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解析学基礎/常微分方程式
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<!-- まえがき --> == 常微分方程式とは何ぞや== 微分方程式とは、独立変数''x''と、''x''の関数''y(x)''、およびその何階かの導関数を含む方程式である。一般化すれば、微分方程式は :<math>f(x, y, y', \cdots, y^{(n)}) = 0</math> の形に書くことのできる方程式である。そして、この方程式に含まれる導関数のうちもっとも高階の導関数が<math>y^{(n)}</math>であるとき、これを''n''階微分方程式と呼び、この方程式を満たすような関数を求める操作を、微分方程式を解く、という。 微分方程式は、大きく分けて常微分方程式と偏微分方程式に分かれる。常微分方程式とは、一変数関数とその導関数からなる方程式である。一方、偏微分方程式とは、多変数関数とその偏導関数との方程式である。ここでは、常微分方程式の解き方について記述することにし、本書では特に断りのない場合「微分方程式」は常微分方程式をさしているものとする。 === 解の種類 === 微分方程式は微分された関数が含まれた方程式であるから、その解を求めるためには多くの場合積分操作が必要であり、解には積分定数が含まれる。''n''階微分方程式であれば''n''個の任意の積分定数が含まれる。このような積分定数を含む形の解を'''一般解'''と呼ぶ。 一般解のうち、積分定数にある値を与えた解を'''特殊解'''と呼ぶ。 さらに、微分方程式の解のなかには、方程式の解であるにもかかわらず、積分定数にどのような値を代入しても表すことのできない解も存在する。このような解を'''特異解'''と呼ぶ。 === 問題の種類 === 微分方程式を解くとき、一般解が重要になる場面はそう多くない。現実にはある独立変数''x''における従属変数''y''の値が定まっていて、その条件を満たすような特殊解が必要になる場合がほとんどである。 たとえば時刻<math>t=0</math>において、ある関数<math>y(t)</math>の値が<math>y_0</math>と分かっている時に<math>y(t)</math>に関する微分方程式を解くような場合である。 このような、ある初期条件 :<math>y(x_0) = y_0</math> を満たすような微分方程式 :<math>f(x, y, y', \cdots, y^{(n)})</math> の特殊解を求める問題を'''初期値問題'''といい、これらをみたす特殊解を求めることを初期値問題を解くという。 また、例えば位置<math>x=0</math>と<math>x=L</math>で常に<math>y=0</math>となるような波(固定端)の変位<math>y(x)</math>に関する微分方程式を解くという状況もある。 このような、ある境界条件 :<math>y(x_i) = y_i (i = 0, 1, \cdots, n)</math> を満たすような微分方程式 :<math>f(x, y, y', \cdots, y^{(n)})</math> の特殊解を求める問題を'''境界値問題'''といい、これらをみたす特殊解を求めることを境界値問題を解くという。 == 初等解法 == 微分方程式を、有限回の式変形や変数変換や積分によって解く方法を初等解法と呼ぶ。はじめに、微分方程式の初等解法について解説する。なお、どのような微分方程式であっても初等解法によって解くことができるとは限らず、この手法が適用できる場合は限られてくることに注意されたい。 まずは、1階の微分方程式について考えることにする。 === 変数分離形 === 一般に、''n''階微分方程式が :<math>y^{(n)} = f(x, y, y', \cdots, y^{(n-1)})</math> の形で書き表されるとき、これを正規形と呼ぶ。 1階微分方程式の正規形 :<math>y' = f(x, y)</math> において、右辺の式が :<math>f(x, y) = X(x)Y(y)</math> のように''x''のみの関数と''y''のみの関数との積の形に変形できるとき、これを'''変数分離形'''の微分方程式と呼ぶ。この場合、微分方程式は :<math>y' = X(x)Y(y)</math> の形になっているから、<math>Y(y) \neq 0</math>と仮定して両辺を<math>Y(y)</math>で割ることにより :<math>\frac{y'}{Y(y)} = X(x)</math> と変形して、左辺が''y''とその導関数のみの式、右辺は''x''のみの式となるように分離することができる。 もし<math>Y(y) = 0</math>を満たす''y''の値が存在すれば、その値を<math>y=a</math>とすると、もとの微分方程式に代入して :<math>y'(x) = 0</math> を得る。一方、いま置いた<math>y=a</math>も<math>y'=0</math>を満たす関数である。すなわち、微分方程式の解は :<math>y(x) = a</math> と簡単に求めることができる。これは微分方程式の特殊解である。 では、<math>Y(y) \neq 0</math>として変数を分離した式に戻ろう。 分離した式の両辺を''x''で積分して、 :<math>\int\frac{1}{Y(y(x))}y'(x)dx = \int X(x)dx</math> 左辺は置換積分の公式より、<math>\int\frac{1}{Y(y(x))}y'(x)dx = \int\frac{1}{Y(y)}dy</math>であるので、 :<math>\int\frac{1}{Y(y)}dy = \int X(x)dx</math> を得る。これで両辺の不定積分が計算できれば、微分方程式の解が求まることになる。これは微分方程式の一般解である。 ==== 例題 ==== 微分方程式<math>y' = xy</math>を解く。 これは変数分離形の1階微分方程式である。<math>y=0</math>のとき<math>y'=0</math>となって、これは微分方程式を満たす。 <math>y \neq 0</math>と仮定して両辺を''y''で割ると、 :<math>\frac{y'}{y} = x</math> であるから、両辺を''x''で積分して、 :<math>\int\frac{1}{y}dy = \int x dx + C</math> となる。両辺の不定積分を計算すれば、 :<math>\log |y| = \frac{1}{2}x^2 + C</math> となるから、これより :<math>y = e^{\frac{1}{2}x^2 + C} = Ae^{\frac{1}{2}x^2}</math>(Aは任意の定数) とすることができる。これは微分方程式の一般解である。 先に求めた<math>y=0</math>は、一般解で<math>A=0</math>とした場合であるから、微分方程式の特殊解である。したがって、微分方程式の解は :<math>y(x) = Ae^{\frac{1}{2}x^2}</math> である。 === 同次形 === 一見変数分離形でないように見える微分方程式であっても、適切な変数変換によって変数分離形へ持ち込むことのできる微分方程式が存在する。 1階微分方程式の正規形 :<math>y' = f(x, y)</math> において、右辺の式が :<math>f(x, y) = g\left(\frac{y}{x}\right)</math> のように<math>\frac{y}{x}</math>の関数として記述できるとき、これを'''同次形'''の微分方程式と呼ぶ。このとき微分方程式は :<math>y' = g\left(\frac{y}{x}\right)</math> の形をしている。 <math>z(x) = \frac{y(x)}{x}</math>とおく。このとき<math>y = xz</math>であるから、 :<math>y' = (xz)' = z + xz'</math> が成り立つ。これを元の微分方程式に代入すると、 :<math>z + xz' = g(z)</math> となる。これを<math>z'</math>について解くと、 :<math>z' = \frac{g(z) - z}{x}</math> となって、[[#変数分離形|変数分離形]]の微分方程式となる。 変数分離形の方程式の解き方にしたがってこれを解くと、 :<math>\begin{align} \frac{z'}{g(z)-z} &= \frac{1}{x} \\ \int\frac{1}{g(z)-z}dz &= \int\frac{1}{x}dx + C \\ \int\frac{1}{g(z)-z}dz &= \log|x| + C \end{align}</math> となる。これで左辺の不定積分を計算し、<math>z = \frac{y}{x}</math>を代入し直せば微分方程式の解が得られる。 ==== 例題 ==== 微分方程式<math>y' = \frac{y}{x} + \frac{x}{y}</math>を解く。 これは同次形の1階微分方程式である。<math>z = \frac{y}{x}</math>とおくと、<math>y = xz</math>であるからこの微分方程式は :<math>\begin{align} z + xz' &= z + \frac{1}{z} \\ xz' &= \frac{1}{z} \end{align}</math> と書き直すことができる。これは変数分離形の微分方程式である。<math>z \neq 0</math>に注意して変数分離を行うと :<math>zz' = \frac{1}{x}</math> であるから、両辺を''x''で積分して式変形を行うと、 :<math>\begin{align} \int z dz &= \int\frac{1}{x} dx \\ \frac{1}{2}z^2 &= \log |x| + C \\ \log|x| &= \frac{1}{2}z^2 + C \\ x &= e^{\frac{1}{2}z^2+C} = Ae^{\frac{1}{2}z^2} \end{align}</math> となる。ここで<math>z = \frac{y}{x}</math>を代入しなおすと、 :<math>x = Ae^{\frac{y^2}{2x^2}}</math> となる。これが求める微分方程式の一般解である。 === 同次形の応用 === 正規形の1階微分方程式 :<math>y' = f(x, y)</math> について、右辺が''x''と''y''の有理関数になっている場合、すなわち :<math>f(x, y) = \frac{h(x, y)}{g(x, y)}</math> の場合を考える。このとき、<math>g(x,y)</math>および<math>h(x,y)</math>が特定の形をしている場合は、上手な式変形や変数変換によって同次形の解法を適用することができることが知られている。ここでは、いくつかの例題を用いてそれらの解法を紹介することにする。 ==== 例題1 ==== 微分方程式<math>y' = \frac{2x^2 + 3xy + y^2}{x^2 - 4xy + 2y^2}</math>を解く。 これは、<math>g(x,y)</math>と<math>h(x,y)</math>がともにすべての項で''x'',''y''について同次であるような場合である。