「初等整数論/線形回帰数列」の版間の差分

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2022年7月6日 (水) 23:55時点における最新版

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等比数列は漸化式

an+1=ran

と初項により決定される数列であった。実際 a0=d ならば an=drn となる。 これを一般化して、漸化式

an+m=rm1an+m1++r0an(1)

と、最初の m 項により決定される数列が考えられる。これを m 階の線形回帰数列あるいは線形循環数列という。

イタリアの数学者フィボナッチは、次の問題を考えた。産まれたばかりの1つがいの兎がいるとする。1つがいの兎は、産まれて1ヶ月後には兎を産むことはないが、2ヶ月後から毎月1つがいずつの兎を産む。産まれてきた1つがいの兎もまた同様、産まれて2ヶ月後から毎月1つがいずつの兎を産み、以下産まれてきた1つがいの兎も同様とする。兎が死ぬことはないとして、産まれたばかりの1つがいの兎は1年の間に何つがいの兎にまで増えるだろうか?

n ヶ月目に an つがいの兎がいるとすると、これらの兎のつがい達は、その2ヶ月後、つまり n+2 ヶ月目には1つがいずつの兎を産む。一方 n+1 ヶ月目に産まれた兎は n+2 ヶ月目には兎を産まない。つまり n+2 ヶ月目には an つがいの兎が新しく産まれる。よって

an+2=an+1+an

が成り立つ。一方、1ヶ月目には1つがいの兎がおり、2ヶ月目には兎を産むことはないので a1=a2=1 である。つまり an

a1=1,a2=1,an+2=an+1+an

により定まるので、2階の線形回帰数列である。 そこで、これにより定まる数列をフィボナッチ数列といい、最初の数項は (0, )1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, ... で与えられる。計算していくと a12=144,a13=233 となり、1年後には144つがいの兎がいることになるが、ちょうど1年後に89つがいの兎が産まれるのとあわせれば、233つがいの兎がいることになる。

an+2=Aa1+Ba0 で与えられる2階の線形回帰数列の最初の数項は

a2=Aa1+Ba0,a3=(A2+B)a1+ABa0,a4=(A3+2AB)a1+(A2B+B2)a0,a5=(A4+3A2B+B2)a1+(A3B+2AB2)a0,a6=(A5+4A3B+3AB2)a1+(A4B+3A2B2+B3)a0

により与えられる。

一般項

まず、等比数列自身が上記の漸化式 (1) を満足する。実際 α を方程式

xmrm1xm1rm2xm2r1xr0=0(2)

の解とすると

αm=rm1αm1+rm2αm2++r1α+r0

αn 倍し、

αn+m=rm1αn+m1+rm2αn+m2++r1αn+1+r0αn(3)

を得る。よって数列 an=kαn は漸化式 (1) を満足する。

このことから α1,α2,,αr を方程式 (2) の解とすると

an=b1α1n+b2α2n++brαrn(4)

も漸化式 (1) を満足する。

ここで、方程式 (2) がちょうど m 個の相異なる複素数解 α1,α2,,αm を持つとする(代数学の基本定理より、 m 次方程式は重解を持たなければちょうど m 個の相異なる解を持つ)。 このとき漸化式 (1) を満足する数列が (4) の形のものしかないことを確かめる。 実際 b1,b2,,bm を連立方程式

{b1+b2+bm=a0,b1α1+b2α2+bmαm=a1,b1α1m1+b2α2m1+bmαmm1=am1(5)

の解とする。これはw:ヴァンデルモンドの行列式に対応するので α1,α2,,αm が相異なるときこの連立方程式は必ず解を持つ。 このとき

ak=b1α1k+b2α2k++bmαmk(6)

k=0,1,,m1 について成り立つ。そうすると (3) と数学的帰納法より 任意の k について (6) が成り立つ。よって an は (4) の形で与えられる。

つまり、次の定理が成り立つ。

定理 1

方程式 (2) がちょうど m 個の相異なる複素数解 α1,α2,,αm を持つとする。 このとき (6) の形の数列はすべて漸化式 (1) を満足し初項は (5) によって与えられる。 逆に (1) の漸化式を満足する数列は連立方程式 (5) の解 b1,b2,,bm により、(6) の形で与えられる。

上記の例に挙げた、フィボナッチ数列 (F0=0,)F1=1,Fn+2=Fn+1+Fn の一般項は α=1+52,β=152 に対し、

Fn=αnβnαβ

であらわされる。

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