「解析学基礎/関数列の極限」の版間の差分

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関数列の極限

各点収束と一様収束

区間Iで定義される関数列{fn(x)}の極限limnfn(x)を考えます。自然に考えられるのは、次のような定義でしょう。

定義1.1 各点xIにおいて、極限limnfn(x)が収束するとき、f(x):=limnfn(x)で定まる関数flimnfnとする。

この定義で何の問題もないように思えますが、実はこの定義はある意味では不十分です。この定義を満たしていても、もとの関数fn(x)たちの性質がf(x)に引き継がれないことがあるのです。たとえば、任意のnについてfn(x)が連続であっても、f(x)が連続とは限りません。

例1.2 閉区間I=[0,1]で定義される関数列fn(x)=xnを考える。任意のnについてfn(x)は連続だが、

limnfn(x)={0(0x<1)1(x=1)

は連続ではない。

そこで、定義1.1のようなただの収束(各点収束といいます)よりも強い条件を満たす収束を考えます。

定義1.3 limnsupxI|fn(x)f(x)|=0を満たすとき、関数列{fn(x)}f(x)一様収束するという。

一様収束は各点収束よりも強い条件です。すなわち、次が成り立ちます。

命題1.4 {fn(x)}f(x)に一様収束するならば、{fn(x)}f(x)に各点収束する。

(証明) 一様収束の仮定より、ε>0を任意にとると、ある自然数Nが存在して、n>NならばsupxI|fn(x)f(x)|<εである。

一方、xIを任意にとると、|fn(x)f(x)|supxI|fn(x)f(x)|である。よって、n>Nならば|fn(x)f(x)|<εである。つまり、limn|fn(x)f(x)|=0、すなわちlimnfn(x)=f(x)である。//

各点収束と一様収束の例を挙げます。

例1.5 例1.2の{fn(x)}は一様収束ではない。なぜならば、supxI|fn(x)f(x)|=1である。一方、同じ区間I=[0,1]においてfn(x)=xnとすると、limnfn(x)=0であり、limnsupxI|fn(x)0|=limn1n=0なので、この収束は一様収束である。

一様収束するならば、例1.2のようなことは起きません。すなわち、次が成り立ちます。

定理1.6 連続関数の列{fn(x)}f(x)に一様収束するならば、f(x)は連続である。

(証明) aIε>0を任意にとる。fnは連続なので、あるδ>0が存在し、|xa|<δならば|fn(x)fn(a)|<ε3である。

一様収束の仮定より、ある自然数Nが存在して、n>Nならば|fn(a)f(a)|<ε3,|f(x)fn(x)|<ε3である。よって、

|f(x)f(a)||f(x)fn(x)|+|fn(x)fn(a)|+|fn(a)f(a)|<ε

である。すなわちfは連続である。 //

定理1.6の逆は成り立ちません。一様収束でなくても、連続関数に収束することはあります。

例1.7 xで定義される関数列fn(x)=xnについて、limnfn(x)=0は連続だが、supxfn(x)は存在しない。つまり、一様収束ではない。

ディニの定理

関数列が一様収束するための十分条件をひとつ紹介しておきます。

定理1.8(ディニの定理) 有界閉区間I=[a,b]上で定義される連続関数の列{fn(x)}が、任意のxIと任意の自然数nについてfn(x)fn+1(x)を満たし、f(x):=limnfn(x)も連続ならば、{fn(x)}f(x)に一様収束する。

(証明) Fn(x):=fn(x)f(x)とする。fnが一様収束しないと仮定すると、あるε>0を取れば、任意の自然数nに対してFm(cn)εを満たすようなm>n,cnIが存在する。仮定よりFn(cn)Fm(cn)なので、Fn(cn)εである。

cnは有界閉区間Iに値をとる数列なので、ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理より収束する部分列{cnj}を持つ。limjcnj=cとすると、Fnが連続であることからFn(c)=limjFn(cnj)εとなるが、これはFnが0に各点収束することに矛盾する。//