例えばこのような場合には、右辺の分子と分母を<math>x^2</math>で割ることで :<math>y' = \frac{2 + 3(y/x) + (y/x)^2}{1 - 4(y/x) + 2(y/x)^2}</math> となって、容易に同次形の微分方程式へ持ち込むことができる。あとは同次形の解法に従って解けばよい。 ==== 例題2 ==== 微分方程式<math>y' = \frac{2x + 3y -8}{x - y + 1}</math>を解く。 これは、<math>g(x,y)</math>と<math>h(x,y)</math>がともに''x'',''y''の1次式になっている場合である。例えばこのような場合は、次の手順で解くことができることが知られている。 はじめに、連立方程式 :<math>\begin{cases} 2x + 3y - 8 = 0 \\ x - y + 1 = 0 \end{cases}</math> を解く。これを解くと、解は<math>(x,y) = (1, 2)</math>である。この解を用いて、 :<math>\begin{cases} x = u + 1 \\ y = v + 2 \end{cases}</math> とおく。これをもとの微分方程式へ代入すると、 :<math>\begin{align} \frac{dy}{dx} &= \frac{2(u+1) + 3(v+2) - 8}{(u+1) - (v+2) + 1} \\ \frac{dv}{du} &= \frac{2u + 3v}{u - v} \end{align}</math> となる。ここで、 :<math>\frac{dy}{dx} = \frac{d}{dx}(v+2) = \frac{dv}{dx} = \frac{dv}{du}\frac{du}{dx} = \frac{dv}{du}\frac{d}{dx}(x-1) = \frac{dv}{du}</math> を用いた。 このように''x'',''y''から''u'',''v''への変数変換を施すと、例題1で見た形の方程式となり、右辺の分母分子を''u''で割ることによって同次形の微分方程式として扱うことができる。そして''u'',''v''の式として同次形の微分方程式を解いた後、変数を''u'',''v''から''x'',''y''に戻せば、求めるべき微分方程式の解が得られる。 ==== 例題3 ==== 微分方程式<math>y' = \frac{2x + 3y - 4}{4x + 6y - 3}</math>を解く。 これは、例題2のようにして連立方程式を解こうとしても、連立方程式の解が存在しないか、あるいは1つに定まらない場合である。このような場合は、右辺の分母を''z''と置くことによって一般解を求めることができる。 この問題では、 :<math>z = 4x + 6y - 3</math> とおくと、分子は :<math>2x + 3y - 4 = \frac{1}{2}(4x + 6y - 3) - \frac{5}{2} = \frac{1}{2}z - \frac{5}{2}</math> である。また、 :<math>z' = 4 + 6y'</math> であるから、この微分方程式は変数分離形へと変形することができて :<math>\begin{align} \frac{z' - 4}{6} &= \frac{\frac{1}{2}z - \frac{5}{2}}{z} \\ \frac{z}{7z-15}z' &= 1 \\ \int\frac{z}{7z-15}dz &= x + C \end{align}</math> と変形できる。この左辺に<math>z = 4x + 6y - 3</math>を代入すれば求めるべき微分方程式の一般解が求まる。 ==== 例題4 ==== 微分方程式<math>y' = \frac{2x + 3y - 4}{3}</math>を解く。 これは、例題3と同様に連立方程式を解こうとしても解が一意に定まらず、かつ、分母が定数になっている場合である。この場合は右辺を''z''と置けばよい。 :<math>z = \frac{2x + 3y - 4}{3}</math> とおくと、 :<math>z' = \frac{2 + 3y'}{3} = \frac{2 + 3z}{3}</math> となる。これは変数分離形の微分方程式であるから、その方法に従って解いた後で<math>z = \frac{2x + 3y - 4}{3}</math>を代入すれば求めるべき一般解が得られる。 ==== 例題5 ==== 微分方程式<math>y' = \frac{x^2y}{x^3+y}</math>を解く。 これは、同次形をさらに一般化させた微分方程式である。同次形では、正規形の微分方程式 :<math>y' = f(x,y)</math> の右辺<math>f(x,y)</math>について、<math>\lambda</math>を定数として :<math>f(\lambda x, \lambda y) = f(x, y)</math> が成り立つ。この例題は同次形ではないため、微分方程式の右辺を<math>f(x,y)</math>と置いてもこれは成り立たない。しかし、 :<math>f(\lambda x, \lambda^3y) = \frac{(\lambda x)^2\lambda^3y}{(\lambda x)^3 + \lambda^3y} = \lambda^2\frac{x^2y}{x^3+y} = \lambda^2f(x,y)</math> が成り立っている。 一般に、<math>f(x,y)</math>について<math>n \neq 0</math>として :<math>f(\lambda x, \lambda^n y) = \lambda^{n-1}f(x, y)</math> が成り立つとき、 :<math>z = \frac{y}{x^n}</math> とおいて変数変換を施し、式変形を行うことで変数分離形へ持ち込むことができることが知られている。 この例題では、<math>z = \frac{y}{x^3}</math>と置くと、<math>y = x^3z</math>であるから :<math>y' = 3x^2z + x^3z'</math> これをもとの微分方程式へ代入すると、 :<math>\begin{align} 3x^2z + x^3z' &= \frac{x^2x^3z}{x^3+x^3z} \\ &= \frac{x^2z}{1+z} \\ z' &= -\frac{3z^2 + 2z}{x(1+z)} \end{align}</math> となる。これは変数分離形の微分方程式であるから、変数分離形の解法に従って解き、最後に<math>z = \frac{y}{x^3}</math>を代入すればよい。 ==1階線型微分方程式== 1階微分方程式が線型であるとは、与えられた微分方程式が :<math>y' + f(x)y = g(x) </math> と書けることである。このように書けない1階微分方程式は1階非線型微分方程式という。 === 斉次1階線型微分方程式 === 斉次1階線型微分方程式とは、1階線型微分方程式であって、特に<math>g(x)=0</math>であるものをいい、この時この微分方程式は斉次であるという。 <math>g(x) \neq 0</math>の場合は非斉次であるという。また、斉次は「同次」とも呼ばれることがあるが、本書では前者で統一することにする。 まずは斉次1階線型微分方程式を解いてみよう。 簡単な微分積分法しか知らない我々は、これ程までに限定してやっと解けるようになるのである。 今解こうとしているのは、次の微分方程式である。 :<math>y' + f(x)y = 0 </math> これは変数分離形の微分方程式である。まず<math>y \ne 0</math>を仮定して、この式を同値変型する。 :<math>{{y'} \over {y}} = -f(x)</math> 両辺を積分して :<math>{\rm ln}|y| = \int{ - f(x)dx + C_0}</math> 両辺を''e''の肩に掛けて、 :<math>|y| = e^{\int{ - f(x) dx + C_0}}</math> 右は常に正なので、<math>e^{C_0}=C</math>として、 :<math>y = Ce^{\int{ - f(x)dx}}</math> この解法を'''変数分離法'''といい、得られた結果がこの斉次方程式の一般解である。 一般解はこのようにして求められたが、<math>y(x_0)=y_0</math>となるときの特殊解''y''を求めなければならないときもある。斉次1階微分方程式の初期値問題について考えてみよう。 初期値問題 :<math>y' + f(x)y = 0 ; y(x_0)=y_0</math> を解く。 はじめに微分方程式を解くと、先に導いたように一般解 :<math>y = Ce^{\int{ - f(x)dx}}</math> を得る。この式の両辺に<math>(x, y) = (x_0, y_0)</math>を代入すれば、積分定数''C''の値が求められるため、改めてそれをこの式に代入しなおすことで特殊解が得られる。 あるいは、微分方程式を解く際に不定積分ではなく<math>x_0</math>から<math>x</math>までの定積分を求めることによって初期値問題を解くこともできる。多少厄介だが、積分記号を外せないときにも解を求めることができる。 変数分離を施した形 :<math>\frac{y'}{y} = -f(x)</math> より、両辺を<math>x_0</math>から<math>x</math>まで定積分する。 :<math>\begin{align} &{\int_{x_0}^{x} {{y'} \over {y}}\ dx'} = {\int_{x_0}^{x} -f(x')\ dx'} \\ \iff & {\rm ln}y - {\rm ln}y_0= {{\int_{x_0}^{x} -f(x')\ dx'}} \\ \iff & {{y} \over {y_0}} = e^{\int_{x_0}^{x} -f(x')\ dx'} \\ \iff & y=y_0e^{\int_{x_0}^{x} -f(x')\ dx' } \\ \end{align}</math> 結局、一般解における積分定数''C''が<math>y_0</math>に、不定積分が定積分になっただけであった。 ==== 例題1 ==== 微分方程式<math>y' -4xy = 0</math>を解く。 上の解説の通り、両辺を''y''で割り変数分離法によって計算する。この微分方程式の一般解は :<math>y = Ce^{\int{ - ( -4x )dx }}= Ce^{2x^2}</math> である。 ==== 例題2 ==== 次の微分方程式の初期値問題を解け。 :<math>y' + y \sin x = 0 ; y(0) = {3 \over 2}</math> この微分方程式の一般解として、変数分離法によって :<math>y = Ce^{\cos x}</math> が求められる。この式に<math>(x,y) = (0, 3/2)</math>を代入すれば、 :<math>C = \frac{3/2}{e^{\cos 0}} = \frac{3}{2e}</math> したがって求めるべき特殊解は :<math>y = \frac{3}{2e}e^{\cos x} = \frac{3}{2}e^{\cos x -1}</math> あるいは、不定積分の代わりに定積分を行うことにより、 :<math>y={3 \over 2}e^{-\int_{0}^{x} \sin t\ dt}={3 \over 2}e^{\cos x-1}</math> が導かれる。 ===非斉次1階線型微分方程式=== 次に、非斉次1階線型微分方程式 :<math>y'+ f(x)y = g(x)</math> (1.1) の解き方を考えてみよう。