「初等整数論/ルーカス数列」の版間の差分

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2022年7月7日 (木) 00:09時点における最新版

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P, Q, DD=P24Q0 となる整数とし、α,β を2次方程式 x2Px+Q=0 の解とする(D ≠ 0 より この2次方程式は2つの相異なる解をもつ)。 このとき

P=α+β,Q=αβ,D=(αβ)2

が成り立つ。 線形回帰数列 で述べたように、数列 an(n=0,1,) について、 漸化式

an+2=Pan+1Qan(n=0,1,)

を満足することと、一般項が

an=ζαn+ηβn(n=0,1,)

の形に表されることは同値である。

特に、線形回帰数列でも例にあげたフィボナッチ数のように、

Un=αnβnαβ,Vn=αn+βn(n=0,1,)(*)

により定まる数列 Un,Vn はいずれも上記の漸化式を満足し、初項は

U0=0,U1=1,V0=2,V1=α+β=P

により与えられる。逆に、これらの初項と漸化式で与えられる数列の一般項は (*) であらわされる。

このようにして定まる数列 Un,Vn(P,Q) に関するルーカス数列と呼ぶ。 また、数列 Un のみを単にルーカス数列といい、Vn同伴ルーカス数列と呼ぶこともある。


フィボナッチ数列 F0=0,F1=1,Fn+2=Fn+1+Fn は (1, -1) に関するルーカス数列である。また、この同伴数列は L0=2,L1=1,Ln+2=Ln+1+Ln により定まり、 2, 1, 3, 4, 7, 11, 18, 29, 47, ... で始まる。 そして、これらの数列の一般項は

Fn=(1+52)n(152)n5,Ln=(1+52)n+(152)n

により与えられる。Fn の要素をフィボナッチ数と呼ぶのに対し、Lnの要素をルーカス数という。

(2, -1) に関するルーカス数列は 0, 1, 2, 5, 12, 29, 70, ... および 2, 2, 6, 14, 34, 82, 198, ... で始まる。一般項は

Un=(1+2)n(12)n22,Vn=(1+2)n+(12)n

により与えられる。これらの数列はペル数列と呼ばれる(後に議論するが、ペル方程式と呼ばれる不定方程式の解としてあらわれる)。

基本的な関係式

ルーカス数列には重要な関係式が多数存在するが、証明まで記載すると長大になるので、証明は別に記す

まず、次の関係式が成立する。

関係式 1

Vn2DUn2=4Qn,Un2Un1Un+1=Qn1.

特に、Q=±1 のとき、 Un,Vn はペル方程式の解となっていることがわかる。例えばペル数列に対し、X=Vn/2,Y=Un とおくとペル方程式 X22Y2=±1 の解が得られる。

次に、添字の加法に関して、次のような、三角関数の加法定理に類似した関係式が成り立つ。

関係式 2

2Um+n=UmVn+UnVm,2QnUmn=UmVnUnVm,Um+n=UmUn+1QUm1Un,2Vm+n=VmVn+DUmUn.

関係式 3

Um+n=UmVnQnUmn,Vm+n=VmVnQnVmn=DUmUn+QnVmn.

次のような関係式も成り立つ。

関係式 4

DUn=Vn+1QVn1,Vn=Un+1QUn1.

関係式 2, 3 の特殊な場合として、添字を2倍, 3倍したとき、次のような関係が成り立つ。

関係式 5

U2n=UnVn,V2n=Vn22Qn.

関係式 6

U3n=Un(Vn2Qn)=Un(DUn2+3Qn),V3n=Vn(Vn23Qn).


より一般的な、添字の乗法について考えたい。そのために、まず、次の等式が成り立つことを見る。 m が偶数のとき

(X+Y)m=r=0m(mr)XrYmr=r=0m21(mr)(XrYmr+XmrYr)+(mm/2)(XY)m2=r=0m21(mr)(XY)r(Xm2r+Ym2r)+(mm/2)(XY)m2,

m が奇数のとき

(X+Y)m=r=0m(mr)XrYmr=r=0m12(mr)(XrYmr+XmrYr)=r=0m12(mr)(XY)r(Xm2r+Ym2r).

