えれば

|x2||x+2|<δ(δ+4)

となるので

(δ)(δ+4)=ϵ

を満たすように δを選べばいいと分かります。この最後の方程式は、論理的に出てきたわけではなく、それぞれの不等式を見比べて単にこのように選べば、証明が上手くいくというだろうという直感的なテクニックです。この方程式の解としてδを選んでおき、証明の最後の段階で、この逆に辿って得られた方程式を使用します。


この例では、xをδに、不等号 < を、等号 = に置き換えました。蛇足ですが |x-2| = δではなく|x-2| < δなので、こういう δの選び方が可能になります。上の方程式を元に、証明を辿ると、このようなδの選び方でいいということがよくわかるでしょう。

δの二次方程式だと思って、δが正の数であることに注意して解くと

δ=4+1641ϵ21=2+4ϵ

となります。


この値を用いて、極限であることの証明を行います。


|x2|<δ

ならば

|f(x)L|=|x24| =|x2||x+2| (δ)(δ+4) <(4ϵ2)(4ϵ+2) =(4ϵ)2(2)2 =ϵ


例3

xを 0に近付けたとき f(x) = sin(x)x の極限が L = 1 になることを示してください。


例4

xを0に近付けたとき、f(x) = 1/x が 極限を持たないことを示してください。