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<small> [[物理数学I]] > 微分方程式</small> ---- <small> [[物理数学I]] > 微分方程式</small> ---- ==微分方程式== ここでは、常微分方程式を扱う。内容としては簡単な求積の仕方や、 線形微分方程式の解法、解の一意性の説明、ほとんどの 微分方程式は解析的に解けないことから数値的な扱いが 重要になることの説明などを予定している。 ===簡単な微分方程式=== ====微分方程式の定義==== :<math> F(x,y,y', \cdots , y^{(n)}) = 0 </math> の形で与えられる方程式を微分方程式と呼ぶ。ここで、<math>y^{(n)}\,</math>などで与えられる表式は、yのn階微分を表わす。 :<math> x + x^2 = 0\, </math> など、代数的な式や、 :<math> x^2- \sin x = 0\, </math> など数値的にしか解が求められないような例が方程式の例として挙げられるが、今回は、微分もまじえて作られる方程式を考えてその解法を考察して行くことになる。 また、上で与えた方程式はyをxの関数として見た上での式となっている。 仮に、上の微分方程式にxの関数として代入されたとき、 その方程式が満たされるなら、そのyをその微分方程式のxに対する 解と呼ぶ。つまり、yとして、そのようなxの関数を求めることが 出来るかどうかがこの章の主題となるわけである。 *参考 上の数値的にしか解けない方程式を求める方法は現在では[[高等学校数学B]]で扱われることになっている。実際には、そこでは[[w:二分法]]が扱われ、[[w:ニュートン法]]はより発展的な内容として扱われる。 ====数値的な方法==== 例えば、 :<math> y' =1\, </math> という方程式は微分方程式である。 ここでは、この方程式を数値的に積分する方法を考察してみる。 微分とはおおよそある関数f(x)について ある点xでの値と、xとは異なっているがそれに極近い点<math>x+\epsilon</math>での値を 関係づける値である。そのため、全ての点での微分とある一点でのf(x)の 値が分かっているなら、全ての点でのxの値を計算できることが期待される。 実際上の式では、全ての点での微分が定数1であることが知られているので、 その値を用いて、異なったxの値に対するyの値を計算することが出来る。 ここでは、特にy(x)は、<math>x= 0</math>で、0となるという条件を満たすことを 仮定する。このような条件を初期条件と呼ぶ。この用語自体は 物理等の課目についても流用されることがある。 さて、ある点xでの値をf(x)としたとき、[[w:テイラー展開]]の公式を用いると、 :<math> f(x+ \epsilon) = f(x) + \epsilon \frac {df(x)} {dx } + \cdots </math> となることが知られている。しかし、ここで<math>\epsilon</math>がきわめて小さかったときには この式の右辺は最初の2項だけで近似してよいことが期待される。 このとき、 :<math> f(x+ \epsilon) = f(x) + \epsilon \frac {d f(x)} {dx } </math> が得られる。この式は、ある点xでのf(x)の値と、その近くでの値 を点xでのfの微分を用いて結びつける式である。 ここで、与えられた条件 :<math> y' =1 , ~ y(0) =0\, </math> を用いて、任意のxに対してy(x)の値を計算してみる。 まず、条件からy(0) = 0となる。 次に、非常に小さい数<math>\epsilon</math>を用いると、上のテイラー展開の式が 使えるので、 :<math> y(\epsilon) = y(0) +\epsilon \frac {f(0) }{dx } </math> となるが、ここでは条件から、 :<math> \frac{d} {dx} f(0) = \frac {f(x)}{dx }| _{x\rightarrow 0}= 1 </math> が知られているので、 y(0) =0と合わせると、結局 :<math> y(\epsilon) = 0+ \epsilon \cdot 1 = \epsilon </math> が得られる。このような操作を何度も繰りかえしていくのである。 次の行程として、<math>x=2\epsilon</math>での値を計算する。 