この等式を使って、次のような関係式が得られる。

関係式 7
m が奇数のとき

Dm12Ukm=r=0m12(mr)(1)rQkrUk(m2r)=Ukm(m1)QkUk(m2)+(m2)Q2kUk(m4)+(1)m12(m(m1)/2)Qm12kUk

および

Vkm=r=0m12(mr)QkrVk(m2r)=Ukm+(m1)QkVk(m2)+(m2)Q2kVk(m4)++(m(m1)/2)Qm12kVk.

関係式 8
m が偶数で k が正の整数のとき

Dm2Ukm=r=0m21(mr)(1)rQkrVk(m2r)+(1)m2(mm/2)Qmk2=Vkm(m1)QkVk(m2)+(m2)Q2kVk(m4)+(1)m21(mm/21)Q(m21)kV2k+(1)m2(mm/2)Qmk2,

および

Vkm=r=0m21(mr)QkrVk(m2r)+(mm/2)Qmk2=Vkm+(m1)QkVk(m2)+(m2)Q2kVk(m4)++(mm/21)Q(m21)kV2k+(mm/2)Qmk2.

成り立つ。

また、添字を k 倍したときには、次のような関係式が成り立つ。

関係式 9
k が偶数のとき

Ukm=Umr=0k21QmrVm(k12r)=Um(Vm(k1)+QmVm(k3)+),

k が奇数のとき

Ukm=Um(Qm(k1)2+r=0k32QmrVm(k12r))

および

Vkm=Vm((1)k12Qm(k1)2+r=0k32(1)rQmrVm(k12r))

が成り立つ。

このほか、次のような展開もできる。

関係式 10

2n1Un=(n1)Pn1+(n3)Pn3D+
2n1Vn=Pn+(n2)Pn2D+(n4)Pn4D2+

関係式 11
m が偶数のとき

Pm=r=0m21(mr)QrVm2r+(mm/2)Qm2,

m が奇数のとき

Pm=r=0m12(mr)QrVm2r=Vm+mQVm2+(m2)Q2Vm4+.


ルーカス数列の合同式

上に挙げた関係式を用いて、ルーカス数列の整除性および合同に関する重要な性質が導かれる。

まず、関係式 9 から次のことがわかる。

定理 1
k が整数のとき、 UmUkm を割り切る。 また k が奇数のとき、 VmVkm を割り切る。


また、添字が素数のときは次の合同式が成り立つ。

定理 2
p が素数のとき

VpP(modp)

が成り立ち、さらに p が奇素数のとき

Ukp(Dp)Uk(modp)

特に

Up(Dp)(modp)

が成り立つ。

証明
関係式 11 で、特に p が素数のとき

VpPpP(modp)

が成り立つ。また、p が奇素数のとき関係式 7 より

UkpDp12Ukp(Dp)Uk(modp),

特に k =1 とおくと

Up(Dp)(modp)

となる。

このほか、次の合同式も成り立つ。

定理 3

VkPk(modQ),
UkVk1(modQ)

証明
関係式 11 から VkPk(modQ) はすぐわかる。 また、関係式 9 で m=1 とおくと

Uk=Vk1+QVk3+Vk1(modQ)

が成り立つ。


合同式における位数の類似概念として、 n の倍数となる Ur(r>0) が存在するとき、 そのような r の中で最小のものを ρ(n) とかく。 ρ(n) は合同式における位数と類似した性質をもっている。