しかし今、我々にできる事は二つしかない。それは、斉次微分方程式を解くことと、各種式変形を行うことである。これを最大限駆使して解くしかない。具体的には、なんとかして(1.1)を斉次微分方程式 :<math>z'=\nu(x)</math> ★ の形に式変形して、これを解くのである。 天下り式であるが、(1.1)にある関数<math>h(x)</math>をかけて :<math>h(x)y' + h(x)f(x)y = h(x)g(x)</math> (1.2) とする。ここで<math>h(x)</math>が :<math>\{h(x)y\}'= h(x)y' + h(x)f(x)y</math> (1.3) をみたすような関数であるとすると、<math>z=h(x)y,\nu(x)=h(x)g(x)</math>とすれば★の形に変形できる。 ではそのような<math>h(x)</math>は存在するのだろうか。具体的に求めてみる。 <math>\{h(x)y\}'=h(x)y'+h'(x)y</math>であるから、これを(1.3)に代入すると :<math>\begin{align} h(x)y' + h'(x)y &= h(x)y' + h(x)f(x)y \\ h'(x) &= h(x)f(x) \end{align}</math> を得る。<math>h(x)</math>についてはこの変数分離形の微分方程式を解けばよい。定数倍は関係ないので、 :<math>h(x)=e^{\int f(x) dx}</math> (1.4) としてよい。この<math>h(x)</math>は'''積分因子'''と呼ばれる。 さて、(1.2)と(1.3)より、 :<math>\{h(x)y\}'=h(x)g(x)</math> (1.5) を得る。これを変形すると、 :<math>\begin{align} h(x)y &= \int h(x)g(x)dx + C \\ y &= {1 \over {h(x)}}\left(\int h(x)g(x)dx+C\right) \end{align}</math> あとはこれに(1.4)を代入すると、一般解 :<math>y = \frac{1}{e^{\int f(x) dx}}\left(\int e^{\int f(x) dx}g(x)dx + C\right)</math> を得る。 初期値問題<math>y'+f(x)y=g(x) ; y(x_0)=y_0</math>を解くには、(1.5)の両辺を積分する際に定積分とすれば、 :<math>\int_{x_0}^x \{h(x)y\}' dx=\int_{x_0}^x h(x)g(x) dx</math> を得る。あとはこれを''y''について解けばよい。 以上、非斉次微分方程式の解法を述べた。手順をまとめると、 # 積分因子<math>h(x)=e^{\int f(x)dx}</math>を求める。 # <math>g(x)</math>に積分因子を掛け積分する。 # それを<math>h(x)</math>で割って一般解とする。 となる。 非斉次1階線型微分方程式の別の解法として、'''定数変化法'''と呼ばれる方法を紹介する。 非斉次な微分方程式 :<math>y' + f(x)y = g(x)</math> を解くのが最終的な目標であるが、ひとまず、右辺を<math>g(x)=0</math>とおいて、斉次な微分方程式 :<math>y' + f(x)y = 0</math> を解くことにする。この形ならば、[[#斉次1階線型微分方程式|前々節]]で見た方法によって、一般解 :<math>y_h(x) = Ce^{\int{ - f(x)dx}}</math> を得ることができる。ここで、非斉次な場合は積分定数の''C''が''x''の関数になると考えて、仮に非斉次微分方程式の解を :<math>y = C(x)y_h(x)</math> とおく。これを解くべき微分方程式へ代入すると、 :<math>\begin{align} \left\{C(x)y_h(x)\right\}' + f(x)C(x)y_h(x) &= g(x) \\ C'y_h + Cy_h' + f(x)Cy_h &= g(x) \\ C'y_h + C(y_h' + f(x)y_h) &= g(x) \end{align}</math> となるが、ここで<math>y_h</math>が斉次微分方程式<math>y'+f(x)y = 0</math>の解であることから、 :<math>C'(x)y_h(x) = g(x)</math> が得られる。この中で未知関数は<math>C'(x)</math>のみであるから、両辺を<math>y_h(x)</math>で割って''x''で積分すると、 :<math>\begin{align} C(x) &= \int \frac{g(x)}{y_h(x)} dx + C \\ &= \int \frac{g(x)}{e^{\int{ - f(x)dx}}} dx + C \\ &= \int g(x)e^{\int f(x)dx} dx + C \end{align}</math> したがって、求めるべき非斉次微分方程式の一般解は、 :<math>y = C(x)y_h(x) = e^{\int -f(x)dx} \left\{\int g(x)e^{\int f(x)dx} dx + C\right\}</math> となる。これは積分因子を用いて求めた一般解と等しい。 ==== 例題1 ==== 微分方程式<math>y'-2xy=x</math>を解く。 <math>f(x)=-2x</math>より、積分因子<math>h(x)</math>は、 :<math>h(x) = e^{\int -2xdx} = e^{-x^2}</math> である。これを与式右辺(<math>g(x)</math>)に掛けて積分すると、 :<math>\int h(x)g(x)dx = \int e^{-x^2}xdx = -\frac{1}{2}e^{-x^2} + C</math> (1.6) したがって、微分方程式の一般解は :<math>y=\frac{-\frac{1}{2}e^{-x^2} + C}{e^{-x^2}} = -{1\over 2}+Ce^{x^2}</math> となる。 あるいは、定数変化法によって求めることもできる。仮に斉次な微分方程式 :<math>y'-2xy=0</math> を解くと、この一般解は :<math>y = Ce^{x^2}</math> となる。これより、仮に求めるべき微分方程式の解を :<math>y = C(x)e^{x^2}</math> と置いて元の微分方程式に代入すると、 :<math>C'(x)e^{x^2} = x</math> が得られる。これより、 :<math>C(x) = \int\frac{x}{e^{x^2}}dx = \int e^{-x^2}xdx = -\frac{1}{2}e^{-x^2} + C</math> となるから、求める一般解は :<math>y = e^{x^2}\left(-\frac{1}{2}e^{-x^2} + C\right) = -\frac{1}{2} + Ce^{x^2}</math> である。 ==== 例題2 ==== 初期値問題<math>y'-2xy=x ; y(1)=2</math>を解く。 例題1で(1.6)を積分するときに定積分にする。 :<math>\begin{align} \int_1^x \{ye^{-t^2}\}'dt &= \int_1^x e^{-t^2}tdt \\ \left[ye^{-t^2}\right]_1^x &= \left[-{1\over 2}e^{-t^2}\right]_1^x \\ ye^{-x^2}-2e^{-1} &= -{1\over 2}e^{-x^2}+{1\over 2}e^{-1} \\ ye^{-x^2} &= -{1\over 2}e^{-x^2}+{5\over 2}e^{-1} \end{align}</math> したがって求める特殊解は :<math>y(x)=-{1\over 2}+{5\over 2}e^{x^2-1}</math> あるいは、例題1で求めた一般解に<math>(x, y) = (1, 2)</math>を代入することによって''C''の値を求めてもよい。 === ベルヌーイの微分方程式 === 1階微分方程式のなかでも、特に :<math>y' + f(x)y = g(x)y^n</math> の形の微分方程式をベルヌーイ(Bernoulli)の微分方程式と呼ぶ。<math>n = 0, 1</math>であれば上で見た非斉次1階微分方程式あるいは斉次1階微分方程式の形となり、これらの解法が適用できるが、それ以外の場合でも適切な式変形によって線型微分方程式へ帰着できることが知られている。 ベルヌーイの1階微分方程式 :<math>y' + f(x)y = g(x)y^n, (n \ne 0, 1)</math> の両辺に<math>(1-n)y^{-n}</math>をかけると、 :<math>(1-n)y^{-n}y' + f(x)(1-n)y^{1-n} = g(x)(1-n)</math> となるから、ここで<math>z = y^{1-n}</math>とおくと、<math>z' = (1-n)y^{-n}y'</math>なので、 :<math>z' + f(x)(1-n)z = g(x)(1-n)</math> となる。これは''z''に関する1階線型微分方程式であるから、定数変化法あるいは積分因子を用いる方法によって計算することができて、一般解 :<math>z = e^{-(1-n)\int f(x)dx} \left\{(1-n)\int g(x)e^{(1-n)\int f(x)dx} dx + C\right\}</math> を得る。これに<math>z=y^{1-n}</math>を代入しなおすと、 :<math>\begin{align} y^{1-n} &= e^{-(1-n)\int f(x)dx} \left\{(1-n)\int g(x)e^{(1-n)\int f(x)dx} dx + C\right\} \\ y &= e^{-\int f(x)dx} \left\{(1-n)\int g(x)e^{(1-n)\int f(x)dx} dx + C\right\}^\frac{1}{1-n} \end{align}</math> を得る。 === リッカチの微分方程式 === 1階微分方程式のなかでも、特に :<math>y' = f(x)y^2 + g(x)y + h(x)</math> の形に書くことのできる微分法定式をリッカチ(Riccati)の微分方程式と呼ぶ。この形の方程式は初等解法によって一般解を求めることはできない。しかし、なにか1つの特殊解<math>y_0</math>が見つかれば、それを元にして一般解を求めることができる。 リッカチの微分方程式 :<math>y' = f(x)y^2 + g(x)y + h(x)</math> について、ある特殊解<math>y_0</math>が与えられているとする。この時、<math>z = y - y_0</math>とおいて元の微分方程式へ代入すると、 :<math>\begin{align} z' + y_0' &= f(x)(z + y_0)^2 + g(x)(z + y_0) + h(x) \\ z' &= f(x)z^2 + \left\{2f(x)y_0 + g(x)\right\}z + \left\{f(x)y_0^2 + g(x)y_0 + h(x) - y_0'\right\} \end{align}</math> となる。ここで<math>y_0</math>がこの微分方程式の特殊解であることから :<math>y_0' = f(x)y_0^2 + g(x)y_0 + g(x)</math> が成り立っているので、 :<math>z' = f(x)z^2 + \left\{2f(x)y_0 + g(x)\right\}z</math> となる。