極限と積分の順序交換

以下、積分を考えますので、簡単のためfn(x),f(x):=limnfn(x)はすべて連続関数という状況で考えることにします。

関数列の極限と積分の順序を交換することはできるでしょうか。つまり、

limnabfn(x)dx=ablimnfn(x)dx

は成り立つでしょうか。結論からいうと、一般にはこれは成り立ちません。

例2.1 fn(x)={n3x(x1n)(0<x<1n)0(otherwise)とすると、limnfn(x)=0だが、01fn(x)dx=16である。

しかし、{fn(x)}にさらに条件を付けると、この順序交換ができる場合もあります。

一様収束の場合

まず、一様収束する場合は極限と積分の順序を交換できます。

定理2.2 関数列{fn(x)}が閉区間[a,b]f(x)に一様収束するとき、

limnabfn(x)dx=abf(x)dx

である。

(証明)一様収束の仮定より、任意のε>0に対してあるNが存在して、n>Nならば|fn(x)f(x)|<εbaなので、

|abfn(x)dxabf(x)dx|ab|fn(x)f(x)|dx<abεbadx=ε

である。つまり、limn(abfn(x)dxabf(x)dx)=0、すなわちlimnabfn(x)dx=abf(x)dxである。//

一様有界の場合

一様収束の代わりに別の条件を仮定しても極限と積分の順序交換ができることがあります。ここでは、一様有界という条件を考えてみます。

定義2.3 区間Iで定義される関数列{fn(x)}に対して定数Mが存在し、任意の自然数nと任意のxIについて|fn(x)|Mとなるとき、関数列{fn(x)}一様有界であるという。

一様有界な関数列が収束するならば極限f(x):=limnfn(x)も有界で、関数Fn(x):=fn(x)f(x)も一様有界です。また、次も成り立ちます。

命題2.4 区間Iで定義される有界な関数の列{fn(x)}が一様収束するならば一様有界である。

(証明)一様収束の仮定より、ある自然数Nが存在して、n>Nならば任意のxIに対して|fn(x)f(x)|<1である。よって、

M=max{supxI|f1(x)|,supxI|f2(x)|,,supxI|fN(x)|,supxI(|f(x)|+1)}

とすれば、任意の自然数nと任意のxIについて|fn(x)|Mとなる。//

実はこの一様有界性が成り立てば、極限と積分の順序交換ができます。

定理2.5 (アルツェラの定理) 関数列{fn(x)}が閉区間[a,b]で一様有界のとき、

limnabfn(x)dx=abf(x)dx

である。

(証明) 自然数nに対してsn(x)=supmn|fm(x)f(x)|とし、 Sn=supx g(x)sn(x)abg(x)dxとする。fn(x)f(x)は一様有界なので、あるMが存在して

M(ba)S1S2Snab|fn(x)f(x)|dx0

である。よって、limnSn=0を示せば、はさみうちの原理より定理が従う。

ε>0と自然数nを任意に取ると、 x gn(x)sn(x)を満たす連続関数gn(x)で、 さらにabgn(x)dx>Snε2nを満たすものが存在する。 hn(x)=min{g1(x),,gn(x)}とする。hn(x)は連続で、また hn(x)=min{hn1(x),gn(x)}を満たす。 よって、μn(x)=max{hn1(x),gn(x)}とすると、 hn(x)+μn(x)=hn1(x)+gn(x)である。

また、hn1(x)sn1(x), gn(x)sn(x)sn1(x)なので、 μn(x)sn1(x)である。 よって、abμn(x)dxSn1である。

以上より、

abhn(x)dx=ab(hn1(x)+gn(x)μn(x))dx>abhn1(x)dx+Snε2nSn1>abhn2(x)dx+Sn1ε2n1Sn2+Snε2nSn1=abhn2(x)dx+Snε2n1ε2nSn2>>abh1(x)dx+Snk=2nε2kS1=Snk=2nε2k+abg1(x)dxS1>Snk=1nε2k=Snε

である。

0hn(x)sn(x)であり、limnsn(x)=0なので、 limnhn(x)=0であり、 hn(x)は定理1.8の仮定を満たすのでこれは一様収束。 よってlimnabhn(x)dx=0なので、limnSn=0である。//

