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物体の内部に蓄えられているエネルギーを、その物体の'''内部エネルギー'''と呼ぶ。内部エネルギーはおおまかには、 #物体を構成する原子・分子・イオンの熱運動の運動エネルギー、 #化学結合に蓄えられているエネルギー、 #物体を構成する原子・分子・イオンの間に働く分子間力による位置エネルギー、 の総和に等しい。熱運動の運動エネルギーを'''熱エネルギー'''と呼び、化学結合に蓄えられたエネルギーを'''化学エネルギー'''と呼ぶ。分子間力による位置エネルギーは、熱エネルギーに含めることもあれば、化学エネルギーに含めることもある。 #温度が高いほど、原子・分子・イオンなどの物体を構成する微粒子の熱運動は激しい。したがって、系の熱エネルギーは、温度が高いほど大きい。絶対温度を''T''、気体定数を''R''とすると、微粒子1molあたりの熱エネルギーは''RT''の程度であり、室温では ''RT'' = 8.31 JK<sup>−1</sup>mol<sup>−1</sup>×298 K ≒ 2.5 kJ/mol である。系の温度が100℃高くなると熱エネルギーは1 kJ/mol 程度大きくなる。 #化学結合に蓄えられている化学エネルギーは、温度が変わってもほとんど変化しない。系の化学エネルギーは、化学結合の切断・生成・組み換えにより数十kJ/mol~数百kJ/molくらい変化する。結合エネルギーが小さいほど、結合に蓄えられている化学エネルギーの量は多くなる。例えば1molのH<sub>2</sub>と<sup>1</sup>/<sub>2</sub>molのO<sub>2</sub>の結合エネルギーの和は、432 kJ + <sup>1</sup>/<sub>2</sub>×494 kJ = 679 kJであり、1molのH<sub>2</sub>Oの結合エネルギーの和 918 kJより小さい。すなわち水素ガスと酸素ガスの混合気体の持つ化学エネルギーは、ガスの燃焼反応により得られる水蒸気の化学エネルギーよりも多い。この反応が孤立系(外界とエネルギーをやり取りしない系)で起こったなら、反応により減少した化学エネルギーの分だけ熱エネルギーが増加し、その結果として系の温度が上昇する。 #分子間力による位置エネルギーは、気体>液体>固体の順に低くなる。一般に、位置エネルギーの低い場所から高い場所に粒子を移動するにはエネルギーが必要である。おおざっぱには、気体と液体の内部エネルギーの差は蒸発潜熱に相当し、気体と固体の内部エネルギーの差は昇華潜熱に相当する。 == 例 == いくつかの系について、その内部エネルギー''U''の内訳をみる。''n''は系の物質量、''T''は絶対温度、''R''は気体定数である。 * 単原子理想気体 *:<math>U=\frac{3}{2}nRT</math> *:貴ガス原子の間に働くファンデルワールス力は小さいので、常温常圧の貴ガスは理想気体とみなせる。単原子分子には化学結合がないので、化学エネルギーはゼロ。単原子理想気体の内部エネルギーは、したがって、熱運動の運動エネルギーに等しい。 * ファンデルワールスの状態方程式にしたがう単原子気体 *:<math>U=\frac{3}{2}nRT-a\frac{n^2}{V}</math> *:ファンデルワールスの状態方程式にしたがう気体では、分子間力による位置エネルギーは気体の密度''n''/''V''に比例して低下する。その比例係数は、ファンデルワールス係数''a''に等しく、分子間力が強いほど内部エネルギーは小さくなる。 * 二原子理想気体 *:<math>U \fallingdotseq \frac{3}{2}nRT+nRT-nD_0</math> *:二原子分子の熱エネルギーは、分子の回転運動のため、単原子分子よりも1molあたり''RT''だけ大きい。また、分子の結合エネルギー''D''<sub>0</sub>が大きな分子ほど、内部エネルギーは低くなる。分子内原子の熱振動のエネルギーは、常温のH<sub>2</sub>, O<sub>2</sub>, N<sub>2</sub>, HX(Xはハロゲン)では''RT''よりずっと小さいので無視できる。F<sub>2</sub>, Cl<sub>2</sub>などハロゲンの単体では熱振動のエネルギーが無視できない大きさになるので、上式の右辺に熱振動エネルギーの項が加わる。 {| class="wikitable" style="text-align:center;" |+ 二原子分子の結合エネルギー''D''<sub>0</sub><ref name="binran101201">日本化学会 編『化学便覧 基礎編 改訂6版』丸善出版、2021年、表10.12-1</ref> ! 分子 !! 