これはベルヌーイの微分方程式で<math>n = 2</math>の場合であるから、[[#ベルヌーイの微分方程式|前節]]で見た方法で解くことができる。両辺に<math>-z^{-2}</math>をかけて :<math>-z^{-2}z' = -f(x) - \left\{2f(x)y_0 + g(x)\right\}z^{-1}</math> さらに<math>u = z^{-1}</math>とおくと<math>u' = -z^{-2}z'</math>であるから :<math>u' = -f(x) - \left\{2f(x)y_0 + g(x)\right\}u</math> となって、1階線型微分方程式に帰着する。この一般解は、前節で見た式から :<math>z = e^{\int \left\{2f(x)y_0 + g(x)\right\}dx} \left\{-\int f(x)e^{\int \left\{2f(x)y_0 + g(x)\right\}dx} dx + C\right\}^{-1}</math> となり、求めるべき微分方程式の一般解も :<math>\begin{align} y = z + y_0 &= e^{\int \left\{2f(x)y_0 + g(x)\right\}dx} \left\{-\int f(x)e^{\int \left\{2f(x)y_0 + g(x)\right\}dx} dx + C\right\}^{-1} + y_0 \\ &= \frac{e^{\int \left\{2f(x)y_0 + g(x)\right\}dx}}{-\int f(x)e^{\int \left\{2f(x)y_0 + g(x)\right\}dx} dx + C} + y_0 \end{align}</math> と求まる。 === 演習 === 次の方程式を解け #<math>y'+y\cos x=0</math> #<math>y'+yx \sin x=0</math> #<math>y'+\frac{2xy}{x^2+1}=\frac{1}{x^2+1}</math> #<math>y'+y=xe^x</math> #<math>y'+3x^2 y=e^{-x^3}</math> #<math>y'+\frac{2xy}{x^2+1}=1-\frac{4x^3y}{x^4+1}</math> #<math>y'+y\sqrt{x^2+1}=0,y(0)=1</math> #<math>y'-2xy=x,y(0)=1</math> #<math>y'+xy=x,y\left(\frac{3}{2}\right)=0</math> #<math>y'+2y=\frac{e^{-2x}}{x^2+1},y(1)=2</math> *解答 #<math>y=Ce^{-\sin x}</math> #<math>y=Ce^{x\cos x-\sin x}</math> #<math>y=\frac{x+C}{x^2+1}</math> #<math>y=Ce^{-x}+\frac{2x-1}{4}e^x</math> #<math>y=(x+C)e^{-x^3}</math> #<math>y=\frac{15x^7+21x^5+35x^3+105x+C}{105(x^2+1)(x^4+1)}</math> #<math>y=\left(x+\sqrt{x^2+1}\right)^{-\frac{1}{2}}e^{-\frac{1}{2}x\sqrt{x^2+1}}</math> #<math>y=\frac{1}{2}\left(3e^{x^2}-1\right)</math> #<math>y=1-e^{-\frac{4x^2-9}{8}}</math> #<math>y=\left(\arctan x+2e^2-\frac{\pi}{4}\right)e^{-2x}</math> === 原子核の崩壊速度 === 線型微分方程式のひとつの応用例として、原子核の崩壊に関するものを見てみよう。 物理学者ラザフォードは、放射性元素の原子核は不安定で、一定の割合で崩壊する事を示した。つまり、原子核の数をyという関数で表すことにすれば :y'=-λy (5.1) という関係式が成り立つ。ここで比例定数λは崩壊定数と呼ばれる正数である。 この関係式は、まさに一階線形常微分方程式となっているので、これまでに述べた方法で解くことができる。 y(x<sub>0</sub>)=y<sub>0</sub>とすれば、(5.1)は :<math>y=y_0e^{-\lambda(x-x_0)}</math> (5.2) と解ける。適当に文字を置き換えると、[[高等学校理科 物理II 原子と原子核]]の1.2.3で述べた式が導かれたことになる。 == 一階定数係数連立線型常微分方程式と高階定数係数線型常微分方程式 == === 連立線型常微分方程式と行列の指数関数 === 上の節では一階の線型常微分方程式の解法を述べた。その中でも最もやさしい定数係数の方程式 :<math> y'=ay </math> の解は、変数分離法により簡単に求まり、 :<math>y=Ce^{xa}</math> であった。ただし、C=y(0)である。 次に、''n''本の一階定数係数線型常微分方程式を連立させた方程式 :<math> \begin{cases} y_1'=a_{11}y_1+a_{12}y_2+\cdots a_{1n}y_n \\ y_2'=a_{21}y_1+a_{22}y_2+\cdots a_{2n}y_n \\ \vdots \\ y_n'=a_{n1}y_1+a_{n2}y_2+\cdots a_{nn}y_n \end{cases} </math> を考えよう。この方程式は、行列を用いて :<math>\mathbf{y}'=A\mathbf{y} \cdots \bigstar</math> と表すことができる。ただし <math>\mathbf{y}=\begin{pmatrix} y_1 \\ y_2 \\ \vdots \\ y_n \end{pmatrix},A=\begin{pmatrix} a_{11}&a_{12}&\cdots&a_{1n} \\ a_{21}&a_{22}&\cdots&a_{2n} \\ \vdots&&&\vdots\\ a_{n1}&a_{n2}&\cdots&a_{nn} \\ \end{pmatrix} </math>である。 方程式が1本のときの例から類推すれば、この連立方程式の解は :<math>e^{xA}</math> のようなものが定義できれば、それを用いて表せそうである。しかし、行列の指数関数をどうやって定義すればよいだろうか?そのために、そもそも実数上の関数としての指数関数がどのように定義されるかを考えてみると、次のようにしてTaylor展開で定義できることが思い出される。 :<math>e^x=\sum_{k=0}^\infty \frac{x^k}{k!}</math> 行列であっても、この式に代入することは可能そうである。すなわち、次のように定義する。 '''定義''' 正方行列''A''に対して、<math>e^{xA}:=\sum_{k=0}^\infty \frac{(xA)^k}{k!}</math> この級数が収束するのか、またどの程度よい収束をするのかが問題だが、結論から言えば一様絶対収束する。詳しい証明は省くが、ゆえにこの級数を項別微分することができ、 :<math>(e^{xA})'=Ae^{xA}</math> が成り立つ。 このことから、連立線型微分方程式は初期条件を与えると次のように解けることがわかる。 '''定理''' ::<math>\mathbf{y}=e^{xA}\mathbf{y}(0)</math> :は、方程式<math>\bigstar</math>の初期値<math>\mathbf{y}(0)=\begin{pmatrix}c_1 \\ c_2 \\ \cdots \\ c_n\end{pmatrix}</math>における解になっている。 実際に解になっていることは代入によって確かめることができる。 === 高階定数係数線型常微分方程式 === 次に、''n''階の定数係数線型常微分方程式 :<math> y^{(n)}=a_{n-1}y^{(n-1)}+\cdots+a_1y'+a_0y</math> を考える。この方程式は、実は次のようにして連立常微分方程式とみなして行列を使って表せる。 :<math>\frac{d}{dx}\begin{pmatrix}y \\ y' \\ \vdots \\ y^{(n-2)} \\ y^{(n-1)}\end{pmatrix}= \begin{pmatrix} 0&1&0&\cdots&0 \\ 0&0&1&\cdots&0 \\ \vdots&&&&\vdots \\ 0&0&0&\cdots&1 \\ a_0&a_1&a_2&\cdots&a_{n-1} \end{pmatrix} \begin{pmatrix}y \\ y' \\ \vdots \\ y^{(n-2)} \\ y^{(n-1)}\end{pmatrix} </math> よって、上の節で述べた方法により初期値問題を解くことができる。 === 具体的な行列に対する計算法 === では、具体的な係数行列が与えられたとき、どのようにすれば行列の指数関数が計算できるかを見てみよう。 ==== 対角行列の場合 ==== 対角行列 :<math>D=\begin{pmatrix} c_1&0&\cdots&0 \\ 0&c_2&\cdots&0 \\ \vdots&&&\vdots \\ 0&0&\cdots&c_n \end{pmatrix}</math> に対して<math>e^{xD}</math>を計算してみよう。 すぐにわかるように、 :<math>D^k=\begin{pmatrix} c_1^k&0&\cdots&0 \\ 0&c_2^k&\cdots&0 \\ \vdots&&&\vdots \\ 0&0&\cdots&c_n^k \end{pmatrix}</math> である。よって、各成分ごとの計算から <math>e^{xD}=\begin{pmatrix} e^{c_1x}&0&\cdots&0 \\ 0&e^{c_2x}&\cdots&0 \\ \vdots&&&\vdots \\ 0&0&\cdots&e^{c_nx} \end{pmatrix}</math> である。 ==== 対角化可能な行列の場合 ==== 行列''A''が<math>P^{-1}AP=D</math>と対角化可能な場合も行列の指数関数は容易に計算できる。なぜならば、 :<math>A^k=(PDP^{-1})^k=PD^kP^{-1}</math> なので、これを代入することで :<math>e^{xA}=Pe^{xD}P^{-1}</math> となり、対角行列の指数関数は容易に計算できるからである。 ==== 対角化不可能な行列の場合 ==== 係数行列が対角化不可能なときは上記のようにはいかず、一般にはJordan標準形を用いることになる。しかし、特殊な場合にはそこまでの計算をする必要はない。たとえば、固有値がすべて等しい場合には次のようにして計算することができる。 ''n''次正方行列''A''の''n''個の固有値がすべて<math>\lambda</math>のとき、この行列の固有多項式は<math>(t-\lambda)^n</math>なので、Cayley-Hamiltonの定理より :<math>(A-\lambda I)^n=O</math> である。このことを用いると、 :<math>\begin{align} e^{xA} &=e^{\lambda xI+x(A-\lambda I)} \\ &=e^{\lambda x}\sum_{k=0}^\infty \frac{x^k(A-\lambda I)^k}{k!