もちろん、<math>x=3/2 \cdot \epsilon</math>などの値を同じ様にして計算することも出来るが 整数で計算をしてもよいだろう。 同じ様な手続きを用いると、 :<math> y(2\epsilon ) = f(\epsilon) + \epsilon \frac{d f(x)}{dx} | _{x\rightarrow \epsilon} </math> となる。ここで、fの微分が1であることを用いると、 先ほどの結果と合わせて、 :<math> y(2\epsilon) = 2\epsilon </math> が得られる。 <math>x = 3/2 \cdot \epsilon</math> や、 <math>x = 3\epsilon</math>や、 <math>x = 4\epsilon</math>での値も同じ様な計算で得られ、 その結果から :<math> f(x) =^{?} x\, </math> が示唆されることが分かる。 ここで、このような解が実際に解析的な意味で 与えられた微分方程式の解となっていることを示す。 つまり、実際にはこの確認は非常に簡単で、 :<math> y' = 1\, </math> となっていることを確かめるのだが、 xのxによる微分は1なので確かにそのようになっている。 こうして、この微分方程式は解かれたわけである。 さらに、 :<math> y=x\, </math> はy(0) = 0の条件も満たしている。 このように初期条件を満たす解を""初期条件を満たす解"" と呼ぶ。 また、このように1階微分のみを用いて順々にy(x)の値を数値的に 定めて行く方法を発見者にちなんで[[w:オイラー法]]と呼ぶことが ある。 特に、この方法は実際に解析的に結果が求められない式に対しても 用いることが出来るので、応用上非常に重要である。 * 参考 実際には、実用的な数値計算においては より高次の微分項までの寄与を取り入れた[[w:ルンゲクッタ法]]と 呼ばれる方法を用いることが多い。 この方法は解の精度が高いことで知られているが、 やや計算法が複雑であるため、簡単な計算には オイラー法が用いられることもある。 ====微分方程式の解法==== ここでは、微分方程式を解析的に解く方法を扱う。数値的に解を求めることが出来るとはいえ結果として求められた関数が良く知られたものであった場合、何らかの簡単な解析的な解を求める方法があることを疑うのは自然なことであると思われる。例えば、先ほどの例では :<math> y' = 1 </math> を挙げたが、ここでy=xがこの方程式の解になることに気づくことはそれほど難しいことではないと思われる。 また、すぐに挙げる変数分離の方法を用いるとこの方程式は簡単な積分に帰着するのでそれによってこの解を得ることも出来る。このような微分方程式の解を求める方法は非常に多くのものが知られているが、ここではもっとも簡単で応用上重要なものを扱うことにする。 ==== 変数分離 ==== ここでは、まずもっとも簡単で重要な方法から 挙げる。 :<math> \frac {f(x)}{g(y)} = \frac{dy}{dx} </math> で書ける式では、 :<math> f dx = g dy\, </math> とし、両辺をそれぞれの文字で積分することで 解が得られる。この方法を変数分離の方法と呼ぶ。 実際には、yというのはあくまでxの関数であるので、 yで積分を行なうことは出来ないように思える。実際、 そのとおりであり、この式は、 :<math> \int f dx = g \int \frac {dy} {dx} dx </math> を短くかいたものである。 ここで、右辺はxについて積分しているが変数変換によって :<math> \frac {dy}{dx }dx = dy </math> のように積分変数をxからyに変換することが出来る。 これによって、上のような表式になるわけである。 *計算例 :<math> y' =1\, </math> を変数分離の方法で解くことが出来る。 両辺をxで積分すると、 :<math> \int dx \frac {dy} {dx} = \int dx </math> :<math> \int dy = \int dx </math> :<math> y = x + C\, </math> が得られる。ここでCは積分定数であり、任意の定数となっている。 この式は元の微分方程式を満たすことが期待されるが、 実際、 :<math> \frac{\partial{{}}}{\partial{x}} ({x+C}) = 1 </math> であるので、この式は確かに与えられた方程式を満たしている。 別の例として、 :<math> \frac{dy }{dx} = \frac y x </math> を扱う。 