「圏論/代数系/代数系」の版間の差分

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2019年5月20日 (月) 13:39時点における最新版

5.1 集合 A 上に定義された演算の族 Ω と関係（半演算を含む）の族 Σ とがあるとき， この三つ組 A~=(A,Ω,Σ) を代数系といい，A はその底という． 特に Σ=∅ のときは A~ を狭義の代数系といい，単に (A,Ω) で表す．

X⊂A,⊥∈Ω とする． ⊥ が多項演算のときも二項演算のときと同様，

x1,x2,⋯,xn∈X ならば ⊥(x1,x2,⋯,xn)∈X

であるとき X は ⊥ について閉じているという（1.3参照）．

X がすべての ⊥∈Ω で閉じているとき X は A~ の部分代数系という． このとき各 ⊥∈Ω （n 項演算）に対して写像 ⊥:An→A としての ⊥ の Xn への制限は X 上の演算となる． これを ⊥ の X 上への制限といい，同じ記号 ⊥ で表し， またこれらの族も Ω で表す． 同様に各 ρ∈Σ (n 元関係）に対して ρ∩Xn は X 上の関係である． これを ρ の X への制限といい，同じ記号 ρ で表し，またこれらの族も Σ で表す． このようにして A~ の部分代数系 X はまた一つの代数系 X~=(X,Ω,Σ) を作る．

定理 A~=(A,Ω,Σ) は代数系，Y は A の任意の部分集合とする． このとき Y を含む A~ の部分代数系の中に最も小さいもの Y‾ が存在する．

証明 Y を含む A~ の部分代数系全体の族を 𝔛 とし， Y‾=⋂𝔛 として Y‾ がまた A~ の部分代数系であることを示せばよい． 実際，a,b∈Y‾ ならばすべての X∈𝔛 について a,b∈X，よって ⊥∈Q （仮に二項演算とする）に対して a⊥b∈X．これがすべての X∈𝔛 について成り立つから a⊥b∈Y‾．(証明終)

この Y‾ を Y から生成された A~ の部分代数系という．


A~=(A,Ω,Σ) と B~=(B,Ω′,Σ′) を二つの代数系とする． Ω と Ω′ の間に一対一対応があり，各 ⊥∈Ω の項数とこれに対応する ⊥′∈Ω′ の項数とが一致し，また Σ と Σ′ の元数とが一致するとき， 二つの代数系 A~ と B~ は同種であるという． 特に Ω と Ω′，Σ と Σ′ の間にそれぞれただ一つの一対一対応を考えているときにはそれらによって対応する演算，関係はしばしば同一視し，同じ記号で書き，また Ω′,Σ′ も Ω,Σ と同一視して同じ記号で書く．

さらに一般に二つの互いに素な集合 Ω と Σ とがあり，これらから自然数の集合 𝑁 への写像 n:Ω∪Σ→𝑁 が与えられているとき，対 (Ω,Σ)（/Σ=ϕ のときは Ω）を 種の型 という．また A が集合で，各 ⊥∈Ω に対して一つの n(⊥) 項演算が定義され， 各 ρ∈Σ に対して一つの n(ρ) 元関係が定義されているとき， A~=(A,Ω,Σ) を種の型 (Ω,Σ) を持つ代数系という． 特にただ一つの種の型を考えているときはこれをいちいち示すことは省略し，代数系はその底 A であらわされているものとする． 　


5.3 A,B,C は同じ種の型 (Ω,Σ) を持つ代数系，f:A→B は写像とする． f がすべての ⊥∈Ω とすべての ρ∈Σ を保存するとき， f は A から B への準同型という． g:B→C がまた準同型ならばその合成 g∘f:A→C も準同型である． X が A の部分代数系のとき，その A への埋蔵 ι:X→A は準同型， f(X) は B の部分代数系となり，また Y が B の部分代数系のとき f−1(Y) は A の部分代数系となる．

f:A→B と共に g:A→B も準同型とする．このとき E={a|f(a)=g(a)} はまた A の部分代数系である． 実際 a,b∈E で ⊥∈Ω（仮に二項演算とする）が何項でも同じ，以下“仮に二項演算とする”と書いたばあいはすべて同様） ならば f(a)=g(a)，f(b)=g(b) で f,g は ⊥ を保存するから

f(a⊥b)=f(a)⊥f(b)=g(a)⊥g(b)=g(a⊥b)

で，よって a⊥∈E．この E を準同型 f と g の等値核という．

f:A→B が準同型の一対一対応で，その逆 f−1:B→A も準同型のとき，f は同型写像といい， このとき A と B は同型という．1A:A toA は常に同型写像である．


5.4 狭義の代数系，すなわち Σ=ϕ のときは，準同型についてさらにいろいろな定理が成り立つ．

まずこのとき一対一の準同型対応は明らかに常に同型写像である．

代数系 A 上の同値関係 ≅ で，すべての ⊥∈Ω と両立するものを A の上の合同関係， このとき a≅b となる a,b∈A は合同であるといい，また ≅ による同値類はまた合同類ともいわれるが， (4.8) で述べたことから直ちに次の定理を得る．

定理 A は狭義の代数系，≅ はその上の合同関係であるとき，≅ による類別 𝔘 の上に Ω の各演算が自然に定義されて， 𝔘 は A と同種の代数系になり，その標準射影 p:A→𝔘 は準同型となる． 特に B も A と同種の代数系，f:A→B が準同型のとき，f の右標準全単分解 (p,q) の p と q は共に準同型で，さらに f が全射的ならば q は同型写像である．

この定理で得られる代数系 (𝔘,Ω) を A の ≅ による商代数系といい，A/≅ で表す．

定理 種の型 Ω の代数系 A の上に二つの合同関係 ∼,≅ があり，f:A→A/∼,g:A→A/≅ はその標準射影とする． もし ≅ が ∼ より強ければただ一つの準同型 h: A/∼→A/≅ が定まり，g=h∘f となる．

証明 ∼ の各合同類 X は ≅ の一つの合同類に含まれる(2.5参照)． これを h(X) とすればこの h が g=h∘f をみたすただ一つの写像である． これが準同型であることは A/∼,A/≅ 上の演算 ⊥∈Ω の定義から見やすい．（証明終）


5.5 定理 τ は種の型 Ω の代数系 A 上に定められた任意の二元関係とする． このとき A の上の τ より強い合同関係の中に最も弱いものが存在する．

証明 Ξ は

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