} \\ &=e^{\lambda x}\sum_{k=0}^{n-1} \frac{x^k(A-\lambda I)^k}{k!} \\ \end{align} </math> と有限回の計算で指数関数を計算することができる。 === 具体例 === 二階の線型常微分方程式の具体例として、ばねにつながれた物体の運動を記述してみよう。ばねにつながれた物体の時刻''x''における変位を''y''とする。このとき、ばねから物体が受ける力は(負の比例定数で)変位に比例することが知られている。このことを用いて物体の運動方程式を記述すると、 :<math>y''=\frac{-k}{m}y</math> となる。ただし''k''はばね定数と呼ばれる正の数、''m''は物体の質量である。 この方程式を行列を用いて書き直すと、 :<math> \frac{d}{dx}\begin{pmatrix}y \\ y'\end{pmatrix}= \begin{pmatrix}0&1 \\ \frac{-k}{m}&0 \end{pmatrix} \begin{pmatrix}y \\ y'\end{pmatrix} </math> と表せる。<math>A=\begin{pmatrix}0&1 \\ \frac{-k}{m}&0 \end{pmatrix}</math>とする。この行列は対角化できるので、指数関数が計算できて、 :<math>e^{xA}= \begin{pmatrix} \cosh(i\sqrt{\frac{k}{m}}x) & -i\sqrt{\frac{m}{k}}\sinh(i\sqrt{\frac{k}{m}}x) \\ i\sqrt{\frac{k}{m}}\sinh(i\sqrt{\frac{k}{m}}x) & \cosh(i\sqrt{\frac{k}{m}}x) \\ \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \cos(\sqrt{\frac{k}{m}}x) & \sqrt{\frac{m}{k}}\sin(\sqrt{\frac{k}{m}}x) \\ -\sqrt{\frac{k}{m}}\sin(\sqrt{\frac{k}{m}}x) & \cos(\sqrt{\frac{k}{m}}x) \\ \end{pmatrix} </math> である。初期条件を <math>\begin{pmatrix} y(0) \\ y'(0)\end{pmatrix}=\begin{pmatrix} y_0 \\ v_0 \end{pmatrix}</math> で定めると、解は :<math>\begin{pmatrix} y \\ y'\end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \cos(\sqrt{\frac{k}{m}}x) & \sqrt{\frac{m}{k}}\sin(\sqrt{\frac{k}{m}}x) \\ -\sqrt{\frac{k}{m}}\sin(\sqrt{\frac{k}{m}}x) & \cos(\sqrt{\frac{k}{m}}x) \\ \end{pmatrix}\begin{pmatrix} y_0 \\ v_0 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix}y_0\cos(\sqrt{\frac{k}{m}}x)+v_0\sqrt{\frac{m}{k}}\sin(\sqrt{\frac{k}{m}}x) \\ -y_0\sqrt{\frac{k}{m}}\sin(\sqrt{\frac{k}{m}}x)+v_0\cos(\sqrt{\frac{k}{m}}x) \end{pmatrix}</math> と求められた。これがばねによって振動する物体の時刻''x''における変位と速度である。 == 常微分方程式の初期値問題の解の存在と一意性 == 前節まででみたように、いくつかの微分方程式については積分計算によって解を具体的に求めることができるが、一方でそのような求積法の存在しない常微分方程式も多い。だが、そのような方程式についても、ある条件を満たせば解の存在や一意性が保証されることがある。ここではそのような例を見ていこう。 もし解の存在や一意性が保証されるならば、簡単に求積できない微分方程式でも少しは調べやすくなる。一意性が保証されるということは、まぐれやあてずっぽうであっても解をひとつみつけさえすれば、解けたのと同じになるからだ。また、ここで扱う存在と一意性に関する定理は、その解を(ある関数列の極限として)具体的に構成する方法を含んでおり、その意味であてずっぽうではなく解を見つける方法を提供してくれてもいるのである。 本節では、独立変数''x''の関数''y''についての1階常微分方程式 :<math>y'=f(x,y) ,\ y(x_0)=y_0</math>…(*) について考える。関数''y''が(*)を満たすことは、 :<math>y(x)=y_0+\int_{x_0}^x f(t,y(t)) dt</math>…(*)' を満たすことと同値であることも注意しておく。2変数関数<math>f(x,y)</math>に対していくつかの仮定を課したときに、この方程式の解がどのように構成されるかを見ていく。 === 冪級数による解法 === 本節では、''f''が次の仮定(H1)を満たすとする。 :(H1) <math>f(x,y)</math>は点<math>(x_0,y_0)</math>の近傍で解析的(すなわち冪級数展開可能)であり、<math>f(x,y)=\sum_{j,l=0}^\infty f_{j,l} (x-x_0)^j (y-y_0)^l</math>と表される。 このとき、次が成り立つ。 '''定理5.1.1''' <math>f(x,y)</math>が仮定(H1)を満たすとき、(*)を満たす<math>x=x_0</math>の近傍で解析的な関数''y''がただひとつ存在する。 これを証明したい。ただ、冪級数の中心が一般の形だと計算が煩雑になるので、ここでは次の形の定理を証明することにする。 '''定理5.1.1'''' <math>f(x,y)</math>が原点の近傍で解析的であり、<math>f(x,y)=\sum_{j,l=0}^\infty f_{j,l} x^j y^l</math>と表されるとき、常微分方程式 :<math>y'=f(x,y) ,\ y(0)=0</math>…(☆) を満たす<math>x=0</math>の近傍で解析的な関数''y''がただひとつ存在する。 いくつかの補題に分けて証明しよう。 '''補題5.1.2''' 冪級数<math>y=\sum_{j=0}^\infty y_j x^j</math>であって(☆)を満たすものがあるならば、その係数<math>y_j</math>は一意に定まる。 (証明) <math>y_0=0</math>である。<math>j \ge 1</math>のときは<math>y=\sum_{j=0}^\infty y_j x^j</math>を(☆)に代入すると、 :<math>(lhs)=y_1 +2y_2 x+3y_3 x^2+\cdots</math> :<math>\begin{align}(rhs) &=f_{0,0}+f_{0,1}(y_1 x+y_2 x^2+\cdots)+f_{0,2}(y_1 x+y_2 x^2+\cdots)^2+f_{1,0} x+f_{1,1} x(y_1 x+y_2 x^2+\cdots)+f_{2,0} x^2+\cdots \\ &=f_{0,0}+(f_{0,1} y_1+f_{1,0}) x+ (f_{0,1}y_2+f_{0,2}y_1^2+f_{1,1}y_1+f_{2,0}) x^2+\cdots \\ \end{align}</math> であり、次数の低い方から係数を比較することで、係数<math>y_j</math>が順に決まっていくことがわかる。// '''補題5.1.3''' <math>f(x,y)</math>の冪級数展開の優級数<math>F(x,y)</math>があるとき、常微分方程式 :<math>y'=F(x,y) ,\ y(0)=0</math>…(☆)' の冪級数解は、補題5.1.2で定まる(☆)の冪級数解の優級数である。 (証明) <math>f(x,y)=\sum_{j,l=0}^\infty f_{j,l} x^j y^l,F(x,y)=\sum_{j,l=0}^\infty F_{j,l} x^j y^l</math>とし、(☆)の解を<math>y=\sum_{j=0}^\infty y_j x^j</math>、(☆)'の解を<math>Y=\sum_{j=0}^\infty Y_j x^j</math>とする。 ただし、<math>y,Y</math>の冪級数表示は現時点では収束性については何も分かっていない、形式的冪級数である。すべての''j'',''l''について<math>|f_{j,l}| \le |F_{j,l}|</math>が成り立つならばすべての''j''について<math>|y_j| \le |Y_j|</math>であることを数学的帰納法で証明する。<math>y_0=Y_0=0,y_1=f_{0,0},Y_1=F_{0,0}</math>なので、<math>j=0,1</math>のときは成り立つ。 <math>j \le m</math>なるすべての''j''で成り立つと仮定する。補題5.1.2の証明から、<math>y_m</math>は<math>f_{j,l} (j+l \le m-1),y_{j} (j \le m-1)</math>に関する多項式の値であり、その係数は非負である。<math>Y_m</math>も同様に、同じ非負係数多項式に<math>F_{j,l} (j+l \le m-1),Y_{j} (j \le m-1)</math>を代入した値である。よって、帰納法の仮定より、<math>|y_m| \le |Y_m|</math>が成り立つ。よって、すべての自然数''j''について<math>|y_j| \le |Y_j|</math>が成り立つ。// '''補題5.1.4''' <math>f(x,y)</math>が原点の近傍<math>|x| \le r,|y| \le \rho</math>において<math>|f(x,y)| \le M</math>を満たすとき、<math>\sum_{j,l=0}^\infty \frac{M}{r^j \rho^l} x^j y^l</math>は<math>f(x,y)</math>の冪級数展開の優級数である。 (証明) <math>|f_{j,l}| \le \frac{M}{r^j \rho^l}</math>を示せばよい。<math>f(x,y)</math>の定義域を複素変数に拡張して[[w:コーシーの積分公式]]を用いると、<math>|x|<r,|y|<\rho</math>のとき <math>f(x,y)=\int_{|\zeta|=r} \frac{d\zeta}{2i\pi}\int_{|\xi|=\rho} \frac{d\xi}{2i\pi} \frac{f(\zeta,\xi)}{(\zeta-x)(\xi-y)}=-\frac{1}{4\pi^2}\int_{|\zeta|=r} d\zeta \int_{|\xi=\rho} d\xi f(\zeta,\xi)\left(\sum_{j=0}^\infty \frac{x^j}{\zeta^{j+1}}\right)\left(\sum_{l=0}^\infty \frac{y^l}{\xi^{l+1}}\right)=-\sum_{j,l=0}^\infty \frac{1}{4\pi^2} \int_{|\zeta|=r} d\zeta \int_{|\xi|=\rho} d\xi \frac{f(\zeta,\xi)}{\zeta^{j+1}\xi^{l+1}} x^j y^l</math>であるから、<math>|f_{j,l}| \le \frac{1}{4\pi^2} \int_{|\zeta|=r} d\zeta \int_{|\xi|=\rho} d\xi \frac{|f(\zeta,\xi)|}{|\zeta|^{j+1}|\xi|^{l+1}} \le \frac{M}{r^j \rho^l}</math>である。