ここでは両辺をyで割った上で、xについて積分すると、 :<math> \frac 1 y dy = \frac 1 x dx </math> :<math> \ln y = \ln x + C \, </math> :<math> y = Ax\, </math> が得られる。 (Aは、<math>C =e^A</math>を満たす任意定数である。) 実際この式を :<math> \frac{dy }{dx} = \frac y x </math> に代入すると両辺共に :<math> A\, </math> に等しくなることが わかり、この式が正しく解析的な値を得ていることが分かる。 ==== 線形1次微分方程式 ==== 微分方程式の中で、 特に :<math> \sum _{i =0} ^n p _i (x) y^{(n)} (x) = 0 </math> の形でかける微分方程式を、線形微分方程式と呼ぶ。 これら以外の形をしている方程式、例えば<math>y^2</math>を含んでいる微分方程式 を非線形微分方程式と呼ぶ。 これらの微分方程式は、非線形微分方程式よりも取り扱いが簡単であることが 多く、良く調べられている。特に、ここで扱うように 1階の線形微分方程式はあらゆる係数関数p(x)について、解析的な 解を求めることが出来ることが知られている。 特に、線形1次微分方程式を :<math> y' + p(x)y = q(x) </math> と書く。 このとき、この解は、 :<math> y = e^{- \int p dx } (\int dx e^{\int dx p} q + C ) </math> で与えられる。 ここで、Cは、任意の積分定数である。 実際、上の表式を微分すると、 :<math> e^{- \int p dx } </math> を微分した部分からは :<math> -p (x)y </math> が得られる。 次に、もう片方の :<math> (\int dx e^{\int dx p} q + C ) </math> を微分した方からは、 :<math> q(x) </math> が得られる。 :<math> e^{\int dx p} </math> のファクターは前のファクターと打ち消し合うことに注意。 よって、 :<math> y' = -p(x) y + q(x) </math> となるが、これは確かに求めようとしていた微分方程式と一致している ことが分かる。 実際にはこの方法は定数変化法と呼ばれる方法を用いて導出されることが多い。 *TODO 定数変化法の説明と上の公式の導出 ===解の一意性=== 常微分方程式を計算するとき、上の例では常に 完全な解が得られた。 しかし、このような解が唯一であるといえるかは 議論の対象になる。 先ほどの例でいえば、 :<math> y' = 1 </math> では、ある初期値を取ってそれに次いでここで与えられた微分の値を用いて、 y自身の値を計算していくことが出来た。 同様に :<math> y' = f(x,y) </math> のように右辺がxとyの任意の関数になっていても、 y'自身の値が各点で完全に決まっていれば、 積分された関数は当然1つしか無いように思える。 実際にはこの直観は完全に正しいわけではない。 例えば、f(x,y)があるx,yに対して無限に発散するような 場合には、それに対応するy'を定めることが出来ないため、 それ以上に解を得ることが出来なくなる。 また、関数fのそれぞれの変数に対するふるまいが ある一定以上に激しい場合には、このときにも それに対応するy'の値を用いて得られる近くの関数値が、 正しい値に近くなくなることも予想される。 しかし、このような特別な情况がない場合、 常微分方程式の解は一意的であることがしられている。 ただし、上の例でも見た通り、一般に 常微分方程式はある点での解の値とそのまわりの点での解の値を 関係づける方程式なので、まず最初の一点の値を与えることを しないと、解が構成できないことが分かる。 よって、解を厳密な意味で一意的に定めるにはその解に対する 初期値も定める必要がある。 今までは1階微分の例しか扱わなかったが、以降では 2階微分以上の例も扱う。このとき、n階微分の方程式では、 n個の初期値を定めないと、解が一意的に定まらないことが知られている。 これは、n階の微分方程式が、n個の変数を含む1次の連立微分方程式に 対応することによる。 ここで、連立方程式とは、 :<math> F _j(x,y _i,y' _i, \cdots , y^{(n _i)} _i ) = 0 </math> のように(i,jは整数。)、複数個の微分方程式で 複数個の関数が定められているという微分方程式である。 