定理2.5は区間が開区間でも成り立ちます。

定理2.6 関数列{fn(x)}が開区間(a,b)で一様有界のとき、

limnabfn(x)dx=abf(x)dx

である。

(証明) 開区間(a,b)|fn(x)f(x)|Mとしてよい。任意のε>0に対しδ=min{ε3M,ba2}とする。{fn(x)}は閉区間[a+δ,bδ]において定理2.5の仮定を満たすので、

limna+δbδfn(x)dx=a+δbδf(x)dx

である。すなわち、ある自然数Nが存在して、n>Nならば|a+δbδ(fn(x)f(x))dx|<ε3である。また、

|aa+δ(fn(x)f(x))dx|aa+δ|fn(x)f(x)|dxδMε3
|bδb(fn(x)f(x))dx|bδb|fn(x)f(x)|dxδMε3

である。以上より、n>Nならば

|ab(fn(x)f(x))dx|<ε

である。すなわち、

limnabfn(x)dx=abf(x)dx

である。//

微分と積分の順序交換

微分も極限ですので、前節の結果を使って微分と極限の順序交換についての定理が示されます。ただし、微分はこれまで扱ってきた数列の極限とは違い、関数の極限ですので、そこをつなぐ補題を用意しておきます。

補題2.7 有界閉区間I=[a,b]と任意の区間Jの直積集合I×Jで定義される有界な2変数関数f(x,t)が変数xについて連続ならば、αJについて

limtαabf(x,t)dx=ablimtαf(x,t)dx

(証明)f(x):=limtαf(x,t)とする。この補題が成り立たないとすると、あるε>0が存在して、任意の自然数nに対して|ab(f(x,tn)f(x))dx|ε, 0<|tnα|<1nを満たすようなtnが存在する。ところがこのとき、xについての関数の列fn(x):=f(x,tn)は一様有界なので、定理2.5よりlimn|ab(fn(x)f(x))dx|=0となり、矛盾する。//

示したい主定理は次です。

定理2.8 有界閉区間I=[a,b]と任意の区間Jの直積集合I×Jで定義される2変数関数f(x,t)tについて偏微分可能で、偏導関数ft(x,t)は有界かつxについて連続な関数とする。F(t)=abf(x,t)dxとすると、

F(t)=abft(x,t)dx

(証明)αJを任意に取る。2変数関数q(x,t)=f(x,t)f(x,α)tαtαで連続である。f(x,t)に平均値の定理を用いると、

q(x,t)=ft(x,α+θ(tα))

を満たす0<θ<1が存在する。よって、補題2.7より

F(α)=limtαF(t)F(α)tα=limtαab(f(x,t)f(x,α))dxtα=limtαabq(x,t)dx=limtαabft(x,α+θ(tα))dx=ablimtαft(x,α+θ(tα))dx=abft(x,α)dx

である。//

極限と広義積分の順序交換

前節と類似の結果は広義積分でも成り立ちます。しかし、次の例を見ればわかるように、広義積分の場合は一様収束だけでは不十分で、若干の修正が必要です。

例3.1 fn(x)={1n3x(xn)(0xn)0(otherwise)とすると、limnsupx0|fn(x)|=limn14n=0なので{fn(x)}は0に一様収束するが、0fn(x)dx=16である。

優関数が存在する場合

ここでは、fn(x)たちがよい関数で上から押さえられている状況を考えます。

定義3.2 ag(x)dx<であるようなg(x)が、任意の自然数na以上の任意の数xについて|fn(x)|g(x)を満たすとき、g(x)fn(x)の区間[a,)における(可積分な)優関数と呼ぶことにする。

(可積分な)優関数が存在すれば、各fn(x)も可積分である(すなわち、広義積分が収束する)ことは、解析学基礎/広義積分#優関数の原理で示しました。ここではさらに、このとき極限と広義積分の順序が交換できることを示します。

定理3.3 関数列{fn(x)}が区間[a,)において(可積分な)優関数g(x)を持つとき、

limnafn(x)dx=af(x)dx

である。

(証明) c[a,)を任意にとり、ψ(x)=cxg(x)dxとする。 ψ(x)は有界な単調増加関数なので、 α=limxa+0ψ(x),β=limxψ(x)、 それに逆関数φが存在する。よって置換積分の公式より、