// '''補題5.1.5''' 補題5.1.3の微分方程式で<math>F(x,y)=\sum_{j,l=0}^\infty \frac{M}{r^j \rho^l} x^j y^l</math>としたものの解は、<math>x=0</math>の近傍で解析的な関数であり、収束する冪級数で表される。 (証明) :<math>y'=\sum_{j,l=0}^\infty \frac{M}{r^j \rho^l} x^j y^l=\frac{M}{\left(1-\frac{x}{r}\right)\left(1-\frac{y}{\rho}\right)}</math> は変数分離形なので解を求めることができて、 :<math>\left(1-\frac{y}{\rho}\right)dy=\frac{M}{\left(1-\frac{x}{r}\right)}dx</math> :<math>-\frac{\rho}{2}\left(1-\frac{y}{\rho}\right)^2=-Mr\log\left(1-\frac{x}{r}\right)+C</math> であり、<math>y(0)=0</math>より<math>C=-\frac{\rho}{2}</math>であることに注意して整理すると、 :<math>y=\rho-\sqrt{\rho\left(\rho+2Mr\log\left(1-\frac{x}{r}\right)\right)}</math> である。これは確かに<math>|x| < r(1-e^{-\frac{\rho}{2Mr}})</math>で解析的な関数である。// (定理5.1.1’の証明) 補題5.1.3,5.1.4,5.1.5より、補題5.1.2の冪級数は収束する優級数をもち、したがって自身も収束する。よって、この冪級数の極限として、解が一意的に存在することがわかる。// === ピカールの逐次近似法 === 本節では、''f''が次の仮定(H2)を満たすとする。 :(H2) <math>f(x,y)</math>は点<math>(x_0,y_0)</math>の近傍<math>D=\{|x-x_0| \le r,|y-y_0| \le \rho\}</math>でリプシッツ連続である、すなわちある''K''に対して<math>|f(x_1,y_1)-f(x_2,y_2)| \le K \sqrt{(x_1-x_2)^2+(y_1-y_2)^2}</math>が成り立つ。 このとき、解は次のようにして構成される。 '''定義5.2.1''' <math>f(x,y)</math>が仮定(H2)を満たすとき、漸化式<math>y_{j+1}(x)=y_0+\int_{x_0}^x f(t,y_j(t)) dx,\ y_0(x)=y_0</math>で定まる関数列<math>y_j</math>を'''ピカールの逐次近似列'''という。 '''定理5.2.2''' <math>f(x,y)</math>が仮定(H2)を満たすとき、<math>M=\max_{(x,y) \in D} |f(x,y)|,\delta=\min\left\{\frac{\rho}{M},r\right\}</math>とする。閉区間<math>[x_0-\delta,x_0+\delta]</math>において(*)を満たす関数''y''がただひとつ存在し、それはピカールの逐次近似列<math>y_j</math>の<math>j \to \infty</math>における極限として定義される。 これをいくつかの補題に分けて証明しよう。 '''補題5.2.3''' <math>x_0-\delta \le x \le x_0+\delta</math>のとき、<math>\left|\int_{x_0}^x f(t,y(t)) dt\right| \le M|x-x_0| \le \rho</math>である。 (証明) <math>\left|\int_{x_0}^x f(t,y(t)) dt\right| \le M|x-x_0| \le M\delta \le \rho</math>// 補題5.2.3を帰納的に用いることで、任意の''j''について<math>y_j</math>の値域が<math>|y-y_0| \le \rho</math>に含まれ、したがって関数列<math>y_j</math>がwell-definedであることが従う。 次に、解の一意性を先に示しておこう。 '''補題5.2.4''' <math>f(x,y)</math>が仮定(H2)を満たすとき、閉区間<math>[x_0-\delta,x_0+\delta]</math>において(*)を満たす関数はただ一つである。 (証明) <math>y(x),\tilde{y}(x)</math>がともに(*)'を満たすとすると、''f''がリプシッツ連続であることから :<math>|y(x)-\tilde{y}(x)|=\left|\int_{x_0}^x f(t,y(t))-f(t,\tilde{y}(t))dt\right| \le \left|\int_{x_0}^x |f(t,y(t))-f(t,\tilde{y}(t))|dt\right| \le K\left|\int_{x_0}^x |y(t)-\tilde{y}(t)| dt\right|</math> である。一方、補題5.2.3より、 :<math>|y(x)-\tilde{y}(x)| \le |y(x)-y_0|+|\tilde{y}(x)-y_0|=\left|\int_{x_0}^x f(t,y(t)) dt\right|+\left|\int_{x_0}^x f(t,\tilde{y}(t)) dt\right| \le 2\rho</math> なので、 :<math>|y(x)-\tilde{y}(x)| \le 2\rho K|x-x_0|</math> であり、よって :<math>|y(x)-\tilde{y}(x)| \le \left|\int_{x_0}^x 2\rho K|t-x_0| dt\right|=2\rho \frac{(K|x-x_0|)^2}{2}</math> である。同様に繰り返すことで、任意の自然数''l''に対して :<math>|y(x)-\tilde{y}(x)| \le 2\rho \frac{(K|x-x_0|)^l}{l!} \le 2\rho \frac{(K\delta)^l}{l!}</math> であることがわかるが、<math>\lim_{l \to \infty} \frac{(K\delta)^l}{l!}=0</math>なので、<math>y(x)=\tilde{y}(x)</math>である。// '''補題5.2.6''' 関数列<math>y_j</math>は一様収束する。 (証明) 補題5.2.3と''f''がリプシッツ連続であることより、 :<math>|y_1(x)-y_0| \le M|x-x_0|</math> :<math>|y_2(x)-y_1(x)| \le\left|\int_{x_0}^x |f(t,y_1(t))-f(t,y_0(t))| dt\right| \le K\left|\int_{x_0}^x |y_1(t)-y_0(t)| dt\right| \le K\int_{x_0}^x M|t-x_0| dt \le KM\frac{|x-x_0|^2}{2}</math> 以下同様に繰り返して、 :<math>|y_j(x)-y_{j-1}(x)| \le \frac{M}{K}\frac{(K|x-x_0|)^l}{l!} \le \frac{M}{K}\frac{(K\delta)^l}{l!}</math> である。よって、<math>j<l</math>のとき :<math>|y_j(x)-y_l(x)| \le \sum_{i=j+1}^l \frac{M}{K}\frac{(K\delta)^i}{i!}</math> であるが、右辺は<math>j \to \infty</math>において0に収束するので、<math>y_j</math>は一様収束する。// 以上で定理5.2.2を示す準備は整った。 (定理5.2.2の証明) <math>y_j</math>が一様収束することに注意して<math>y_{j+1}(x)=y_0+\int_{x_0}^x f(t,y_j(t)) dx</math>の両辺の<math>j \to \infty</math>における極限を考えると、 :<math>\lim_{j \to \infty}y_j(x)=y_0+\int_{x_0}^x f(t,\lim_{j \to \infty}y_j(t)) dx</math> である。これは<math>\lim_{j \to \infty}y_j(x)</math>が(*)'の解であることを示している。 === コーシーの折れ線とペアノの定理 === 本節では、''f''が次の仮定(H3)を満たすとする。 :(H3) <math>f(x,y)</math>は点<math>(x_0,y_0)</math>の近傍<math>D=\{|x-x_0| \le r,|y-y_0| \le \rho\}</math>で連続である。 このとき、解は次のようにして構成される。 '''定義5.3.1''' 自然数''j''に対し、<math>x_0-r \le x \le x_0+r</math>における関数<math>y_j</math>を次のように定める。まず、<math>y_j(x_0)=y_0</math>とする。次に、非負整数''i''に対して<math>x_i=x_0+\frac{ir}{j}</math>と定め、<math>x_i< x \le x_{i+1}</math>のときには :<math>y_j(x)=y_0+\frac{r}{j}\sum_{d=0}^{i-1}f(x_d,y_j(x_d))+(x-x_i)f(x_i,y_j(x_i))</math>…(#) とする。<math>x<0</math>についても同様にする。このようにして定まる関数<math>y_j</math>のグラフは連続な折れ線になり、これを'''コーシーの折れ線'''という。 前節までに見た「解析的」や「リプシッツ連続」と比べ、「連続」はとても弱い仮定であり、より多くの関数が満たしている。だがその分本節では解の一意性は失われ、存在しか示すことができない。すなわち、次が成り立つのみである。 '''定理5.3.2''' コーシーの折れ線<math>y_j</math>は一様収束する部分列<math>y_{j_l}</math>を持ち、<math>\lim_{l \to \infty} y_{j_l}</math>は方程式(*)の解である。 まず、次の補題を示す。 '''補題5.3.3''' <math>M=\max_{(x,y) \in D} |f(x,y)|,\delta=\min\left\{\frac{\rho}{M},r\right\}</math>とする。関数列<math>y_j</math>は<math>x_0-\delta \le x \le x_0+\delta</math>において一様有界かつ同程度連続である。 (証明) 定義より :<math>|y_j(x_1)-y_j(x_2)| \le M|x_1-x_2|</math> なので、同程度連続である。