これは、代数式の連立方程式の拡張ということが出来る。 つまり、上で述べていることは、n階の1変数の微分方程式は、 本質的にn個の変数を定めるための、1次の微分方程式と等しいということ である。 そして、n個の変数を決めなくてはいけないのだから、 初期値もn個必要になることは予想されることである。 物理的にはニュートン方程式が時間について2階の微分方程式であるので、 運動を決定するために物体の初期位置と初期速度の2つのパラメータを定める 必要があることと対応している。 ここでn階の微分方程式と、n個の変数を含む1次の連立微分方程式の 対応を見る。 まずあるxを取って、その位置から高階の微分方程式を 用いて解を定めて行く方法を考える。 ここでは、微分方程式をn階とする。 このとき、 方程式は、 :<math> y^{(n)} = f(y, \cdots , y^{(n-1)}) </math> と書き換えられることが期待される。 この式は、 <math>y^{(n-1)}</math>のx近くでの値を定めるためには、 xにおける<math>y, \cdots , y^{(n-1)}</math>のn個の値を定めなくては ならないことを示している。 次に、<math>y^{(n-2)}</math>を定めることを考える。 このとき、<math>y^{(n-2)}</math>は、 :<math> (y^{(n-2)})' =y^{(n-3)} </math> を満たすので、既に上で定めた<math>y^{(n-2)}</math>と、 <math>y^{(n-3)}</math>のxでの値だけを用いて計算することが出来る。 同様な手順を用いて、 それ以外のより低い次数の微分も定めることができる。 結局yから<math>y^({n-1})</math>までのn個の値について初期値を定めることは、 この方程式の解を求めるために十分だったということが出来る。 これらのことは表式的に :<math> \frac {d} { dx} \begin{pmatrix} y\\ \cdots\\ y^{(n-2)}\\ y^{(n-1)} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} y'\\ \cdots\\ y^{(n-1)}\\ f(y, \cdots , y^{(n-1)}) \end{pmatrix} </math> と書くことが出来る。 ここで、y'から<math>y^{(n-1)} </math>までを それぞれ、<math>v _1 \cdots v _{n-1}</math>で置き換えると この表式は ちょうど<math>y,v _1 \cdots v _{n-1}</math> のn個の変数を用いた1次微分方程式の表式に等しくなる。 よって、これらの間の対応があることが 分かったわけである。 この対応は特に、定数係数線型方程式の例でよく用いられる。 このときには最後のfが、 <math>y,y'\cdots y^{(n-1)} </math>に関する線型結合になるため、 左辺の微分演算子がある行列に対応するように見なすことが出来る。 このことは表式的に :<math> \frac{d}{dx} \vec y = D \vec y </math> とかける。 ここで、Dはn*nの行列であり、 yはn次元のベクトルとなっている。 この式の形は、 この式の解について、 :<math> \vec y = \exp \{D (x-x _0)\} \vec y _0 </math> のような書き方が出来ることを予想させる。 ただし、ここでは指数関数の指数としてただの数ではなく行列を用いている。 実際このような表式は存在し、一般に行列の指数関数と呼ばれている。 つまり、定数係数の線形微分方程式の計算は 行列の指数関数の計算を行なうことに帰着するわけである。 ===線形微分方程式=== 上で述べた通り、 :<math> \sum _{i =0} ^n p _i (x) y^{(n)} (x) = 0 </math> で書かれる微分方程式を線形微分方程式と呼ぶ。 これらの解は非線形方程式と比べて良く知られている。 1階の線形微分方程式は上で得られた通り、完全な積分が可能 となっている。 2階の線形微分方程式も特殊関数などを用いるとかなりの 種類が系統的に扱えることが知られているが、それらはこの項の 範囲を超えるので扱うことは出来ない。 ここでは特に、実用上重要な定数係数線形微分方程式を 主に扱う。 例えば、自由空間内でのニュートン方程式 :<math> \ddot x = 0 </math> や単振動の方程式 :<math> \ddot x + \omega ^2 x = 0 </math> はこの例である。 