定理 4
gcd(n,2Q)=1 かつ n の倍数となる Ur が存在するとき、 n|Urρ(n)|r が成り立つ。

証明
定理 1 より rm=ρ(n) の倍数ならば nUr を割り切る。

Urn の倍数と仮定する。 r=qm+s,0sm1 とおくと、関係式 2 より

2QnUs=2QnUrqm=UrVqmUqmVr

となるが、先の仮定より Urn の倍数で、定理 1 より Uqmn の倍数だから右辺は n の倍数、よって 2QnUsn の倍数である。定理の仮定より gcd(n,2Q)=1 だから Usn の倍数。しかし 0sm1 だから s =0 つまり rm の倍数である。

重要な事実は、特殊な素数を除いて、フェルマーの小定理の類似の定理が成り立つことである。ただしフェルマーの小定理に比べ、幾分状況は複雑である。

定理 5
p を奇素数とする。 pP , Q , D のいずれも割り切らないとき

ψ(p)=p(Dp)

とおくと pUψ(p) を割り切る。


証明

(Dp)=1 のとき関係式 10 から、

2p2Up1=(p11)Pp2+(p13)Pp4D++(p1p2)PDp32

であるが、

(p1k)=(p1)(p2)(pk)12k(1)k(modp)

より

2p2Up(Pp2+Pp4D++PDp32)(modp)

であるが、Gn(X,Y)=Xn1+Xn2Y++Yn1=(XnYn)/(XY) とおくと、右辺は

PG(p1)/2(P2,D)=PPp1Dp12P2D

となる。 (Dp)=1 より C2D(modp) となる C(modp) が存在する。 フェルマーの小定理より Pp1Cp11(modp) なので

2p2Up1PPp1Cp1P2C20(modp)

となる。 p は奇素数なので

Up10(modp)

がわかる。

(Dp)=1 のとき再び関係式 10 から、

2pUp+1=(p+11)Pp+(p+13)Pp2D++(p+1p)PDp12

であるが、1<k<p のとき

(p+1k)=(p+1)!k!(p+1k)!

の分母は p で割り切れないから、結局 (p+1k)p で割り切れなければならない。よって

2pUp+1(p+1)(Pp+PDp12)Pp+PDp12

となる。フェルマーの小定理より PpP(modp) で、オイラーの規準より

Dp12(Dp)=1

だから

2pUp+1P(1+Dp12)0(modp)

である。


Un の偶奇は次の定理から導かれる。

定理 6
n ≥ 0 とする。

  • P , Q が共に偶数ならば Un,VnU1=1 を除いてすべて偶数である。
  • P が偶数で Q が奇数ならば Vn はつねに偶数で、 Un の偶奇は n の偶奇と一致する。
  • P が奇数で Q が偶数ならば Un,Vn(n1) はつねに奇数である。
  • P , Q が共に奇数ならば Un,Vnn が 3 の倍数のとき偶数、それ以外のとき奇数である。

証明
P, Q が共に偶数のとき漸化式

Un+2=PUn+1QUn,Vn+2=PVn+1QVn

より U2,U3,,V2,V3, はすべて偶数である。 U0=0,V0=2,V1=P より U1=1 を除いて Un,Vn はすべて偶数である。

P が偶数で Q が奇数のとき

Un+2=PUn+1QUnUn,Vn+2=PVn+1QVnVn(mod2)

であるが、U0=0,U1=1,V0=2,V1=P0(mod2) より Vn はつねに偶数で、 Un の偶奇は n の偶奇と一致する。

P が奇数で Q が偶数のとき

Un+2=PUn+1QUnUn+1,Vn+2=PVn+1QVnVn+1(mod2)

であるが、U0=0,U1=1,V0=2,V1=P1(mod2) より Un,Vn(n1) はつねに奇数である。

P , Q が共に奇数のとき

Un+2=PUn+1QUnUn+1+Un,Vn+2=PVn+1QVnVn+1+Vn(mod2)

であるが、U0=0,U1=1,V0=2,V1=P1(mod2) より Un,Vn は共に 0,1,1,0,1,1,(mod2) となる。 つまり Un,Vnn が 3 の倍数のとき偶数、それ以外のとき奇数である。

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