また、この式で<math>x_2=0</math>とすると :<math>|y_j(x)| \le |y_0|+M\delta \le |y_0|+\rho</math> なので、一様有界である。// 補題5.3.3と[[解析学基礎/関数列の極限#アスコリ=アルツェラの定理|アスコリ=アルツェラの定理]]により、<math>y_j</math>が一様収束する部分列を持つことがわかるので、あとはこの部分列の極限が解になっていることを示せばよい。 (定理5.3.2の証明) <math>y(x)=\lim_{l \to \infty} y_{j_l}</math>が(*)'の解になっていることを示したい。(*)と(#)を辺々引いた式 :<math>y(x)-y_{j,l}(x)+\sum_{d=0}^{i-1} \int_{x_d}^{x_{d+1}} (f(x,y(x))-f(x_d,y_j(x_d))) dx+\int_{t_i}^t(f(x,y(x))-f(x_i,y_j(x_i))) dx=0</math> が成り立つことを示せばよい。左辺を<math>A_{j_l}</math>とする。<math>A_{j_l}=0</math>を示したい。まず、任意の<math>\varepsilon>0</math>に対してある''N''が存在して、<math>l>N</math>ならば<math>|y(x)-y_{j_l}(x)|<\varepsilon</math>である。次に有界閉集合''D''上の連続関数''f''は一様連続なので、任意の<math>\varepsilon'>0</math>に対して、<math>|x_1-x_2|+|y_1-y_2|<\delta'</math>ならば<math>|f(x_1,y_1)-f(x_2,y_2)|<\varepsilon'</math>となるように、<math>\delta'>0</math>をとることができる。この<math>\delta</math>に対して<math>\varepsilon<\frac{\delta'}{2}</math>を満たすように<math>\varepsilon>0</math>をとり、この<math>\varepsilon</math>に対して<math>|y(x)-y_{j_l}(x)|<\varepsilon</math>かつ<math>(M+1)\frac{r}{j_l}<\frac{\delta'}{2}</math>を満たすように''l''をとれば、<math>x_d< x \le x_{d+1}</math>のときには :<math>|x-x_d|+|y(x)-y_{j_l}(x_d)| \le |x-x_d|+|y(x)-y_{j_l}(x)|+|y_{j_l}(x)-y_{j_l}(x_d)| \le \frac{r}{j_l}+\varepsilon+M\frac{r}{j_l}<\delta'</math> なので、<math>|f(x,y(x))-f(x_d,y_j(x_d))|<\varepsilon'</math>である。よって、 :<math>|A_{j_l}| < \varepsilon+(i+1)\int_{x_d}^{x_{d+1}} \varepsilon'=\varepsilon+\frac{(i+1)r\varepsilon'}{j_l}</math> である。<math>\varepsilon,\varepsilon'</math>は任意なので、<math>A_{j_l}=0</math>である。 ==陰関数型の1階常微分方程式== 陰関数型の1階常微分方程式 :::<math> \displaystyle F \Bigl( k+\ell x+my, \; \; \frac{dy}{dx} \; \Bigr)= 0 </math> は求積法で一般解を表示することができる。ここに、<math> F </math> は任意の既知関数であり、<math> k,\; \ell,\; m </math> は任意定数である。 この陰関数型1階常微分方程式の一般解は、次に示す三通りの式で与えられる。 ::: <math> x = \! \int \! \left\{ \frac{1}{\; \ell + m \psi (t)\;} \cdot \frac{\; d \phi (t) \;}{dt} \; \right\} dt+C, </math> ::: <math> k + \ell x + my = \phi (t), </math> ::: <math> F \bigl( \phi (t), \; \psi (t) \bigr) \equiv 0. </math> ここに、<math> t </math> は媒介変数であり、<math> \phi (t) </math> と <math> \psi (t) </math> は <math> t </math> の関数で、 <math> F \bigl( \phi (t),\; \psi (t) \bigr) \equiv 0 </math> は <math> \phi (t),\; \psi (t) </math> に関する恒等式である。なお <math> C </math> は積分定数である。 以下で、その解法を示す。 与えられた常微分方程式 <math> \displaystyle F \Bigl( k+\ell x+my,\; \; \frac{dy}{dx} \; \Bigr)= 0 </math> に対して、<math>t</math> を媒介変数とする任意関数 <math>\phi (t), \; \psi (t)</math> を導入し、 ::: <math> k + \ell x + my = \phi (t), </math> ::: <math> \displaystyle \frac{dy}{dx} = \psi (t) </math> と置く。ただし、<math>m\ne 0</math> とする。 上式 <math>k + \ell x + my =\phi (t)</math> の両辺を<math>x</math>で微分すると、 :::<math> \displaystyle \ell + m \frac{dy}{dx} = \frac{d \phi (t)}{dt} \cdot \frac{dt}{dx} </math> となる。 ここで、<math> \frac{dy}{dx} = \psi (t) </math> と <math> \ell + m \frac{dy}{dx} = \frac{d \phi (t)}{dt} \cdot \frac{dt}{dx}</math> から <math> \frac{dy}{dx}</math> を消去すると、 :::<math> \displaystyle \ell + m \psi(t) = \frac{d \phi (t)}{dt} \cdot \frac{dt}{dx}</math> を得る。この式を変形すると、 :::<math> \frac{dx}{dt} = \frac{1}{\; \ell + m \psi (t)\;} \cdot \frac{d \phi (t)}{dt}</math> となる。上式は変数分離形であるから積分すると、 :::<math> x= \! \int \! \left\{ \frac{1}{\; \ell + m \psi (t)\;} \cdot \frac{\; {d} \phi (t)\; }{dt} \, \right\} dt+C, </math> ・・・・・(▲) となり、<math>x</math> が <math>t</math> の関数として表示された。 これを用いれば <math>y</math> は <math>k + \ell x + my =\phi (t)</math> と上式 <math> x = \int \left\{ \frac{1}{\;\ell+m\psi(t)\;} \cdot \frac{d \phi (t)}{dt} \right\} dt+C </math> により <math>t</math> の関数として与えられる。なお <math>C</math> は積分定数である。 途中の計算は省略して <math>y</math> の式のみを以下に示しておく。 :::<math> \displaystyle y = \frac{1}{\; m \;} \left [ \phi (t) - k - \ell \left\{ \int \left ( \!\frac{1}{\; \ell + m \psi (t)\;} \cdot \frac{\; {d} \phi (t)\; }{dt} \, \right ) dt+C \right\} \right ] .</math> ・・・・・(▲▲) 上記の(▲)式と(▲▲)式を用いて、 :::<math> \displaystyle \frac{d y}{\; d x \;} = \frac{\displaystyle \frac{d y}{\; d t \;}} {\displaystyle \frac{d x}{\; d t \;}} </math> を計算すると、 :::<math> \displaystyle \frac{d y}{\; d x \;} = \psi (t) </math> を得る。この <math> \displaystyle \frac{d y}{\; d x \;} = \psi (t) </math> は、 <math> \displaystyle F \Bigl( k+\ell x+my,\; \; \frac{dy}{dx} \; \Bigr)= 0 </math> を解く時、 始めに仮定した式と同一である。 次に、<math> \frac{\; {d} x \; }{dt}</math> と <math> \frac{\; {d} y \; }{dt}</math> から <math> \frac{\; {d} y\; }{dx} = \psi (t) </math> に至る計算の詳細を下に示しておく。 (▲)式を <math> t </math> で微分した式は前掲の、 <!-- 黒手帳,p.268, (9)式 (dx/dt)= --> <math> \displaystyle \frac{\; {d} x \; }{dt} = \frac{1}{\; \ell + m \psi (t)\;} \cdot \frac{\; {d} \phi (t)\; }{dt} </math> である。一方、(▲▲)式を <math> t </math> で微分すると、 :::<math> \displaystyle \frac{\; {d} y \; }{dt} = \frac{1}{\; m \;} \cdot \frac{\; {d} \phi (t)\; }{dt} - \frac{\ell}{\; m \;} \cdot \!\frac{1}{\; \ell + m \psi (t)\;} \cdot \frac{\; {d} \phi (t)\; }{dt} </math> となる。従って、 :::<math> \displaystyle \frac{\displaystyle \; \frac{d y}{\; d t \;}\;}{\displaystyle \frac{d x}{\; d t \;}} = \displaystyle \frac{\; \displaystyle \frac{1}{\; m \;} \cdot \frac{\; {d} \phi (t)\; }{dt} - \frac{\ell}{\; m \;} \cdot \!\frac{1}{\; \ell + m \psi (t)\;} \cdot \frac{\; {d} \phi (t)\; }{dt} \;} {\displaystyle \frac{1}{\; \ell + m \psi (t)\;} \cdot \frac{\; {d} \phi (t)\; }{dt}} </math> である。