ここでは2階までの方程式を扱っているが、 ここで扱う解法自体は、どの次数の方程式にも用いることが出来る。 ====線形微分方程式の性質==== 線形方程式は、式の形から解に重要な性質があることが分かる。 ある線形微分方程式についてある2つの解 <math>y _1</math>,<math>y _2</math>が得られたとする。このとき、 <math>y = a y _1 + b y _2</math>も解となることがわかる。 ここで、a,bは任意の数である。つまり、2つの解が得られたとき、 それらの線形結合もその解となることが知られるのである。 実際、 :<math> \sum _{i =0} ^n p _i (x) y^{(n)} (x) = 0 </math> の左辺に代入すると、 :<math> \sum _{i =0} ^n p _i (x) (a y _1+b y _2)^{(n)} (x) </math> が得られるが、<math>y _1</math>,<math>y _2</math>は互いに独立にこの方程式の解となっているので、 この値は :<math> = 0 </math> を満たし、確かに<math>y = a y _1 + b y _2</math>も この方程式の解になっていることがわかる。 あるn階微分方程式についてn個の線形独立な微分方程式の解が得られたとする。 線形独立ということは、互いの線形結合を用いてそのうちのどれかを作りだすことが 出来ないという条件である。 線形独立という性質は、実際にはロンスキー行列式というものを 用いて判断されることが多いが、ロンスキー行列式と 線形結合で互いを作ることが出来ないという性質のつながりは それほど簡単ではない。 しかし、特に2階微分方程式を扱うときには、 この条件は単に、2つの解がお互いにお互いの定数倍でない ということを述べている。 以後は2階微分方程式を多く扱う。 このとき、そのn個の解を :<math> y _1, \cdots y _n </math> とすると、 :<math> y = c _1 y _1 + \cdots + c _n y _n </math> (<math>c _1, \cdots c _n</math>は、任意定数。) も、この方程式の解であることが分かる。 実際ここではn次の方程式を考えているため、 その解を決定するには、n個の初期値が必要とされている。 ここで、この式はn個の任意定数を持っているので、 これらの定数を動かすことで、 この解はどのような初期値に対応する解も作りうることが 期待される。このような解をこの方程式の一般解と呼ぶ。 多くの初等的な微分方程式の問題では、方程式の一般解を得ることがを 目的とされる。 ====定数係数線形微分方程式==== 既に述べた通り、定数係数微分方程式においては、 方程式は :<math> \frac {d} {dx} \vec y = A \vec y </math> と書かれる。ここで、Aは定数の行列である。 これを解いた表式として行列の指数関数の表式が 得られることを前に述べた。話の順序としては 次に行列の指数関数のことを書くのが適当かも知れないが、 ここでは、その前にその結果が非常に簡単になることを 使って、実際の計算を行なってみることにする。 例えば、 :<math> y'' - 3y' +2y = 0 </math> の解を求めることを考える。 実は、上の議論をきちんと行なうと、 このような定数係数線形微分方程式の解は、 非常に多くの場合、 <math>y = e^{at}</math>という形で与えられることが分かる。 ここで、aは、何らかの複素数である。 実際には少し違った形の解が得られることもあるが、 それでもまずはこうおくのがよいことが知られる。 そのため、まずはこのように解の形を仮定する。 このとき上の方程式は、 :<math> a^2 - 3a +2 = 0 </math> に帰着する。これは、2階微分の項はaについて2次の項、 1階微分の項はaについて1次の項により、単純な置き換えをして 得られる代数方程式である。 この方程式はしばしば元の微分方程式の特有方程式と呼ばれる。 もともとaの値を求めてしまえば、それに対応する解が定まることが 先ほどの仮定によって期待されている。ここでまさに、そのaを定める 方程式が得られている。つまりこのことは、定数係数の 線形微分方程式を解くことはそれに対応する代数方程式を 解くことに帰着することが分かるのである。 上の方程式を解くと、 :<math> a = 1 ~ \textrm{or} ~ 2 </math> が得られる。 上の仮定した解の形に代入すると、 この方程式の解として :<math> y = e^t , e^{2t} </math> の2つが得られる。