afn(x)dx=αβfn(φ(ψ))g(φ(ψ))dψ

である。仮定より|fn(φ(ψ))g(φ(ψ))|1なので、 fn(φ(ψ))g(φ(ψ))は開区間(α,β)で一様有界である。よって、定理2.6より

limnafn(x)dx=limnαβfn(φ(ψ))g(φ(ψ))dψ=αβf(φ(ψ))g(φ(ψ))dψ=af(x)dx

である。//

微分と広義積分の順序交換

定理2.5から定理2.8が導かれるのとまったく同様に、定理3.3から微分と広義積分の順序交換に関する定理が導かれます。まず、補題2.7にあたるものを示します。

補題3.4 区間I=[a,)と任意の区間Jの直積集合I×Jで定義される有界な2変数関数f(x,t)が変数xについて連続で、(可積分な)優関数g(x)を持つならば、αJについて

limtαaf(x,t)dx=alimtαf(x,t)dx

(証明)f(x):=limtαf(x,t)とする。この補題が成り立たないとすると、あるε>0が存在して、任意の自然数nに対して|a(f(x,tn)f(x))dx|ε, 0<|tnα|<1nを満たすようなtnが存在する。ところがこのとき、xについての関数の列fn(x):=f(x,tn)は区間[a,)において(可積分な)優関数g(x)を持つので、定理3.3よりlimn|a(fn(x)f(x))dx|=0となり、矛盾する。//

示したい主定理は次です。

定理3.5 区間I=[a,)と任意の区間Jの直積集合I×Jで定義される2変数関数f(x,t)が(可積分な)優関数g(x)を持ち、tについて偏微分可能で、偏導関数ft(x,t)は有界かつxについて連続で(可積分な)優関数g1(x)を持つとする。F(t)=af(x,t)dxとすると、

F(t)=aft(x,t)dx

(証明)αJを任意に取る。2変数関数q(x,t)=f(x,t)f(x,α)tαtαで連続である。f(x,t)に平均値の定理を用いると、

q(x,t)=ft(x,α+θ(tα))

を満たす0<θ<1が存在する。よって、補題3.4より

F(α)=limtαF(t)F(α)tα=limtαa(f(x,t)f(x,α))dxtα=limtαaq(x,t)dx=limtαaft(x,α+θ(tα))dx=alimtαft(x,α+θ(tα))dx=aft(x,α)dx

である。//

アスコリ=アルツェラの定理

一様有界(定義2.3)な関数列に対し、さらに同程度連続という条件を付すと、一様収束する部分列が存在することがわかります。まず、同程度連続性を定義します。

定義4.1 区間Iで定義される関数列{fn(x)}について、任意のε>0に対してあるδ>0が存在し、|x1x2|<δならば任意の自然数nに対して|fn(x1)fn(x2)|<εとなるとき、{fn(x)}同程度連続であるという。

nにはよらないδを選ぶことができる、ということがポイントです。一様有界かつ同程度連続であれば、次が成り立ちます。

定理4.2 (アスコリ=アルツェラの定理) 有界閉区間I上の関数列{fn(x)}が一様有界かつ同程度連続ならば、{fn(x)}の部分列{fnj(x)}で、ある関数に一様収束するものが存在する。

(証明) I上の有理数は可算個なので、適当に並べて数列{rn}を作ることができる。{fn(x)}が一様有界であることより、数列{fn(r1)}は有界なので、ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理より収束部分列{fn(1)(r1)}を持つ。このとき、数列{fn(1)(r2)}は有界数列なので、同様に収束部分列{fn(2)(r2)}を持つ。以下同様にして、関数列{fn(j)(x)}を作ることができ、m=1,2,,jであればfn(j)(rm)は収束する。このとき、fnj(x):={fn(j)(x)}とすると、この関数列{fnj(x)}{fn(x)}の部分列であり、任意の有理数rに対してlimjfnj(r)は収束する。

この関数列{fnj(x)}I上一様収束することを示せばよい。ε>0を任意にとると、{fn(x)}が同程度連続であることより、あるδ>0が存在して|x1x2|<δならば任意のnに対して|fn(x1)fn(x2)|<ε3となる。このδを固定し、区間Iを幅δ2の小区間に分割すると、Iは有界閉区間なので有限個の小区間に分かれる。xを任意にとると、xと同じ小区間に属する有理数rが存在する。このrに対し、数列{fnj(r)}は収束するので、十分大きいl,l'を取れば|fnl(r)fnl(r)|<ε3となる。よって、

|fnl(x)fnl(x)||fnl(x)fnl(r)|+|fnl(r)fnl(r)|+|fnl(r)fnl(x)|<ε3+ε3+ε3=ε

である。よって{fnj(x)}は一様収束する。//