更に計算してゆくと、 :::<math> \displaystyle \frac{\displaystyle \; \frac{d y}{\; d t \;}\;}{\displaystyle \frac{d x}{\; d t \;}} = \displaystyle \frac{\; \displaystyle \frac{1}{\; m \;} \cdot \frac{\; {d} \phi (t)\; }{dt} \;} {\displaystyle \frac{1}{\; \ell + m \psi (t)\;} \cdot \frac{\; {d} \phi (t)\; }{dt}} - \frac{\; \displaystyle \frac{\ell}{\; m \;} \cdot \! \frac{1}{\; \ell + m \psi (t)\;} \cdot \frac{\; {d} \phi (t)\; }{dt} \;}{\displaystyle \frac{1}{\; \ell + m \psi (t)\;} \cdot \frac{\; {d} \phi (t)\; }{dt}} </math> となるから、これを計算して整理すると、 :::<math> \displaystyle \frac{\displaystyle \; \frac{d y}{\; d t \;}\;}{\displaystyle \frac{d x}{\; d t \;}} = \displaystyle \frac{\; \displaystyle \frac{1}{\; m \;} \;}{\displaystyle \frac{1}{\; \ell + m \psi (t)\;} } - \frac{\; \displaystyle \frac{\ell}{\; m \;} \;}{1} = \displaystyle \frac{{\; \ell + m \psi (t)\;}}{\; m \;} - \displaystyle \frac{\ell}{\; m \;} = \displaystyle \frac{\ell}{\; m \;} + \psi(t) - \displaystyle \frac{\ell}{\; m \;} = \psi(t),</math> である。すなわち, :::<math> \displaystyle \frac{d y}{\; d x \;} = \frac{\displaystyle \frac{d y}{\; d t \;}} {\displaystyle \frac{d x}{\; d t \;}} </math> であるから、 :::<math> \displaystyle \frac{d y}{\; d x \;} = \psi(t), </math> が得られたことになる。 ==== 例題1 ==== 陰関数型の関数 <math> F </math> が、 <math> F \bigl( \phi (t),\; \psi (t) \bigr) = \phi (t) - \psi (t) = 0 </math> のとき、 ::: <math> x = \! \int \! \left\{ \frac{1}{\; \ell + m \psi (t)\;} \cdot \frac{\; d \phi (t) \;}{dt} \, \right\} dt+C, </math> ::: <math> k + \ell x + my = \phi (t) </math> から、一般解を求めよ。 解きかたは、<math> \psi (t)=\phi (t) </math> の関係を <math> x = \! \int \! \left\{ \frac{1}{\; \ell + m \psi (t)\;} \cdot \frac{\; d \phi (t) \;}{dt} \; \right\} dt+C </math> に適用すればよい。 すなわち、 <math> x = \! \int \! \left\{ \frac{1}{\; \ell + m \phi (t)\;} \cdot \frac{\; d \phi (t) \;}{dt} \; \right\} dt+C </math> として、積分すると、 ::: <math> x = \frac{1}{\; m \;} \cdot \ln \bigl(\, \ell + m \phi (t) \, \bigr) +C, </math>・・・・・(•) を得る。 <math> x </math> が <math> \phi (t) </math> の関数として表示されたので、<math> y </math> は、 <math> k + \ell x + my = \phi (t) </math> を用いて <math> \phi (t) </math> の関数として求めることができる。 計算の途中は省略して、求めた <math> y </math> の数式のみを記述しておく。 ::: <math> \displaystyle y = \frac{1}{\; m \;} \left [ \phi (t) -\left\{ k + \ell \left ( \frac{1}{\; m \;} \cdot \ln \bigl(\, \ell + m \phi (t) \, \bigr) +C \right ) \right\} \right ]. </math>・・・・・(••) 一般解 <math> x </math> と <math> y </math> が <math> \phi(t) </math> の関数として表示されたので、次に、 :::<math> \displaystyle \frac{d y}{\; d x \;} = \frac{\displaystyle \frac{d y}{\; d t \;}}{\displaystyle \frac{d x}{\; d t \;}} </math> を確かめておく必要がある。(•)式と(••)式の両辺を <math> t </math> で微分すると、 :::<math> \frac{d x}{\; d t \;} = \frac{1}{\; \ell + m \phi (t)\;} \cdot \frac{\; d \phi (t) \;}{dt}, </math> :::<math> \frac{d y}{\; d t \;} = \frac{\phi (t)}{\; \ell + m \phi (t)\;} \cdot \frac{\; d \phi (t) \;}{dt} </math> が得られる。この、上記の 2式により、<math> \displaystyle \frac{d y}{\; d x \;}</math> は、 :::<math> \displaystyle \frac{d y}{\; d x \;} = \frac{\displaystyle \; \frac{d y}{\; d t \;}}{\displaystyle \frac{d x}{\; d t \;}} = \frac{\displaystyle \frac{\phi (t)}{\; \ell + m \phi (t)\;} \cdot \frac{\; d \phi (t) \;}{dt}}{\displaystyle \; \frac{1}{\; \ell + m \phi (t)\;} \cdot \frac{\; d \phi (t) \;}{dt} \;} = \phi(t)</math> となる。すなわち, :::<math> \displaystyle \frac{d y}{\; d x \;} = \phi(t) </math> が得られた。 例題1 は、<math> \psi(t) = \phi(t) </math> の場合であるから、 上式 <math> \displaystyle \frac{d y}{\; d x \;} = \phi(t) </math> は、常微分方程式 <math> \displaystyle F \Bigl( k+\ell x+my, \; \; \frac{dy}{dx} \; \Bigr)= 0 </math> を解くとき、 始めに仮定した式 <math> \displaystyle \frac{d y}{\; d x \;} = \psi(t) </math> と同一である。 次に、(•)式と(••)式から、 <math> \phi(t) </math> を消去した式を示しておく。 :::<math> \displaystyle y = \frac{1}{\; m \;} \left[ \frac{1}{\; m \;} \{ \exp (mx - mC \;) -\ell \; \} -k -\ell x \; \right ].</math> ・・・・・(•••) 上記の(•••)式は、<math> k + \ell x + my = \frac{dy}{dx}</math> の一般解である。なお、<math> C </math> は積分定数である。 ==== 例題2 ==== 陰関数型の関数 <math> F </math> が、 <math> F \bigl( \phi (t), \; \psi (t) \bigr) = \phi (t) - \psi (t) = 0 </math> の場合は、<math> \phi (t) = \psi (t) </math> であるから、 最初の仮定 <math> k + \ell x + my = \phi (t) </math> と <math> \frac{dy}{dx} = \psi (t) </math> により、 ::: <math> k + \ell x + my = \frac{dy}{dx}, </math> が成り立つ。この式は、1階線型常微分方程式であるため求積法で解ける。 その一般解と、<b>例題1</b> の一般解とが一致することを確かめよ。 (注:積分定数が <b>例題1</b> の場合とは等しくなく、異なる形をしている。非常に興味深い。研究する価値がある。(••••)と(★★)。) 上記の式 <math> k + \ell x + my = \frac{dy}{dx} </math> の一般解は、公式を用いて解くと、 :::<math> \displaystyle y = C \exp (mx) - \frac{1}{\; m \;} \left\{ k + \ell \left( x + \frac{1}{\; m \;} \right ) \right \}, </math>・・・・・(★) となる。なお、<math> C </math> は積分定数である。 以下で、<b>例題1</b> の(•••)式と (★)式を比較する。 まず、<b>例題1</b> の(•••)式を展開すると、 :::<math> \displaystyle y = \frac{\; \exp (- mC ) \;}{m^2} \cdot \exp (mx) - \frac{\; \ell x \;}{m \;} - \frac{k}{\; m \;} - \frac{\ell}{\; m^2 \;}, </math>・・・・・(••••) を得る。 次に、<b>例題2</b> の(★)式を展開すると、 :::<math> \displaystyle y = C \exp (mx) - \frac{\; \ell x \;}{m} - \frac{k}{\; m \;} - \frac{\ell}{\; m^2 \;}, </math>・・・・・(★★) となる。 上記(••••)式、および(★★)式は、いずれも、 <math> k + \ell x + my = \frac{dy}{dx} </math> を満たす。 [[カテゴリ:微分方程式|しようひふんほうていしき]]
解析学基礎/常微分方程式
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