これらは互いに他の定数倍でないので 互いに線形独立である。 よって、任意定数A,Bを用いると、 :<math> y = Ae^t + B e^{2t} </math> を解として作ることが出来るが、これは2個の任意定数を含んでいることから、 この方程式の一般解である。 これらの議論から、この種の方程式では、割合簡単に全ての解が求められ ることがわかる。 結論としては、 このように 定数係数の微分方程式を解くには、 :<math> y = e^{at} </math> の置き換えをして、 aについての代数方程式を解けばよいといえる。 ただし、今回はそうでなかったが特有方程式の解が 虚数であったり重根であるときには別の注意が必要である。 実際には虚数であるときには、単にその虚数を元の表式に 代入すれば良い。しかし、これらの式はオイラーの公式を用いて <math>\sin </math>と、<math>\cos</math>の式に直すことが出来る。 そのため、この様な置き換えをすることが慣用的になされることが 多い。 重根の場合は上でいうaについて元の方程式の次数より少ない数の 解が得られるので、そのままでは一般解が作れないように思える。 しかし、この場合にも行列の指数関数を詳しく調べると、 これに対応する一般解が得られることが知られる。 表式的には、aがn重解のときには <math>e^{at},te^{at},\cdots ,t^{n-1}e^{at}</math>を用いるようにすればよい。 *問題例 **問題 **解答 これらの微分方程式の解を計算せよ。 ただし、初期条件は :<math> y(x=0) = 0 </math> :<math> \frac{dy}{dx} = 1 </math> とする。 微分方程式のすぐ下の式が対応する微分方程式の解である。 :<math> {{d}\over{d\,x}}\,y\left(x\right)=1 </math> :<math> y\left(x\right)=x </math> :<math> {{d}\over{d\,x}}\,y\left(x\right)+y\left(x\right)=x^2 </math> :<math> y\left(x\right)=-2\,e^ {- x }+x^2-2\,x+2 </math> :<math> {{d}\over{d\,x}}\,y\left(x\right)+2\,y\left(x\right)=x^2 </math> :<math> y\left(x\right)=-{{e^ {- 2\,x }}\over{4}}+{{x^2}\over{2}}-{{x }\over{2}}+{{1}\over{4}} </math> :<math> {{d^2}\over{d\,x^2}}\,y\left(x\right)+{{d}\over{d\,x}}\,y\left(x \right)+3\,y\left(x\right)=0 </math> :<math> y\left(x\right)={{2\,e^ {- {{x}\over{2}} }\,\sin \left({{\sqrt{11} \,x}\over{2}}\right)}\over{\sqrt{11}}} </math> :<math> {{d^2}\over{d\,x^2}}\,y\left(x\right)+4\,\left({{d}\over{d\,x}}\,y \left(x\right)\right)+3\,y\left(x\right)=0 </math> :<math> y\left(x\right)={{e^ {- x }}\over{2}}-{{e^ {- 3\,x }}\over{2}} </math> :<math> {{d^2}\over{d\,x^2}}\,y\left(x\right)+4\,\left({{d}\over{d\,x}}\,y \left(x\right)\right)+3\,y\left(x\right)=5\,x </math> :<math> y\left(x\right)=3\,e^ {- x }-{{7\,e^ {- 3\,x }}\over{9}}+{{5\,x }\over{3}}-{{20}\over{9}} </math> :<math> {{d^2}\over{d\,x^2}}\,y\left(x\right)+4\,\left({{d}\over{d\,x}}\,y \left(x\right)\right)+3\,y\left(x\right)=1 </math> :<math> y\left(x\right)={{1}\over{3}}-{{e^ {- 3\,x }}\over{3}} </math> :<math> {{d^2}\over{d\,x^2}}\,y\left(x\right)+4\,\left({{d}\over{d\,x}}\,y \left(x\right)\right)+3\,y\left(x\right)=5\,x+1 </math> :<math> y\left(x\right)={{5\,e^ {- x }}\over{2}}-{{11\,e^ {- 3\,x }}\over{ 18}}+{{5\,x}\over{3}}-{{17}\over{9}} </math> :<math> {{d^2}\over{d\,x^2}}\,y\left(x\right)+4\,\left({{d}\over{d\,x}}\,y \left(x\right)\right)+3\,y\left(x\right)=e^{2\,x}+x </math> :<math> y\left(x\right)={{e^{2\,x}}\over{15}}+{{5\,e^ {- x }}\over{6}}-{{41 \,e^ {- 3\,x }}\over{90}}+{{x}\over{3}}-{{4}\over{9}} </math> :<math> {{d^2}\over{d\,x^2}}\,y\left(x\right)+4\,\left({{d}\over{d\,x}}\,y \left(x\right)\right)+3\,y\left(x\right)=e^ {- x } </math> :<math> y\left(x\right)={{x\,e^ {- x }}\over{2}}+{{e^ {- x }}\over{4}}-{{e ^ {- 3\,x }}\over{4}} </math> :<math> {{d^2}\over{d\,x^2}}\,y\left(x\right)+4\,\left({{d}\over{d\,x}}\,y \left(x\right)\right)+3\,y\left(x\right)=e^ {- x }+x^2+x </math> :<math> y\left(x\right)={{x\,e^ {- x }}\over{2}}-{{e^ {- x }}\over{4}}-{{29 \,e^ {- 3\,x }}\over{108}}+{{x^2}\over{3}}-{{5\,x}\over{9}}+{{14 }\over{27}} </math> :<math> {{d^2}\over{d\,x^2}}\,y\left(x\right)+4\,\left({{d}\over{d\,x}}\,y \left(x\right)\right)+3\,y\left(x\right)=\sin x </math> :<math> y\left(x\right)={{\sin x}\over{10}}-{{\cos x}\over{5}}+{{3\,e^ {- x }}\over{4}}-{{11\,e^ {- 3\,x }}\over{20}} </math> :<math> {{d^2}\over{d\,x^2}}\,y\left(x\right)+4\,\left({{d}\over{d\,x}}\,y \left(x\right)\right)+3\,y\left(x\right)=\sin x+\cos x </math> :<math> y\left(x\right)={{3\,\sin x}\over{10}}-{{\cos x}\over{10}}+{{e^ {- x }}\over{2}}-{{2\,e^ {- 3\,x }}\over{5}} </math> :<math> {{d^2}\over{d\,x^2}}\,y\left(x\right)+4\,\left({{d}\over{d\,x}}\,y \left(x\right)\right)+3\,y\left(x\right)=e^{i\,x} </math> :<math> y\left(x\right)={{e^{i\,x}}\over{4\,i+2}}+{{i\,e^ {- x }}\over{2\,i +2}}-{{\left(i+2\right)\,e^ {- 3\,x }}\over{2\,i+6}} </math> ====行列の指数関数==== <math> e^A=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{A^n}{n!}</math> *TODO 1234 [[カテゴリ:微分方程式]]
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