分子式 !! ''D''<sub>0</sub> / kJ mol<sup>−1</sup> |- | 水素 || H<sub>2</sub> || 432 |- | 酸素 || O<sub>2</sub> || 494 |- | 窒素 || N<sub>2</sub> || 942 |- | フッ化水素 || HF || 566 |- | 塩化水素 || HCl || 428 |- | 臭化水素 || HBr || 362 |- | ヨウ化水素 || HI || 295 |} * 多原子分子の理想気体 *:<math>U = \frac{3}{2}nRT+nU_\text{m}^\text{rot}(T)+nU_\text{m}^\text{vib}(T)-nE^\text{at}</math> *:''U''<sub>m</sub><sup>rot</sup>(''T'')は分子1molあたりの回転運動の熱エネルギーである。多原子分子の回転運動の熱エネルギーは、CO<sub>2</sub>のような直線分子では二原子分子と同じく''nRT''だが、H<sub>2</sub>OやCH<sub>4</sub>のような非直線分子では''<sup>3</sup>/<sub>2</sub>nRT''となる。 *:<math>U_\text{m}^\text{rot}(T) = \left\{ \begin{array}{ll} 0 & (\rm{He, Ne, Ar,...})\\ RT & (\rm{H_2, HCl, CO_2, HCN,...})\\ \frac{3}{2}RT & (\rm{H_{2}O, NH_3, CH_4, C_{2}H_6,...}) \end{array} \right. </math> *:''U''<sub>m</sub><sup>vib</sup>(''T'')は分子1molあたりの熱振動のエネルギーである。H<sub>2</sub>Oのような特別な例外を除いて、多原子分子の''U''<sub>m</sub><sup>vib</sup>(''T'')は無視できない。気体の熱容量が温度によって変わるのは、主としてこの項のためである。''E''<sup>at</sup>は原子化エネルギーと呼ばれ、1molの分子に含まれる化学結合をすべて切り離すのに必要なエネルギーである。 {| class="wikitable" style="text-align:center;" |+ 分子の原子化エネルギー''E''<sup>at</sup><ref name="binran101201" /> ! 分子 !! 分子式 !! ''E''<sup>at</sup> / kJ mol<sup>−1</sup> |- | 水 || H<sub>2</sub>O || 918 |- | アンモニア || NH<sub>3</sub> || 1158 |- | メタン || CH<sub>4</sub> || 1642 |- | 二酸化炭素 || CO<sub>2</sub> || 1052 |} *液体水銀 *:<math>U \fallingdotseq \frac{3}{2}nRT - n(L_\text{m}^\text{vap}-RT)</math> *:右辺第1項は、単原子理想気体の内部エネルギーである。''L''<sub>m</sub><sup>vap</sup>は1molあたりの蒸発潜熱である。−''RT''は、1molの水銀が蒸発するときに外界がする仕事の近似値である<ref group="注釈">蒸発するときの体積変化は正 (Δ''V'' > 0) なので、外界が系にする仕事は負 (''W'' = −''p''<sub>ext</sub>Δ''V'' < 0) になる。液体の体積が蒸気の体積に比べて無視できるくらい小さく、さらに蒸気が理想気体とみなせる場合は、Δ''V'' = ''V''(気) − ''V''(液) ≒ ''V''(気) ≒ ''<sup>nRT</sup>''/<sub>''p''</sub> と近似できる。</ref>。蒸発潜熱そのものではなく、−''n''(''L''<sub>m</sub><sup>vap</sup>−''RT'')が水銀原子間に働く引力による位置エネルギーに相当する。水銀に限らず、液体金属の内部エネルギーは、同じ温度の金属蒸気の内部エネルギーから蒸発潜熱を引いて''nRT''を足したものにほぼ等しい。アルゴン、クリプトン、キセノンなどの比較的沸点が高い貴ガスの液体の内部エネルギーも、同じ式で表される。ヘリウムやネオンのような沸点の低い液体では、体積変化に伴う仕事を''nRT''とする近似が悪くなる。 *液体 *:<math>U \fallingdotseq n{U_\text{m}^\text{g}}^\circ (T) - n(L_\text{m}^\text{vap}-RT)</math> *:''U''<sub>m</sub><sup>g</sup>°は蒸気1molあたりの内部エネルギーであり、第2項が分子間力による位置エネルギーに相当する。分子からなる液体だけでなく、溶融塩の内部エネルギーも同じ式で表される。 == 脚注 == === 注釈 === <references group="注釈" /> === 出典 === <references /> [[カテゴリ:熱力学]] [[カテゴリ:エネルギー]]
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